前回のお話。
2021年2月10日のブログ
ねこ藩城下の猫たち:⑨トントンを知る(2)。

ねこ藩城下の猫たち:⑨トントンを知る(2)。

 

 

トントンの要求鳴きの理由のひとつは「食事量の不足」、
つまり、空腹を訴えていることがわかりました。

 

次に、原因を究明し、改善が必要とされるのは、
「家の中を歩き回りながら鳴く」という行動です。

 

「うろうろと歩きまわる」という行動は、
他の猫にもみられる行動ですが、
なぜ、猫は「うろうろと歩きまわる」のでしょうか。

 

 

 

 

 

本来、猫科の生き物は、狩りをして食料を得ることと、
安心できる寝床を確保しておくためにテリトリーを持ちます。
テリトリーとは縄張りのことです。
猫科の生き物はテリトリー意識がとても高いと言われています。

 

そのテリトリーは他の存在に侵されてはなりません。
毎日、テリトリー内をパトロールし、
テリトリー内に異変がないかどうかを確かめます。

そして、「ここは私のテリトリーだ。」と他の個体に知らせる為、
テリトリー内にあるものに体を擦り付けたり、
尿をかけたりして、自分のにおいをつけます。
この行為をマーキングといいます。

人間が「ここは私有地。無断で入るべからず。」と
貼り紙を貼るようなものでしょう。

 

室内飼いの猫のテリトリーは、当然のことながら、室内です。
自分のハウス、ベッド、食事をする場所やくつろぐ場所、
ご飯をくれたり、撫でてくれる人間の手、
そして、その人間そのものもテリトリーです。

また、実際に歩き回ったりマーキングすることは出来ないが、
猫の目に映る場所もテリトリーの一部なんです。
室内飼いの猫の場合、「外の景色」です。

テリトリーは猫が安心できる場所でなくてはなりませんが、
テリトリーの中には「探索したい場所」と「見張り場所」が含まれています。

 

「探索したい場所」とは、普段あまり入れない部屋、
トイレや風呂場、押し入れやクローゼットの中など。
猫の出入りが禁止されている場所で、
猫が「そこに入って行けそうなのに行けない」と
わかっている部屋なども、「探索したい場所」です。

 

「見張り場所」とは、通行人、車の往来、鳥などの動きなど、
常に何らかの変化がある場所(通常は屋外)を監視するところです。
完全室内飼いの飼い猫は家の外に出ることはありませんから、
「見張り場所」から外を眺めて、監視することになります。
それが出来るのが「窓」です。

 

 

 

 

 

 

よく、飼い猫が窓辺に座り、じっと外を見ていることがあります。
まるで黄昏れているかのように窓から外を眺めている愛猫の姿に、
「ああ、外に行きたいんだな」と思っている飼い主さんもいます。

飼っている猫が野良出身の場合、外への未練が断ち切れない猫も
中にはいるかもしれませんが、
多くの場合、この行動は「観察」「見張り」であり、
猫にとっては欠かせない日課です。

 

自分のテリトリーに何か変わったことがないかどうか、
チェックしているんですね。

 

 

 

 

トントンの行動を記したメモを見ると、
トントンが歩き回るコースは、毎回ほぼ同じルート。

「うわああん、うわあああん」と鳴きながら、
1階のリビング~勝手口~廊下。
ルーティンのように、何度もぐるぐると歩き回ります。

 

動物園にいるクマやトラが、柵の中で、
同じ場所を行ったり来たりしていることがありますが、
あれはストレスからくる行動だと聞きました。
トントンの行動もストレスのせいか?

 

いや、多少のストレスは感じているかもしれないが、
どうも違うように思える。

 

トントンは、窓や玄関など外の空気を感じられる場所に行き、
網戸や壁をカリカリしたり、体当たりしたりすることはありません。
つまり、外に出たいという気持ちはない、とは言いませんが、
外に出たいという要求は強くなさそうです。

 


リビングの掃き出し窓。左側のお宅の庭、塀向こうにある木々と鳥たち、
路地に入ってくる人間達の動きが見えます。

 


飼い猫のくりこも好きな勝手口。裏のお宅の住人の行き来が見えます。
ここはあまり陽が当たらないので、開けておくと秋冬は寒い。

 


玄関横の窓。
駐車スペースや、右隣のお宅の庭が見えます。

 

 

 

 

リビングの掃き出し窓~勝手口~玄関横の窓。
ぐるぐると回り、要注意場所のチェック。
そして鳴く。

 

あっ、わかったかも!

 

トントンは、自分のテリトリーを、
しっかりと目で見てチェックすれば満足ですが、
時々、テリトリーチェックをする場所が、
何かによって塞がれ、視野が遮られてしまっている。

 

例えば、勝手口の網戸は、喚起の為に開けておくこともありますが、
夜は閉めてしまいますし、また寒い日も開けません。
玄関横の窓は、時々、出かける際に持って出るものを置いてあります。
それが、折り畳みケージや、寄贈品の段ボールなど、
かさばるものであれば、窓を塞いでしまいます。
リビングの大きな吐き出し窓は、太陽光が入る場所ですが、
気温が下がってくれば、外のシャッターを完全に閉めてしまいますから、
庭を見ることは出来ません。

 

トントンが鳴いて歩き回っている時に、確かめてみると、
やはり、そうでした。

 

特に勝手口の網戸。

 

テリトリーチェックをしたいトントンにとっては、
それが出来ない状態になってしまい、
「ちょっと~、見えないよ~」ってことなんですね。

 

また、網戸越しに、他の庭猫達と挨拶をしています。
時には、くららが勝手口の外に座ってくつろぎ、
トントンは網戸の内側で同じように静かに座っている。
庭猫時代い仲良しだったくららとトントン。
社交の場所でもあるようです。

 

 

 

 

外にいた頃、トントンは、よく動きまわる猫でした。
風で揺れる草木、地面に落ちた枯れ葉、
フェンスに掛けて干してあるマット・・・。
そんなものまでターゲットにして遊んでいました。

時々、私が、ヘビに見立てた長~い紐を持って、
路地の端から端まで小走りに移動すると、
トントンは野生の獣のように、
いつまででも紐を追いかけ、遊んでいました。

 

猫は1日に5-6度、真剣なハンティングモードになるそうです。
この時に「獲物を追いかけたい・狩りたい」という欲求が
満たされるような行動をとらせる必要があるのです。

要するに、1日にある程度決まった運動量をこなさないと、
それは猫のストレスに繋がります。

 

運動不足。

 

 

室内に入った途端、トントンの日常には
「運動したい要求」が満たされる頻度が
極端に少なくなってしまったのです。

 

 


庭猫時代。

 

 

 

仕事、家事、ボランティア活動に加え、通院などの用事。
少しでも時間が空くと、たまっている雑用を詰め込みました。
トントンはおろか、飼い猫2匹と遊んであげる時間さえ、
とれない日々が続いていました。

 

これじゃ、だめだ。

 

 

3分でもいいから、相手をしてあげなくては。
遊ぶ時間がないのなら、ひょいと抱き上げて、
「忘れてないからね。」と声をかけるだけでも良かったのです。

「はいはい、わかった、いい子、いい子」と
簡単に頭を撫でたり、お尻をポンポンして終わるのではなく、
対話の相手をして向かい合ってあげなくてはいけなかったのです。

 


そばに座り、私の作業をずっと見ているトントン。
性格が甘えん坊なだけに、かまってもらえずに、
ちょっと寂しさを感じていたのかもしれません。

 

 

 

To be continued・・・