かわいそうな猫がいるのですが、
どうにかしてあげてください。

 

毎月、毎週、様々な問い合わせをいただきますが、
一番困るのが、この「どうにかして」です。

 

「人に頼む前に、あなたがご自分で保護出来ないのですか?」
と問えば、「自宅に入れることは出来ない。」と返ってくる。

「あなたの代わりに保護出来る人がいないかあたってみるので、
医療費を負担して下さいますか?」と問えば、
「お金を出すことは出来ない。」とくる。

そして、

「自分で何も出来ないから、あなたに頼んでいるのに!」
とキレる。

挙句の果てに、相談を受けたこちらが、
批判され悪口を言われ、いつの間にか悪者になる。
甚だ理不尽な扱いだと思いますが、
まあ、いいです、もう慣れっこ。

 

 

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2015年春、いつもお世話になっている動物病院の先生から
3匹の赤ちゃん猫を押しつけられた引き受けたのですが、
そのうちの2匹を貰って下さったのが、
我が家から自転車で10分とかからない隣町にお住まいのOさんでした。
そして、そのOさんから、一番困る相談が来てしまいました。

「K市に住む知人が、捨て猫らしい猫を見つけてしまい、
ご飯をあげているんですが、どうしたらいいでしょうか。」

「どうしたらいいでしょうかって、どうされたいんですか?」
と私は聞き返しました。

 

最近、K市に引っ越したNKさんは、仕事からの帰り道、
某駅近くの藪のある場所で、大人の猫を見つけました。
とても人懐こく可愛いので、毎日その場所に寄って、
猫にご飯をあげているそうです。
そばの建設会社の人間達に邪魔者のように扱われていたことと、
雨の日でも濡れながらNKさんのご飯を待っている姿に、
NKさんは胸が詰まってしまい、Oさんに相談したのでした。


NKさんが猫にご飯をあげている現場。

 

NKさんは集合住宅にお住まいで、犬とウサギを飼っていますが、
賃貸条件により、これ以上のペットは飼うことが出来ない。
また、障害のある息子さんとの二人暮らしで、
フルタイムで働いていても経済的にもあまり余裕はがない。
仕事も、お正月くらいしか休みがないので時間がない。

ない・ない・ない。

 

相談を受けたNKさんの知人=Oさんですが、
お宅では犬1匹、猫2匹を飼っています。
また、お母様はお体が不自由で常に介護が必要。
隣に住む共働きの息子さん夫婦に代わって、
孫の世話もしなくてはならない。
体力的、時間的にも、Oさんがその猫さんを
保護して自宅で世話をするのは厳しいとのことで、
Oさんも困ってしまい、私に連絡を下さったという経緯です。

以前、2匹を貰っていただいた時に、
「この猫達は獣医さんに頼まれた子達なので、ちょっと特別。
普段は家族の反対があるので、猫の保護はしていないんです。」
とお話ししました。
だから、保護して下さいという相談はご遠慮下さい、
と釘を刺すつもりで伝えていたのですが、
もう3年も前のことですから、忘れてしまったのでしょう。
あるいは、他に相談できる人がいなかったか。

 

どうしてもその猫を保護出来る人が見つからなければ、
やはり自分が引き受けるしかないと思うと
Oさんはおっしゃっていました。

以前、Oさんは外から拾ったサビ猫を飼っていましたが、
通院の途中で自転車からキャリーを落としてしまい、
その衝撃で開いた扉から猫が逃げて行方不明になりました。
そのことを聞いて、私にも一末の不安はあったのですが、
この地域のあちこちに手書きの貼り紙をして、
いなくなってしまった飼い猫を長い間探していらしたし、
二度とそんなことが起こらない用に十分気をつけます、
とおっしゃっていましたので、
2匹の子猫達をOさんご一家に託しました。

だいぶ経ってから知ったのですが、
私が譲渡した2匹のうちの1匹、♂のロワが、
気をつけていても、庭に出てしまうことが何度もあり、
ある時は1週間も返って来なかったことがあったそうです。
譲渡の際に署名捺印をいただいた合意書の条件について言及し、
今後は一層の脱走対策をお願いしましたが、
やはり、Oさんにこれ以上猫を任せられないと考えました。

 

「こちらで、預かることが出来る人を探してみますので、
NKさんご自身で、あるいは、NKさんがお忙しいのであれば、
Oさんが代わりにその猫を保護して連れて来て下さい。
また、その場所の住所等、もう少し詳しく教えて下さい。」
と何度かLINEを通じて伝えていたのですが、
なかなか返事が来なかったり、返事が来ても、
キャリーが手元になく、保護しても入れる物がない、
知人にキャリーを借りることになったがすぐに行けない、
お互いの予定が合わなくて一緒に現場に行けない等々、
パッパッと事が進みません。

我が家からもかなり距離があり、
仕事の後にさっと行ける場所ではない。
(というか、現場住所の連絡が全然来ない。)
どうしたらいいものか・・・。


NKさん→Oさん→私と、送られて来た猫の画像。
可愛い顔をした大人の猫です。

 

