「猫好き」の定義って何でしょうか。

 

猫と暮らしたいと思うこと?
猫を可愛いと思うこと?

 

 

猫を飼っていると、自分の飼い猫以外の猫にも
興味は持つものです。
外に人懐こい猫がいれば、
「飼い猫かしら?」と思ったり、
痩せた野良猫がいたら、
「可哀そうに。病気かな?」
と思ったり。

 

猫飼いであっても、外の猫達に全く関心のない方々は
案外多いのではないかと思います。
ペットショップやブリーダーから購入した
血統種を飼っている飼い主さんに
そのような傾向が見られるようです。
私がこれまでに出会った人々など、ほんのひと握り。
ですから、これは一般論ではなく、私の感想です。

 

私はそういう方々を「猫好き」ではなく、
「自分の飼い猫だけが好きな人」と考えています。
それはそれで別に悪いことだとは思いません。
ご自身の飼い猫を、責任持って終生飼育していただければ、
それでいいわけですから。

 

飼い猫であっても、野良猫であっても、地域猫であっても、
猫という生物が好きで、どの猫の命も尊いものだと思う人。
それが本当の「猫好き」な人間ではないか、と思うのです。

 

 

 

 

我が家の近所には、「野良猫製造工場」
私が呼んでいる場所があることを
以前のブログで書きました。

 

 

(1)重田邸
(2)春田アパート
(3)ジャングルハウス
(4)居酒屋

この4か所です。

 

TNRや保護を続けた結果、
春田アパートとジャングルハウスの2か所は、
M姉妹はじめ数名の方々の協力により、
2年前に解決しましたので、
今では界隈に住む猫の数は一気に減少し、
顔馴染みの地域猫がいるだけになりました。

 

 

一番最後に加わった④の居酒屋。
この顛末も以前ブログで書いた通りです。
ここは、当事者の意識が変わらない限り、
解決のしようがない場所だと思っていました。

 

高齢の店主と、中年の女性定員が働いている居酒屋。
店の前には葦簀が立てかけられ、
その内側には、エアコンの室外機、
そして葦簀と室外機の間の僅かなスペースに
汚い箱が置かれています。

店の入り口には常に置き餌があり、
この界隈の猫達はこの置き餌を食べに集まりますが、
これはもうずっと昔から続いてきたことです。

 


この葦簀(よしず)の内側はエアコンの室外機です。
わずかなスペースに猫用の箱が置かれています。

 

店主と店員は、猫の不妊手術を全く行っていませんでした。
居酒屋はこの地域の野良猫人口を常に増やすことに貢献してきた、
迷惑極まりない野良猫製造工場だったのです。

 

「こちらで出来ることはお手伝いしますから、
今ご飯をあげている猫達の、せめてメスだけでも
不妊手術をしてもらえないでしょうか。」

見るにみかねて声をかけたのは、数年前のことです。

 

「以前、可愛がっていた猫2匹に不妊手術をしたら、
手術後いなくなってしまったから、手術はもうしたくない。」
というのが店主の答えでした。

せっせと野良猫達に餌をやり続けているのは、
この店に勤務している店員だということもわかりました。

 

 

 

ある時、店の前で偶然、
その女性店員・Sさんに出くわしました。
店の前だけでなく、店の前のマンション1階の
駐車場奥にも猫ハウスを置き、
そこでも猫に餌をやっているそうです。

 

不妊手術をしないと猫は増えるばかりで困りませんか?
近所から苦情が出ているのは知っていますか?

「餌をあげて世話してるから、可愛い可愛いって、
しょっちゅう、みんな見にくるよ。
私、このマンションに住んでいて、猫1匹飼ってるの。
可愛いから見に来る?」

いやいやいや、そうじゃないの。
ってか、話をそらすなよ。

 

日本姓ですが、日本に長い間住んでいる外国の方でした。
社交的で気は良さそうな方なのですが、
不妊手術の話になると、すぐに話を脱線させてしまいます。

 

「私は猫が可愛いとかそういう話をしに来たわけじゃないの。
近所から苦情が出ているから、不妊手術をした方がいいですよ、
その為にお手伝いできますよと伝えに来たんですよ。
私の言っていることわかりますか?」

「わかる、わかる。でもあの子は子供を産まないから大丈夫。」

(あの子とは、駐車場で世話をしている子のことらしいです。)

 

「私は猫大好きだから、自分でも飼って、
駐車場でもお店でもご飯いっぱいあげてる。
お店の猫達は、箱の中で赤ちゃん産んで、
近所の人達が見に来て、子猫可愛いね~って。
でも、子猫は轢かれて死んじゃうから、増えてない。
今までももうたくさんこの道路で死んだの。仕方ない。」

 

仕方ない?

