前回のお話はこちら。
2019年6月4日のブログ
「微動・伝動・連動へ:②元を閉める。」
庭に来る猫の不妊手術をしたい。
そういった相談者の方々は、大抵の場合、
ご自身で手術費用(医療費)を負担されます。
市川市ではまず地域猫団体の登録を済ませ、
助成金対象となる猫を登録しておかないと、
不妊手術代の助成金を申請することは出来ません。
ほとんどの相談者の方々は、
そのような登録などしていませんから、
自費で手術を行うしか方法がないのです。
1匹ならたいした金額にはなりませんが、
それが5匹となると、医療費も5倍。
どうしても躊躇いが出てしまいます。
そこで、成猫の不妊手術代の一部を、
こちらで負担しましょうか?と提案します。
日ごろから蓄えているねこ藩の資金を利用し、
相談者さんの背中を押すのです。
今回の件。
当初はねこ藩の金銭負担はないはずでした。
しかし、子猫6匹分の医療費が70000円を超え、
その上、考えていなかった母猫の不妊手術・・・。
ご自身で術後の療養を引きうける心の余裕がなく、
知人のKさん宅に有償で預けることになった為、
5日間の預かり代・フード代もかかってきます。
HGさんのご友人は、ムギを貰い受ける時に、
医療費をHGさんに支払って下さったそうですし、
これから5匹のうち4匹に里親が見つかれば、
HGさんが立て替えて支払った50000円の医療費は、
HGさんのお財布に戻って来る。
そのように話しましたが、HGさんは首を振りました。
「お金の件までボランティアに丸投げすること。
それは、Hさん(私)が一番うんざりすることですよね。
でも、私はもう無理。成猫達の手術費用は出せません。」
そうか・・・。
HGさんの病気のこともありますので、
「大人猫の方は、こちらで負担しますから、
もうお金のことは考えなくていいです。」
と答えることしか出来ませんでした。
それはもういいんです。
保護猫とならない、成猫の不妊手術に関しては、
こちらでも金銭的に協力する心づもりはありました。
もともと、TNRを広めたくて、
このような活動を始めたわけですから。
しかし、更に医療費のかかるTNRのことばかりではなく、
子猫がなかなか貰われていかない状況で、
HGさんは袋小路に追い詰められたような
お気持ちになっていたのかもしれません。
インターネットから、そして、知人からの問い合わせは、
数件、あったことはあったのですが、9割方は、
「人慣れしていない」ことがネックとなり、
お見合いには至りませんでした。
1組みだけ、「人慣れしていなくても構わない」と
おっしゃって下さった方がいましたが、
お見合いの直前に突然辞退され、それっきり。
12月、市役所主催の譲渡会がありました。
HGさんは頑張って、他の猫に比べて確保しやすい
オスカーとチャーリーを連れて参加しました。
譲渡会の最後ギリギリになって、2匹一緒にと
申し込んで下さった方がいたのですが、
その後いくら連絡をしても返事がありません。
2週間後やっと返信が来ましたが、
「すみませんが、辞退します」ということでした。
この2ヶ月あまり、ぬか喜びの連続です。
年の暮が迫った頃、隣市にお住まいのご夫婦から、
シ―マを迎えたいという連絡をいただきました。
シ―マだけは人慣れしている猫だったのです。
大きなチャンス・・・になるはずでした。
ところが、HGさんが、お見合いの前日に
「シーマは人慣れしているから自分で飼いたい」と
言い出しました。
希望者のご夫婦にその旨を伝えると、
保護主さんがそうおっしゃるならば仕方がない、
とりあえず、他の子に会ってみますと、
約束通り、お見合いにいらして下さいました。
ケージに何とか入れることが出来た4匹は、
ビクビクしていて、ケージの中でさえ逃げ回ります。
ケージに入れられなかった1匹=アンディは、
あちこちに逃げて隠れてしまい、
まともに顔を見ることも出来ません。
翌日、ご夫婦から返事をいただきましたが、
思っていた通り、ご辞退でした。
もともとシ―マを希望されていたご夫婦に、