この捨て猫らしい白い猫がいる現場近くの駅を、
通勤で頻繁に利用している知人がいます。
個人ボランティアさん達が保護した猫達の為に、
保護猫の譲渡会を主催しているふくねこやさんです。
ご自宅もそう離れてはいません。

最初にOさんから相談を受けた時から
そのことは私の頭の中にはありましたが、
ふくねこやさん宅には常に複数の保護猫がいるし、
里親探しや、譲渡会やイベント準備で多忙な毎日。
これは丸投げ案件になること間違いないだろうし、
申し訳なさ過ぎて甘えたくなかった・・・
というのが本当の気持ちだったのですが、
結局、私はふくねこやさんのご厚意に頼ってしまいました。

K市のNKさん→I市のOさん→I市の私→K市のふくねこやさん。
K市発~I市巡回~K市着のコミュニティバス状態。

ふくねこやさん、ほんっとにごめんなさい、
でも助けてくれてありがとうございます。

 

 

 

 

2018年3月22日夜遅く、ふくねこやさんから連絡が来ました。
「連れてきましたよ~」


あらまあ、可愛らしい。

 

おや、この尻尾はどこかで見たことがありますよ?

 

あ、おせちによく入ってるあれか。

 

 

そして、この顔も馴染み深いな。
ああ、白猫ターチャンだわ。

 

そんなことで、名前は「ちょろ木たあ助」になりました。
姓まである保護猫はあまりいないね。

 

ふくねこやさん曰く、
ちょろ木のクリームっぽく見える体毛が、
薄い毛色なのか、汚れなのか不明。
汚れに年期が入っているから外の生活が長いかも。
肉球は、結構硬くなっている。
寄り目気味の目には眼球震盪が見られる。
人に対して警戒心を持っていないことから、
出入り自由の外猫の可能性もある。

探している方がいる可能性を考え、ふくねこやさんは、
NKさんに周辺の聞き込みと貼り紙をお願いしましたが、
2週間程前から、ちょろ木があの場所にいたという以外、
情報は入ってきません。

 

 

全く人慣れしていないギラギラした野良猫を保護するのと違い、
警戒心がなく人慣れした猫は、逃げ出した飼い猫の可能性もあります。
その場合、関係各所に「こういう猫を保護しています」という
届け出をしておく必要があります。
もとの飼い主が猫を探していて、こちらがその猫を保護している場合、
双方からの届け出があると、情報がマッチングして、
猫が無事、飼い主さんの家に帰ることが出来るからです。

NKさんには、K市の警察署に行き、
「拾得物の届け出」をするようにお願いしましたが、
時間がなく、近隣の交番に出向いたところ、
いちいち拾った猫の届け出はしなくていい、
的なことを言われたそうです。
交番では猫を預かれないし、面倒くさいんですね。

届け出は他の市町村でも出来るということなので、
私がI市の警察署で済ませてきました。

 

 

 

財布、傘、その他諸々と同じで、動物も物扱いです。
届け出をしてから3ヶ月の間に持ち主が名乗り出ないと、
拾得物は、法律上、拾得した人間のものになります。
それは猫も同じです。

I市の会計課(拾得物担当は会計課)にいた男性の方が、
丁寧に対応して下さいました。

「拾った物は警察の方で預かり保管するのですが、
保管場所の関係上、拾得したものが生きた動物である場合は、
保護した方にそのまま預かっていただくことになってしまうんです。
これから3ヶ月間、こちらからお願いして拾得物を預かっていただく、
ということになりますので、宜しくお願いします。」

 

 

届け出はしたものの、ちょろ木の飼い主が現れることは
ないだろうと思いました。
飼われていて外に出されたか、置き去りにされたか、
あちこちと、ふらふら彷徨っているうちに、
あの場所に居着いてしまったのではないかと推測します。

 

ふくねこやさんだけに全てを任せるのでは申し訳ない。
私の方でも里親探しをお手伝いするし、
何か病気があって医療費がかかりそうだったら、
費用はこちらで負担しようと思う、
だから、NKさん、Oさんも、
任せたからもうそれでいいや、ではなくて、
ご自身でも出来ることがあればぜひ協力してあげて下さい。
と伝えましたが、あまり期待できない感じでした。

それでも、後日、Oさんから寄付として
たくさんの5円玉を頂戴しました。


合計すると大した額ではありませんが、
お気持ちですからね。

 

 

ふくねこやさんのまめなお世話で、
本来のちょろ木の姿が明らかになってきます。

扉でも引き出しでもドアでも何でも開けちゃう。
ふくねこやさんは家具にまでロックを取り付けました。
また、食欲旺盛で、未開封のフードの袋までかじる。
フードが詰まった未開封のの段ボール箱さえ攻撃。
でも、人とも猫ともうまくやっていけそう。

 

 


保護から2日。

 


保護から3日。

 

 


保護から4日。

 

 

保護からそう時間も経っていませんでしたし、
拾得物権利のこともありましたが、
ちょろ木の里親募集を早々と開始しました。

 

 

 

 

To be continued ・・・