赤いお洋服を着た茶トラの若い男の子に初めて会ったのは
2014年12月のことです。

当時、我が家の裏庭には半年前にTNRした猫・くりこが住んでいました。
くりこは裏庭に設置したハウスとトイレで生活し、
ご飯の時は勝手口から入って来てキッチン内で食べていました。
ある日の晩、そろそろくりこがご飯を食べに入ってくるだろうと開け放しておいた勝手口から、
赤いお洋服を着せられた、今まで見たことのない若い茶トラが入ってきたのです。

 

あなた誰?”

 

私は少し離れたキッチンの入り口から観察することにしました。
その子はくりこのベッド、爪とぎ等のにおいを嗅いで気が済むと、
こちらにお尻を向けて勝手口から外を眺めています。
きれいなオレンジ色に近い茶トラ。健康そうな若いオスです。

 

服を着せられているし、人間にお尻を向けるとは、
どこかの出入り自由の飼い猫だな

 

やがて、茶トラは出ていきました。
それから度々、その茶トラは我が家の庭をパトロールするようになり、
時には、勝手口の外にちょこんと座り、キッチンを覗くようになりました。
彼が去った後は、裏庭だけでなく表の駐車場と玄関脇に
強烈なマーキング臭が漂っていました。

しばらくすると、いつも来ていた赤いお洋服が脱がされていました。

 

 

2015年2月頃でしたか、森本さん(72才)と道でバッタリ会いました。
森本さんは我が家から7-80メートル程のところに住んでいる方で、
出入り自由の猫を1匹飼っている猫好きの方です。
最近に我が家に現れる茶トラの話をして画像をお見せすると、
森本さんは言いました。

 

あら、カプ君だ!

 

やっとこの猫の正体が判明しました。

 

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森本さんの、そしてご近所で耳にした話をまとめるとこうです↓。

 

◆森本さんの隣に山田さんという美容師のお父さんと娘さんが住んでいて、カプ君はその娘さんの飼い猫。
◆娘さんが茶色い子猫2匹(♂1匹と♀1匹)を拾い家の中で飼っていた。
◆♀のメープルちゃんは病気で死んでしまい、♂のカプチーノ君(以後カプ君と略) 1匹が飼われていたが、何かがきっかけで外に出されてしまった。
◆おうちの中に入りたいカプ君が庭でずっと待ってるが、山田家は日中ずっと留守で家に入れないし、夜も家に入れてもらっているのかどうかわからない。
◆きちんと給餌しているのかどうか不明で、森本さん宅に来れば森本さんがご飯をあげるようにしているが、食べたり食べなかったり。
◆雨の時は可哀想だからと森本さんが箱を用意したが、カプ君は絶対に入らない。
◆森本さん宅の出入り自由の飼い猫がカプ君を嫌いで、威嚇して追い払ってしまう。
◆山田さんの娘さんは3月に転勤で沖縄に引っ越しする。
◆山田さん親子は仲があまりよくない。
◆カプ君は病院に連れて行ってもらったことはない。

 

つ~ま~り~、

山田さんのお嬢さんは飼い猫カプ君を外に出したが世話をせず、
カプ君を外に放置したまま近々遠方へ引っ越す。
気の毒に思っている森本さんが、カプ君に時々ご飯をやっている。

 

201412

 

←湯たんぽの入ったくりこのお昼寝ハウスを
のぞいているカプ君。

 

お洋服を着せたのは、寒い時期にカプ君を外に出すことへの
罪悪感からなのでしょうか。
飼い主さんのせめてもの気遣いなのでしょうか。

 

 

 

 

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★カプ君行動範囲

 

 

カプ君の行動範囲

わかっている場所だけをマークしたものですが
未去勢の♂ですから、実際はもっと
広い範囲を歩きまわっているはずです。

 

(画像クリックで拡大)

 

 

 

 

”事情があって外飼いすることにしたのなら、
せめて去勢手術を済ませ、ご飯やトイレ等の基本的な世話をする。
許されないことだと思うが、置き去りの選択しかないのであれば、
自分で飼い主さんを探すか、ご近所の方々にカプ君の世話を頼む。”

 

