前回のお話。
2020年7月7日のブログ
「依頼者が消えました。:①猫ボランティア」

依頼者が消えました。:①猫ボランティア

 

 

 

 

最近、自宅まわりに野良猫が増えている。
費用は負担するのでメスだけでも避妊手術を済ませたい。
協力してくれるボランティアさんを紹介してほしい。

 

 

市役所に寄せられた住民のリクエストに応え、
ボランティアが動こうとした途端、
「い~ち~ぬけた~。あとはご自由に。」と、
リクエストしてきた本人が消えてしまいました。

 

 

 

あ、そう。
じゃあ、そのままでいいんじゃないの?
私達だってひまじゃないんだし。

 

 

と、問題現場をスルーすることは出来ます。
善意でお手伝いするのがボランティア。
義務も責任もありません。

 

しかし、私にはどうしても気になることがあり、
そのまま見過ごす気持ちにはなれませんでした。

 

 

 

2016年11月、初めて参加した「いちかわ市民まつり」でのこと。
ねこ藩ブースに、ひとりのおばさまが相談に訪れました。
まだまだ若々しい70代後半のおばさま・橋本さんです。

 

「自宅付近に未不妊のメス猫がいてご飯をあげています。
だいぶ前に、ボランティアさんに避妊手術をお願いしたんですが、
お忙しいのか、なかなかいらして下さらなくて、困っているんです。」

橋本さんが避妊手術を依頼したボランティアというのは、
ベテランボランティアの三木さんでした。

 

その頃の三木さんは、ホームヘルパーのお仕事と、
何年も寝たきりのまま、胃瘻(いろう)で生き永らえている
お義母さまの介護に1日のほとんどの時間をとられてしまっていて、
ボランティアとして動けるのが夕方の30分足らずの時間か、
その日の家事と介護が終わる真夜中の1時間足らずでした。

また、三木さんは常にあちこちの捕獲を頼まれている状態。
1匹だけのTNRを依頼している橋本さんを
後回しにしていたのかもしれません。

 

とにかく、その未不妊のメス猫が妊娠・出産してしまっては困りますから、
引き受けた以上、早く三木さんに動いていただくか、
三木さんが無理ながら、私が手伝いに入ろうと考えました。

 

すぐに、その旨を三木さんに確認したところ、
「ああ、あそこね。やります、やります。」
と、うんざりした感じのトーンで返事が返ってきました。

 

2週間後、橋本さんの件がどうしても気になり、
仕事に行く途中、橋本さん宅を訪れてみました。
インターホンを鳴らすと、橋本さん宅の敷地を出て、
道の反対側に歩いていく若いムギワラのメスを見かけました。
その猫がエーコちゃんと言って、橋本さんが三木さんに
TNRをお願いした猫でした。

イベントの数日後、三木さんが慌ててやってきて
TNRして下さったそうです。

 

 

 

本題に戻ります。

 

 

市役所に相談の連絡をしてきたYNさんのお宅は、
エーコちゃんにご飯をあげていた橋本さん宅と
目と鼻の先の位置にありました。

あの路地辺りにいたメスはエーコちゃんだけだった。
この4年で、野良猫がたくさん増えたということは、
どういうことなんだろう。
エーコちゃん以外のメスもいて、
どんどん出産を繰り返してしまったのだろうか。
三木さんはその後、定期的に様子を見ることは
しなかったのだろうか。

と疑問に思ったのです。

 

 

 

消えた依頼人・YNさんはもうあてになりませんから、
私は、ベテランボランティアのKさんと一緒に、
橋本さん宅を訪れました。

 

 

現場です。細い路地が南北に2本。

 

 

「あら!ちょうど良かった、連絡しようと思っていたところ。
ご飯を食べに来ている猫に、1匹メスがいるので、
避妊手術をお願いしたいと思っていたところ。」

橋本さんは、待ってましたという感じでした。

 

 

橋本さんによると、野良猫の数は相当増えているようでしたが、
橋本さん宅敷地に来るのは2-3匹のみ。
橋本さん宅に置いてある餌を食べているのは、
そのメス猫と、オス猫1-2匹だけかもしれないということでした。

 

「かもしれない」というのは、
橋本さんは猫に対面でご飯をあげているわけではないので、
ご自身でよくわかっていらっしゃらないのです。
野良猫が来たら食べられるようにと、
カバーをかけた自転車の下に常に置き餌をしているに過ぎません。
決まった猫に給餌をしているという形ではありませんから、
はっきりと猫の特定が出来ていないのです。

 

たくさんの野良猫がいるという相談でしたから、
そのメス猫だけ手術しても、状況はあまり変わらないでしょう。

 

 

私とKさんは、2本の路地を順々に歩いて回り、
7-8軒のお宅から話を伺うことが出来ました。

 

依頼者YNさん宅の前には猫の姿が見えませんでしたが、
YNさん宅と背中合わせになっている、
隣の路地の細谷さんのお宅前に行ってみると、
屋上バルコニーに繋がる外階段の上に、
まだ小さめのサイズの猫の姿が2匹確認できました。
生後半年くらいにはなるでしょうか。

 

 

「猫は苦手なんです。」
「興味がないので気付かなかった。」

というお宅もありましたが、
「野良猫が増えて大変困っている、迷惑だ!」
と怒ったり、不満を抱えているような住民はいない、
といった印象を受けました。

 


あそこのお宅でもご飯をあげているようだと聞き、
伺ってみると、外にお皿とお水がありました。

 

 

 

時間にして、2時間もかからなかったと思いますが、
この日、色々と情報を集められたことで、
何を優先して行えばいいかが見えてきました。

 

●猫達にご飯をあげている方々がいること。
●猫達が増えてしまった経緯を知る人がいること。

 

この日わかっただけでも、餌をあげているお宅は4軒。
私達が知らないだけで、まだ数軒あるかもしれません。

 

また、猫たちがいつどこで生まれ、
どれが母猫で、どれが子かがわかると、
全体数の把握が容易になります。
子猫、成猫、オス、メスと、
個体の詳細が明らかになっていれば、
優先順位がつけられますし、
色柄がわかっているということは、
探しやすくなるということですから。

 

費用のことはまた別の話、今後の課題としても、
みなさん、不妊手術という言葉にホッとされているようでした。

 

 

この日、路地で出会った小柄なムギワラ猫。
4年前に見かけたエーコちゃんそっくりな猫。
この子が橋本さん宅でご飯を食べている子です。

 

 

体がとても細く、やつれている印象を受けました。
ご飯を食べているのにこの体型?
それとも何か病気を持っているの?

 

人にすり寄ってくるような猫ではありませんが、
警戒心はそれ程持ち合わせていないようで、
撮影しようと近くに寄っても逃げません。

私はこの可愛いらしい猫を、
ルルちゃんと呼ぶことにしました。

 

 

情報を集めをした翌日のこと。
橋本さんが慌てた様子で電話をしてきました。

「大変!子猫が生まれてる!」

 

 

To be continued・・・