前回のお話
2019年4月7日のブログ
そうこちゃんの世界:②餌やりばあさん
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10月24日、金曜日午前。
捕獲実行の日。
捕獲器を最低でも2台揃えておきたかったのですが、
保健所に申し込んでいた分が間に合わなかった為、
とりあえず1台で頑張るしかありません。
捕獲器1台、布、その他小道具持参で倉庫に出向くと、
そうこちゃん一家は既に起きて、倉庫敷地の
コンクリートの上でくつろいでいました。
南京錠を外し、鉄の重い門を開けました。
出来るだけそうっと・・・って、難しい。
ガラ・・・ギギ・・・、金属の軋む音。
一家は、なんだ、なんだと、倉庫の端に移動し、
こちらの動きを警戒してじーっと見ています。
敷地の真ん中あたりに、捕獲器をセットし
門の外に出て、そうっと中の様子を伺います。
捕獲器の中に入れた銀のスプーンのにおいにつられ、
子猫たちが、そして、少し遅れてそうこちゃんも近づいて来ました。
ところが、何を思ったのか、
そうこちゃんと白キジ子猫は、
敷地内に置かれた古いバリケードや、
積み上げられたコンクリート片を踏み台にして
するすると塀の上に登ると、私からは見えない、
倉庫裏手の資材置き場の方に移動してしまいました。
私は捕獲器を持って、裏側の駐車場に急ぎ、
駐車してある車の陰にその捕獲器をおいてみました。
10分程、時間をつぶして現場に戻ると、
そうこちゃんと白キジ子猫♂が一緒に
捕獲器に入っていました。
ボランティア・三木さんの指示通り、
親子を捕獲器ごと、近くのA病院に運びました。
「捕獲器、お貸し出来ます」と
タイミングよく保健所から連絡が入りましたので、
病院から保健所に直行し、捕獲器をゲット。
まだ2匹のキジトラ子猫が残されている倉庫に戻って、
その日2台目の捕獲器をしかけました。
1匹の子猫♀がすぐに捕獲器に入りました。
不安そうにきょろきょろしています。
私は急いで捕獲器を家に運び、
威嚇されながら、噛まれながら、血を流しながら
子猫を捕獲器から金属ケージに移しかえました。
「そうだよね、怖いよね、ごめんね。」
まだキジトラ子猫♂1匹が残っています。
母猫、きょうだいが、次々と捕獲器で捕獲され、
敷地から消えていったのを、側で見ていたあの子は、
きっと恐怖心ですくんでしまっているだろう。
とこかに身を隠してじっとしているかもしれない。
捕まえられるだろうか。
いなくなってしまったら、どうしよう・・・。
空になった捕獲器を持って、倉庫に走って行くと、
敷地の隅の方で、小さくなって坐っています。
心細いのでしょう。
子猫から少し離れた場所に捕獲器を置き、
門の外に出て、時間をつぶそうと歩きだしたところ、
ガシャンと捕獲器の扉が閉まる音がしました。
捕獲器の端っこの方に寄って、うずくまり
こちらを見ています。
昨晩から何も食べていなかった、この小さな子。
恐怖心よりも空腹が勝ってしまったのです。
「もう大丈夫だよ。少し我慢しようね。」
金属ケージに入ったキジトラ子猫♀。
最後に捕獲器に入ったキジトラ子猫♂。
柵の隙間から、細かく裂いたササミを入れてから、
それぞれの箱をバスタオルで包みました。
むしゃむしゃと、ササミを食べる音が聞こえます。
(捕獲器に入った猫は、外が見えていると何とか逃れようとして暴れます。
その際に柵に爪を引っかけたり、顔を強く押し付けたりして、怪我をしてしまうこともあります。
箱をピタリと覆って何も見えない状態にしてしまうと、猫はおとなしくなり、
坐ってじっとしていますので、捕獲直後はすぐにこのようにして箱全体を覆うのです。)
そうこちゃんはこのまま避妊手術になりますので入院。
そうこちゃんと一緒に捕獲器に入った白キジ子猫♂・ポポちゃんが
キャリーに入れ替えられてA病院から戻ってきましたので、
1匹を預かって下さる理容師のKさん宅に、ポポちゃんを届けました。
ひとりの不安より、ぬくもりを恋しがるポポちゃん
その後、キジトラ子猫2匹をE病院に連れて行きました。
鎮静剤を打った上で、駆虫、ワクチン等、
現段階で出来る医療行為を済ませ、
ボランティア・IMさんのお宅に届けました。
まだ鎮静剤が効いています。
近所の森本さんがこの2匹を預かって下さる予定でしたが、
まだ準備が整っていなかった為、
IMさんが数日預かって下さることになったのです。
