前回のおはなし
4月21日のブログ
東奔西走:④西の猫たち~翻弄される人々。

 

 

 

 

避妊手術の終わったちゃみを室内に入れた翌日の11月30日。
この日も春田アパートで、朝から捕獲器を仕掛けましたが、
前日リリースした直後に捕獲器に入ってしまったさばみが、
懲りずにまた入ってしまいました。
よっぽどお腹がすいているんだね。
よしよし、少しご飯をあげよう。

ご飯に満足したさばみはふらりと出掛けてしまい、
日中、捕獲器内のエサは手つかずでした。
昼間、猫はどこかで休んでいることが多いですから。
釣り餌を新しくして、夕方、捕獲薄を再セットすると、
すぐにお待ちかねのキジトラ、スギくんが入りました。

 

 

 

 

 

さばみのきょうだい猫・スギくん。

 

 

 

 

さばみ、ちゃみ、スギくん・・・3匹捕獲。
私的にはあと1匹、キジトラ(またはムギワラ)猫なのですが、
私自身、遠目から1度しか見たことがなくて、 イマイチ、自信がないのです。
その猫を見て知っているTTさんか、三木さんに一緒にいてもらって
確認してから方がいいな。
春田アパートにもう1台の捕獲器をセットするのはやめ、
その足で西側のジャングルハウス(以下JHと略)に移動しました。

 

 

そもそも、今回のJH関係猫の件は、
JH側から複数の猫達がご飯を食べに来るようになり、
不妊手術しないとまずい~という森本さんのSOSがスタートです。
森本さん宅に捕獲器を仕掛けるのが手っとり早いだろうと判断し、
エサ場に通じる玄関前に捕獲器をおいて見ました。

 

先程、春田アパートで捕獲したスギくんを自宅に連れ帰り、
30分後、様子を見にいってみると、入っていました。
若そうなキジトラです。男の子みたい。

 

 

 

 


か、かわいいじゃん!

 

 

 

 

 

「森本さん、1匹捕獲しましたよ~」

森本さんは家から出てきて、捕獲器を覗き込みました。
捕獲されたキジトラ君はビックリして固まっています。
森本さんは涙目になっていました。

「ああ、しっぽちゃん、かわいそうに・・・」

そうか、森本さんがしっぽちゃんと呼んでいる子はこの子だったのね。
ん?ちょっと待て。

かわいそう

あなたでしょー、家に来る猫達の不妊手術をお願い、と言ったのは。
手で捕まえられないというから、捕獲器を使ったのですよ。
猫捕り業者を見るような目で私を見るのはやめて。

しっぽちゃん BY 森本さん。
モリくん BY 私。

 

小さな空気穴を確保し、ビニールシートと綿毛布で捕獲器をぴっちりと包みます。
猫の体温は高いので、ビニールシートを使うことで捕獲器内の保温ができます。
その際、捕獲器の下にウレタンシートを敷いて、下から寒さが伝わるのを防ぎます。

手術は明日ですから、ひと晩我慢の待機です。

 

 

 

 

 

 

玄関の外にスギくんとモリくん。
外でごめんね。寒くないようにきちんとしたからね。
狭いけど、我慢、我慢。

 

 

 

 

 

 

その晩の11時過ぎ、三木さんが春田アパートにやって来ました。
私の手持ちの捕獲器2台には、スギくん、モリくんが入っていますので、
三木さんの捕獲器を仕掛けることにしました。

三木さんが捕獲器の準備をしていると、
物影からとことことムギワラの猫が出てきました。
「三木さん、この子ですか?」
「そうそう!」

 

ムギワラ猫はお腹が空いているようで、
私達の足元をうろうろちょろちょろ。
準備しているそばから、捕獲器の入り口近くで待機しています。

「これはすぐに捕まえられそうな子ですね。」

捕獲器をセットして、三木さんと私が少し離れると、
予想通り、ムギワラ猫・むうむはすぐに入りました。

 

 

 

 

暴れもせず、おとなしいむうむ。
大きな目の可愛い子です。

 

 

 

 

15-20分でちょんちょんと済むオスの去勢手術に比べ、
メスはお腹を切らなくてはならない避妊手術です。
術後も傷がある程度癒えるまで時間がかりますから、
むうむには少しでも体力を保ってもらいたい。
むうむだけは玄関内で待機です。

 

 

 

 

室内とはいえ、玄関は寒い。
しっかり防寒対策しましたが、
外で生きてきたむうむにとっては、
ちょっと暑かったかも。

 

