年末年始にTNRを行った重田邸は、終わりの見えない、
はまったら抜け出せなくなる底なし沼のような場所です。
住人の重田さんは80代後半のおばあさんで、
もう何十年とその場所に住み、何十年もの間、野良猫に餌をやり続けています。

 

◆重田さんの飼い猫と首輪の件◆

「首輪なんかつけないよ、昔うちで飼ってた猫が首輪で自殺したから。」
(重田さんの表現そのまま)

飼い猫は、夜、重田さんと一緒に家の中で寝る出入り自由の茶白の猫1匹だけです。
庭に他の茶白の猫が来ると、重田さんは区別が出来なくなります。
重田さんご自身が他の猫と区別する為、近隣住民に飼い猫であることを認識してもらう為、
そして、ボランティアが誤って捕獲&手術してしまわないようにする為。
そんな理由から、首輪をつけたらどうか?という提案に対して、
重田さんが返してきたのが上の言葉だったのですが、話をするうちに気が変わったようです。
「じゃあ、首輪と名札の代金は私が払うからさ、ぜひお願いするわ~」と言って、
猫の名前、飼い主の名前、飼い主の連絡先がプリントしてある名札付の首輪を
飼い猫に装着することを承諾しました。

注文して出来上がってきた首輪と名札をお届けに伺ったところ、
「私は首輪なんかつけないよ。昔うちで飼っていた猫が…」→スタート地点に戻る(笑)。

 

◆重田さんの庭にいる猫◆

常にいるのは、重田さんの飼い猫1匹の他、野良猫が4-5匹くらいのようですが、
置き餌を食べにくるだけの猫達もたくさんいますから、正確な数はわかりません。
メンツは一定していないようで、新規の猫を見かけることもしょっちゅうです。

 

◆重田さんの敷地と間借人◆

重田さんが住む1軒家と、その後ろ、同じ敷地内に4戸のアパートがあります。
2階の1室に海老沢さんという50歳くらいのおっさんが住んでおり、彼が唯一の間借人です。
実際はもっと若いのかもしれませんが、歯がないので非常に老けて見えます。
海老沢さんは昼間働きに出ていてお給料は貰っているとのことですが、
もう3年以上も家賃を滞納しています。
重田さんが時々つっつくと、お決まりの返答は「そんな金、俺ねえもん」。
20年程前に重田さんが現在のアパートを建てた時に、別の場所に住んでいた海老沢さんを、
重田さんが「うちのアパートに入りないよ」と誘って入居させたという経緯があるので、
自分からは「出て行け」となかなか言えないらしいのです。
入居の際の保証人になった海老沢さんの実の姉夫婦に何度か「家賃滞納」を訴えましたが、
「こっちは年金生活、弟の為に金を出す余裕なんて無いから、もう勘弁してくれ」と
電話を切られたそうです。

2人で野良猫に餌やりを続けているところから、最強のタグなのかと思いきや、
重田さんと海老沢さんの関係は微妙な感じになっています。
ある時は「裏のお兄さんが野良猫をそりゃもう可愛がって面倒をみてくれているから安心だよ」
と肯定的な意見、
またある時は「金がない金がないって、家賃なんか払いやしない!
しょっちゅうパチンコに行く金はあるっていうのに。」と怒りまくります。

 

◆庭の状況とフード◆

あまり手入れのされていない庭のあちこちに、
重田さんだけでなく、海老沢さんもたんまり置き餌をしています。
一応猫トイレを設置していますが、屋根がないタイプのものなので、
雨が降れば水でびしょぬれのまま、砂もまめにとりかえていないようです。
そういうトイレを猫は使いたくないのでしょう、
庭の土の部分のあちこちに糞があります。
海老沢さんが作った段ボールハウスや、発砲スチロールの箱、古い座布団、
猫ベッド等も庭に置かれていますが、土や埃だらけで衛生的とは程遠い状態です。

高橋邸裏庭②高橋邸裏庭⑤

 

住人のいない1階の奥の部屋。
玄関前に置き餌、トイレ、
ハウスがずらりと並ぶ。

置き餌はウエットフードもあり、
ハエが多い。

マーキングの臭いもある。

 

 

高橋邸裏庭③

 

外に設置したトイレ。
設置の意味を成さない状態。

 

 

 

高橋邸裏庭⑨

段ボールにガムテープを貼りまくって作ったハウス
雨に濡れ湿っている。
中は土と埃まみれで汚い。

 

 

 

 

 

高橋邸サバ白(後ろ足が不自由)

 

