2016年の暮れ、SD2にお住まいの方から電話がありました。
近所のマンション駐車場で、毎日夕方4時になると、
野良猫一家にご飯を与えている人がいます。
母猫と子猫2~3匹のようですが、全頭揃ったところを見ていないので、
正確な数はまだわかりません。
駐輪場に遺棄されて放置されたままの自転車が10台くらいあり、
ご飯をあげている人が自転車のカゴに毛布類を入れて、
猫一家のベッドを作ってあげていますが、
そのことをよく思わないマンションの他の住人が、
ベッドをわざと水浸しにして使えないようにしてしまったり、
ご飯をあげている人に「餌やりはやめて」と怒っています。
この寒さの中、子猫達が不憫で仕方がないのですが、
ねこ藩さんではそういった子猫を保護して飼い主さん探しをしていますか?
残念ながら、ねこ藩は保護団体ではありません。
野良猫を少しでも減らしたいと思っている地域住民の集まりです。
個人宅には保護シェルターもありません。
個人で保護なさるのでしたら、通院・里親探し等のお手伝いは出来ます。
また、母猫のTNRも手伝います。
電話の主は顔見知りのSBさんという60代のおばさまです。
SBさんは通りを挟んで向かい側に住むTRさんという同年代のおばさまと一緒に
ご自宅周辺にいる野良猫のTNRを長年行ってきました。
その数は20頭近くになるときいています。
リリース後は協力し合い、トイレも設置してあるご自宅の庭や駐車場で、
毎日午後5時に、やって来る猫達に対面でご飯を食べさせています。
物置きの中に複数の猫ベッドが並んだ猫アパートもあります。
お2人でこの地域に住む飼い主のいない猫達の管理をしているわけです。
SBさんもTRさんもご自分達でTNRを行った猫達全てを把握していますので、
新しい猫にはすぐ気が付きます。
現在は約10頭のTNR後の猫達が来ており、それぞれ名前もつけられています。
未確認の子猫のことはまた後で考えるとして、
母猫は手術しなくてはなりません。
出来るお手伝いはしてさしあげなくては…と思い、
SBさんと毎日連絡を取り合うようになりました。
問題のマンションはSBさん宅から歩いて1分とかからない場所です。
SBさんは、ご飯をあげているマンションの住人にTNRを持ちかけてみましたが、
「私はそこまでやる気はない」と一蹴されてしまったそうです。
ご飯をあげている方は地元の飲み屋のママさんで、TRさんはその店の常連さんです。
ママさんと長年の知り合いであるTRさんは、ママさんの気分を害したくないので、
これ以上不妊手術の話題を持ちだしたくないと言っています。
「じゃあ、餌やりさんの協力は難しそうだから、
母猫の手術は費用も含め、私がやりましょう。
リリース後はママさんが引き続きご飯をやるでしょうから。」
と、SBさんはおっしゃいましたが、
近所にお住まいの動物愛護推進員KGさんが、
助成金を利用することを進め、手続きをして下さることになりました。
SBさんと一緒に現場の駐車場と周辺を何度か見てまわりましたが、
ご飯の時間に伺うことがなかなか出来す、猫一家の確認に時間がかかりました。
年が明け、TRさんの庭に新しい猫が来るようになりました。
これまでの目撃情報から、どうやらその新しい猫が、
マンション駐車場でご飯をもらっている母猫らしいのです。
推進委員・KGさんがSBさん宅に捕獲器とケージを届け、
SBさんとTRさんは毎日その猫にきちんとご飯を与え捕獲準備に入りました。
ティーちゃんという名前になったその猫は、きちんとご版を食べに来ました。
頭を左右に傾けながら一生懸命にご飯を食べています。
1月9日の夕方、SBさんから「捕獲できました」と連絡がありました。
寒くないように我が家の玄関でひと晩待機してもらい、
翌10日に不妊手術をお願いして病院に預けてきました。
ところが、ティーちゃんはターゲットの母猫ではなかったことが判明。
推定年齢5~8才、既に避妊済の猫だったのです。
耳カットが無い子でしたから、そんなことは事前にわからず、
不要な開腹手術となってしまいました。
麻酔が効いている間に、先生がティーちゃんの口内チェックをして下さいました。
残っている歯が2本しかなく、どちらも歯根がやられていてグラグラ。
「これじゃ食べる時辛かったと思うよ。後日、残りも取った方がいい。」
先生が抜歯手術をすすめて下さいました。
ティーちゃんが頭を頻繁に傾けて餌を食べていたのはこれが理由か…。
明るい色のムギワラ・ティーちゃん
SBさん宅の駐車場にある大きな物置の中にティーちゃん用療養ケージを設置しました。
マイヤー毛布と防寒シートで覆われたケージの中にはトイレとご飯。
耳カットだけを済ませたティーちゃんは、退院後、 SBさんのお世話のもと、
1週間ケージ内で静かにぬくぬくと過ごしました。