他の慣れていない子を貰っていただこうなんて、
無理があったのです。
もし私がHGさんの立場だとしたら、慣れている子はどんどん送り出します。
そして最も人慣れしていない1匹を、自分で飼おうとすると思います。
猫ボランティアをしている方々はどうでしょうか。
HGさんはボランティアではありませんから、
以前飼っていた猫=わかめちゃんのように、
懐いてくれる猫、扱いやすい猫を飼いたいのです。
5匹のうち、それはシ―マだけでした。
一番貰われる可能性の高い猫を、自分の猫にすると決めたHGさん。
里親探しはこれまで以上に難しくなってしまいました。
年が明けると、最初にムギを貰って下さったHGさんの知人が、
ムギの相手にと、もう1匹=オスカーを貰って下さいました。
6匹のうち、ムギとオスカ―が貰われ、
HGさんがシ―マを飼うことにした。
ということは、アンディ、ロッテ、チャーリー、
あと3匹の里親が決まればいいわけです。
画像を変えて、ネットでの里親探しを仕切り直し、
譲渡会に参加して・・・と思っていたところに、
HGさんから連絡が来ました。
「今の私には、お見合いを設定したり、
他人が家に来たりすることが苦痛なんです。
その上、また『辞退します』ばかりでは辛い。
里親探しはやめます。自分で4匹飼います。」
4匹が可愛くて可愛くて手放したくなくなった、
というわけではありません。
ご自身の病気のことや、慣れない子猫達の世話、
里親希望者からの問い合わせに喜んでは、
辞退やキャンセルにガッカリの連続で、
HGさんは、すっかり疲れてしまったのです。
「もう少し頑張ってみましょうよ」
とは、もう言えませんでした。
こうして、残った3匹の子猫の里親探しは、
終了となってしまいました。
2019年6月現在。
現在、4匹はHGさん宅で自由に過ごしています。
もうすぐ1才、大きくなりました。
少しづつ人慣れも進んでいるようで、
ブラッシングをさせてくれるようになったそうです。
春先に、あまり人慣れしていなくてもいいので、
きょうだい猫2匹を迎え入れたいという方がいました。
HGさん宅の猫達のことが頭に浮かびましたが、
お見合いが苦痛だとおっしゃっていたHGさんです。
「今、紹介出来るきょうだい猫がいないのです」と
お断りせざるを得ませんでした。
その後、その希望者の方は別のボランティアさんから
猫を貰い受けたそうです。
先日、その話をHGさんにしたところ、
「え、そんな方がいらしたんですか?
タイミングが悪かったんですね。
もし、将来、またそのようなお話があれば、
ぜひお願いします。急ぎませんので。」
と、おっしゃいました。
あら?
諦めて自分で4匹飼うのではなかったのかな。
HGさんもご自身の年齢のことなど、
色々と考えたのかもしれませんね。
また、体調がだいぶ回復されたこともあり、
ポジティブな考え方が出来るようになったのかな。
そういうわけで、大々的に募集はしていませんが、
いつかまたご縁に繋げられそうな機会があれば、
アンディ、ロッテ、チャーリーのうち2匹を
希望者の方に紹介しようと思っています。
HGさんは3匹のうち残った1匹とシ―マを飼い猫にして、
一緒に暮らしていくそうです。
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今回の件は、色々と考える良い機会でした。
猫のボランティアをしていると、
こうしてああして、とポンポンと段取りをして
スピーディに、事務的に物事を進めがちになりますが、
慣れていない人、初めてのひとにとっては、
大変な作業あり、予想外の出費ありで、
ついていけないこともあるのです。
また、たいていは自宅をお見合いの場にしますので、
自宅に他人を招き入れることには、もう慣れっこですし、
お見合いでも譲渡会でも、お話をするのは、
初めてお会いする方々ばかりです。
私は知らない人と会ったり話したりすることに
それほど苦痛を感じないタイプの人間ですが、
人間みなそれぞれ性格は違います。