置き餌を食べに来ているサバ白の♂。
先天的なものか事故によるものかは不明ですが、
右後ろ足が伸びきって不自由な体、
走って逃げる時にもかなり大変そうです。
人慣れは全くしていません。

 

 

 

 

 

◆何年も変わらない現場◆

ベテランボランティアの三木さんが、長い間、定期的に重田邸のメス猫達を避妊手術していますが、
置き餌をしていることで、しばらくすれば新しいメス猫が登場し、出産の為に居着きます。
「メス猫は避妊しないと猫が増える」、これは重田さんも重々承知なので、
庭に母猫と子猫が現れると三木さんに連絡してきます。
「手術しないとまた出産しちゃうよ。お金払うから早く手術しちゃってよ。」

①庭に母猫と子猫がいるから何とかしてくれコールfrom重田さん
②「またか!」と怒りながら三木さんが母猫をTNR&子猫を保護

これがお決まりのパターンですが、この「母猫と子猫」というところがポイントです。
つまり、それ以外のメス猫はどうでもいいってことです。
重田さんが気にかけるのは既に出産した母猫。
置き餌に集まってくるその他のメス猫については知らん顔です。
だから一向にこの現場のTNRには終わりが見えません。

さらに言うと、置き餌をしておけば野良猫に勝手に食べていくからいいんだ、
というのが重田さんの考え方で、野良猫の面倒をみているという意識はありません。
一方、同じように置き餌をして、ハウスやトイレを作っている海老沢さんには
「俺が野良の母猫と子猫の面倒をみてやっている」という意識があり、
それをハッキリと言葉にして言っています。

だったら、自分が面倒をみていると言い張っている母猫の手術は
海老沢さんの担当でしょう…ということになるんですが、
毎回その話が出るたびに「そんな金ねえもん」。

避妊手術もせずに庭で無責任に餌をやっていると近所の人たちから怒られるから
お金のない海老沢さんの代わりに私が手術するんだと、重田さんは言います。
近所の人たちから怒られる理由が、海老沢さんが次から次へと手をかける
母猫&子猫のせいだと思っているわけです。
置き餌に集まる猫は、勝手にやって来る野良猫であり、野良猫は誰の猫でもない。
自分のせいではないから、自分がお金を出して手術する必要もない、
というのが重田さんの考え方です。

 

◆母猫をTNRして子猫を保護する理由◆

母猫をTNRすることは必然ですが、三木さんは必ず子猫を保護していきます。
そうせざるを得ないというのが正解です。
重田さんは、「今は小さいから母猫と一緒にいるけど、そのうち成長して
どっかにいなくなっちゃうから 大丈夫だよ」といつも言っています。

大丈夫って何?
自分の庭にいなくなるから大丈夫なの?
それが野良猫が増える原因になるとは思わないのかな?

 

◆捨て猫について◆

野良猫に餌をやることについて重田さんがよく言うセリフ:
「私が悪いんじゃない、みんなここに猫を捨てていく。
悪いのは猫をここに置いてっちゃう人間だよっ。
うちの庭にはしょっちゅう新しい猫が捨てていかれる。」

重田さんの言う捨て猫とは、段ボール入りの猫ではありません。
置き餌が目的で通ってくるようになった新規の猫のことです。
置き餌が新しい猫達を次々と呼び寄せていると重田さんは思っていないのです。
餌があるから、人間がここに猫を捨てて行くと思っているのです。

 

◆最後に◆

近所の方の苦情や提案、保健所の勧告は重田さんには通じません。
重田さんはマイルールを貫き通しており、
「私は絶対負けない!誰が何と言おうと私がここにいる限りはこのやり方をやめない!
殺されたってやめない!」と言い張っていて、懐柔させることが出来ません。
裏の海老沢さんも同じことです。

来年、この重田邸と裏のアパートは取り壊しになり、新しく賃貸マンションが建設されるそうです。
海老沢さんは「金がないから絶対に出て行かない」、
重田さんは「餌がなくて猫がいなくなっちゃうから、工事の間は、
大工さんに猫のえさ場を作ってもらって、私は毎日餌をやりにここに通ってくる。
マンションが完成して自分が大家として戻ってきたら、また庭で餌やりは続ける」と言います。

この重田邸問題に関しては、そろそろ何か新しいアプローチが必要なのではないでしょうか。
市役所の環境課、保健所の職員、市の民生委員、ご近所の方々、自治会、動物愛護団体、
そして市内に住む重田さんの娘さん、東京に住む重田さんの息子さん、ご親族…
そういった方達が集まり意見を出し合って解決方法を探っていくべきではないのでしょうか。
ねこ藩としてはそのように思います。

 

*人名は全て仮名にしてあります。