知らない街に越してきた小さな転校生。
見なれない景色、馴染みのない空気。
不安でいっぱい。
それでも、新しい環境、新しい生活に早く慣れようと、
見よう見まねで他の子達に合わせて行動し、
受け入れてもらおうと頑張っている。
こむぎちゃんを見ていると、そんな転校生の姿が浮かんできました。
我が家にこむぎちゃんはもういません。
こむぎちゃんはがんばったのです。
9月27日のブログ 「こむぎちゃん①:再会」
10月19日のブログ 「こむぎちゃん②:悩むところです」
12月10日のブログ 「こむぎちゃん③:外出できるのか?」
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2016年12月11日、ふくねこやNEKO部さんの里親会にこむぎちゃんは参加予定でした。
当日昼、ひょいと持ちあげ抱っこしてキャリーに入れようとした時、
こむぎちゃんはものすごい力で反抗し、キャリーを蹴り飛ばしました。
おおおおおおお……
今思えば、まず洗濯ネットに入れるべきでしたが、
普段どんなに触ってもいやがらないおとなしい子でしたから、
まあ大丈夫だろうと思っていたんです。失敗した…。
せめてこむぎちゃんの写真だけでも参加させてもらおうと、
空のキャリー持参で、私はひとり会場に向かいました。
怖かったんだろうな。信頼関係壊れたかもしれないな。
そんな風に思いながら、里親会から帰宅すると、
こむぎちゃんは何事もなかったように落ち着いていました。
2初めて会った時のこむぎちゃんは
まだ生後1年に満たないくらいの小さな体をした子でしたが、
やっと再会できた時には、2才の大人になっていました。
保護して室内に入れましたが、威嚇も空気砲もありません。
触っても怒りませんし、ゴロゴロとのどを鳴らします。
人に甘えて膝に乗ってくるような子ではありませんし、
常に私や家人とは一定の距離を保っていましたが、
自分の現状を受け入れているようでした。
リラックスして寝ています。
保護からしばらくケージ暮らしをしていた頃、
部屋で自由に遊ぶくりことこまつの姿を
こむぎちゃんはずっと目で追っていました。
「いいなあ、私も遊びたいなあ。」
そう思っていたかどうかはわかりませんが、
少なくとも2匹に対して警戒している様子は見られませんでした。
保護から約2週間、ケージの生活。
こむぎちゃんはよくケージ上段のベッドに座り、
他の2匹を観察していました。
ケージ生活から室内どこでもフリーの生活になると、
こむぎちゃんは他の2匹のすぐ近くにいるようになりました。
そろそろご飯の時間だと学習しているくりことこまつが、
体を起こし伸びをして歩きだすと、遅れをとらないよう
こむぎちゃんも2匹のあとについて歩きます。
こまつがおもちゃを咥えて移動すると、一緒にやって来ます。
台所で作業中の私の脚元を、2匹が行ったり来たりし始めると、
こむぎちゃんもいつの間にかちゃっかり混ざっています。
くりこやこまつが壁の角に体を強くこすりつけていると、
自分はもっと高い場所ににおいをつけようと、
二本足で立ち上がってマーキングしていました。
鳥の羽根ハンティングの時は、2匹が疲れて休憩していても、
こむぎちゃんは疲れ知らずで走り回っていました。
勝手口の網戸から日課の故郷チェックをする
くりことこまつ((彼女達の故郷は勝手口の外=庭)。
こむぎちゃんも一緒にやって来ます。
何でも残さずにきれいに食べました。
更に、2匹の残した分までもきれいに食べました。
そして徐々にふっくらとしていきました。
3匹の間には微妙な距離はありましたが、
昼寝の時は直径1メートルの円内に収まるように
3匹一か所に集まって寝ていました。
くりこと、ぽかぽか。
我が家の最初の飼い猫となったのはくりこです。
その2ヵ月後にこまつが加わりました。
時期に大きな差はありませんが、それでもくりこが先輩です。
テーブルにご飯を置く時。同時に寄って来た2匹を撫でる時。
スプーンにつけたちゅーるを舐めさせる時。
必ず、くりこが先で、こまつは次です。
私はこのやり方は変えてはいけないと思っていましたので、
こむぎちゃんも、自然とこの順番の最後に加わりました。
立ち位置でわかる関係。
真ん中がくりこ。
くりこの後ろにこまつ。
ドアを隔ててこむぎちゃん。
大人の猫だし、そんなにすぐに里親様は見つからないだろうな。
もしどうしても希望者が現れなければ、うちの子に…。
いやいや、待って。
我が家にいる限り、こむぎちゃんは常に3番目。
決して1番にはなることはないのです。
こむぎちゃんが1番になれる場所はきっとある。
こむぎちゃんを1番にしてくれる方はきっといる。
うん、そうだ、気を長く持って待ってみよう。
そして、クリスマスイブの日に、そのギフトは届きました。
守谷市にお住まいのDさんというご夫妻からです。
”ぜひとも「こむぎちゃん」を我が家へお迎えしたいと思いまして
まだ里親が決まっていなければ、一度お見合いをさせて頂ければと…”
年末年始でバタバタしていたこともあって、
