前回のお話。
2020年7月16日のブログ
「依頼者が消えました。:②とっかかりを探す。」

依頼者が消えました。:②とっかかりを探す。

 

 

 

 

 

「大変!子猫が生まれてる!」

情報を集めをした翌日のこと。
橋本さんが慌てた様子で電話をしてきました。

 

 

子猫が生まれちゃってるって、どういうこと!?

 

 

お会いして、ルルちゃんの避妊手術の話をしたのが前日でしょ。
見かけたルルちゃんは痩せこけていたでしょ。


明らかに痩せています。

 

 

あれは、出産後の体形だったということなの?
餌をあげている橋本さんは、
ルルちゃんのお腹の大きさに気付かなかったの?

 

 

あ、そうか。
橋本さんの問題はここだ。

 

 

猫の為に置き餌をしているが、
どの猫が何時頃、置き餌を食べに来ているのか、
猫の観察をしているわけではない橋本さんにはわからないんだ。
お腹が大きいことに気付かなくても不思議はない。

 

橋本さんによると、その日の朝、
ルルちゃんが隣りの空き家の庭に入って行ったので、
後をつけ、ちょっと覗いてみると、
子猫がうろちょろと走り回っているのが見えたそうです。

橋本さん宅の玄関から、子猫がいる隣りの庭までは
ほんの7-8メートルしかありません。

子猫が走り回っているということは、
生まれてから2週間以上は経過していると思われますが、
橋本さんは本当に気付かなったのだろうか。

 

もしかして、本当はわかっていたけれど、
どうすることもできなくて、
とりあえずルルちゃんだけは避妊手術しなくちゃ!
と思っていたところに、タイミングよく、
Kさんと私がやって来た…とか?

 

まあ、そんなことはもうどうでもいい。

 

 

「今後のことをこちらで検討しますから、
とりあえず、子猫達が休めるような箱を
おいてあげて下さいますか。」

 

橋本さんにはそのようにお願いしました。
そして、Kさんともうひとりのボランティア・Nさんに、
その状況を伝えました。

 

 

私は仕事と用事がぎっしり詰まっていて、
やっと現場を再訪出来たのは、
橋本さんに箱の件をお願いしてから4日目のことでした。

 

驚かさないように、そうっと陰から除いてみると、
庭に置きっぱなしになっているちりとりの上に、
サビ子猫2匹と茶トラ子猫2匹が身を寄せ合って座っています。

 

箱がない。

 

 

「おばさま、箱はどうしたの?」

「あの日、昼過ぎに段ボールの箱を置いてみたんだけど、
数十分後に見にいったら、誰も入っていなかったので片付けました。」

 

 

撤収早過ぎ。

 

 

 

私は反論する気にもならなくて、
「後のことはもういいから」
と橋本さんに告げ、急いで帰宅。

10分足らずで、子猫達の避難ハウスを作り、
また現場に向かい、庭に置いてみました。

 


夜は気温も下がってきていますから、暖かい敷物を。

 

 

子猫達は警戒して、物陰にささっと隠れましたが、
興味津々で出てきたり、また引っ込んだり、
走り回ったりしています。

 

 

 

 

子猫用ちゅーるとパウチを混ぜたものをハウスの中に置くと、
匂いにつられて、我先にとハウスに入っていきました。

 

たまたま家に1缶だけあったカロリーエースとパウチを混ぜたものを、
ルルちゃん用ご飯にと、お皿に入れて持ってきていたのですが、
庭にルルちゃんの姿がありません。

 

 

帰りに橋本さん宅の玄関を除くと、大きなオス猫が
橋本さんの置き餌を夢中で食べていました。

 


大きい茶トラ男子が食事中。

 

 

 

道を挟んだ向かい側の家の前に、
ルルちゃんが座っていることに気付きましたが、
その姿は、オス猫が食べ終わるのをじっと辛抱強く、
待っているように見えました。

 

 

 

 

橋本さんは、他にオス猫1-2匹も、
置き餌を食べに来ているようだと言っていました。
この茶トラがそのうちの1匹なのでしょう。

もしかしたら、ルルちゃんは、
オス猫達に先を越されてしまい、
充分な食事が摂れないでいたのかもしれない。

 

 

私は持ってきたフードをルルちゃんの顔の前に差し出しました。
鼻をヒクヒクさせたルルちゃんを、隣の空き家の玄関まで誘導し、
そこにお皿を置きました。

ものすごい勢いでガツガツと食べ始めたルルちゃん。
相当お腹が空いていたことがわかります。

どうか、ルルちゃんと子猫達がハウスに入って休んでくれますように。
祈るような気持ちでその晩は帰宅しました。

 

翌日、様子を見に行って下ったボランティアのNさんから、
子猫達がきちんとハウスの中に入っていたと聞かされました。

よかった。

 