まめにお世話をするSBさん。
日中太陽が出ている時は一定時間物置の扉を開け、外気を入れてあげます。
空気穴を確保しつつ毛布をぴったり被せ物置の扉を閉めて寒さを防ぎます。
キャリーごとケージINし、それがティーちゃんの個室になります。
トイレとご飯の時はのそっとキャリーから出てきます。
◆1月10日◆
ティーちゃん・ムギワラ・♀
体重:3.3㎏
推定年齢:5-8才
医療費内訳:
全身麻酔&開腹手術5500円
口内用薬メタカム注射500円
抗生剤バイトリル注射
抗生剤アモスタック注射1000円
合計7000円
*医療費は助成金適用
退院する時に入ってもらったキャリーごと(扉を開けて)、
ティーちゃんをケージに入れたわけですが、
ティーちゃんはキャリーを自分の個室にしていました。
このままなら、キャリーのフタを閉めれば、
ティーちゃんを再び病院に連れて行くことが出来る・・・。
SBさんと話し合い、リリースは先延ばしにして、
抜歯手術をお願いすることにしました。
前日にねこ藩H宅の庭で捕獲したマルオの去勢手術と合わせ、
1月18日の午前中、ティーちゃんを再度病院に連れて行き、
麻酔下で、全抜歯をお願いしました。
その後さらに1週間、SBさんがきちんとケージで世話をして、
捕獲から2週間後、 ティーちゃんをリリースしました。
ハルコさんから寄贈していただいた
キャリーが活躍中
療養中の1週間よく食べて
体重が少し増えました。
また、病院に連れて来られた…
開腹時のキズは塞がって問題ナシ。
残っている歯を抜いてもらいます。
手前に白い腫瘍のようなものも出来ています。
◆1月18日◆
医療費内訳
鎮静剤&抜歯手術5000円
検便&プロフェンダー1500円
三種混合ワクチン2500円
合計9000円
*医療費はSBさんとねこ藩で折半
どこかの誰かが避妊手術をした猫ティーちゃん。
耳カットが入っていないということは、どうことでしょうか。
単に耳カットを入れ忘れた?
不妊手術と耳カットがセットになっていない頃に手術された?
もしかして飼い猫だった?
理由は全くわかりませんが、ティーちゃんが食事の度に辛い思いをしていたことは事実です。
抜歯したことにより、ティーちゃんのQOLは改善していくでしょう。
ティーちゃんはリリース後TRさんのお庭に戻って来て、今もご飯を貰っています。
SBさん宅駐車場内にある猫アパートに入る日がくるかもしれませんね。
さて、問題はマンション駐車場でご飯を貰っている猫一家。
ティーちゃんは母猫ではなかったのですから、振り出しに戻りました。
その後のSBさんの観察でわかったこと。
〇母猫はパステル三毛っぽい。
〇子猫は3匹いるが、だいぶ大きい。
(その後、私自身も確認しました。)
現在、SBさんは捕獲器を1台手元に置き、捕獲のタイミングを計らっています。
子猫は生後4-5カ月は過ぎているサイズ、人慣れしていません。
このまま餌やりさんには餌やり続行で引き留めておいてもらい。
母猫TNRの後、順次TNRをする…ということになりました。
猫のTNRはこの地域でもあちこちで行われています。
TNRにより地域の野良猫は減っていく… そう信じて頑張る方も増えてきました。
ただ、その成果がきちんと目に見えて現れるのは、
常にウォッチングを続け、現在いる猫の管理をする人間がいる場所、
SBさん、TRさん、そして菅野さんのような方々のいる場所です。
そういう方々が2-3ブロックに1名いることが理想ですが、 現実はそう甘くはありません。
あの方がひとりで頑張っているのだから、何か手伝いをしようと
近隣住民の方が動いて下さる場合もありますが、
だいたいは、管理をする方がいるとわかると、その人がやるからいいや、
みたいな状況が出来上がり、他の住民は更に見ているだけ… となる傾向。
年に1度の交代制、自治会当番の役目は、
〇回覧板を回すこと
〇様々な団体への寄附金徴収
ですが、そこに「野良猫問題解決会議への参加」が加われば、
とりあえず人の意識に何らかの働きかけ効果はあるような気がします。
でも、 自治会が野良猫問題を無視続けている町ではあり得ないね。
母猫捕獲予定は2月19日以降になるそうです。
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ねこ藩のお手伝い ◆ティーちゃん◆
<1月9日>
ティーちゃん引き取り
出動時間20分 移動距離2km
<1月10日>
午前中 ティーちゃん入院
出動時間1時間30分 移動距離26km
午後 ティーちゃん退院
出動時間1時間30分 移動距離26km
<1月18日>
午前中 ティーちゃん抜歯他通院
出動時間2時間0分 移動距離26km
●まとめ●
医療費4500円
出動時間合計:5時間20分
移動距離合計:80km