昨夏、9匹の子猫を保護してバタバタだった頃、
近所に住む若いボランティアのユミさんから質問がきました。

「●●の場所、昔からよく子猫がたくさんいますよね。
手が空いたらTNRをしようと思うんですが、
あのエリアに詳しいボランティアさんか、
あの地区の住人、Hさん(私)、知っていますか?

 

 

●●というのは、駅に近い住宅街の一角で、
「常に野良猫がいる場所」として有名な路地です。

駅への近道になりますので、通勤通学、買い物等
住宅街の路地にしては通行人が多く、
通りがかりに餌を与える人達もいます。

 

毎年、子猫が生まれますが、目が癒着していたり、
痩せていたり、具合が悪そうだったりして、
健康的な丸々とした子猫はほとんど見かけません。

 

 

 

なぜあの場所には子猫が多いのか。
答えは簡単。

●猫に不妊手術が全くされていないこと。
●代替わりを続け、常にメス猫が複数いること。

 

子猫・成猫があの場所に留まる理由は、
餌をやる通行人が多いこともありますが、
路地の端、横並びの2軒のお宅、YさんとIさんが、
ご自宅敷地で餌を与えているからです。

 

 

以前、ベテランボランティアの三木さんが、保健所職員と一緒に、
「外猫として餌をやるなら不妊手術していただけないか」と
説明&説得するために、Yさんのお宅を訪れました。
Yさんは、緊張した面持ちで、「私は餌をやってません。」と
頑なに餌やりの事実を隠そうとしていたそうです。
(Yさんが餌をやっているのは、人々の間の周知の事実なんですが。)

 

ある日、知人のUさんが路地を通りかかったとき、
あまりにもひどい健康状態の子猫がいました。
Uさんは見て見ぬふりが出来ず、2匹を咄嗟に掴んで、
自転車の前のカゴに入れ、動物病院に連れて行きました。
待合室で子猫を1匹連れている女性と隣り合わせになり、
話しかけてみると、その女性はあの場所の餌やり・Yさんでした。
3匹いた子猫のうち、一番健康そうな子猫を連れていたそうです。

 

「緊急な処置が必要なのは、その子じゃないでしょうに。
他の2匹はもうダメだと思って、元気な子を選んだんだね、あれは。」
後日、Uさんはそうおっしゃっていました。

 

結局、Uさんの保護した2匹は、後日亡くなりました。
Yさんが病院に連れて来ていた子猫のその後は不明です。

 

 

不妊手術をする気は一切ないけれど、
生まれた子猫を病院に連れて行く気持ちはある。
メス猫に不妊手術さえすれば、子猫は生まれないし、
具合の悪そうな子猫を病院に連れていくことも
なくなるでしょうに。

 

 

以前、ボランティアのKさんに、
あの場所の話をしたことがあります。
Kさんももちろんご存じでした。

「不妊手術をする気が全くない人に何を言ってもだめよ。」

とKさんはおっしゃっていました。
そういうことなんでしょうね。

 

 

 

話をユミさんに戻します。

昨夏、ユミさんもまた、換気扇一家の件などで忙しくしていましたが、
●●の場所はどうしても気になるようでしたので、
知人を通して、路地のIさんを紹介していただくことになりました。
ユミさんに協力して下さる余力のある方、
ボランティアのKさんと、菅野さんにも一緒に来ていただきました。

 

ボランティアのKさんは、いつも優しい口調で話しかける方です。
その時も、Iさんに、やんわりと
「何か猫のことでお困りのことがありましたら、お手伝いしますので。」
と話しかけました。

なぜか、Iさんの怒りのスイッチが、待ったなしで入りました。
「うちは困っていなんかいないわよ! おたく誰? 何よ突然!」
赤い顔をして、私達を見回し、大声を出しました。
どうやらアルコールが入っていたようです。

 