 

 

 

 

一方、反対側の路地にある細谷さんというお宅。
バルコニーに通じる外階段の上に、
若い猫がいるのが見えたあのお宅です。

 

 

【現場の地図】


HA宅・・・橋本さん宅
HO宅・・・細谷さん宅
YN宅・・・もともとの依頼人宅
★印・・・餌やりをしているお宅
・・・出産場所

 

 

 

Kさんと一緒に路地で聞き取り調査をしていた際、
外階段の上に猫がいるのを見かけ、
お話を伺おうとインターホンを押したのですが、
お留守のようでした。

細谷さん宅の表札の横には、
企業名の書かれたプレートがありました。

「この会社知ってる、どこにあったっけ?」

私もKさんも、会社の名前はわかるのですが、
さて、その会社がどこにあったかが思い出せず、
スマホで検索し、会社の場所を確認しました。

 

「そうだ、あの道沿いにあったわね。」

 

 

 

Kさんと別れた後、私はひとりでその会社に行ってみました。
現場からも、我が家から自転車で5-6分の距離です。

 

応対に出て来た男性の方に事情を話すと、
「わかりました。ちょっと待って下さいね。」
と言って、その方はいったん奥に消えました。

代わって出て来たのは、60代後半くらいの女性。
お洒落で若々しい方で、社長さんのお母さまだそうです。

 

お仕事中にお邪魔して申し訳ないとお詫びし、
仕事の後で、あらためて不妊手術や保護の件で、
お話を伺いたいと伝えました。

 

細谷さんは、物腰の柔らかい気さくな方でした。
細谷さんも猫のことを気にされていたのだと思います。

 

 

その夜、私は再度、現場の路地を訪れ、
細谷さんから詳しい話を聞くことができました。

 

 

細谷さんはこの路地にいる猫達の経緯を知る人でした。

 

以前、細谷さん宅の前に古い空き家があり、
いつの頃か、そこに野良猫が住み着きました。
子猫が生まれて育ち、やがて散っていなくなりましたが、
メス猫3匹が路地界隈に残り、この春また出産をしたそうです。

 

犬は飼った経験があるけれど、猫に関しては全くわからない。
お嫁さんが猫嫌いな為、家で猫を飼うことも出来ない。
でも、空き家で生まれた子猫が成長し、
ちょろちょろと路地に出てくるようになって
細谷さんはとても心を痛めました。

古い空き家は取り壊され、その敷地で、
新しいアパートの建設が始まりました。

 

このままでは猫もどこかに行ってしまい、また増えてしまう。
近所に住む方々も、こうも猫が多くては困るだろう。

そう思った細谷さんは、自宅3階にあるバルコニーに
猫達を招き入れました。

バルコニーにハウスやベッドを作り、
そこでご飯を与えて、お世話をして下さっていたのです。

 

 

バルコニーは外階段を使って上がって行けますから、
出入り自由にして飼っている猫と同じ環境になるわけです。

 

この猫達が時々、外に出かけ、路地で寝そべっていたり、
家の裏手を歩き回っているところを
細谷さん宅と背中合わせに住む住民・YNさんが目撃し、
市役所に相談した。

そういうことになります。

 

 

 

細谷さんによると、路地にはメス猫が3匹がいたとのことですが、
1匹は、現在、細谷さん宅のバルコニーで暮らしていて、
あとの2匹はいなくなってしまったそうです。

 

橋本さん宅前で撮影したルルちゃんの画像をお見せすると、
いなくなってしまった2匹のうちの1匹がルルちゃんだと、
細谷さんが確認して下さいました。

 

 

 

【バルコニーに住んでいる、あるいは住んだだことのある猫】

〇母猫①サビ◆
〇母猫①が8月初めに産んだサビ子猫♀(他の子猫は死亡か行方不明)◆

〇母猫②サビ・・・行方不明
〇母猫②が5月初めに産んだ白キジ子猫♀(他の子猫は死亡か行方不明)◆

〇母猫③ムギワラ・・・行方不明だったがルルちゃんと判明
〇ルルちゃんが5月中旬に産んだ白茶子猫♂・ぷーちゃん◆
〇ルルちゃんが5月中旬に産んだ茶トラ子猫♂・タイガ◆
〇ルルちゃんが5月中旬に産んだ茶トラ子猫♂・とらのすけ◆

 

 

お話を伺った時点で、◆印の猫達が、
細谷さん宅バルコニーの住人(猫)でした。
計6匹います。

橋本さん宅の隣に、ルルちゃんと子猫4匹で
計5匹います。

 

 

11匹いる!

 

 

 

つい3ヵ月前の「こねこ増殖事件」
どころではなくなりそうな予感。

 

 

 

To be continued・・・