前回のお話。
2021年3月3日のブログ
「当事者不参加型?:(1)地元の定義とは。」
https://nekohan.jp/archives/13328

 

 

昨年5月に、別の地域に住むボランティア・Mさんから届いたメール。

 

「何かご存じでしたら教えて下さい。
知人を介して母猫・子猫の情報が入りました。
後ほど見に行くつもりです。場所は…。」

と、居酒屋の場所が書いてありました。

 

 

 

うーん、場所はわかるけれど、
あの辺りの野良猫のことは全くわからないな。

 

母猫・子猫を見かけたことがある!
という人がいるかもしれないと思い、
「あの辺りにいるらしい猫のこと知ってる?」と
知人達数名にメールを転送してみましたが、
「店には(客として)行ったことあります。」
という返答があっただけ。

 

 

 

実際のところ、そのボランティア・Mさんは、
「母猫・子猫を見かけた」という情報を知人からもたらされただけ。
母猫・子猫に餌やりをしている本人から依頼されたわけでも、
誰かが役所や保健所にクレームしてきたわけでも、
店のあるエリアで問題となっているわけでもない。

 

母猫の不妊手術を行い、子猫を保護するか、
または、時期を待って子猫も母猫同様不妊手術する。
ボランティア的にはそれが理想だとは思います。

 

しかし、仕事と家事の合間を縫って
ボランティア活動を行っている者にとっては、
相談事やお手伝いでほとんどの時間が取られている状況ですから、
単に猫がいるというだけで、何のSOSも出ていない場所に、
自ら踏み込んで行くような時間がないのが現実です。

 

どこかに野良猫いないかな~と自分でパトロールに出かけ、
捕獲や保護目的の猫案件を探しに行くほどの暇がない。
そういうことです。

 

 

 

その頃、私は自分の体調に気をつけながらの毎日で、
ボランティア活動はほぼお休み中でした。
保護猫のお見合い、お届け、数匹のTNRを行ったくらいです。
(実際はもっと細々としたお手伝いもありましたけれど。)

 

新型コロナウィルス感染拡大防止の為の、
外出自粛要請も出ていましたから、
屋外での活動も必要最低限に留めていました。
それが、健康の回復にはちょうどいいくらいの活動内容。

 

ここで、昼夜問わず、捕獲や保護の為に現場に足繁く通い、
不妊手術等で、往復+診察で2時間の通院を何度も繰り返し、
保護した子猫の里親探しに時間と労力を費やすとどうなるか。

 

困っている方がいるなら助けたい。
救える命があるなら救いたい。

 

心ではそう思っていても、
ここで自分が中心になって動けば、
これまでの5ヵ月の養生が無駄になり、
また振り出しに戻ってしまう。

 

この案件は今の自分が関わるべきことではない。
私はそう判断しました。

 

 

 

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数匹の猫達がいる現場において、
不妊手術を目的とした捕獲や子猫の保護を行う場合には
依頼者の有無に関わらず段取りがあると思うのです。

 

 

その1:「場所」

 

土地には2種類あります。公共の場か、私有地か。
私有地であるならば、その土地に入る許可が必要です。
勝手に入って作業をしていると、不法侵入で訴えられることがあります。

 

 

その2:「対人」

 

その猫達に餌をやっている人がいるのかどうかを知る必要があります。
また近所の方々が餌やりについて知っているのかどうか、
そしてそれをどう考えているのか、話を聞くことも大切です。

ボランティアはあくまでも、手を貸す側ですから、
ボランティア自身が当事者になって、全責任を負わされることは
極力避けるのが賢明だと思います。(あくまでも私の考え)

 

餌をやっている方がいる場合、まずその方に話を伺ってみます。
どんなメス猫でも未不妊ならば必ず妊娠出産しますから、
そこに危機感を持っている方ならば、
不妊手術の必要性は認識しています。
そして、自分だけで事を進められない場合は、
市や知人やボランティアに相談するはずです。

