イベント参加時、時々お手伝いをして下さる里親さんがいます。
葛飾区にお住まいのYさん。
2014年秋、倉庫敷地に住むそうこちゃんという母猫が産んだ3匹の子猫のうち、
キジトラのきょうだいナリくん(現ジロ―君)とチカちゃんの2匹を
迎えて下さったのがYさんでした。
お届け直後にしばらく続いたナリくんの粗相に悩んだ時期を乗り超え、
ご主人が単身赴任中の今も、2匹に愛情を注いで大切にして下さっています。

Yさんの写真の撮り方が上手なこともありますが、
2匹が大変フォトジェニックな猫達なので、
2015年秋、ねこ藩立ち上げの際に製作した複数のグッズに、
ジロチカの画像をふんだんに使わせていただきました。

 

[成長に従い体格の差はかなりつきましたが、
顔がとてもよく似たベタベタ仲よしきょうだいです。]

 

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昨年(2018年)の4月1日の夕方、
珍しくYさんからの着信がありました。

「捨てられたらしいガリガリの猫が近所にいたので
抱っこして我が家のマンションまで連れてきたんですが、
駐車場で逃げられてしまい、猫は車の下に入って出て来ません。
知らないところに来て怖かったのかもしれません。
連れてきたりしなければ良かった。元の場所に返してあげたい。」

明らかに健康ではないそのやせ細った猫は2-3日前から、
Yさんのマンションから200メートル程の住宅街の路地にいたとのこと。

「ウィンナーをあげようとしたけれど全く食べない。
あまりにも痩せてしまっているので、病気だと思う。」
Yさんは、近所のおばさまからそのように聞いたそうです。

偶然その場所を通りかかったYさんは、
遺棄された元飼い猫らしいその猫の姿を見てしまい、
人恋しそうにすり寄って来る猫を無視することが出来ませんでした。
家には健康体のジロチカがいますが、
とりあえず連れて帰って何か食べさせてあげよう、
あるいは看取ってあげようと思って、その猫を抱きあげました。

[若くはないムギワラの女の子]

 

[痩せています。]

 

ところが、まだ多少元気の残っていた猫は、
Yさんがマンション駐車場まで辿りつくと、
腕から逃げてしまい、車の下に籠城中・・・という状況でした。

ちゅーるで釣っても出て来ません。
車の側にキャリーを置いても入ろうとはしません。
が、この健康状態では遠くに逃げて行くことは出来ないでしょう。
夜も更けてきたので、Yさんはマンションの上階から様子を見つつ、
その晩の保護は諦めました。

 

[隠れてはいますが、時々Yさんの方を見上げています」

 

翌日の早朝、猫はまだ駐車場にいました。
Yさんの置いた段ボール箱に入って夜を過ごしたようです。

猫の所在を確認したYさんはとりあえず会社に出勤。
午後から半休を取って急いで帰宅。
すぐに駐車場に出向き、無事に猫を保護して室内に入れました。
そして夕方、近所の病院に猫を連れて行きました。

 

 

悪い・・・とても悪いです。
進んだ腎不全、感染症の疑い、栄養状態の悪さ。
数値が物語っています。
元飼い主は、手のかかる、お金のかかる
病気の猫を捨てたのでしょうね。

体重が2.7㎏、推定年令7-8才のその♀猫に、
Yさんはさくらちゃんという名前をつけました。

「そう長くは生きられないだろうから、
今の自分に出来ることをして
あとは看取ってあげようと思います。」

ケージとトイレを設置した和室がさくらちゃんの部屋、
ジロチカとは接触させないようにしていました。
警察署に拾得物の届けも済ませました。

 

[Yさん宅のケージに入ったさくらちゃん。
辛そうに目を閉じてじっとしています。]

 

[家の中に知らない猫の気配を感じ、
カーテンの後ろに隠れたジローくん」

 

 

保護から数日すると、さくらちゃんはケージの2段目に上がる元気が出てきました。
食欲もあり、ガツガツと腎臓用フードを食べるようになりました。

「保護3日目:落ち着いています。」

 

[保護から1週間:ケージの外に出る」

 

[保護から3週間:Yさんの膝の上で甘える」

 

[保護から5ヶ月:暑い夏を乗り超えました」

 

[保護から半年:隔離部屋を出てフリー」

 

保護から半年が過ぎ、くしゃみに血が混じったり、
自力で食べなくなって弱ってしまったり、
痙攣が見られたりといった心配な状況もありましたが、
保護からもうすぐ11ヶ月、弱々しいながらも、
さくらちゃんはまだまだ頑張っています。

 

[”さくら”が付いている製品に目がいって購入しまう。]

 

特別療法食に自宅での皮下注射に加え、
度々の血液検査、週1~2回のホルモン剤注射等。
通院も大変ですが、医療費の負担も大変だと思います。
それでも、Yさんは、自分に出来る範囲でと、
さくらちゃんを見守って下さっています。

我が家にあった三段ケージとトイレをYさんに提供。
私個人としては、そのくらいのことしかしてあげられず、
力不足を痛感しました。

 

病気の猫や、乳飲み子をかかえてしまった時、
不安になり孤独を感じることがあります。
忘れていないですよ、私達も心配していますよと、
まわりの人間が声をかけてあげることも大事。

保護から1ヵ月程経った頃、ねこ藩Sさんと一緒にYさん宅を訪問しました。
さくらちゃんはおとなしくYさんに抱っこされていました。

[誰にでも甘えてきます」

本当に可愛い子。少しでも元気になってもらいたい。

 

さくらちゃんを捨てた飼い主は、さくらちゃんを思い出すことはあるのか。
捨ててしまったけれど、本当は一緒に暮らしたかったと後悔することがあるのか。
あの子はもうあの場所で死んでしまったかもなんて思っているのか。

さくらちゃんに元の飼い主はもう不要です。
さくらちゃんの記憶から元の飼い主が抹消され、
そんな人は始めからいなかったことになればいい。
そして、その飼い主がいつか病気になった時、
治療も何も施されず、外に置き去りにされてみればいい。

 

 

現在、Yさんはさくらちゃんを隔離部屋から出し、
ジロチカと一緒に過ごさせています。
同じ♀のチカちゃんは、さくらちゃんの存在を大歓迎しているわけでは
ないでしょうが、ジローくんは割と大丈夫なようです。

[さくらちゃんの存在を受け入れているジロチカ」

 

さくらちゃんの健康状態はぎりぎり現状維持。
猫の腎不全は進んでしまうと、
劇的に改善することはありませんが、
このまま静かにゆっくりと過ごして欲しいと思います。