ねこ藩が毎年秋に販売するカレンダー。
2020年度用カレンダーは、現在発注手前の大詰めに入っています。

 

来年度用カレンダーの話をする前に、
今年(2019年度)用カレンダーの内容について少々。

昨秋、発売から1ヵ月足らずで完売した為、
行きわたらなかった方々がいらっしゃいますので、
どういったメッセージを込めたカレンダーだったのか、
ここに記しておこうと思います。

(年初の挨拶代わりに、ここでお伝えしておけば良かったのですが、
ついつい後回しにしてしまい、9ヶ月が経過してしまいました。)

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◆カレンダーに込めたメッセージ◆(裏表紙)

『When You Open Your Door to Us …..
飼い主のいなかった猫から、飼い猫へ。』

 

「飼い主のいない猫」ということばを聞いたことがありますか?

「飼い主のいない猫対策」
「飼い主のいない猫の不妊手術実施事業」
「飼い主のいない猫の適正管理マニュアル」

都道府県・市町村の行政(国)は、近年、
「野良猫」のことをこう表現するようになりました。
なぜ、「野良猫」から「飼い主のいない猫」という表現になったのでしょうか?

この国には、私達人間の他にたくさんの動物が済んでいます。
クマ、シカ、イノシシ、タヌキ、キツネのほか、
「ツシマ」「イリオモテ」という2種類の山猫、
また、スズメ、カラス、ムクドリなどの鳥類も無数に生息しています。
「飼い主のいないイノシシ」、「飼い主のいないスズメ」。
通常、そんな言い方ははしませんね。どうしてでしょうか?

それはこれらの生き物が、人間がその生活に介入したり、
餌づけしてはいけない、野生動物・野鳥と言われる生き物だからです。
「飼い主」とは人間のことを指しますが、野生の生き物に人間の飼い主はいません。

「動物愛護法」という法律がありますが、
その中に愛護動物に指定されている何種類かの哺乳類がいます。
愛護動物とは、人間の飼育下になくてはならない生き物、つまり、
人間が責任を持って飼わなくてはいけない生き物ですが、
その中に、人間に飼われることもなく、
追い払われたり、水をかけられたり虐待を受けたりして、
長年ひどい状態であちこちに放置されたままの生き物がいます。

ネコ=野良猫です。

野良猫はどこにでもいます。
そして、糞尿、鳴き声等を迷惑だと感じ、
「野良猫なんていなくなればいい、さっさと捕まえて殺せばいいのに。」と
野良猫を忌み嫌う人間もたくさんいます。

しかし、愛護動物の対象であるネコを、
アライグマ、ハクビシン、ネズミ等と同じ害獣扱いにして
捕獲・駆除をすることは出来ませんし、するべきではない。
そのような考えから生まれたのが「猫と人間の共生」です。

人間の都合で野良猫を排除するのではなく、
これ以上数が増えないように不妊手術を行い、
猫の数を減らすことを前提に地域猫という形で管理しながら、
人間と猫が同じ地域で暮らしていけるように、
行政は様々な対策を提案し、その為の助成も行っています。

人間の手により無責任に捨てられたり、迷子になったまま放置された猫が、
現在私達のまわりで生きている野良猫のルーツ。
本来ならば、ペットとして人間に終生飼われるべき愛護動物です。
野良猫と、室内で飼われている飼い猫は同じネコです。
唯一の違いは「飼い主がいる」か「飼い主がいないか」だけ。

野良猫を野生動物のように思っている人間もいますが、本当はそうではない、
「飼い主がいるはずの」生き物ですよ、と再認識してもらう為に、
「野良猫」とは言わず、「飼い猫」の対となる「飼い主のいない猫」という
表現をするようになったのかもしれません。

ここ数年、目と耳を塞ぎたくなるような
「飼い主のいない猫達」の虐待事件が増加しています。
市内でも昨年から立て続けに残忍な事件は起こっており、
その件数は両手では数えられない程になりました。
外で暮らす猫の数が減っていけば、こういった事件も減っていくかもしれません。

