前回のお話
4月2日のブログ
ごまちゃんのおはなし③:「退化か進化か。」
https://nekohan.jp/archives/17690
もう10年以上も前の話になります。
「ペットショップに犬を見に行き、運命的な出会いをした」
と血統種である飼い犬の話を知人がしていました。
店頭で気に入ったカバンを見つけて購入するように、
ペットショップで気に入った犬を見つけて買っただけのこと。
そう思いましたが、それを口にして
わざわざ場の雰囲気を悪くするのも大人気ないので、
私は、「へえ、そうなの。」と返すにとどめました。
ペットショップに運命的な出会いなどない、
運命的な出会いと思わせるような見せ方、売り方をしているだけと
私は考えています。
隠れる場所もないガラス張りのショーケースの中に、
ずらりと並べられた可愛い盛りの子犬や子猫は人目を惹きます。
ずっと寝ている子や一人遊びを延々と続けている子もいますが、
人間がガラス越にじっと見つめたり、手をかざしたりすれば、
小さい子達は何らかのリアクションを示します。
「この子。私の呼びかけに反応した。」
「私のことをずっと見てる。」
と思い、それを運命と感じてしまう。
あるいは、
「こんなに狭いケースに入れられて可哀想。」
という思いから、私が救い出してあげなくてはという
正義感にかられる。
ペットショップの売り方は、トラップのようなもの。
一目見ただけで運命を感じるなんてこと、私はあまり信じていません。
出会いの時は運命だなんて考えたこともなかったけれど、
一緒に過ごす時間や経験の積み重ねによって、
ペットと飼い主の間には絆が生まれ、信頼関係が築かれていきます。
「あたなはもしかしたらうちに来る運命だったのかしらね?」と
だいぶ時間が経過してからつくづく思う。
そんなものではないでしょうか。
それがどんな始まり方であろうとも。
インターネットで里親募集をすると、
色々な考えの方からお申込みをいただきます。
「画像を拝見して、絶対にこの子!と決めました」(勝手に・笑)
とおっしゃっる里親希望者の方が時々いらっしゃいます。
これから10数年、あるいは20年以上も一緒に暮らして行くことになる猫。
画像を見ただけで、「絶対にこの子」ってどういうことなんだろうか。
この子の何を知っているというの?
会ったこともないのに、日々の暮らしぶりを見たこともないのに?
「絶対にこの子」という言い方。私は信用できない。
「画像を拝見して、何となく気になって・・・。一度会ってみたい。」
↑ ↑ ↑
そうそう、私的にはそれが正解。
お見合いに来ていただき、保護状況下での暮らしぶりや
これまでに分かった行動、性格などをお伝えする。
そして、画像を見て気になったというその猫が、
実際に会ってみた後でも、気になる存在であり続けるのかどうか。
その過程で、「この子を飼い猫として迎え入れたい」
と思って下さるのでしたら、こちらは大喜びでその子を託します。
「絶対にこの子」と言ってくれる里親さんでなければ、私は猫を譲らない。
というボランティアさんもたくさんいらっしゃいますから、
私の考え方は真逆なのかもしれません。
以前ブログのどこか、いや、Instagramの投稿か、
カレンダーのあとがきだったかに、私は書いたことがあります。
「私はどの子でも構いません。それが縁だと思って、
ずっとその子を大切にしていきますので。」
と、おっしゃって下さった里親希望者の方がいらっしゃいました。
控え目だけれど、寛容で慈悲深い、なんて素敵な考え方と
私は衝撃を受けました。
その言葉をずっとずっと忘れられないでいます。
前置きがだいぶ長くなりましたが、ごまちゃんの里親募集。
一度、不審な若いご夫婦から問い合わせがあった後は、
パタッと申し込みが途絶えてしまいました。
黒猫。女の子。まだ子供。
人の心にひっかかりそうな条件ではあるはずなんだけどな。
私は保護側のひいき目で、話をアバウトにしたり盛ったり、
保護猫のいいところばかりを書かないようにしています。
ごまちゃんの里親募集の詳細には、
少々臆病で寂しがりや、人馴れはいまいちです。
人はまだちょっと怖いと思っているようで距離があり
手が出ることもあります。
慣れれば撫でたりブラシをさせてくれます。
現時点では確保は容易ではないので通院等の際には確保のスキルが必要です。
他の猫がいるとリラックスできるようで、お転婆で活発になります。
1匹飼いはあまりおすすめしません(慣れるのが遅くなる)。
おっとりとした成猫がいる環境に向いていると思います。
と記しておきました。
「人馴れがいまいち」
「手が出ます」
「確保が大変」
先行き明るくない説明(笑)。
これじゃ、人気ないのも仕方ないか・・・。
唯一、マーカーをつけて目立たせたい部分。
「他の猫がいるとリラックスできる」
「おっとりとした成猫がいる環境」
ここを重視する方の目にとまればいいのだけれど・・・
と僅かな希望を抱いて、関係者一同、待ちの日々でした。
右側の画像は本筋には関係ないバステト神
