前回のお話。
2022年4月22日のブログ
「The Day to Remember~Nおじさまのこと①」
https://nekohan.jp/archives/14099

 

 

子猫の預かりを引き受けて下さったNおじさま。
おじさまにとってはカラちゃんが初めての預かり猫です。

 

Sさんは、子猫用ケージと猫トイレを
おじさま宅の1階の部屋に設置しました。
寝る時はケージに入ってもらいましたが、
人慣らしの為の抱っこや確保はあまりせず、
おじさまは、1日のほとんどの時間、
カラちゃんを部屋に放して自由に遊ばせていました。

黒猫は人気がある色柄であることに加え、
カラちゃんはまだ小さくて可愛らしい美猫です。
習志野在住のバイオリンの先生・Nさんが、
カラちゃんを迎えて下さることになりました。

 


カラちゃんはリンちゃんという名前になり、
Nさんと2匹の猫さん達と暮らしています。

 

 

 

保護猫の預かりボランティアになるには、いくつかの条件がありますが、
預かって大切に育てた保護猫の幸せを願い、快く送り出して下さること。
これが最も大切なことのひとつだと私は考えています。

 

 

カラちゃんが卒業していく時、
おじさまはやはり淋しそうでしたが、
ご自身の役割を十分に理解して下さっていました。

 

 

 

この子は大丈夫だよ。器量がいいもの。

 

 

 

カラちゃんいは少し怖がりな部分が残っていて、
新しい場所で大丈夫だろうかと心配していましたが、
私の不安を吹き飛ばし期待に変えてくれるような
「器量がいい」という言葉を今でもよく覚えています。

 

 

 

 

 

 

私がねこ藩をスタートさせたのが、2015年秋。
おじさまが次に預かって下さったのは、
カラちゃんから1年程期間が空いた
2016年秋の終わりでした。

 

Sさん宅とNおじさま宅の前にある住宅にお住まいのMさんが、
勤務先のマンション敷地で、箱に入れられていた子猫を見つけました。
Mさんは、その捨てられた子猫を自宅に連れ帰ってきました。

白いシールポイントのまだ本当に小さな子猫・みつるちゃんです。

 

 

 

 

 

その頃、時々、ねこ藩のお手伝いをして下さっていた麻生さんから、
知人一家がみつるちゃんの里親になりたいそうなので、
Nおじさまから預かりを引き継ぎ、卒業の日まで、
自分にお世話をさせてくださいと、有難いお申し出がありました。

 

そういう経緯があったため、
みつるちゃんがおじさま宅にいたのはたったの2週間でした。

いつ、どれだけミルクを飲んだか。
いつ、どのくらいフードを食べたか。
いつ、どのくらいおしっこをしたか。
おじさまは、毎日、ノートに記録して下さっていました。

そして、カラちゃんよりもずっとずっと小さいみつるちゃんを、
半纏の内側に入れて庭を散歩したりして、本当に可愛がって下さいました。

 


おじさまが記録したノート。

 

 

 

 

それから更に10ヶ月後後。
百音ちゃん一家を保護した際、真菌騒動がありました。
ねこ藩仲間のIKさんが子猫のカヌレとロールを預かって下さいましたが、
カヌレに真菌が見つかり、ロールと隔離する必要がありました。

おじさまに相談すると、
「1匹だけ隔離するんなら、俺のところがちょうどいいじゃない。」
と言って下さり、カヌレはおじさま宅に移動しました。

 

 

真菌の治療は服用薬と、患部の洗浄・消毒・軟膏の塗布。
カヌレのシャンプーは近所に住むベテランボランティアで、
ペットサロンを経営されていたKさんが引き受けて下さいました。
1日3回、おじさまがきちんとケアして下さったおかげで、
カヌレはまもなく真菌クリアとなり、船橋市のKさん宅で、
一足先に到着していたきょうだいのタルトと合流しました。

 


銘柄と在庫がわかりやすいように、
おじさまはケージの上にフードを並べていました。

 

 

 

その2ヵ月後には、Sさんの知人・Hさんが住む路地で
生まれた子猫、キビとヒナが、Nおじさまにお世話になりました。

 

 

 

 

 

2018年には、大人の猫じゅんちゃんを預かって下さいました。

 

 

これまでは子猫の卒業を
笑って見送って下さったいたおじさまですが、
じゅんちゃんに限っては、
どうしても手放せなくなってしまったようです。

 

自分に何かあった時には、
どうか、じゅんちゃんを頼みます。

 

長い間、一人暮らしをしているおじさま。
これからはじゅんちゃんと一緒に暮らしていきたいという
おじさまの気持ちも大切にしなくてはならないのではないか。
そう思って、じゅんちゃんをおじさまに託すことにしました。

 

 


おじさまの飼い猫となったじゅんちゃん。
おじさまに抱っこされるとおとなしくしています。

 

 

じゅんちゃんと暮らすようになって、
おじさまはとても幸せそうに見えました。
年1回のワクチンもきちんと接種していました。

最初におじさま宅にじゅんちゃんを連れて行った際に、
赤いリボンの首輪をつけてあげたのですが、
じゅんちゃんに似合っていて可愛いからと、
他の首輪に変えずにずっと使っていた為、
その赤いリボンの首輪はボロボロ。

