広大な敷地のその邸宅は、高台の一角にあります。

しっかりと閉じられた表門を開け放つと、幅の広い長い下りのスロープ。
20メートルほど下ると、左手に納屋。
更に石段を下ると、谷底に住居である母屋が見えてきます。
門から母屋まで50メートルはあるんじゃないかしら。
スロープにきちっと詰めていけば、7-8台は楽に駐車できそうです。

昔は一面芝生だったと思われる広々とした庭。
松の木、石灯籠…日本庭園風にデザインされています。
母屋の裏には竹やぶ、その奥は崖下。
自然豊かなこの邸宅の住人はかなりご高齢のご夫婦です。

 

161130 (6)-Vg15

 

 

 

スロープの途中から見下ろした谷側。
このような広い敷地のお宅があるとは
門を開き中に入らない限り、わからないでしょう。

 

 

 

 

 

ここは歯科医K先生のご実家であり、 高齢のご夫婦はK先生のご両親です。
K先生はご自身も猫飼い、また、 外の猫達の世話もしている猫好きな男性です。
K先生のご実家では、昔、犬を飼っていました。
その犬が亡くなると、近所の野良猫が1匹、また1匹と庭に集まり始めました。
猫が嫌いというお母様ですが、長年にわたり、息子のK先生の指示に従って、
K先生がご実家にストックしておく猫用フードを、毎日、庭の猫達に与えていました。
育たずに死んでしまうのか、新しいテリトリーを求めていなくなってしまうのか、
敷地内に猫の数が爆発的に増えることはなく、常に一定数の猫が定住しています。

 

未避妊のメスが3匹庭に住んでおり、出産すると増えてしまうので
何とかしたいと、K先生は考えていました。
K先生の歯科医院がある地域に勤務し、
外猫繋がりの知り合いでもある個人ボランティアのIさんが
「それは何とかしましょうよ」とK先生にお手伝いを申し出たそうですが、
公園や工業地帯その他地域での野良猫のTNR&給餌、
猫の保護・通院・お届け等、日々、走りまわっているIさんには
K先生のご実家に足を運ぶ時間などあるはずもありません。

11月の中旬に「ねこ藩にお願いがあります。やっていただけますか。」
とIさんからK先生ご実家の件で依頼がありました。

 

「うちの庭にいる猫を何とかしてくれないか」
「どこそこの場所に行ってTNRをしてくれないか」

 

ねこ藩は基本的にこういった個人の方々からの「丸投げ」依頼は断るようにしています。
何とかしなくちゃと自分で動く気のある、ボランティアではない一般の方々、
少しでも協力しようという気持ちと関心のある方々のお手伝いをすることにしています。

K先生ご実家の件は突然の話でしたし、場所が拙宅から近いかというと、
近いと言える距離でもありません。
ただ、これは、Iさんからの依頼です。
手術後もうちで療養させるから捕獲をお願い…ということでした。

ねこ藩を立ち上げる以前、私個人がいろいろと模索工夫をしながら
細々と(そして孤独に)近所の野良猫をTNRしたり、子猫を保護していた時、
里親会の案内、TNRの流れ、獣医さん、薬の知識その他いろいろな面で、
私を助けて支えて下さったのが、Iさんでした。

資格試験の受験を控えていましたし、仕事も忙しい時期でしたが、即答しました。

「OK。現地に行けます。」

依頼のメールを受けた日の5日後に受験が無事終わり、
試験から2日後、時間がとれる日がありましたので、
早速、にわねこ屋敷に向かいました。

 

 

To be continued ……