2016年2月19日のブログ
①再保護

 

 

11月1日、江川さんからLINEが送られてきました。

私の不注意で昨晩、クルが脱走してしまいました。

 

 

室内に順応し人に慣れていくペコとは対照的に、
クルは再保護から1ヶ月経っても、挨拶はシャーでした。
江川さんが保護部屋に入ると、クルは隠れてしまうので、
江川さんは、クルを家中フリーにしていました。

江川さん宅の玄関には、出入り自由の飼い猫3匹の為に、
キャットドアがついています。
クルをフリーにした後、江川さんは一時的に重石でフタをし、
キャットドアが開かないようにしました。
クルをフリーにしている間、江川さんは必ず玄関で見張っていました。

10月31日の晩、江川さんは疲れて玄関でうとうとしてしまいました。
はっと気がついて起きると、クルの姿が家の中から消えていました。
玄関のキャットドアには無理やり開けられた跡があります。

飼い猫さん達は外に出ても家のまわりにいるだけの子達ですが、
クルにとって江川さんのご自宅近所は全く知らない土地です。
クルが生まれ育った場所は、江川さんが店舗を構える地域、
江川さんの自宅付近ではありません。
クルは全く馴染みのない知らない場所に出ていったことになります。
江川さんのご自宅と店舗は自転車で5分程離れた場所なので、
大人のオス猫なら問題なく戻っていける距離かもしれませんが、
その途中には五差路を含め、幅が広く交通量の多い県道があります。

その晩も、翌朝も江川さんは近所を探して回りましたが、
クルを見つけることは出来ませんでした。
保護部屋のペコはひとりで淋しそうにしています。
江川さんはご自身の足で毎日歩きまわってクルを探しながら、
迷子掲示板に掲載し、チラシを作成して配りました。
自宅付近に潜んでいるのか、故郷を目指して移動し始めたか。
それさえわかれば、捜索範囲をある程度絞ることが出来るのですが…。

 

 

 

 

クル疾走から5日目。
江川さんはご自宅建物の内部、 人間が入れない空間の部分に、
何かが潜んでいることに気付きました。
タヌキ? ハクビシン? イタチ?
1階と2階を繋ぐ階段の途中、蹴上げを外せる箇所があり、
江川さんは蹴上げを開けた内部を物入れとして使っていました。
「そう言えば、クルが疾走した晩、この蹴上げが開いていた」
江川さんは思い出しました。

 

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市川市、松戸市ではハクビシンの目撃情報が多く、
また、タヌキもあちこちに出没しています。
謎の生物がクルであればいいのですが、
野生動物が建物内部に住み着いているとしたらやっかいです。
いづれにしても中から出てもらわなくてはなりません。
江川さんは蹴上げを開けっ放しにし、踏面に捕獲器を仕掛けました。

謎の生物は捕獲器の中に入っては餌を食べ、逃げる、を繰り返していました。
江川さんが捕獲器内のペットシーツについた足跡を撮影し、 LINEで送ってきました。

 

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これ、猫のですね。
はい、謎の生物=クル決定。

 

 

 

 

家の内部空間はあちこち移動出来るように繋がっています。
江川さんは階段途中の天井部分に手を加え、そこにも
捕獲器を置くようにしました。
毎日必ず捕獲器の中にご飯を置き、水はその外に。
クルは、内部で迷って出て来られないわけじゃない、
自分の意志でそこに留まっているらしい。

”そんなに人との生活が嫌で、保護しても慣れないなら、
リリースした方がいいのかなぁと考えてしまう。
でも、出来ればそんなことは避けたい。
 再々保護したら、1から家猫修行をやり直します。”

 

 

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クル待ちの日々・・・

 

 

 

 

数日後、家の内部からクルの鳴き声がきこえてくるようになりました。
様々な鳴き方をしています。閉じ込められた猫の切ない鳴き声…。
かと言って、蹴上げ部分から出て来ようとはしない。
クルは多分、建物の外、野外に出ていきたいのでしょう。
でも出口は階段の付近の2か所、そこから出ても結局は室内、
外への出口ではないことをわかって嘆いているのかもしれません。

その後、縁の下(外には出られない部分)や、台所の床下など、
クルは建物内部を上下にあちこち移動して歩き回り、
クルの行動によって、江川さんは家の構造を知ることになりました。

 

 

失踪…ではなく籠城から13日目、クルはやっと捕獲器に入りました。
保護部屋に戻って来たクルは疲れて寝てしまいました。
ハウスからは出てこないし、相変わらずシャーシャー。
それでも江川さんがチュールを指先につけて、
ゆっくりゆっくり差し出すと、クルは舐めてくれたそうです。

 
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人に慣れたペコと一緒に入れば、
クルもきっとそのうち慣れると信じたい。

 

 

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差が開いてきてしまった姉妹ですが、
2匹そっくりで本当に可愛い子達です。

 

 

 

クルが2週間にわたる籠城を諦めて降参した頃、
ペコを飼い猫として迎えたいという希望者の方が現れました。
江川さんご自宅から比較的近いところにお住まいの、
お若い一人暮らしの女性NYさんで、猫を飼うのは初めて、ということです。
すぐ近くだから何かあった場合、相談にのったり、手伝ってあげられる…。
江川さんはピンと来て、NYさんにお見合いに来ていただくことにしました。

ペコの可愛いところだけではなく、 慣れていないところも全てきちんと話す。
その上でペコを気に入って迎えてくれたらうれしいな。

 

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完璧ではないけれど、完全室内飼いの猫としてうまくやっていけそうなペコ。
あとは江川さん以外の人間にも同じように接することができるかどうか。

 

11月末から前代未聞のお見合いとトライアルが始まり、それは1ヶ月続きました。
ペコを気に入って下さっているNYさんとペコが少しでも仲良くなればと、
江川さんは、NYさんに保護部屋に泊っていただくことにしました。

 

人間の方がトライアル。

 

12月末までの1ヶ月間、
NYさんが江川さん宅に通った日数:15日・15回
NYさんが保護部屋に泊った日数:2日・2回

新しい形のトライアルで驚きましたが、ご近所ならでは、です。
NYさんが真剣にペコを迎えたいと思って下さった証。
何度も繰り返しNYさんはペコと触れ合って下さったそうで、
ペコの場合、このやり方はうまくいったようです。

12月30日、ぺコはついにNKさん宅に移動し、
晴れてNKさんの飼い猫となりました。

 

 

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里親募集掲載で使用したペコの画像。
NYさんはこの姿にやられてしまったのだそうです。

 

 

 

 

本当は姉妹一緒にいさせてあげたかった。
でも、こんな状態のクルを他人に任せられない。
まず、ペコのご縁が繋がったことを心から喜び、
飼い主さんとペコが幸せに仲良く暮らしていくことを祈る。

江川さんは、1匹残るクルの世話に力を注ごうと思った矢先、
またまた事件が発生しました。

 

 

To be continued …..