猫好きで、昔から近所の野良猫達にご飯をあげて下さっている
Kさんというご一家が隣りの通りに住んでいます。
「耳カットのない猫が来ていますが、ご飯をあげてしまってもいいの?」と
連絡を下さることが稀にあります。
稀にというのは、この辺りの野良猫の9割くらいは不妊手術済で、
既に耳カットが入っている猫達ばかりだから。

 

 

ここ数年、Kさん宅では3匹のメスがご飯をもらっていました。
Kさん宅に居着いてだいぶ経つ薄いキジトラのさばちゃん、
2018年秋にTNRした濃い三毛のミーコ、
そして、パステル三毛のうすこ。

 

 

 

 

 

うすこは、2019年頃、初めてKさん宅にやって来た猫ですが、
その時点で、既に耳にカットが入っていました。

どなたが手術して下さったのか。
なぜメスが突然現れるようになったのか。
出自と併せて、うすこは謎だらけ。
しっかりとした体格の成猫でしたから、
初めて現れた時点で2才くらいだったとすると、
現在は5才を過ぎていると思います。

 


Kさん宅の外階段で寛ぐうすこ。

 

 

我が家の庭のくららのように、うすこもKさん宅に定住し、
地域猫として今後もずっと生きていく・・・
と思っていたのですが、昨年の春、
「うすこが、最近、姿を見せなくなりました。」
とKさんから連絡がありました。

 

 

外で生きている猫は常に危険と隣り合わせです。
まず市の清掃課に問い合わせてみましたが、
直近のこの数か月間、パステル三毛の亡骸を
この近辺で回収したという記録はありませんでした。

 

 

 

 

どこに行ってしまったんだろう。
全く人慣れしていない猫というわけではないから、
誰かに懐いて付いていってしまったのかしら。
どこかでご飯をもらって元気にしているといいのだけれど。
Kさんは心配していました。

 

 

 

2ヶ月程経って、再びKさんから連絡がありました。
「昨日、うすこを見かけたんです!
我が家から100m程離れた路地に入っていきました。
今、うすこはあの路地に住んでいるんでしょうか。」

 

 

Kさんは、猫のボランティアと違い(笑)、
猫の消息を訊ね歩き、誰かれ構わず話しかけるような
積極的な性格の方ではありませんので、
「一緒に捜索してみまようか」とKさんをお誘いし、
うすこを目撃したという路地の奥に入っていきました。

 

 

 

なんだこれ!?

 

 

路地の一番奥にある、敷地の広いお宅。
前は駐車場であったと思われるその広いスペースに、
可愛らしい猫ハウス、可愛らしいベッドやマット、
猫トイレ、おもちゃが並べられた台。

目の前に現れたのは、紛れもない
外猫さん大歓迎ランド」です。

 


防水性ばっちりのココちゃんハウス(ご主人DIY)

 

 

 

それにしても色鮮やか。
海外の風景写真で見たことあるわ、これ。
参考例 ↓ ↓ ↓

 

 

 

迷わず即インターホンを押すと、
玄関に出て来て下さったのは、ご高齢ではありますが、
姿勢もよく小奇麗ないで立ちのご夫妻でした。

 

その後、ご夫妻とKさん、私、
30分くらい立ち話をしていたでしょうか。

 

 

つまりはこういうことです。

 

Kさん宅からいなくなったうすこちゃんは、
2ヶ月前くらいから、こちらのHさん宅の庭に住んでいること。
Hさんご夫妻は、ここちゃんと呼んでいること。
ご自身の年齢を考慮し、また、猫飼い経験がない為、
家に入れて飼ってあげることができないと判断し、
お庭で世話をしているということ。

 

 


(うすこはHさん宅の庭でのんびりしていました。)

 

 

Hさんご夫妻は、ここちゃんのことが
可愛くて仕方がないようです。

 

 

Kさん宅には時々他のオス猫達が来ることもあり、
少し猫人口が多いように思っていました。
また、Kさんは、お隣の住人の義理の息子から、
猫の件で嫌がらせを受けていたこともあり、
結果的に、うすこちゃんが他に移動することにより、
Kさん宅の地域猫の頭数が少なくなって
むしろ良かったのではないでしょうか。

 

 

Kさんも、「Hさん宅にいてくれる方が安心。」
とおっしゃっていました。

 

 

 

 

その後、HさんはLINEでうすこ(ココ)の近況を
知らせて下さるようになりました。

 

「他の猫が塀の上からココを見ています。」
「夜みたら、ココがハウスにいないんです。」
「ココはご飯の後、どこに出かけるんでしょうか。」
「ココが液体と草のようなものを吐きました」
「ココがおもちゃに反応しません」
「ココが・・・ココが・・・ココが・・・」

 

 

えっと、それ普通・・・

 

 

 

さすが太鼓判つきの立派な猫初心者。
何でも心配の種になります。

 

 

 

今年の2月末、久しぶりにHさんから電話が来ました。

「子供達とも話し合って、ココを飼い猫にしました。
1ヶ月前から室内で暮らしています。」

それは良かった!