 

 

 

これで4匹捕獲・・・終了かな?と思っていましたが、
もう1匹母猫がいるかもしれないと三木さんは言い、
TTさんは他のキジトラがいると言います。

これまでに他の猫の姿は確認出来ませんし、
いたとしてもオスならば焦って捕獲する必要もありません。
ターゲットが絞れないまままま、
毎日毎晩、捕獲器を仕掛けにやって来ても、
無駄足に終わる可能性が高いので、
今後は、毎日給餌にやって来るTTさんと、
近くに住む私が、定期的に現場に足を運び観察を続ける、
ということで、春田アパートの捕獲は一段落しました。

 

 

 

翌日の夜、スギくん、モリくん、むうむの3匹は
不妊手術を終えて 我が家に戻ってきました。

 

 

 

 

怖くてキャリーの奥で固まるスギくん。
でも、ご飯とお水を差し入れる時に
触っても全然怒りませんでした。
ちゅーるもスプーンから舐めました。

 

 

 

 

 

 

こちらはモリくん。
この子も触れましたし、スプーンちゅーる2本完食。

 

 

 

 

 

 

スギくんとモリくん。
手術の際に駆虫も行っていますから、
術後の1晩の療養は玄関内です。

 

 

 

 

本来ならば、避妊手術後のむうむには1匹でゆっくりしてもらいたかったのですが、
他のケージがなかった為、2日先輩のちゃみと同じケージに入ってもらいました。
同じ場所で暮らしていた子達ですから、大丈夫でしょう。

 

 

 

 

2日間、ずっとハウスに籠っていたちゃみ。

 

 

 

 

 


あれ?

むうむが合流すると、ハウスから出て
姿を見せるようになりましたよ。

 

 

 

 

 

 

痛くて辛そう…
むうむ、ごめんね。

 

 

 

 

翌日、オス2匹、スギくんとモリくんは、それぞれを捕獲した場所、
春田アパートとJH前の駐車場にリリースしました。

普通、避妊手術をしたメスの場合は4-5日、
堕胎手術となったメスは1週間~10日程、
我が家のケージで療養してもらってから リリースすることにしています。
慣例に従えば、ちゃみとむうむは4-5日でリリースとなりますが、
寒い時期でもありましたので、療養期間は1週間にしました。

今回は全てTNR予定で始めたことですから、
当初からちゃみもリリースするつもりでいました。

ちゃみは、威嚇と空気砲がすごく、手は出る、噛みつく。
私にはこの小さな丸っこい怪獣みたいなちゃみを
人慣れさせる自信がありませんでした。
これからまだまだ捕獲作業は続くわけで、
ちゃみにばかり時間をかけていられない。

「この子は可哀想だけど、リリース。」
療養2日目にして既にそう決めていました。

ところが、2日後にむうむが加わったことで、
私の心はぐらつき始めました。
むうむは威嚇しない、噛まない、手も出さない。
触れるどころか、撫でると気持ちよさそうにしているのです。
手から上手にカリカリを食べることも出来ました。

そんなむうむが一緒のケージに入ると、
ちゃみは閉じこもっていたハウスからにょっと出てきました。
威嚇、空気砲はピタリと止み、猫パンチも控えめになりました。
術後のむうむはまだ体調が悪いのか、
小声で唸ったりして非常に迷惑そうにしていましたが、
ちゃみは仲間がいることで安心したようです。
しつこいと思われようと何だろうと、
むうむにぴったり寄り添っていました。

 

我が家には、保護猫が同じ家の中にいると、
ストレスで具合が悪くなってしまう、くりこがいます。
保護猫に対しての見せつけか、変な場所におしっこをし始める、こまつがいます。

我が家の2匹も、むうむ・ちゃみと同様、この地域出身のもと野良です。
2年近く時間をかけて見守り、慣らして室内に入れた子達です。
それだけにとても思い入れが強い、大切にしなくてはならない存在。
2匹のストレスになるようなことは極力避けたいと常々考えているので、
頻繁に猫を保護して、2匹を不安にさせるような状況は作りたくないのです。

 

むうむとちゃみは春田アパートに寝床もあるし、
春田のおじさま、そしてTTさんにもご飯を貰えるのだから、
私が無理して保護する必要はない。
「療養は1週間、その後はリリース」と自分に言い聞かせましたが、
気がつけば、毎日、むうむとちゃみの世話をして、
私、結構、楽しんでないか?