その後、何とか穏便に話を進めることが出来、
Iさんは、お隣のYさんにも声をかけて下さいました。
自ら不妊手術をしようなんて考えは毛頭なく、
費用の心配をする素振りさえ全く見せませんでしが、
とにかく、捕獲器を庭に置く許可はいただけました。

 

帰り道、菅野さんが言いました。
「人柄って顔に出るのよね。Iさん、あれはもう顔つきでわかる。」
「酔っていたからじゃないですか?」

私には、Iさんは悪い人には見えませんでしたが、
ちょと怖い感じのおばさまではありました。

 

 

 

それから2週間後、我が家の路地で、
菅野さんとあれこれ立ち話をしていた時、
メール便の配達の方が入ってきました。
なんと、Iさんでした。

 

通行人が自宅庭に餌を投げ入れて行く話や、
亡くなった猫達の話、箱入りの子猫が庭に捨てられた話。
Iさんはあれこれと饒舌に語り始めました。
先日お会いした時の感じと全く違います。

「来るとき声かけてよ。家にいれば協力するからさ。」
その時のIさんは、とてもフレンドリーで、
電話番号を書いたメモを下さいました。

 

 

8月下旬から、ユミさんは行動を開始しました。
仕事が休みの日、その前日の夜と、
うまく予定を組んで捕獲器を仕掛け、
1匹づつTNRを進めていきました。

 

私に●●の現場に行く時間もなく、
お手伝いする余裕がありませんでしたので、
微力ですが、金銭的なサポートをすることを申し出て、
ユミさんも承諾してくれました。

ユミさんにはどうぶつ基金の無料不妊手術チケットがあります。
手術費用は0円になりますが、その他の医療行為は実費です。
手術する頭数が多くなれば、それだけ駆虫代がかかります。
そこで、手術代以外の医療費を、
ねこ藩の資金から使わせていただくことにしました。

 

ユミさんが最初に捕獲した黒白タキシード(女の子)のみ、
ねこ藩が病院への送り迎えを手伝いました。

 

以下、ユミさんのTNRの記録です。

 

①8月26日:黒白タキシード・メス 2才 駆虫代500円
②9月06日:サビ・メス 3才 駆虫代500円
③9月18日:三毛・メス 1才未満 駆虫代1814円
④9月18日:白黒・オス 1才未満 駆虫代1814円
⑤9月19日:茶トラ・オス 4才 駆虫代500円
⑥9月25日:白黒・オス 2才 駆虫代500円
⑦9月25日:三毛・メス 2才 駆虫代1814円
⑧9月25日:キジトラ・メス 1才 駆虫代1814円
⑨10月29日:白黒・メス 1才 駆虫代1000円

実費合計:10756円

これは、既にユミさんにお支払いしてあります。
2019年11月収支報告(医療費35736円のうち9756円)
https://nekohan.jp/archives/11748
2020年1月収支報告(医療費19910円のうち1000円)
https://nekohan.jp/archives/11800

 


最初に捕獲した黒白タキシードの女の子。

 


2匹目の捕獲、サビ猫。

 

 

10月13日には、菅野さんが同じエリアで、
耳カットのないサビ猫を見つけ、
捕まえてくれとユミさんに連絡してきました。
(菅野さんもご自分の捕獲器をお持ちですが…。)

ユミさんは仕事オフ日に捕獲計画を立てていますが、
突然の要請にも関わらず、何とか現場に駆け付け、
菅野さんが見つけたサビ猫を捕獲しました。

 

突然のことで、チケットの使える病院の予約がとれず、
チケット頼みでTNRをしているユミさんはお手上げ。
菅野さんが別のボランティアさんに猫を引き渡しました。
そのボランティアさんが高い病院に連れて行ってしまい、
手術代、抗生剤等で20000円以上の医療費になったそうです。