 

 

当たり前のことのように、表情も変えずに淡々と語るおばさん。
私はいたたまれなくなりました。

 

さっきから、「猫好き」を強調しているけど、
この人、本当に猫が好きなんだろうか。

 

 

この店の前は交通量の多い道路です。
少し先の、T字路の信号が黄色になる前に交差点に入ろうと、
この店の前あたりから車がスピードをあげます。

「あの店の前の道路で子猫が轢かれて死んでた。」
と、何人もの方々から聞かされてきました。

 

ここは、子猫が育つ環境ではないんですよ。
生まれてもすぐに轢かれて死んでしまうのだから。
そういう可哀そうな運命の子を産ませたらだめ。
大人の猫達に不妊手術をしましょう?

 

しかし、その女性・Sさんは、手術の話になると、
とにかく話題を変えて、他の猫の話を始めようとします。
最後は、「店主さんに聞いてみて。」と言って、
お仕事に出かけて行きました。

昼はどこか他の場所でお仕事。
夜はこの居酒屋でお仕事。
そんな生活を長い間、続けているそうです。

手術をしないのは、多分経済的な事情も、
関係しているのかもしれません。

 

こちらの電話番号を店主さんに渡しておきましたが、
連絡が来ることはありませんでした。

 

 

 

気になってやきもきしていた時期もありますが、
着手しなくてはならない他の場所や、
SOSを出している他の人々のお手伝いもあり、
常に何件もの案件が同時進行している状況では、
やる気のない人達に関わっている余裕もありません。
無理して介入したとしても、
金銭的な負担は全てこちらになることが目に見えていました、
現場に出向き指導をしてもらえるよう、
保健所の職員さんにお願いして、
私は自分から関わることはやめました。

 

 

 

近所に住む若い女性・ユミさんと知り合ったのは、
2016年秋でしたが、その頃から時々、
ユミさんに質問されていました。
「あの居酒屋のところ、いつも猫がいますよね?」

 

ユミさんは、猫のボランティアというよりは、
自分の通勤途中の道に子猫がいると、
室内に保護して、飼い主さん探しをしていた女性です。

 

子猫を保護するのだったら、
母猫がいないかどうか状況を見て、
その母猫の避妊手術を済ませないと、
また数か月後、同じようなことになる。

 

出会った頃、そのようにユミさんには話しました。
今では、ユミさんの活動もTNRが中心になり、
その過程で必要があれば子猫を保護…という感じに
なってきていると思います。

 

 

 

話は居酒屋に戻ります。

 

2018年になると、居酒屋付近に複数の子猫を見かけるようになり、
ユミさんは、店主、そして店員Sさんと話をして、
子猫の保護とメス猫のTNRを行うことにしました。

それから約1年半の間、私が覚えているだけでも、
ユミさんが保護して里親探しをした子猫達は
10匹を超えるのではないかしら。
2019年夏には、未不妊だったメス猫達の手術も済ませました。

少し離れた場所に住む、ボランティアのNさんは
長い間、市川駅北側でのTNRをメインにしていましたが、
そちらがひと段落したこともあり、
南側の状況にも目を向けて下さるようになりました。
そして、ユミさんと一緒に、居酒屋の猫のTNRに着手しました。

 

 

居酒屋には、2018年3月にM姉妹宅ベランダで捕獲し
去勢手術を済ませたホイップ(オス)、
2018年10月に、居酒屋から少し北にある、
同じ町内のとある企業事務所敷地で捕獲し、
避妊手術を済ませたミーコ(メス)が
定着していましたが、
その他にも数匹の猫達が出入りをしていました。


M姉妹のベランダによく通ってきていたホイップ。


リリース後は、常に居酒屋にいるようになりました。

 


少し離れた場所まで移動して子育てをしていたミーコ。

 

 

 

◆7月25日◆
最初にユミさんが捕獲したのが、
茶トラのきなこです。
きなこは、1年くらい前から、
M姉妹宅に、たまに現れていた猫ですが、
常にやって来るわけではないので、
正体がよくわからないままでした。

 


1年くらい前の画像です。きなこは痩せていました。

 


何度か、M姉妹のベランダに来たことがあります。


あの辺りのどこかにいる猫だとは思いましたが、
きなこのホームがよくわかりませんでした。

 


捕獲器に入ったきなこ。

 


比較的おとなしい子です。

 

術後は、隣町に住むボランティアKさんが預かって下さり、
手術から2日後に、居酒屋にリリースしました。
(感染症の予防として、2週間効く持続性抗生剤を接種していると、
術後数日でリリースできます。)

きなこを捕獲した時期は、助成金の枠がありませんでしたので、
医療費は全て実費となりました。
居酒屋の2名はお金は出しませんから、
ユミさんとねこ藩で半額づつ負担しました。