 

(^_^;)

 

むうむとちゃみをどうするか。
三木さんにも2匹の件を相談してみました。
ご自身が猫を室内に保護することが出来ない三木さんは、おっしゃいました。

「保護やリリースに関して他人は何も言えないし、 言う権利もないと思うよ?
そんなの当事者個人の都合もあるし、仕方がない場合もあるでしょ。
Hさんが自分で考えて決めてリリースしたって誰も責められないです。
ただ、リリースならば出来るだけ早めに。 情が移ってしまうから。」

保護かリリースか、悶々とした日々が続いていましたが、
心の根底ではむうむを加えて2匹になった時点から、
既に決断していたのかもしれません。

 

 

 

 

ケージ内でくつろぐ2匹。

 

 

 

 

保護から1週間達、私がケージに手を入れると、
ちゃみがゴロゴロと咽喉を鳴らすようになっていましたが、
「あら、ゴロゴロしてるの~ちゃみちゃん可愛いね~」
なんて調子になって撫でようとするとガブリとやられます。
撫でる場所と角度は限定され、撫で方にも敏感な子のようです。
その噛み方は決して甘噛みとは言えず、まず血が出ます。

これは何とかしなくてはなりませんが、まずその前に
やっておかなくてはならないことがあります。

2匹とも避妊手術の際にお願いしたのは駆虫のみでした。
里親さん探しをするならば、他の医療行為も済ませてしまわなくては。
2匹を洗濯ネットに入れて病院に連れて行き、
血液ウィルス検査とワクチン、爪切り、耳そうじ、触診をお願いしました。
ワクチンを接種した直後、洗濯ネットの中から、
ちゃみに思いっきり本気噛みされました。
かなりの流血とともに、 指に穴!

ま、いいでしょう、ちゃみは怖いだけ。
私を殺そうとしているわけではないからな(多分)。

 

 

 

 

 

ちゃみとは対照的、
安定のむうむです。

 

 

 

 

 

ケージの掃除中に、むうむが居間に出てしまったことがありましたが、
暴れるわけでも窓を引っ掻いて逃げ出そうとするわけでもないので、
そのまましばらく自由に過ごさせておきました。
ちゃみも出してあげようとかと一瞬思ったのですが、
ちゃみはフリーにすると確保が難しいと想像出来たので、
可哀想ですが、ケージの中。

ソファに座って本を読んでいる時、ハッと気がつくと、
むうむは足元に来て座っていました。

 

 

 

 

 


むうむが知らない間に近くに来ていました。
一瞬、我が家の飼い猫こまつかと思いましたが、
こまつの体格はこんなもんじゃないから!

 

 

 

 

 

むうむとちゃみの里親探しを始める一方で、
まだまだ残っているJHでの捕獲作業をやってしまわなくては。

 

 

 

JHでの捕獲と言っても、JH敷地内に入るわけではありません。

(A)猫達がやって来る森本家
(B)森本家のある袋小路
(C)JHの南に隣接するISさん宅の庭
(D)JHの南に隣接するIRさん所有の駐車場
(E)JHの門に通じるべつの駐車場

さて、どこに仕掛けるか・・・。
春田ハウスでの捕獲のように、夜中まで数時間おきに
チェックしに来ることになると思うので、
勝手に来て勝手に作業しやすい場所。
個人宅だと迷惑になるだろうし、
住人の出入りが頻繁な通りもあまり好ましくないから、
(A)(B)(C)は×。
となると、(D)と(E)がいいかな。
うん、そこに捕獲器をおいてみることにしよう。

 

まず、JH手前にある駐車場。
1台の車の後ろに捕獲器をしかけてみました。

夕方捕獲器に入ったのは白黒猫です。
メスっぽい可愛い顔をした猫で、背中の黒い部分の中に、
不思議な白い模様がありました。
それが、エリンギをスライスした時の形に似ているので、
名前を「えりこ」と名付けました。

 

 

 

野良ですが、白い毛の部分があまり汚れていません。

 

 

 

 

 

えりこ。
背中からサイドにかけて、エリンギのスライス。

 

 

 

 

それから数時間後の夜、次に捕獲器に入ったのは、 小さなキジトラです。
モリくんとよく似ていますが、 逆三角形の顔立ちがいかにも女の子っぽい。
キジトラでシッポが長いので、仮称=きじな。

 

 

 

うわ~、あなたも可愛いねえ。
大丈夫だよ~怖くないよ。

 

 

 

2匹の確認をしていただきたいと思い、森本さんに連絡しましたが、
先日、捕獲器に入ったモリ君を見て可哀想と言っていた森本さんのことです。
「いや、私は見ないです」 と返信が来ました。

実は、この頃、森本さん宅には子猫が1匹いました。
シロちゃんという男の子です。
森本さん宅にご飯を食べに来ていた猫ご一行さまの1匹で、
少し怪我をしているようだったので、森本さんが手で捕まえ、
病院に連れて行き、そのまま室内に保護したということです。

 

「最近、我が家に猫達はご版を食べに来なくなったので、
捕獲したり不妊手術したりはもう終わりでいいわよ~。」

 

What?