 

出産により猫が増えているということは、

①不妊手術をする手筈を整えていたが、
出産前に捕獲出来ず、タイミング的に間に合わなかった。

②不妊手術をしなくては常々思ってはいたが、
どうしたらいいかわからなかった。

③自分は餌をあげているだけなので、
不妊手術までするつもりはない。

 

 

だいたい、上記3つのどれかに当てはまります。
①と②は、ボランティアがお手伝いしやすいパターン。
③は餌やりさんの性格にやや難があることも多く、
ボランティアが丸被りになったり、疲弊するパターン。

 

 

当事者がどういった方なのか、必ず対面で話を聞くべきです。
それによって、こちらの出方を変えるという柔軟さも必要です。

 

生まれてしまった子猫達が現場にわらわらといる。
これは大変、捕まえなくちゃ。

その気持ちも理解できなくはないですが、
命に関わりそうな程具合の悪い健康状態でない限り、
直ちに捕獲・保護を開始する必要もないと思います。

まず当事者に話を伺い、状況を確かめる。
それから1-2日後に捕獲・保護作業に入っても大差はないでしょう。

 

稀なケースになると思いますが、
当事者(餌やり)がご自身の知人友人をあたって、
既に子猫の貰い手を確保していたことが過去にありました。
そういう状況で、許可なく勝手に敷地に入り、
子猫を保護してその場から連れ去ってしまうと、
後々揉める可能性は大です。

 

(3)人手

 

その場所でTNRの為の捕獲、保護を行う場合、
その作業に協力できる人間を確保することも大切です。
事前調査、捕獲作業、病院への運搬、療養預かり、保護猫の預かり。
人手があればある程、作業の分担化が出来ますから、
一人あたりの作業負担は軽くなります。

 

他のボランティアのお手伝いがどうしても必要な場合には、
事前に「こういった計画がある」「人手が要る」ことを伝えておきます。
独断で始めてしまってから、自分だけではどうにもならなくなり、
SOSを発しても、必ずしも望む「人手」を得られるとは限りません。

仕事、家事、子育ての合間にボランティア活動をしている方が多いでしょうし、
皆それぞれ、ご自身の生活の中で予定というものがあります。

ボランティアというのは自発的に行動を起こす人のことです。
ボランティアは皆、自分の行動エリアがあり、案件を抱えていますから、
突然の応援要請に必ずしも応えられるとは限りません。
他のボランティアが手伝ってくれないと腹を立てるのは筋が違います。

 

 

(4)医療費

TNR予定の猫の不妊手術費用、保護予定の猫の基本医療行為等、
どんな現場であっても、お金は必ずかかります。
どこの懐からこういった金銭が出てくるのかを
最初に確かめておかなくてはなりません。

速やかに地域猫団体登録を済ませ、
タイミング的に助成金で賄えるのか、
現場近くの住人、あるいは餌やり本人が、
費用全額、または費用の一部を負担できるのか。

最初に明確にしておかないと、
ボランティア側の自己負担になることが多いです。
猫問題の解決を手伝うはずのボランティアが、
お金まで出してあげるボランティアになってしまいます。

 

 

 

現場で何らかの作業に入る前には、
必ずこういった基本的な事前準備が必要となりますが、
これを面倒くさがって、独断で勝手に始めてしまうということは、
全てのことを自分ひとりで丸被りすることになります。

 

大変だ、きつい、辛い、お金が続かない、なぜ私だけ…。
スタートを切ってからいくら文句を言ってみたところで、
他人を責めることはできません。

非情な言い方をすれば、「自業自得」なんです。

 

 

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話を本筋に戻しましょう。

 

 

ボランティアのMさんから、初めて連絡が来た日の翌朝、
若いボランティア・ユミさんからLINEが来ました。

 

「夜中に行って、捕獲してきちゃいました。」

 

 

 

ああ、また、フライングをやらかしたか・・・。

 

 

 

 

To be continued・・・