2019年3月22日のブログ
産んでもらいます!(3)里親探しをする。

 

 

早速、里親募集を開始したサラ・トワ・フク。
応募条件に見合っていないと思われる方々からの問い合わせが何件か続く中、
県内にお住まいの女性Nさんから、トワに申し込みをいただきました。

 

前回のブログで書いたように、
里親募集から譲渡までには一連の流れがあります。

 

Nさんの件に関しては、お申し込み~譲渡までの間に色々とありました。
山あり谷ありというと、ちょっと大袈裟。
多少の高低差がある山々を縦走し、その結果・・・、という表現が近いかな。

 

 

◆なぜそんなことを聞くの?◆

里親希望者さまに記入していただく質問書を送付した時点で、Nさんよりご辞退の連絡がありました。
質問書の中の家族構成と住居形態に関する質問に対して、不快感を持たれたようでした。

猫を家族の一員として、最後まで責任持って飼って下さること。
猫が健康でストレスの少ない幸せな毎日を送れること。
これが一番大切なことです。

それを実現する為には、脱走や家庭内での不慮の事故
にも気をつける必要があります。

譲渡側の個人的な興味で質問するものでありません。
一人暮らしなのか、同居のご家族がいるのか。
高齢者や小さいお子様がいれば、
玄関の開け閉めに気をつけなくてはなりません。
一軒家にお住まいなのか、集合住宅なのか。
両者には、出入り口や窓の数とタイプに違いがありますから、
講じる脱走対策もそれぞれ違ってくることがあります。
そのような飼育環境をある程度把握しておいた方が
こちらもアドバイスはし易いし、ご相談にも応じられます、

また、参考までに、飼い主さんご自身の
性格についての質問も設けています。

以前、潔癖症でやや神経質な女性から、
子猫の里親希望の申し込みがありました。

犬は絶対にいや、臭いから。猫はどうか?
短毛の猫でも毛が抜けるのか。
また、換毛期にはどのくらいの毛が抜けるのか。
家具や壁に傷をつけられないようにしたい。
クッションや服などの布モノに爪跡をつけられたくない。
カーペットに粗相や嘔吐されたくない。

お話を伺っているううちに、
この方は猫の飼育に向かないという印象を持ち、
こちらからお断りしたことがありました。
こういった過去の経験がありましたので、
飼い主さんの性格について
伺っておくこともアリかな?と思い追加した質問です。

Nさんに対しては、

質問をする理由を説明をした上で、
こういった質問書自体を不快と感じるのであれば、
愛護団体や、センターや、ボランティアからではなく、
「庭で子猫が生まれたので誰かもらって下さい」みたいに、
個人で子猫の貰い手を探している方から
譲り受けてみてはいかがですか? とお勧めしたところ、
質問書の目的を十分理解・納得されたとのことで、
ご辞退を撤回し、誠実に質問書に回答して下さいました。

 

 

 

◆その猫は里親募集してません◆

希望者Nさんはお母様と一緒に、
ANさん宅にお見合いにいらっしゃいました。
礼儀正しく、静かで真面目そうな感じの方です。

トワのお見合いにいらして下さったはずなのですが、
申し込んで下さったトワや、里親募集中のフクではなく、
ANさんのお姉さまご一家に貰われることになっている
ブブ太を膝に乗せて遊び、写真を撮ったりしていました。
私同様、保護主のANさんもそのことに気付いていました。

翌日、Nさんからご辞退の連絡がきました。
Nさんは既に貰われていくことが決まっている、
ブブ太がどうしても気に入ってしまい、
お母様は、飼うならば成猫のサラを、と意見が分かれたそうです。
長い年月を一緒に過ごしていく飼い猫のことで、
ふたりの好みが分かれてしまい、どちらかを選べない、
かと言って、2匹を飼うことはできない。
というのがお断りの理由でした。
(ブブ太はもともと選択肢に入れていただきたくなかったのですが・・・)。

それはそれで仕方のないことです。
見かけは違っても、子猫はだいたい同じようなもの。
一週間も一緒に過ごせば、情が沸くものです。
ブブ太に似ていても、似ていなくても、
Nさんとのご縁を待っている子猫はきっとどこかにいます。
早くご縁が繋がるといいですね。
この度はありがとうございました。

と返信した数日後、想定外のメールが届きました。

「母と色々考えました。フクちゃんを迎えたいと思います。」

 

◆猫にとっても人にとっても試練◆

トライアル開始の為、ANさんと一緒にフクをNさん宅にお届けしました。
猫の飼育が全く初めてだというNさん親子は、
こちらのアドバイスをよく受け入れて下さり、
2段ケージ、トイレ、ベッド、おもちゃ、フードと、
全て新品を購入し、お迎えの準備を済ませてして下さっていましたし、

 

生後2ヶ月になろうかという年齢の子猫は、本当ならば、
きょうだいか、同じ年頃の遊び相手がいると寂しくないのですが、
Nさんはご自宅でお仕事をされており、毎日家にいらっしゃいます。
お母様は外でのお仕事ですが、毎日ではありません。
お留守番があっても、せいぜい3-4時間。
真面目なNさんですから、常にフクの様子を見て、
相手になって下さるだろうと思っていましたし、
実際にそうして下さっていました。

 