 

シロちゃんの世話をすることで、森本さんの心が満たされてしまったのか、
残りの猫達についてはもうどうでもいいような感じでした。
船をこぎ出した筈の張本人が、さっさと一人で下船してしまったような?
いや、最初から森本さんは船には乗っていなかった。
森本さんは、私ひとりが乗った船が陸を離れていくのを、
少しの間、 岸辺から見ていただけなんだな。

ここで、森本さんに、いやいや、違うでしょ、そうじゃないでしょ…
と言ったところで、森本さんのやる気はとっくに失せています。
もう森本さんの情報なしに、一人で勝手にやることにしました。
森本さんからは、お金の話は一切出ませんでしたので、
それが少し残念ではありましたが、
ねこ藩カレンダー数部の売り上げに協力して下さったのだから、
それでOKとしましょう。

 

 

捕獲した2匹、えりこときじな。
我が家には既にむうむとちゃみがいて、 これ以上の保護は無理です。
幸い、堕胎ではなく避妊手術でしたし、持続性抗生剤も打ってある。
2匹には申し訳なかったけれど、手術の翌日にリリースしました。

森本さんがおっしゃっていたことについて考えてみました。
「我が家には猫達はもうご飯を食べに来なくなった」

森本さん宅でご飯を食べないということは、他の食堂があるということ。
体も健康的で、しっかりご飯を食べている証拠です。

早過ぎるリリースとなってしまいましたが、
この子達はきちんとご飯をもらえる場所がある、
そう信じてのリリースでした。

 

 

 

 

2匹リリースの翌日の夜中。
再度同じ場所に仕掛けた捕獲器に 入ったのは、
鳴きそうな小さな目をした体の大きなオス猫です。
白い体に、少々キジ模様の白キジ。
もちもちしているので名前はモッチ―。

 

 

 

今にも泣きそうな顔。

 

 

 

 

 

体がもちもちしている。
柔らかそう。

 

 

 

 

 

モッチーを術後の翌日にリリースすると、同じ日の夜中に
またまた体の大きいオス猫が捕獲器に入っていました。
グレーの部分が多い、灰白猫です。仮称=アッシュ。
隣の通りの浜口さんが以前、
「最近灰白の大きなオスが来て、我が家の外猫達が 怖がっている」
とおっしゃっていましたが、このアッシュだと思います。
アッシュのTNR後、浜口さんに報告するとホッとしておられました。

 

 

 

顔の一部と手足の先だけ白。
あとはグレーのアッシュ。

 

 

 

 

 

この後2週間、ほぼ毎日毎晩、捕獲器を仕掛けていましたが、
捕獲器に入ったのは、既にTNR済のモリくん、えりこ、きじな、モッチ―。
えりことモッチーに関しては2度も続けて入っていました。

「我が家に来なくなっただけじゃなくて、
他分、猫達はいなくなったと思う」

と森本さんはおっしゃっていましたが、
アッシュを最後に、私自身も他の猫を見かけることはありませんでした。

しかし、それは姿を見せない、あるいは、
捕獲器にたまたま入らないだけじゃないか?
森本さん宅には7-8匹の猫が来ていた時期があります。
そこに、モッチ―とアッシュは含まれていないようでした。
JH側でTNR出来たのはモリくん、えりこ、きじなの3匹。
そして、森本さんがシロちゃんを保護しています。
ということは、あと3-4匹はいるはずなんです。

 

これをどう追跡して終息させるのか。
本当にこの地域からいなくなってしまったのか。

いくら捕獲器を仕掛けたところで同じ猫しか入らなくなってしまっている状況。
これ以上、新しい猫を狙っての捕獲は容易ではない。

そう考えて唸っていたところに、
ねこ藩問い合わせフォームから1通のメールが届きました。
その衝撃的なメールを、私は何度も読み返しました。

暮も暮。
2017年12月30日、新しい年まであと2日という時でした。

 

To be continued ・・・・