2013年夏、路地に現れ、隣家でご飯をもらっていた、
小柄で若いキジ子という可愛い猫。
私は当時ボランティアでも猫飼いでもなく、ごく普通の住民でしたが、
メス猫は子供を産む→猫が増える、という考えは当然ありました。
隣家に習って、私も玄関先でご飯をあげるようになりました。
慣らして捕まえて避妊手術をしようとしたのです。
1か月くらい経った頃、私はキジ子を玄関から誘導し、
廊下の一番奥にあるお客さん用のトイレに閉じ込めました。
そこで捕まえようと思ったのですが、
普段おとなしかったキジ子が怪獣のように暴れ、
これは素手では無理と判断して、外に開放しました。
人慣れしていない猫を素手で捕まえるのは至難の業、
というか無理ですと、今では当たり前のように、
相談者に説明し、捕獲器の使用をすすめていますが、
当時の私は、そんなことさえわからなかった。
素手での確保に失敗し、避妊手術する計画は仕切り直し。
結局、キジ子は7月末に3匹の子猫を出産してしまいました。
ご飯をあげていた隣家は、キジ子を可愛がっていましたが、
不妊手術のことは全く考えていないようでしたので、
こちらが何とかしないとヤバイ・・・という危機感を私は持ちました。
インターネットで調べまくり、捕獲器を使った捕獲が一般的だと知りました。
通販で捕獲器を購入しようと調べたら、1台10000円以上はします。
キジ子1匹の為に10000円も出して、1度しか使わないだろう捕獲器を買うの?
しかも、餌やりさんの隣家ではなく、私がお金を出すの?
私は躊躇して悩んでしまいました。
また、捕獲出来たとして、どこで手術をしてもらえるんだろう。
我が家から近い何軒かの動物病院に電話をして訊ねてみると、
どこの病院からも、
「野良猫の避妊手術は出来ますよ、予約して下さい。いつですか。」
わかんないよ!
だいたい、捕まえられるかどうかもわからないのに、
予約なんか入れられない。
半ば諦めの気持ちでインターネットであれこれ検索していたら、
ひとつ、「おや?」というものが出てきました。
都内にある大きな団体さんです。
捕獲器を貸し出している上、その団体さんが運営している病院で
野良猫の不妊手術を受け付けているというのです。
メールで簡単に相談すると、代表の方から、
「どういった状況か詳しく教えて下さい」と電話がかかってきました。
私があれこれ説明すると、
「は?あなた何にも知らないのね。」と、
まるで呆れているような代表者の口ぶり。
一瞬、カチンときたりもしましたが、
それでも、私はこの人の力を借りなくてはならないのです。
捕獲器はすぐに送られてきました。
捕獲~手術~リリースまでの流れを再確認し、
私は捕獲器を持って隣家を訪れました。
「わかった。ご飯をあげている時にはこの子触れるから、
私が誘導して捕獲器に入れてみるね。」
とTさんは言って下さいました。
翌日にキジ子は捕獲器に入り、私は代表者に連絡をして、
Tさんの運転でキジ子を都内の団体事務所に運びました。
2日後、今度は家人の運転でキジ子を迎えに行ったのですが、
私は入れ替えのキャリーさえ持っていないという始末。
代表の方が、事務所にあった古いキャリーにキジ子を入れて下さいました。
「お忙しい毎日でしょうに、こんな無知な人間にまで、
ご親切に対応して下さり、ありがとうございます。
色々とご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
お礼を述べると、代表者の方は言いました。
「誰にでも初めてはあることだから、気にしないで。
ボランティアでもないのに、よくTNRしようと思いついてくれましたね。
ドキドキしたんじゃない? これからはこの子を見守ってあげてね。
アドバイスが必要なら、相談に乗りますから、連絡してね。」
この代表者は、話し方や態度などから、
厳しい人間だと思われるんだろうなと感じていましたが、
その時の私には、とても頼もしく優しい人に思えました。
私にもそんな過去がありました、
という失敗談です。
2017年7月 凪ちゃん
2017年11月 ミルキー
2017年11月 黒みつ
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飼い主のいない猫を捕獲し手術をする場合、
捕獲器を使うのが、最も手っ取り早い。
しかし、私のように、1匹だけの捕獲のために
捕獲器の購入を躊躇う方々もいるでしょう。
買わずに済む方法はないかな。
どなたか貸して下さらないだろうか。
使い方を教えて下さらないだろうか。
自分の経験があったからこそ、
私はねこ藩を立ち上げた時に、
捕獲器や、入れ替えのケージ等、備品の貸し出しを、
活動内容に入れた方がいいと考えたのです。
しかし、誰にでもお貸ししているわけではありません。
依頼者に実際にお会いし、住所を確認し、
状況をこの目で見て、判断します。
捕獲器は悪用される場合もないとは限りませんから。
ねこ藩には捕獲器が3台ありますが、
全て貸し出しの状態になることもあります。
こちらで早急に捕獲器が必要な時に、
手元に1台もないのは不便ですから、
保健所でも捕獲器を借りられるということを
ホームページに記載してありました。
ところが、先日、ねこ藩HPに記載のある
「市川保健所でも捕獲器を貸し出している」という文言を
削除していただきたいと、保健所から連絡がありました。
理由:
「保健所が捕獲器を市民の方々に貸し出していることを
広めないでいただきたい」。
「飼い主のいない猫」のTNRに必要だからこそ、
貸し出しているのではないんですか?
捕獲器を借りたいと思っている市民の方々はいると思いますよ。
保健所で捕獲器を借りられることを知らない方々もいますよ。
なぜ、お知らせしてはいけないの?
答え:
「地域猫活動の一環として捕獲器を貸し出しているので。
それに、悪用される可能性もあるので。」
どうなんでしょうねえ。
地域猫団体登録していなくても、
ボランティアでなくても、
市内に生息する飼い主のいない猫を
TNRしようという個人がいたら、
積極的に貸し出したらいいと思うのですが。
悪用されたら困る?
ならば、少しでも疑わしい点や、
状況の透明性に欠けると思われたら、
貸出しの際に、職員の方が現地を訪れ、
確認したらいかがでしょう。
野良猫に関する苦情があったりすると、
わざわざ職員の方は指導に出かけて下さるのですから、
足を運ぶ手間には変わりないでしょう。
ま、保健所の方にもお考えがあるのでしょうから、
とりあえず、削除しておきましたが。
私は保健所に対して怒っているわけではありませんよ。
この地域の住民から、「あそこの家で・・・」
みたいなチクリ情報があると、
私がのこのこ出かけて行って「あんた誰?」みたいになるよりも、
まず保健所の職員の方に指導に行っていただいた方が
効果があるように思います。
これまでに何度もお願いをしましたし、
実際、職員の方々も指導に出かけて下さいましたから。
ただ、市が秘密にしているわけでもない情報を
個人のホームページに載せないで下さいという、
その理由が私には、ちょっと「?」です。
ねこ藩のホームページに載せたくらいで、
そんなに広まるわけはないんですよ。
ホームページやブログを見て下さる人なんて、
限られているんですから。