8月30日にあわてて偽カプ君を捕獲。
その日のうちに去勢手術を含む必要な医療行為を済ませて、
ひと晩、我が家のケージでゆっくり休んでもらいました。

チュールをスプーンであげると美味しそうにペロペロ舐めていましたが、
数分後に全て吐いてしまいました。
ワクチンも接種しましたから、気分があまりよくないのでしょう。
お腹は空いているはずですが、無理に給餌するのはやめました。

翌朝、暗幕をめくると、偽カプ君はおとなしくしていました。
しっかり朝ごはんとミルクを摂ってもらい、トイレを片付けました。
トイレ(小)が2回分、(大)は無し。

人を怖がらない子ですから、触っても怒りません。
昨晩、麻酔が効いている間に付けてもらった首輪を嫌がる様子もありません。

 

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翌朝、開いた玄関のドアから
外を眺める偽カプ君。

出たい~と少し興奮気味になりました。
トイレの縁に体重をかけて立ちあがったので
トイレがひっくり返ってしまいました。

 

 

 

 

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飼い主に捨てられました。
見守って下さい。

のメッセージが入った迷子札を
首からぶら下げています。

 

 

 

偽カプ君は2年近くこの地域で生きてきたです。
リリース後も、前と変わらずこの地域で生きていきます。
それはわかっているのですが、リリース時に少し心が痛みました。

 

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手術の翌日、玄関の前にリリースしました。

あなた、2年前にお家の中で飼われていた
本物のカプ君なんじゃないの?

だとしたら、久しぶりに入った家の中はどうでしたか?
そのままうちに置いてあげることが出来なくてごめんね。

 

 

 

これまでにTNRした♂猫達は、リリースすると一目散に走って去って行きましたが、
偽カプ君にそんな様子は見られませんでした。
玄関を出ると、よいしょっと外階段を下り、左右をきょろきょろと見まわして、
しばらくその場に座って毛づくろいをしていました(笑)。

 

 

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リリース後、偽カプ君のことを心配していた菅野さんと電話で話しました。
「偽カプ君をさっきリリースしました。迷子札付きの首輪をつけておきましたよ。」
偽カプ君=本物のカプ君、という疑念は私の心の中にずっと残っていました。
もし本当に2匹の茶トラがいるのだとしたら、首輪が2匹を見分ける手段となります。

森本さん宅に現れる茶トラの猫が首輪をしていなければ、それは本物のカプ君、
私の庭に現れる茶トラの猫が首輪をしていれば、それは偽カプ君となるわけです。

しかし、翌日の9月1日夜、偽カプ君が我が家の駐車場にやって来た時、
首輪も迷子札もなくなっていました。
そんなに簡単に取れるもの? 人の手によって外されてしまったのかな?

同日、首輪をしていない本物のカプ君が森本さん宅に現れたが、
森本さんの飼い猫に追い払われて逃げてしまったと菅野さんからききました。

偽カプ君も本物のカプ君も、どちらも首輪をしていないんじゃ、
パッと見、区別が出来ません。

でも、たとえ首輪がなくても、2匹には(実際2匹いるのだとすれば)、
今ははっきりとした違いがあります。
よ~く猫を観察しないと気付かない場合も多いですが、
それは大きな大きな違いなのです。

 

そして、偽カプ君リリースから10日後。
森本さんからメールが来たと菅野さんから連絡がありました。
森本さん曰く:-

 

カプ君の耳にカットが入っている。

 

 

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やはり、この狭い地域にそっくりな2匹の茶トラは存在していなかったのです。
偽カプ君は、本物のカプ君のドッペルゲンガーでもありませんでした。
偽カプ君なんていう猫は存在していなかった。

 

偽カプ君は、本物のカプ君でした。

 

カプ君 20160919-03

 

 

 

この地域に1匹しかいない茶トラ。
カプ君です。

 

 

 

ご飯を貰っているはずのカプ君が痩せていた理由もわかりました。
森本さんは、カプ君に対面でご飯をあげるのではなく、
置きエサをしていたということです。
森本さんが飼っている出入り自由の飼い猫はカプ君を嫌っていますから、
カプ君が来ると追い払います。
また、私が以前TNRした斉藤くんという♂猫を
森本さんは「さくらちゃん」と呼び、ご飯をあげて可愛がっています。
カプ君が実際に食べるところは見ていない、でもお皿はいつも空になっている、
森本さんは前にそうおっしゃっていました。
カプ君の為に置いたはずのご飯は、森本さんの飼い猫かさくらちゃんが
食べてしまっていたのかもしれません。

カプ君の尻尾の怪我や耳の異変の件も、今では納得できます。
カプ君の耳に「さくらカット」が入っていることに
森本さんが気付くまでに、10日かかりました。
こういっては失礼ですが、森本さんは高齢者です。
あまり細かいところまで観察していなかったのでしょう。

きちんとご飯をもらっていなかった。
怪我にも気付いてもらえなかった。

でも、だからと言って森本さんを責めるのは筋違いです。
本来ならば、飼い主がカプ君の世話をしなくてはならないのですが、
カプ君の飼い主は消え、その家族からはネグレクトされています。
不憫に思った森本さんがせめてご飯だけでもと、給餌に努めて下さっていた。
それが置き餌だった為に、十分にカプ君に行きわたっていなかった。
対面でご飯をあげるのが確実ですが、森本さんにも用事があります。
フードのお皿を手にして、いつやって来るのかわからないカプ君を
1日中待っているわけにはいきませんから。

「捨てられちゃって可哀想にねえ」

そのようにおっしゃる方はたくさんいますが、
じゃあ、その可哀想な子に対して何かしてあげるのか?
と問えば、ほとんどの方は見て同情するだけで終わるでしょう。
森本さんは、実際に、カプ君に手を差し伸べて下さったのです。

カプ君のことを気にかけて下さっている方は他にもいます。
森本さん、私、他の方々…気付いた人間がカプ君にご飯をあげ、
具合が悪そうなら必要なケアをする、それでいいのではないでしょうか。
カプ君が、管理下にある猫だということを、
この地域の方にわかってもらうことも重要です。
あの迷子札と首輪は、カプ君を守る為のものでもあったわけで、
それがなくなってしまったことは残念です。

そして忘れてはいけないのが、糞尿の問題です。
2014年秋~冬に外に出されて以来、カプ君は外で生きる猫となりました。
必ず近隣のどこかにカプ君がトイレと決めている場所があるはずです。
空き家の裏庭かもしれませんし、どなたかのきれいな花壇かもしれません。
ご近所の方々に「茶色い猫がお宅の庭に落し物をしていませんか?」と尋ねてみる、
そしてもし、カプ君がトイレとして選んでしまったお宅が見つかったら、
どうしたらそのトイレ問題が解決できるか、一緒に考えてみる。

カプ君が可哀想…という感情だけでは何も前に進みません。
置いていかれてしまったこの子を、どうすればきちんと見守ってあげられるのか。
ある程度の管理をしていかなくてはならないと思います。
放っておけば、そのうち移動していなくなる?
それでは、他の地域に野良猫が1匹増えるだけです。
このような事態を引き起こしてしまったもと飼い主に一番責任があるのは明らかですが、
今さら飼い主を非難しても無駄です。飼い主はもういない。

カプ君は飼い主のいなくなった飼い猫なんです。

 

 

The End