◆未来ちゃんの保護主Sさん◆
未来ちゃんを保護し一生懸命世話をして下さっているSさんは60代の専業主婦の方ですが、普通の主婦の方とは少々違います。もう何年にもわたってご自宅付近を含む近隣地域で野良猫のTNRに協力されてきた方です。Sさんのお宅には外の暮らしから救済した2匹の家猫と、お庭で暮らす外猫が1匹います。また、近所の3か所で他の住民の方と協力し合いながら不妊手術済みの野良猫達9匹の世話をされています。成猫9匹分の食事といえば結構な量になりますが、Sさんはフード代を全てご自分で負担されています。ねこ藩でのTNR、幼猫保護の際にも、何度もご協力、ご寄附をいただきました。
◆未来ちゃんの里親探し◆
飼い猫と地域猫の世話、それからご自身の年齢的なこともあり、未来ちゃんをずっと世話をしていくことにSさんはご不安を抱えていらっしゃいました。障害のある猫や老猫の介護経験のある、あるいはこういう状態の未来ちゃんでも受け入れて可愛がって下さる方がいらしたらぜひ託したいという希望をお持ちでしたので、未来ちゃんをねこ藩の保護猫として里親探しをすることにしました。
◆未来ちゃんの精密検査◆
何が原因で四肢が不自由となっているのか、内臓に負担はかかっていないか、他に悪い部分があるのかどうか。原因を知り今後の飼育に活かす為にはMRIやCTの精密検査を受けて調べる必要がありますが、検査費用は、飼い猫ではない保護猫1匹の為に容易に支払うことの出来る金額ではありません。かと言って検査も受けさせず原因もわからないまま里親さまに託すことは少々無責任になってしまうのではないだろうか。その点をSさんと話し合い、未来ちゃんの検査費用を捻出することを、ねこ藩基金の目的に加えることにしました。
◆未来ちゃんの運動能力◆
「人間でもそうですが、筋肉、腱、骨…動かしにくいと言って動かさずにいれば、徐々にかたまって本当に動かせなくなってしまいますから、未来ちゃんには、例えば、リハビリのようなトレーニングをさせてあげるといいかもしれませんね。」、主治医の先生からいただいたアドバイスです。人間側が無理に運動させようとしなくても、未来ちゃんは彼女なりの運動をしていますが、それは健常な子猫の動きとは全く違います。立ちあがることが出来ない為、常に体の左右どちらかで横になった状態です。それでも、頭部を軸にして時計のようにぐるぐると床の上を回ったり、激しく手足をバタバタする勢いで寝がえりをうったり、時にはカゴからポーンと飛び出てしまったり、はずみで50センチ以上も移動してしまいます。そんな未来ちゃんですが、ケージ上部からひもで吊るしたおもちゃをバンとはたくことを覚えました。はたくとおもちゃが揺れて面白いのでしょう。また、自分と同じくらいの大きさのぬいぐるみを抱え込み、ガジガジしながらプロレスを始めました。
◆未来ちゃんの性格◆
かなりのきかんぼうさんです。未来ちゃんがそういう気分になっていない時に抱っこしようとすると、「なによ~!こんな体だからっていつでも好きな時に自由に抱っこ出来ると思ったら大間違いだ~!バカ~!」と未来ちゃんが言っているかどうかはわかりませんが、シャーシャー、カプカプで暴れまくります。少し眠くなりリラックスしている時に抱っこしてみると、不思議そうにこちらを見上げておとなしく抱っこされています。カゴの中でうとうと横になっている時などは、どんな猫だって可愛く見えますが、未来ちゃんもその通り。さっきまでの暴れん坊将軍ぶりはどこに行ったのか、グレーの艶々とした美しい毛並みと長い手足を投げ出して横たわっている未来ちゃんはまるで置物のようです。また温かいお湯につけて洗ってやると気持ちよさそうにしています。お風呂が好きな子なんですね、きっと。
◆未来ちゃんのトイレ◆
猫トイレに自分の足で向かいその中で用を済ませることは未来ちゃんにはできません。おしっこをもらしてもいいように、Sさんはケージの中にペットシーツを敷きガムテープで留めていましたが、床を這って動く未来ちゃんですから、シーツはどんどんずれていき、しまいには端っこに寄ってしまいます。考えた末、Sさんは床と段差の少ない犬用のトレータイプのトイレをケージの中に入れてみました。すると、未来ちゃんはそれをトイレと認識し、一生懸命這ってトレーの上に乗ってきてそこで用を足すようになりました。これには驚きました。「大」の方はそうはうまくいかず、シーツの上にころんと出してしまっていました。しかし、ずっと世話をしているSさんは未来ちゃんの不思議な動きに気付きました。かなり激しく手足をバタバタと動かして転がるのです。その時に未来ちゃんのお尻にティッシュを当ててやると未来ちゃんはきちんと「大」を済ませます。「大トイレしたいよ~」と知らせる為の未来ちゃんなりの動きだったわけですね。
◆未来ちゃんのトレーニング◆
未来ちゃんは猫です。猫は本来4つ足で立って歩く生き物です。もしかしたら未来ちゃんも本能で「4つ足で立つ」ということを意識しているかもしれませんが、脳の指令ミスによりそれが出来ないままです。だったら、四つん這いとはどういうことか体験させてあげようと、未来ちゃんのお馬さんを用意しました。難しいものではないです、フリースやタオルを丸めただけ。お馬さんの上に未来ちゃんを四つん這いにして乗せてみると、最初はグラグラ落ち着かない様子でしたが、慣れてくるとこちらが支えの手を離しても、未来ちゃんはじっとしてその姿勢を保っていました。単にいつもと違う姿勢が新鮮だったのかもしれませんし、本能で「ん?これは自分に合っている」と思ったのかもしれません。
次に、四つん這いで手足を動かすと前に進むことも出来るんだよ、と未来ちゃんに教えあげたくなりました。100均でそろえた園芸材料を使い歩行器らしきものを途中まで作ってみましたが、だめですね。かなりの改良が必要です。丸いフレーム(外枠)自体が未来ちゃんにとっては小さ過ぎましたし、丸いフレームの中で未来ちゃんの体を支えるには、ハンモックやネット状のものではなくて、やはりお馬さん型ではなくてはダメだとわかりました。
この丸いフレームの下にキャスターを取り付けて動くようにします。真ん中に吊り下げたお馬さんに未来ちゃんが跨ると手足が床につき、サーフィンのパドリングのように手足を掻くと、キャスターが転って歩行器が動く・・・・のが理想ですが、なかなか完成にはいたらず。
創意工夫・DIYの得意な方、アドバイスをお願いします。
to be continued ………