年内にごまちゃんの里親さんが決まらなければ、
年が明けた1月に、ごまちゃんは預かりのKさん宅から保護主のMさん宅に移動し、
今後はMさん宅で里親希望者が現れるのを待つことになっていました。
そうなるだろうな・・・と皆で思っていた10月末、
市内にお住まいの一家からごまちゃんへのお問い合わせがきました。
信頼できる方に託したいから里親募集をしているわけですが、
私はごまちゃんに興味を持って連絡を下さったKKさんに、
●警戒心がなかなかとけず、人馴れもそれほど進んでない。
●確保も容易ではないので通院時は大変。
●やんちゃで他の猫にちょっかいを出して敬遠される。
●シニアの先住猫さんのストレスになる可能性大。
と、ネガティブな点ばかり強調しました。
こんなに大変な子やめた方がいいですよ・・・みたいな。
KKさんからの返信は意外なものでした。
「ごまちゃんのイメージが湧き、ワクワクしてますが、背筋も伸びてます。」
「庭に地域猫がたまに遊びに来るのですが、
うちの猫が興味を持っていて関わりたそうにしています。
ごまちゃんとうまくやっていって欲しいなと思っています。」
前向き過ぎる・・・。
お見合いにはご主人と奥様のおふたりがいらして下さいました。
メールでの印象そのもの、謙虚で誠実なご主人です。
Kさん宅の飼い猫キラちゃんと並んで、
ケージ内のベッドに座っていることもあるごまちゃんですが、
肝心のお見合いの日はケージに入らずに、
ソファの下、ずっと奥の方に隠れていました。
KKさんご夫妻はソファの下をちらりと覗き込んで黒い物体を確認。
その後ソファの下から別の隠れ場所へと、
液体のように素早く移動したごまちゃんを
一瞬(笑)見ていただきました。
サファリ最後の日になって、ようやく遠目に
ライオンの姿が見えた、でもすぐ消えた・・・感じ。
こんなんじゃ、今回は無理だろうな・・・と思いましたが、
KKさんは「トライアルをお願いしたいです」。
前向きレベル2UPです。
KKさんは、猫と人間の関係よりも、
猫同士の関係を重んじているようで、
人に慣れていなくても、うちの子と仲良くしてくれれば・・・
とお考えのご一家だったのでした。
その夜、お届け日について、KKさんにご都合伺うメールを送りましたが、
返信には、「ちょっとだけでもごまちゃんに会えてよかった」と添えてありました。
会えるというより、目撃に近い状況でしたけれど。
11月に入り、市民まつりが終わり、少し落ち着いた頃、
預かりのKさんと一緒に、KKさん宅にごまちゃんをお届けしました。
最初の4日間、食事やトイレのことで心配が続きましたが、
1週間もしないうちに、ごまちゃんはケージを出て
部屋をうろつき、先住猫のりゅうくんのそばで過ごすようになりました。
既に家猫2匹という雰囲気。
1ヶ月のトライアル期間の間も、KKさんはまめに様子を知らせて下さいました。
送って下さるごまちゃんとりゅうくんの画像を拝見しつつ、
大丈夫かな?→大丈夫だな、という確認に変わっていきました。
トライアル期間が終わりに近づいた頃、
KKさんから正式に「ごまちゃんをこのまま迎えたい」という
お申し出をいただきました。
付かず離れずというわけではありませんが、
ごまちゃんはりゅうくんを慕い。
またりゅうくんも、ごまちゃんを受け入れています。
りゅうくんを盾ににしている
ごまちゃんと人間の関係はというと、
手を出してくるところは変わっていないようですが、
「昨日またちょっとやられましたね~」等、
KKさんご一家はあまり気にされていないようです。
人間が寝ていると布団にやってくるようになったらしい。
どんな子にも必ずぴったりのご縁があるとはよく言ったものです。
そのご縁を見つけられずに長い時間を保護主宅で過ごす猫も多く、
ごまちゃんもそうなってしまうかなと思っていましたが、
意外や意外、ごまちゃんの落ち着く先はすぐ近くにありました。
ごまちゃんはまだ1才4ヶ月。
これから長い猫生を、KKさんご一家と、
そして、優しいりゅうくんと生きていきます。
どの猫もそうだと思いますが、
その猫の運命を大きく変えるのは出会った人間。
彷徨って庭に現れたごまちゃんを、
仲間のMさんが「見過ごせない」と保護したころから始まりました。
ごまちゃんの保護は台風到来の直前で、
恐らく外してはいけないタイミングだったのです。
飼い猫達とミックスさせながら、
気長にお世話をして下さった預かりのKさんご夫妻。
飼い猫達に手を出しても、要求鳴きがうるさくても、
神経質にならず、ごまちゃんの好きなように過ごさせてくださいました。
そして、「ちょっと気になった」ことがきっかけで
ごまちゃんを迎えて下さったKKさんご一家。
ところどころで、事務員・運転手・財布の私(笑。
「先住猫のりゅうくんが黒猫で、ごまちゃんも黒猫。
ご主人は黒猫がお好きなんですか?」と質問しましたところ、
奥様がに苦笑いでおっしゃいました。
りゅうが黒なんだから、
2匹目はさすがに黒じゃないでしょ。
と思いました。
事の成り行きってわからないものです。
完