そのようなことを森本さんから山田さんにやんわりと伝えてみてはどうかと、
森本さんに提言しましたが、
「隣人だもの、そんなこと言いづらいわよ~、私そういうのはちょっと…。」
と森本さんは言葉を濁されました。

 

その頃、ご近所で、茶色い猫が庭に糞をする、茶色い猫が車に臭いおしっこをかける、
茶色い猫がゴミ収集場所で生ゴミを漁っていた…等々、
カプ君だと思われる猫に対するちょっとした苦情があることを耳にしました。
私は山田さん親子を存じませんでしたし、もし顔見知りであったとしても、
あなたのしていることはよくない、と言える立場にはありません。
そんな権限もありません。
そこで、ものすごく丁寧(と思う)な優しい言葉(と思う)で、
山田さん親子に手紙を書きました。

 

「カプ君のことがご近所で問題になりそうな気配を感じています。
去勢をしてあげるのはいかがでしょうか。
通院のお手伝いを含め、出来ることは喜んでお手伝いします。
出来ましたらワクチン接種もしてあげるといいと思います。
最近、この辺りでTNRをした複数のオス猫達は
高い確率で猫エイズウィルスのキャリアでしたから。」

 

といったような内容です。
私はこの手紙を美容師のお父さまに手渡しました。
「カプチーノ君の件で」と付け加えると
「ああ、そうなんですか。私も読んでいいんですね?わかりました。」
とおっしゃって手紙を受け取って下さいました。
客商売をしていらっしゃる方ですから、愛想のいい方だなという印象でした。

 

その後娘さんからは連絡はなく、3月末に娘さんは沖縄に引っ越して行きました。
4月に、これまた丁寧な言葉で「いかがでしょう?」的なメッセージを
美容院のポストに入れておきました。
半年経っても、お父さまの方からの連絡もありませんでした。

 

私の申し出は、あの親子にとって余計で迷惑なお節介以外の何ものでもない、
という結論にいたり、心配した自分に呆れました。
飼い主さんの数だけ飼い方があると言われればその通りだと思います。
ですが、この場合、カプ君は外に放置状態、ご飯も貰えていないわけですから、
これは飼育責任放棄=捨て猫?ではないかと気付きました。

 

20150820-02

 

 

くりこを再保護して室内に入れた数日後、
くりこの使っていたハウスを洗って
外に干したまましまうのを忘れていたら、
雨が降り出しました。

雨降りの中、居場所がないのでしょうか、
カプ君が逆さになったハウスの中で
小さくなって休んでいます。

 

 

 

以前、ご近所で野良猫達に餌をやっていた方のところに、
保健所の職員の方が「餌やり」について注意をしにやって来たという話をききました。

そうか、野良猫の扱いや猫の適正飼育に関することならば、私のような一個人ではなく、
保健所の職員さんの方から話をしてもらえばいいわけか・・・と思い付き、
私は保健所にカプ君の件を伝え、自分はカプ君に関わらないことにしました。

 

飼い猫に対して飼い主が責任ある飼育を行わない場合→虐待
飼い猫を外に出しそれはもう飼い猫ではないと主張→捨て猫という犯罪

 

保健所の方が山田さんと接触し、カプ君の件がいい方向に向かってくれればいいわけで、
保健所にお任せしておけば間もなくこの件も解決するだろう、
近所だというだけで一個人の私がお節介をやく必要もない、うるさがられるだけだし。

 

Cappu

 

 

 

 

我が家の裏庭をパトロール中のカプ君
せめて新鮮なお水くらいは飲めるようにと、
勝手口外にお水をおいてあります。

 

 

 

しかし、1年経過しても状況は全く変わりませんでした。
むしろ、カプ君の生ゴミ漁り、マーキング、夜中の喧嘩と大きな鳴き声は
更に頻繁に目撃されるようになっていました。

 

そして、カプ君は徐々に痩せていき、常に餓えているようでした。

 

20160417-02

 

 

←リビングの掃き出し窓から、外のカプ君を見ているこまつ。
カプ君はどんな気持ちでそこにいるのだろう。

 

カプ君が外に出されて1年。
その間、くりこに続き、我が家の室内にはこまつも加わりました。

カプ君の体はゴツゴツと骨が目立って見えるようになりました。

 

 

 

To be continued・・・