ところが、家族から離れて初めてひとりになり、
しかも全く知らない新しい環境に移動したことで、
フクが多大なストレスを感じてしまいました。
お届けの晩から、嘔吐と水っぽい軟便。
ケージに入れられ大騒ぎをして、中で暴れ。
水をひっくり返してはNさんが片付け、
またひっくり返して・・・の繰り返し。
食べない、飲まない、鳴き止まない。

猫初心者にとって、きついスタートとなりました。
Nさんがフクを近くの獣医さんに連れて行くと、
「かなりのストレス」と診断されたそうです。
それからの数日間、Nさんは実にまめに病院に通って下さいましたが、
「このような状態が続くようでは、フクちゃんの為にも、
フクちゃんをお返しした方がいいような気がします」
というメールが来ました。

こちらとしても、フク、そして、Nさんのことを考えれば、
これ以上はキツイかもしれないと、感じていましたので、
翌週、フクを迎えにいくまで待って欲しいと伝えました。

ところが、その間、フクがだんだん落ち着いてきたらしく、
またNさん親子にもよく懐いて、可愛くなってきたのでしょう。
トライアルを1週間延長して、もう少しだけ
様子を見させてほしいということでした。

Nさんは猫を飼うのが初めてですから、まだまだ不安でいっぱい。
フクも完全に落ち着くまでにはもう少し時間が必要かもしれません。
そこで、トライアルを延長することにしました。

ただし、飼い主さん本人の気持ちがきちんと固まるまで、
もう1週、もう1週とトライアルを延ばしていると、
小さな子猫はあっという間に成長していってしまいます。
そのまま「もう大丈夫」となればいいのですが、
「結局、ダメだったからお返しする」という結果になった場合、
戻ってきた子猫はもう生後2ヶ月のチビではないのです。
そして、子猫は成長するに従い、里親希望者が減ってくるものです。

Nさんの頭の中にも、もしかしたら、
そういった考えたがあったのかもしれません。
それから1週間も経たないうちに、
「あとは、こちらの覚悟の話だと思いますので、
トライアルを終了し、正式譲渡をお願いします」
とおっしゃって下さいました。

不安→クリア→また不安→クリア・・・
何とか、Nさんが持ちこたえて下さった。
こちらの不安も杞憂だったのかもしれない。
あれだけ可愛いフクだもの、もう手放せないでしょう。
これでめでたしめでたしと、なるはずでした。

 

◆やはりそれでは終わらなかった◆

Nさんの方から正式に譲渡をお願いしますと
要請があったにも関わらず、その2週間後、
「こちらから譲渡をお願いしておきながら、
勝手で申し訳ないのですが、
今回の譲渡をキャンセルしていただけませんか」
とビックリなメールが届きました。

 

●猫アレルギーではないけれど、
フクがいる部屋に入るとくしゃみが出るようになってしまった。
ひどい花粉症持ちなので、その時期がきたら二重苦になるのではと不安。
●フクをケージに入れると夜鳴きをする、
その為、母が睡眠不足になって体調を崩してしまう。

よって、我が家では猫を飼うのは無理だとわかった。
それが、譲渡キャンセルの理由でした。

「了解です。すぐにフクを連れて来て下さい。」
とお願いしました。
お母様の体調が優れないのであれば、
フクがこれ以上そばにいるのは好ましくないからです。
Nさんが仕事の為、すぐには無理ということで、
ANさんが翌々日迎えに行き、フクを連れ帰ってきました。

 

このような書き方では、Nさんが悪者のように見えてしまうかもしれませんね。
でも、全然そうではありません。Nさんはよく頑張って下さいました。

猫を飼いたい、飼うのならば買うのではなく保護猫をと思って下さった。
猫についてはまだわからないことばかり。
だから些細なことでもメールで報告・質問して下さった。
そして、ストレスで手に負えない状態のフクを
慣れない不安と戦いながら、辛抱強く世話をして下さった。
しかし、Nさんにとってはもう限界だったのだと思います。

フクのお届けに伺った時、可愛い生地で作られた、
クッションやキッカーがケージの中に置いてありました。
Nさんのハンドメイドだそうです。
フクがやって来るのをお母様と一緒に
首を長くして待っていて下さったんです。
これから、猫と一緒の楽しい毎日が始まると。

でも、現実は違った。

Nさんがおっしゃっていた譲渡キャンセルの2つの理由は、
実際に、猫と暮らしてみなければわからなかったことです。
憧れていた猫との暮らしは自分達には無理。
Nさん親子がそう気付く為には、猫との時間が必要だった。
そして、その役目を担ったのが、フクだったということです。

下の画像をご覧下さい。

 

 

全てNさんが撮影した画像です。
撮影する時、Nさんは「うふふ」と微笑んでいたかも。
愛情を持って、フクに接して下さっていたことが伝わってきます。

フクが可愛くて可愛くて・・・・。
でもその、フクを思う気持ちよりも、
これからの不安の方が勝ってしまった。
それだけのことです。

フクを迎えに入った時、Nさんは、
フクの為に新しく購入した猫用品を全て
ANさんに譲って下さいました。
猫を飼うことを諦めたのだとわかりました。

 

あれだけ、大変な思いをしてフクの世話をして下さったNさんです。
生き物のお世話を一生懸命出来る方だと思います。
体質的に猫との暮らしは無理だとわかった今、
ぜひご自身とお母様の生活に合う種類のペットを選び、
生き物との幸せな暮らしを経験していただきたいと
心から思っています。

 

To be continued・・・