私は全てが終わった後で、そのことを知り、
「全部こちらで済ませたからお金を出してくれないか」
という打診に少々疑問を感じました。

数日後、病院からの領収書と引き換えに、
ねこ藩が半額負担すると伝えましたが、
(どんな場合でも、ねこ藩は3割~5割負担ルール)
「領収書とか面倒くさいことを言うならもう結構。
今後は自分で勝手にやります。」
と返信が来ました。

それは大変でしたねと、さっと財布から1万を抜き取って
相手の手に握らせるようなカンパの仕方。
長年そういうやり方をしてきた年配の方々には、
団体の資金だからとか、帳簿につけているとか、
エビデンス(領収書)が必要だとか、
そういう事務的なやり方が受け入れられないのだと思いました。

 

 

 

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これで、とりあえず●●の場所で見かける野良猫達は
全て耳カット入りの猫になりました。

 

ユミさんは免許は持っていますが、車を持っていません。
雨天であっても、自転車の後部に捕獲器を積んで、
2駅先にある動物病院まで何度も往復しました。
お仕事をしながら、寝不足になりながらの2ヶ月間。
ユミさんは頑張ってやり切りました。
20代後半で、このような活動をしている方を
私はこの地域でほとんど知りません。
出会った頃は、時間を守らなかったり、
常識的な行動をとらなかったりして、
「?」と思うこともありましたが、
今ではなかなかの頼もしい女性です。

 

 

長年、野良猫達に餌を与えているIさん、Yさん。
餌を与えるだけでなく、不妊手術も行って下さっていたら、
後から後から病気の子猫が生まれずに済みましたし、
猫がいるからと通行人が餌を置いていくこともなかった。
あの場所はもっと早い時期に変わっていたかもしれません。

お二方にはそういう考えは全くありませんでした。

「野良猫の話なのに、なんで個人(私だけ)がお金を出して
手術しなくてはならないのか。」

という考えの餌やりさんはあちこちにいるでしょう。
残念なことに、そのような方がいる餌やり場では、
環境の改善は望めません。

「手術をしてあげたいけれど経済的に余裕がない」
というケースもあるとは思います。
実際、TNRはお金がかかりますし、
誰に相談していいのかわからなかったりして、
どうしようもないこともあります。

 

 

●●の場所に限っては、どんどん状況が悪化していった、
というわけではなさそうです。

複数のメスが妊娠出産を繰り返しますが、
生き延びられない子猫も多いので、
出産シーズンに一時的に頭数が増えても、
爆発的に総数が増えることがない。
常に一定数の猫が生息している。
それが当たり前の環境。

同じ路地には、猫を迷惑だと思っているお宅もありますが、
だからと言って何かをするわけではありません。
何年もの間、野良猫だらけの路地だったことは、
Iさん、Yさんだけのせいではありません。

 

今回、ユミさんがTNRをしたことで、
Iさん、Yさんにお気持ちの変化はあったでしょうか?
若いユミさんが、ひとりで奮闘してくれたのだから、
今後新しい猫が来たら、自分達でも何とかしなくちゃと思うかしら?
それとも、自分達が動かなくてもユミさんがやる、と思うのでしょうか?

私は後者ではないかと思います。

 

 

住宅街で、ボランティアが1から10までをやってしまうと、
困った時は、ボランティアに連絡すれば、
勝手にやって来て、何でも全部やってくれる、
ボランティアとはそういうものだと
思われてしまう可能性があります。

「これとこれはボランティアに手伝ってもらうが、
あとは自分達でやらなくては」という意識が
住民の方々の間に、芽生えにくくなる。

 

それが、準備を含む捕獲作業、病院への運搬作業等、
労力のことだけならばいいのですが、
金銭的なことも全てボランティア頼み、
という方があまりにも多いのです。

ボランティアに出来ることならば喜んでお手伝いする、
だから、住民の方々も(餌やりも含めて)、
出来ることで協力をしていただけませんか?
ということを、細々と地味に広めていくしかないのです。

 

 

 

 

The End.