人付き合いが苦手だったり、人見知りをしたり、
対人に苦手意識を持つ方もいるわけです。
HGさんに関しては、その辺をもっと、
考えてあげなくてはいけなかった。
相談者さんの性格をよく理解し、
こちらのペースにはめ込むのではなく、
その方にとってベストな方法で物事を進める。
猫を助けるというより、人を助けているのだから、
そういったことにもっと気を遣わなくてはだめだ。
そのように痛感しました。
HGさんはよくやって下さったと思います。
消極的で、人付き合いの少ない方ですが、
彼女なりに、所の方々や、昔の仕事の関係者に、
子猫を貰って下さる方がいないかどうか、
聞いて下さっていました。
それに、彼女が。「捕まえなくちゃ!」と、
保健所に連絡をして捕獲器を借りていなければ、
私は、△丁目にそのような住民がいることも
知らないままだったでしょう。
私の心に引っかかった言葉があります。
HGさんは、自治会に猫のTNRの件で
相談をしてみたそうですが、
その時にこう言われたそうです。
「自治会のお金をそんなことには使わない」
確かに、加入者である住民の方々から集めたお金を、
野良猫の不妊手術の一部に利用することには
反対意見もあると思いますし、
高齢の役員さん達には受け入れられないでしょう。
しかし、現に、野良猫に迷惑を被っている住民も
多くいるわけですから、
野良猫の数が減っていくことは、
住民の不満が減ることにも繋がるという風には、
考えていただけないのかな。
ここ2年の間、近辺では猫の虐待事件も相次いでいます。
猫を連れ去り惨殺してから、まるでメッセージのように、
元の場所に、人目につくように丁寧に置く。
そんな恐ろしい人間がこの自治会領域内に住んでいるのです。
外に猫がいなければ、こんなことは起こらない。
自治会費からの捻出が無理ならば、
特別寄付という形ではどうだろうか。
△丁目の世帯数(自治会に加入している世帯)を考えると、
1世帯につき500円を出し合えば、
△丁目に生息する野良猫全てのTNRを行っても
充分お釣りがくるでしょう。
△丁目のTNRはやろうと思えば、
やり切れる状況にあると思います。
まあ、TNRの為の寄付の呼びかけなんて、
自治会は絶対しないでしょうね。
それでなくても、赤十字、赤い羽根、
歳末助けあい・・・等々。
自治会からは、年に3-4回も
寄附金用封筒が配られているのですから。
「そんなことにお金を使わない」
これは△丁目の自治会だけではなく、
他の自治会、あるいは一般の方々にも共通した
考え方かもしれません。
野良猫問題を解決出来るのは、
他の場所から一時的にやって来る人間ではなく、
その地域に住む人間だけですが、
そのことに気付いている人間はとても少ないと思います。
自治会の資金というのは、
子供や高齢者を中心とした住民の為に使うのものであり、
そんなもの=野良猫の為に使うものではない。
数年後の野良猫ゼロを目標にして、
自治会費で野良猫の不妊手術を行うくらいなら、
盆踊り大会やイベントにもっとお金をかけるとか、
分別ゴミ袋セットでも各世帯に配ることを
希望する住民の方々の方が多いでしょう。
少しでも理解が深まれば、と思う点は、
野良猫問題は、猫の好き嫌いや、猫が可哀想という
個人の好みや感情的な側面から考えるのではなく、
地域の環境保全に属する問題と捉えるべきだということ。
今すぐにどうこう出来る問題ではないでしょうが、
それでも、M姉妹、YAさん、衣料品店主TさんがTNRした猫達、
ミーコに、今回のマチコとママコ。
有志の住民達の間で、△丁目のTNRは、
少しづつではありますが、進んでいます。
あそこの場所の猫達はTNR済みらしいから、
こっちの猫達もやろう、
あの人がTNRをしたらしいから、話を聞いて
こちらでもやってみよう、という風に
「野良猫の不妊手術をする」という動きが
じわじわと広まっていくことを願っています。
そして、自分の手に負える範囲であるならば、
私もまた少しづつ着手したいと思っています。