「家に入れてそのままで、病院には行っていないんです。」

それは良くない!

 

「クチュール? クチュールとは何ですか?」

クチュールじゃなくて、駆虫ね、駆虫。

 

 

 

 

ということで、ご夫妻とココちゃんを載せて、
病院に行くことになりました。
まだキャリーを購入していないというので、
事前にキャリーをお届け。

 

「猫を洗濯ネットに入れてからキャリーに入れて下さい。
洗濯ネットが難しければ、そのままキャリーにお尻をポン。
病院の診察台の上で、洗濯ネットに入ってもらいますから。」

 

 

通院当日の朝、電話がかかってきました。
Hさん(おばさまの方)は、涙声です。

「大変です。ココをキャリーに入れたら、
オオカミの遠吠えのように鳴いています。
具合が悪くなったんじゃないでしょうか。」

 

チガイマース。
ネコ、キャリーキラ~イ。
ビョウインキラ~イ。
ダセ~、ト、ナク。
イジョウ。

 

 

 

 

ココちゃん、Hさんご夫妻にとって、初めての通院です。

駆虫、三種混合ワクチン、血液ウィルス検査、
血液成分検査、肛門腺絞り、耳掃除、爪切り、
口内チェック、触診・・・。

 

 

 

猫エイズ、猫白血病共に陰性。
歯と歯肉は様子見ですが、今すぐどうこうの話ではない。
他に問題はありませんが、ひとつだけ。

 

 

肥満気味。

 

 

 

Hさんご夫妻が与えているフードはカルカンドライでしたので、
買い置きした分がなくなり、次に新しいフードを購入する時に、
何点か「去勢避妊後の猫用」フードを紹介しようと思います。

 

 

 

 

 

 

地元の猫は地元の方に飼っていただきたい。
それが保護猫であれ地域猫であれ。
私が常々、望んでいることです。

Hさんご夫妻が譲渡会に参加しても、
ほとんどのボランティアさんは
Hさんに猫を譲渡することはないでしょう。

既に免許を返納してしまったご高齢のご夫婦であり、
猫飼い経験で、猫に関する知識をほとんどお持ちでない。

ご夫妻も最初は、ご自身のことを客観的に判断して、
猫は飼えないとおっしゃっていました。

しかし、1年近く、うすこを地域猫というよりは、
自宅の庭猫として世話をしてきて、強い情が湧いたのだと思います。
息子さんご一家、娘さんご一家にも相談して決めたとのこと。

 

 

 

 

注意しなくてはならないのは、うすこの脱走です。
雨戸を閉める時、玄関の開閉時、
うすこは既に何度か脱走しています。
脱走といっても、庭に10-20分いるだけで、
飽きると自分から家に入ってくるそうですが、
これからも常にそうであるとは限りません。

外にいるオス猫に追い立てられて遠くに逃げてしまったり、
道路に飛び出して車に撥ねられる危険性もあるわけですから、
一度「飼う」と決めて室内に入れたのであれば、
飼い主としてきちんと責任持って管理していかないといけません。

脱走防止柵を設置するべきですが、
まずは人間の意識と注意が必要です。
猫飼い初心ですし、高齢のご夫婦ですから、
ついうっかりはこれからもあるはず。
どうやって改善していくか。
今後、こちらも常に気を配り、
対応していかなくてはならないでしょう。

 

 

 

地域猫活動というのは、不妊手術をした猫に
給餌・排泄の管理をしながら見守っていく活動です。

不妊手術をした猫がその生を終えるのを待つ、
つまり、猫の死を待つ活動だとも言えるのではないででしょうか。

長く生き寿命がつきて亡くなる猫もいれば、
事故や病気で早く亡くなる猫もいる。
ある時を境に全く姿を現さなくなる猫もいる。

そうやって、地域猫は1匹、また1匹といなくなる。

しかし、地域猫として生きていくうちに、
最初は警戒心が強くても、徐々に人慣れしてくる猫もいます。
そういう地域猫が、室内に入り飼い猫や保護猫となるケースは多いのです。

 

猫を飼いたいと考える方は、まず、地元の猫達に目を向けてみてください。
住民の方々、ボランティアの方々が関わっている地域猫達の中に、
もしかしたら、将来の自分の飼い猫となる子がいるかもしれません。

 

地元の野良出身の猫を飼い猫にするということ。
それは、立派な地域貢献だと私は思っています。