新年明けてからのお見合いになりました。
その頃のこむぎちゃんのお気に入りは、
こたつの中で体を伸ばして昼寝をすることでした。
しかし、せっかくいらして下さるDさんに、
こたつの中にいますのでどうぞ、では失礼です。
きちんと見ていただき、触れ合っていただく為にも
当日、こむぎちゃんには2段ケージに入ってもらいました。
久々に入ったケージ、しかも扉閉まってる…。
こむぎちゃんはむすーっとしていましたが、
Dさんご夫妻が代わる代わる撫でて下さった時、
怒らず騒がず、落ち着いて静かに座っていました。
お見合いのご希望をいただいた時に、Dさんはこう言って下さいました。
”外で過ごしていた子なので、人馴れするのに
時間がかかるのは承知しております。
気長に一緒に生活できればと思っておりますので、
ぜひこむぎちゃんに会わせて頂けますでしょうか。”
小さくて頼りない可愛いらしい子猫や、
ベタベタな甘えん坊さんの大人猫は可愛い。
でも、私は、あまり人に慣れていない怖がりな猫が、
だんだん変わっていく過程を見るのが大好きです。
そういう子をものすごく可愛いと思ってしまうのです。
お見合いにいらしたご夫妻にお話を伺い、
こむぎちゃんと接して下さるお姿を拝見した時、
あ、同じタイプの方達だ…と思いました。
Dさんご夫妻は、猫がいかにも懐きそうな、
角ばったところを少しも感じさせない、
柔らかな雰囲気をお持ちのご夫妻でした。
キャリーで嫌な経験をしたこむぎちゃんですから、 ケージに入れて、そのまま運ぼうか。
いや、うちの車のトランクにはケージごと入らない。 やっぱり、キャリーしかないな。
こむぎちゃんをぜひ!と正式にお返事をいただいてから、
こむぎちゃんには大きいキャリーの中で食事をしてもらい、
キャリーの中に入ることに慣れてもらうことにしました。
じーっと疑いの眼差しをこちらに向けつつ、
すんなり入ってくれるようになるのに2週間くらいかかりました。
”はいりまーす!”
真っ先に飛び込むこまつ。
さすが、期待を裏切らない女。
やっと入るようになりました。
長いしっぽもきちんと中に収納。
お届けの日の朝、こむぎちゃんがキャリーの中で、
いつものように朝ご飯のカリカリを食べている時に
我が家では二度と開くことのない扉を閉めました。
「出して~出して~」と鳴き続けるこむぎちゃん。
バスタオルをキャリーに被せ、出発の時間まで、
静かな廊下で待機してもらいました。
時々、バスタオルの中から聞こえてくる、
悲しそうな不安そうなか細い声に胸がチクリとしました。
お届け前に病院に行き、健康チェックと耳そうじ、爪切りです。
私がしてあげられる最後のケアです。
洗濯ネットに入ったこむぎちゃんはおとなしく、
されるがままになっていました。
想像していたよりもずっと我が家から近かった守谷市。
途中から高速に乗り、1時間程でした。
到着すると、まず洗濯ネットにったままの
こむぎちゃんを抱っこしていただきました。
そうできるのも今のうちです。
慣れるまでの間しばらくは抱っこは出来ないかもしれないから。
こむぎちゃん、ずっと待ってたよ~。
リビングの隣、間続きになっているお部屋に
こむぎちゃん専用コーナーが設けられていました。
こむぎちゃんが隠れることが出来るように、
小さなスタンドが部屋の隅に設置されていましたので、
その上にこむぎちゃんをキャリーごと置きました。
登り降りしやすいように、階段かわりのイス等が 側に置かれています。
こむぎちゃんがキャリーからは出て来ないのは想定内でしたが、
キャリーの奥の方に籠るのではなく、 入り口付近に坐っていました。
一人娘となるこむぎちゃんの今後をDさんご夫妻にお願いして、
少しの淋しさと、じわじわと広がる安堵を感じながら、
私は帰宅の途につきました。
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カプくん
ずっと行方がわからなかったこむぎちゃんを連れてきてくれて
どうもありがとう。 次はカプ君の番かもしれないよ?
こむぎちゃん
長い間後回しにして、早く見つけてあげられなくてごめん。
くりこやこまつと喧嘩せず、いい子で過ごしてくれて、
4ヶ月の間、ここで一緒に暮らしてくれてどうもありがとう。
もう3番目じゃないよ、1番目の子になったんだから、
たくさん甘えて幸せになってください。
Dさん
たくさんの猫の中からこむぎちゃんを選んで下さり、
こむぎちゃんを見守っていくと言って下さって、どうもありがとう。
こむぎちゃんを太らせてしまってごめんなさいね。
どうかどうか、こむぎちゃんをよろしくお願いします。
The end
ラインのタイムラインのねこ藩で、見出しに、こむぎちゃんはもういないんですの。コメントを見て、え!っと早とちりした私は、絶句し、ブログを拝見し、安堵しました。
里親さんが見つかり、本当に良かったです。
何もお役に立てず、傍観するだけでしたが、いつも、こむぎちゃんを片隅に思う気持ちはありましたが、一日も早く、落ち着き幸せになる権利はあります。
心より、お幸せ祈ります。