私達ボランティアは、飼い主のいない猫を減らしていく為に、
TNR(不妊手術して元の場所に戻すこと)など、
自主的に出来ることを出来る範囲で行いつつ、
困っている方がのお手伝いをしています。

その活動の半分は、飼い主のいない猫、あるいは、
飼い主のいない猫から生まれた子猫達を保護して
一生大切に飼って下さる飼い主さんを探すことですが、
なかなかうまくいかないこともあります。

今の日本は、猫をかいたい人達の数より、
飼い主さん探しをしている猫の数の方が多い上に、
猫を量産して売り付けるペットショップやブリーダーも多く存在することから、
猫の供給過多になってしまっているのです。

このカレンダーに登場するのは、飼い主のいない猫から飼い猫になった猫達、
飼い主さんを募集している猫達、飼い主がいなくても地域住民達と共生している猫達です。

これから猫を飼いたいとお考えならば、お金を出してブランド猫を購入する前に、
ぜひ、「飼い主のいない猫」の飼い主になることを検討していただければ嬉しく思います。

あなたが差し伸べた優しい手を掴んだ「飼い主のいなかった猫」は、
必ずあなたの生活を彩豊かなものにし、
あなたにたくさんの幸せな時間を与えてくれるに違いありません。

 

ねこ藩

 

 

*「アライグマ、ハクビシン、ネズミ等と同じ害獣扱いにして・・・」の下り。
決してアライグマなどは殺してもいいとは思っていません。
そういった動物を害獣扱いにして駆除するのも私達人間の都合ですので、
殺処分以外の対応策があれば・・・それが本音です。

 

 

 

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◆カレンダー添付ペーパー:モデル猫紹介文最後に添えたメッセージ◆

「たかが野良猫の為にキリがないことをよくやるね」
「野良猫なんて放っておいても死なないよ」などという人に時々出会います。

また、「猫、猫って、猫ばかり特別扱いするな」とか、
「猫好きが猫可愛さに勝手にやっていること」と言われたこともあります。

私自身は特に猫が大好きというわけではありません。
ではどうしてこんな活動を続けているのか?

地域で野良犬が問題になっていれば
野良犬を減らす活動のお手伝いをしていたと思いますが、
都市部の住宅地には野良犬はいません。
飼い主のいないヤギやヒツジなどが住宅地にたくさん生息し
地域の問題となっていたならば、
ヤギやヒツジを助けるお手伝いをするでしょうが、
それはほぼあり得ないことです。

地域の問題となっているのに、行政がリーダーとなって
解決に向けて積極的に動くわけでもなく、
糞尿被害等で苦情を言う住民は
「迷惑をかけられている自分がなぜ協力しなくてはならないのか?」
と怒るだけ。
そして多くの住民達は「誰かがやればいいこと」と無関心。

野生動物ではないのに、愛護動物としての扱いもされていない、
そういうどっちつかずの領域にいる生き物は野良猫しかいない。
私の目にはそう映ってしまったからです。

外で生まれた猫は、出会った人間によってその猫生が大きく変わりますが、
幸せな猫生を送ることが出来る元野良猫はほんの一部、
多くの野良猫達は飢えや病気や事故で死んでいきます。
また、出産すれば赤ちゃん猫達は取り上げられて袋に詰め込まれ、
川に流されたり、ひどい時には生ゴミとして出されたりします。

野良猫の問題を解決するには、とにかく野良猫の数を増やさないこと。
その為にはまず不妊手術が必要になります。
飼い猫を自分の都合で捨てない。
猫が脱走して迷い猫にならないよう十分に注意して飼う。
ペットショップやブリーダーから猫を買わずに、
心無い飼い主が捨てた猫や、野良出身の猫を飼い猫として迎え入れる。
こういったことも野良猫の減少に大きく繋がっていきます。

これから猫を飼うことをお考えの方、
元野良猫=「飼い主のいない猫」にも幸せになるチャンスを与えてあげて下さい。
見向きもされなかった「飼い主のいない猫」から
愛される「飼い猫」へと変わっていく過程を
ぜひ優しい目と心で見守ってあげて下さい。
あなたが彼らに向かって扉を開けて下さるのを
「飼い主のいない猫たち」は待っています。