私はこの凛々しいキジトラ子猫2匹に
戦国武将にあやかった名前をつけました。
男の子はナリ君で、毛利元就から。
女の子はチカちゃんで、長曽我部元親から。
鎮静から覚めたナリ・チカは、警戒して
IMさんが用意して下さった箱の中に籠城中。
一方、Kさん宅のポポちゃんは、
お届け直後からスリスリと甘えん坊ぶりを発揮。
「もしよければ、ポポちゃんは
このままうちで飼おうと思うんだけど。」
と予想もしていなかった嬉しい連絡をいただき、
ポポちゃんはKさん宅の4匹目の飼い猫になりました。
ポポちゃんを移動してから3日後、Kさんと一緒にH病院に行き、
ぽぽちゃんの検便、駆虫、ワクチンを済ませました。
保護の翌日に飼い猫となったポポちゃん
そうこちゃん一家の捕獲は終わりましたが、
その頃、道を挟んだ餌やりおばあさん宅の敷地内にも
母猫と子猫4匹がいることがわかりました。
裏のアパートの住人、海老沢は、
子猫が生まれると「俺の猫」と言って可愛がり、
大きくなると野放しにしてしまう男です。
お金がないということも理由ですが、
子猫が好きなので、メス猫の不妊手術を渋ります。
この時も、「俺の猫だぞ!」とわめいていましたが、
「あんたみたいな無責任な人に任せておけません!」と
三木さんはすごい剣幕で怒鳴り返し、
海老沢の部屋から子猫4匹を連れ出して保護しました。
(保護したこの子猫4匹の処遇が、1ヵ月後、問題になるのですが・・・)
最初は、そうこちゃんの子猫達を連れて行くなと怒り、
懐柔の余地がないように見えたおばあさんでしたが、
途中から、気持ちに変化があったようです。
「誰か大事に飼ってくれるんならその方がいい。
でも、母猫だけはここにちゃんと戻してちょうだいよ。」
ナリとチカは、結局、そのまま、
ボランティアのIMさんが預かって下さることになりました。
森本さんの預かり状況に少々不安があったからです。
もともと、私がケージを新しく購入して
森本さんに提供するつもりでしたが、
森本さんはすこーしだけ頑固な部分と彼女なりの拘りがあり、
子猫の為のケージは、自分で工夫したいとおっしゃったので、
お任せしておいたのです。
森本さんが用意していたものは、ペットケージではなくて、
木製の細長い箱の上に、エレクタ―の棚板を載せたもの。
金属性の重い棚板は箱のサイズギリギリで、
フタが少しずれてしまうと、箱の内部に斜めに落ちてしまいます。
これでは、子猫たちが怪我をしてしまう危険性がありました。
指摘すると、森本さんは初めて気がついたようでした。
「あら、じゃ、フタをかぶせないでおくわ」
(-_-;)
それケージじゃない・・・
しかも箱小さい、トイレ置けない・・・
また、その箱は玄関のすぐ内側に置いてありました。
玄関には脱走防止の柵もストッパーもありません。
扉が開いたら、すぐに外です。
ナリとチカはもう赤ちゃんではありませんから、
苦労することなく、簡単に箱から飛び出してしまいます。
加えて、出かける用事が続き、まだ子猫を預かれない、
何日か留守をすることになったから等々、
移動日ががなかなか決められず・・・な状況でしたので、
IMさんが、もう、このまま我が家にいていいよ、
と言って下さったのでした。
ナリとチカは、最初は怖がっていましたが、
IMさん宅の保護部屋生活で、徐々に
人に対する警戒心は薄れていきました。
初めて猫を飼うことになる新婚のご夫婦が、
ネットの里親募集をご覧になり、
チカちゃんに会いに来て下さいました。
1匹だけを飼うことを考えていたご夫婦に、
IMさんは、子猫は2匹がいいです!とお薦めし、
ご夫婦も考えた末に、「それでは・・・」と
ナリくん・チカちゃんを2匹一緒に迎えて下さいました。
保護からちょうど1ヵ月。
キジトラ子猫の可愛いさ満開!のナリとチカは
我が家から車で20分のところにお住まいの、
優しいご夫婦のちっちゃな家族となりました。
フォトジェニックなナリとチカ。
2匹の画像は、ねこ藩グッズのトートバッグ、
ポストカード、缶バッジに使わせていただきました。
さて、母猫のそうこちゃん。
避妊手術が済み、病院での数日間の療養後、
ホームである倉庫敷地にリリースしました。
そうこちゃんが子育てをしていた場所。
一家が寄り添って暮らしていた倉庫敷地。
違う世界へ巣立っていった子供達の姿はもうありません。
そうこちゃんはひとりになりました。
To be continued・・・