 

◎きなこ(♀)
茶トラ 推定1-2才 体重2.9㎏
手術日:2019年7月25日
避妊手術9000円 
駆虫1200円
持続性抗生剤3000円
消費税1056円
合計:14526円

 

 

この日、もう1台の捕獲器には、
きなこの子供と思われる三毛の子猫が入りました。
ユミさんはこの三毛子猫を保護して、
里親探しをすることにしました。

三毛の子猫については、
こちらのブログをご覧下さい。
↓ ↓ ↓
2019年9月15日のブログ
こねこWAVE到来:②猫が降ってきました。
https://nekohan.jp/archives/11502

 

 

 

◆8月19日◆
少し間隔が空きましたが、ユミさんが次に捕獲したのは、
サビ猫のサビ子です。
サビ子は、店員Sさんが自宅マンションの駐車場で、
長年餌をやっている猫で、Sさんが
「この子は絶対に子供を産まない」と
言っていた推定8歳の猫です。

 


やっと避妊手術をすることが出来ました。


ユミさん宅のケージで療養。

 

術後は、ユミさんが自宅内に設置したケージで3日間療養しました。
避妊手術は、どうぶつ基金提供の無料不妊手術チケットを使用、
ねこ藩では駆虫代を実費で負担しました。

 

◎サビ子(♀)
サビ 推定8才 体重2.8㎏
手術日:2019年8月19日
避妊手術0円 
駆虫1000円
合計:1000円

 

 

◆8月20日◆
翌日には、Nさんがまだ白茶の女の子を捕獲しました。
この子はまだ1歳未満の若い子でしたが、
お腹の中に赤ちゃんがいた為、可哀そうですが、
堕胎手術となりました。
避妊手術に比べると、堕胎手術は母体への負担が増すので、
Nさんがご自宅で1週間療養させて下さいました。

 


まだ若くて可愛らしい顔立ちのココ。

 

 

後でわかったことですが、ココは、
居酒屋に定着している猫ではなく、
近所の公園近くの別の野良猫製造工場から、
ご飯を食べにやってきた猫かもしれないとのことです。

(公園近くの別の野良猫製造工場については、
後日あらためてブログに書く予定です。)

どうぶつ基金の無料チケットがまだありましたので、
ねこ藩では駆虫代のみ負担しました。

 

◎ココ(♀)
白茶 1歳未満 体重2.8㎏
手術日:2019年8月20日
避妊手術+堕胎0円 
駆虫1000円
合計:1000円

 

 

 

 

これで、居酒屋に出入りする、
未不妊だった猫達の不妊手術は終わりました。
常に置き餌をしている場所ですから、
今後新たな猫の出現があるかもしれませんが、
とりあえず現状は落ち着いています。

 

 

近所の方々が、子猫見たさに、
葦簀の葦簀の内側を除くこともなくなるでしょうし、
子猫が車に轢かれて亡くなることもない。

 

せっかくこの世に生まれたのに、
数か月で車に轢かれる運命ならば、
そんな子猫は最初からいない方がいいのです。
私達人間が手を貸してやらなければ、
それを実現することが出来ません。

餌をやって世話をしているけど、
交通量の多い通りに面しているから
すぐに轢かれて死ぬのは仕方がないとか、
あそこでは毎年子猫が生まれてるけど、
死んじゃって可哀そうだよね~、
なんて口で言っているだけでは、
その不幸の連鎖は決して断ち切れないんです。

 

 

「猫は可愛い。だから餌をやる。」

それは、優しい気持ちが根底にある行為だと思います。

 

 

しかし、餌をやることによって、
付近の野良猫が集まり、メス猫が出産を繰り返し、
たくさんの子猫がぺちゃんこになって死んでいった。
その事実を長年見ていながら、「仕方がない」と、
その状況を変える努力をしなかった。
変えようと思えばいくらでも変えることは出来たはずです。

Sさん、店主は、猫の身を案じて、その命を尊ぶ、
本当の「猫好き」なんかじゃない。
責任なんてものは最初から彼女たちの中にはない。
ただ「猫と接することが好き」なだけなんでしょう。

 

このTNRに関しては、居酒屋の2人はお金を出しませんでした。
その代わり、お店に食事に来たら、
サービスしてあげると言ったそうです。
後日、ユミさんがお店に食事に寄ったら、
サービスでビール1杯が出てきた。
それが店側の「気持ち」らしいです。

 

 

今後、居酒屋付近が、悲しい現場にならないよう祈りつつ、
真夏の暑い時期に、何度も足を運び頑張って下さった、
ユミさんとNさんには心から感謝です。
彼女たちのように行動力のある若い世代のボランティアが、
もっと増えていってほしいと思います。