知人のNさんは我が家にバイクでやって来ます。
Nさんが、路地にバイクを駐車すると、
ニャースがのそのそと出てきます。

 

【*ニャース:我が家の庭に家付きで住んでいる3匹の地域猫の1匹。
この辺りのボス格で、
猫には厳しく、人間にはデレデレの男。】

 

ニャースはNさんのバイクのあちこちに顔を擦り付けて
ひと通りにおい付けをし、人が見える位置に座ります。
しばらく経つと、またすくっと立ち上がり、
Nさんのバイクに二度塗りを始めます。
時には、三度、四度と、重ね塗りをすることもあります。

 

 


我が家の路地の門番ニャース

 

 

 

ある日、そんなニャースを見ながら、Nさんが言いました。

 

「うちの事務所に最近ずっといるウシ君が、
社員のバイクにマーキングしちゃうんですよ。
食品を扱っているから、ちょっと困るんですよね~。」

 

 

Nさんが勤務している事業所に猫が3匹いることは知っていました。
事業所社員の皆さんがご飯をあげて下さっているのです。

 

 

一番の古株はもう事業所に居着いて7年以上になる
サビ猫のぶっちゃん。

2匹目は、1年近く前から事業所にやって来て
ぶっちゃん同様に居着いた、三毛猫のおはぎちゃん。

ぶっちゃんもおはぎちゃんも人慣れした猫です。
ご飯をあげている方々は簡単に抱っこできますし、
私が初めて対面した時にも、嫌がる素振りも見せず、
お触りし放題でした。

 

 


サビ猫のぶっちゃん(左)と白三毛のおはぎちゃん(右)。

 


社員の方々にはこんなにも気を許しています。

 

 

そして、3匹目は、最近現れるようになり、女子2匹同様、
敷地内で過ごしているオス猫のウシ君です。

 

 

 

 


ウシくんとおはぎちゃん。
この3匹のSocial distanceはコロナ騒動以前から。

 

 

 

 

オス猫のマーキングのにおいは去勢手術をすることによって、
薄まる=軽減されると言われています。

 

日本愛玩動物協会に申請できる助成金のことが
頭の中にありましたので、社員の方々とお話をし、
ウシ君の去勢手術をすることになりました。

ウシ君はご飯を食べに寄っては来ますが、
手で捕まえたり、誘導でキャリーに入れられる程、
人慣れしているわけではありませんから、
捕獲器を使っての捕獲になります。

毎日ご飯をあげている社員の方々、
HYさんとKYさんに捕獲器の使い方を説明して、
捕獲はお任せすることにしました。

 

 

予定通り、2月17日の朝イチで、HYさんがウシ君を捕獲。
私はウシ君を預かって、病院に連れて行きました。
大きめのキャンピングキャリーの中に入ったウシ君には、
術後、ひと晩、我が家の玄関で過ごしてもらいました。

 

 


寒くないように布の下には毛布も掛けてあります。

 


そっと入口から除くと、ウシ君はおとなしく耐えていました。

 

 

翌日の午後、ウシ君を事業所に連れて行きました。
キャリーの扉を開けても、ウシ君は中で座ったままです。

 

「ウシ~、大丈夫だよ~。」
「出ておいで。」
「ごはんあげるよ~、ほら。」

 

HYさん、KYさん、Nさん達が軽く、キャリーを叩きながら
ウシ君を促し、やっとウシ君はぴょん!とキャリーを出て、
事業所の裏手の方にとことこと消えて行きました。

 

 

15分程程で終わる去勢手術といっても麻酔科の手術になりますから、
覚醒した後でも、「体の調子がなんか変」と感じていると思います。
それでも、しばらく隠れて休んだ後は、またやって来るものです。

 

しかし、TNR後、いなくなってしまうオス猫も時々います。

リリース後行方不明になってしまう理由はよくわかりませんが、
「あ~とんでもなく嫌な経験をした、二度とあそこに行くもんか」
とでも思っているのかもしれません。

 

「ウシくんはどうだろうか。」

 

 

心配ご無用。
ウシ君は事業所敷地に寝そべって寛いでいると、
翌朝、Nさんから画像付きで連絡がありました。

 

 


だらーん。

 

良かった。安心です。

 

 

 

 

ウシ君は、お世辞にも見た目が可愛い猫というわけではありません。
体も汚れ、柄もごく普通、野良猫の面構えというか何というか。

こんな猫が自分の庭に入ってきたら、どうしますか?

「あ、可愛いオス猫が来た!
「汚れて可哀そう。ご飯でも食べて行けば?」

なんて言うのは、本当に猫好きな人間か、
私達のようなボランティアくらい(笑)じゃない?

 

猫嫌いの方にとっては、汚い野良猫。
しっしと追い払われるか、酷い場合は水をかけられる。
まさにそんな感じの猫ではないかと思います。

 

 

 

 

敷地に現れたそんな薄汚れたオス猫に、
その体の色柄からウシ君と名前をつけて、
毎日ご飯をあげ、可愛がって下さっている社員の方々。
なんと心が広く、慈愛に満ちていることか。

 

ウシ君は、幸運にも自分の居場所を見つけることができました。

 

最近、ウシくんは、HYさん達に
ご飯をねだって鳴くようになったそうです。

 

近い将来、しかも、案外早い時期に、
ウシ君が人間の膝の上に乗るような日が来るのでは?
そんな気がしています。

 

 

To be continued・・・・