 


じゅんちゃんが、テーブルの上やパソコン台の上に登っても、
おじさまは、じゅんちゃんの好きなようにさせていました。

 

 

おじさまとじゅんちゃんとの幸せな日々が、
ずっとずっと長く続くように願っていましたが、
それから3年もしないうちに、
おじさまの体調は徐々に悪化していきました。

持病の糖尿病に加え、心臓病。

 

 

 

 

おじさまが救急車で搬送されて入院する度に、
Sさんが家の鍵を預かって、じゅんちゃんの世話をしていました。
それが2度、3度と続き、今後もどうなるかわからない。
おじさまが不在になる度に、じゅんちゃんはおじさま宅で
独りぼっちの長い留守番をしなくてはなりません。

 

じゅんちゃんを手放す時が来たのではないか。

 

 

Sさんとも話し合い、入院中のおじさまに
LINEで打診の連絡をしました。

おじさまから、数日後に返信がきました。

 

あの子はまだ若いから、
これから先の幸せを考えると、

大事にしてくれる人がいるなら、
そこに行って暮らした方がいい。

どうか、じゅんちゃんをよろしくお願いします。

 

 

幸い、以前から、おじさまがじゅんちゃんを飼えなくなったら、
うちで引き取って飼うと、Sさんのご友人Uさんが申し出て下さっていました。
Uさん宅はおじさま宅から5分も歩かない場所にあります。
おじさまがじゅんちゃんに会いたければ、すぐに会える距離です。

 


じゅんちゃんは、Uさん宅で他の2匹の猫と仲良く暮らしています。

 

 

 

しかし、おじさまがじゅんちゃんに会うことは叶いませんでした。

一人で生活していくことが困難になり、
退院後すぐに高齢者施設に入所されたからです。
その施設にも長くは滞在出来ませんでした。
入所して数日で、再び緊急搬送となってしまったのです。

 

入院していても、病院で出来る治療はもうほとんどない。
だったら、おじさまの希望通り、家に戻り、
何年も我慢していた食事制限など一切忘れ、
好きなものを好きなだけ食べて、最期の時を過ごしたらいい。
娘さんご夫婦が付き添い、おじさまはご自宅に戻ってきました。

 

コロナ禍でもあり、たとえ無症状でも、
自分がコロナウィルスを持ち込む可能性だってあるのですから、
私はおじさま宅に伺うことを控えていましたが、
おじさま宅の前に住むSさんが、
時々、おじさまの様子を知らせて下さいました。

 

 

元気な頃のパパの面影もない。
本当に痩せて小さくなってしまって。

 

 

そして、3月11日。
糖尿病と心臓病の苦しみから解き放たれて
おじさまは天国へと旅立たれたのです。

 

 

 

典型的な昭和の頑固オヤジという感じでした。
若い頃には奥様に手をあげることもあったと聞いています。
20年以上も前に、家から奥様を追い出してしまって以来、
メダカを飼育したり、ハトやスズメに餌をやったりして、
おじさまは一人暮らしをしていました。

 

ご家庭内のことについては詳しく知りません。
ただ、私にとっては、Nおじさまはいつも優しい方でした。

 

 

おじさまの糖尿病とは違いますが、
わたしも、病気が発覚してから、
しばらく食事制限をしていたことがあります。
体にいいメニューを考えてあれこれと作り、
お裾分けでおじさまに届けることもありました。

 

「この間のキュウリの中華炒めはすごく美味しかったねえ。
キュウリを炒めるなんて考えもしなかったなあ。」
「野菜のポタージュは手をかけて作ったんだね?
体が温まって元気になりました。」
「つくね鍋は、もったいないから3回に分けていただいたよ。」
「俺は男だからねえ、こういう気のきいたものは作れないよ。
本当にありがとうね。」

いつもLINEでお礼のメッセージを送ってきて下さいました。

 

 

おじさま宅に上がって話し込んだこともあります。

猫のボランティアをしていると理不尽なことも多く、
善意であるはずの行為を当たり前のように思われたり、
考えかた、やり方が違うと非難されたり。
そんなことが溜りに溜まって、疲弊してしまい、
おじさまに愚痴を聞いていただいたこともありました。

 

 

それはね、誰もが出来ることじゃなんだよ。
大切な時間を使って、みんなの為、猫の為って、
普通だったら、とてもじゃないけど長続きしない。
本当によくやっていると俺は思ってるよ。
わかる人はわかるし、見てる人は見てるんだ。

 

おじさまがそう言って下さった日の帰り道、
私はほろりと涙を流しながら、自転車を押して歩きました。

 

 

 

猫の預かりを引き受けて下さったこと、
本当に感謝しています。
でも、それ以上に、おじさまは、
私にとって年の離れたお友達のようでした。

 

 

 

玄関の外から「おじさま、いる~?」と呼びかけても
「はいよ~、今出るよ~」という返事はもう返ってこないのです。

 

とても寂しい気持ちです。
もっともっと、色々なこと、お話ししたかったな。

 

 

おじさま、本当にありがとうございました。