ねこいろ ねこがら ねこもよう~A variety of cat coatcolours and patterns

2月25日,2023 | グッズの紹介, 意見, 日々活動

2023年度用ねこ藩カレンダーは完売しております。
お買い上げ下さった皆さま、ありがとうございました。

 

 

毎年製作販売するカレンダーにはメッセージを込めていますが、
2023年度は私個人の経験からのメッセージというよりも、
「猫」という生き物について原点に戻って考えてみることにしました。

同時に、私達が三毛、茶トラ、キジトラなど、
まるでそれが猫の名前であるかのように表現し、
好き嫌いの判断材料にもなり得る猫の柄の成り立ちは、
猫本人が望んで選んだものではなく、
遺伝子によって受け継がれてきたものだということを
再認識していただきたいという想いもありました。

 

 

毎年の繰り返しになりますが、
カレンダーの製作過程について少々説明を。

カレンダー製作は、各ページのデザインを考え、
表紙、裏表紙と併せて、形にすることから始まります。

次に、月ごとに画像を掲載する枠を作り、
カレンダー1冊全体で何十枚の猫画像が使用できるかを
確認後、主役となる画像集めに入ります。

9月から翌年の8月までの間に卒業していった保護猫を中心に、
それ以前の卒業猫、現在も里親募集中の保護猫、
そして地元の地域猫達の画像が対象になります。

ねこ藩や預かりさん達で所有している保護猫時代の画像と、
譲渡後に里親さんが撮影した画像を集め、
その中から、画素数、背景、角度、猫の向き等を考慮して、
カレンダー画像として好ましいと思われるものを選んでいきます。
これはかなり時間を費やす慎重な作業なのですが、
時間がかかり過ぎてしてしまうと、後の工程に影響が出てしまいます。
(その為に里親の方々には画像提供の締め切り日をお伝えしています。)

通常ですと、どの猫をどの月にもっていくかを考え、
画像の向きや大きさ等を合わせる為に多少手を加えたりして、
カレンダーの枠にはめ込んでいくことになりますが、
今回は月毎(ページ毎)に色柄を決めていましたので、
振り分け作業の手間は少しラクだったように思います。

1月~13月(翌年の年間カレンダーのこと)が出来上がったら、
カレンダーのタイトルと、裏表紙のメッセージを入れて、
カレンダー本体が仕上がります。

その後、カレンダーに添付する解説ペーパーや、
紙製販促フライヤーと、SNS用販促画像を用意します。

これまでの解説ペーパーは、その月に登場している猫の
保護の経緯や現在について記していましたが、
今回は色柄ごとに分けていますので、
その色柄についての解説になっています。

全て準備が整ったところで、告知と販売開始になります。

 

後半戦、販売にちょこっとだけ苦労しましたが、
完売後にカレンダーの注文が何件か遅れて到着したりして、
結果的には例年とあまり変わらない注文状況でした。

カレンダーが行き渡らなかった方々もいらっしゃいますので、
カレンダー裏表紙のメッセージと解説ペーパー冒頭メッセージを
下に(↓)転載しておきます。

 

 

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ねこいろ ねこがら ねこもよう
A wide variety of cat coat colours and patterns
カレンダー裏表紙より。

 

 

 

 

◆猫のはじまり◆

今から7000万年ほど前、恐竜の絶滅後でも生き残っていた哺乳類がいました。その哺乳類はやがて肉食動物、草食動物と分かれていき、肉食動物の中からネコ科動物の最初の祖先となる哺乳類が現れます。そこからまた長い時を経て、その祖先は、ヒョウ系、ピューマ系、オオヤマネコ系等、いくつかのグループに分かれて進化を遂げていき、350万年程前にようやくイエネコ系と言う最後のグループに辿りつきます。まだこの地上にヒト=ホモ・サピエンスが存在していなかった遠い遠い昔の話です。

現代社会の中で生きている飼い猫、野良猫、野良猫が野生化した野ネコ。雑種であろうと血統種であろうと、それらの全てをひっくるめてイエネコと言いますが、イエネコに最も近い祖先となる猫がいます。現在もアフリカ大陸の一部やアジア南西部に生息しているAfrican Wild Cat、日本名=リビアヤマネコです。野生の猫であるリビアヤマネコの一部は初期農耕の成立に伴い家畜化され、9000年前には既に人間と暮らすようになっていました。リビアヤマネコの外見上の特徴を大きく受け継いだ猫が、野生種と言われる「キジトラ猫」。そのキジトラ猫から様々な色柄の猫が生まれていきました。つまり、キジトラ猫は全ての猫の基本形なのです。

◆猫の毛色◆

毛色の決定には基本となる遺伝子がかかわっています。A(アグーティ=縞模様)、B(黒)、C(単色)、D(濃暗色)、I(銀)、L(短毛)、O(オレンジ)、S(白斑)、T(縞=マカレルタビー)、W(全体的に白)という10の異なる優性遺伝子。そして、D(濃暗色)⇔d(淡明色)、L(短毛)⇔l(長毛)のように、優性遺伝子に対立する13の劣性遺伝子。これらが混ざりあい、白黒、サビ、三毛、グレー、茶トラ等、合計で16種類の基本の毛色が出てきます。三毛の母猫から全員毛色の違う5匹の子猫が生まれる場合もありますし、黒い母猫から母猫そっくりの子猫4匹が生まれることもあります。これは、母猫の持つ遺伝子だけではなく、その母猫の親猫、そのまた親猫等、何代も前の猫から途切れることなく受け継がれた遺伝子の結果であったり、何代かを飛び越して出て来る劣性遺伝の結果であったりするわけです。

白黒、白茶、白キジ等、二色の毛を持つ猫がいますが、お腹側の毛は白く、体の外側に色が出ていることがほとんどです。「背中の方からインクを垂らしたように」とよく言われていますが、背中、頭、続いて尻尾、脇腹というように、体の上部の方に色が多く出ていることが多いからです。
体に縞がある猫でも、その縞の出方には違いがあります。例えばキジトラ猫。背骨に沿った黒い中心線からお腹方面に向かうシンプルな横縞が一番多いですが、アメリカンショートヘアによく見られるような、背骨と平行するように走る縦縞+渦巻のパターンもありますし、縞が途中から途切れたような点々状になり、ヒョウのような模様になっているパターンもあります。

◆血統種の猫◆

ある特定地域にのみ生息し、その環境下で自然に進化を遂げた結果、独特の身体的特徴を持つようになった猫はほんの一部。自然に任せておく、ということだけでは満足できない私達人間が、明らかな身体的特徴を持って偶然に生まれた猫を掛け合わせ、生まれてきた猫をさらにまた掛け合わせるという人為的な繁殖を行い、それにより作り出された猫を血統種といいます。ロシアンブルー、ラグドールなど、ペットショップで売られている猫達のことです。

血統種の中には、いわゆる「奇形」の特徴を持った猫もいます。スコティッシュフォールドの折れ耳、マンチカンの短足。それは猫の体格、行動を考えた時にあまり好ましいものではありません。なにより猫にとって負担となることも多く、他の猫とは違う特有の病気になりやすいと言われています。しかし、外見上の可愛さのために飼い猫として買い求める人間は後を絶ちません。私達にとってはその「奇形」が可愛く魅力的であっても、猫にとっては苦痛のもととなり得ることを忘れてはいけないと思います。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

猫のボランティア活動をしていると、TNRの現場調査や、脱走猫の捜索などを行う際、その地域にいる猫についての情報を集めて捕獲の段取りを組まなくてはならないことがよくあります。目撃者が「しましまの猫」、「トラ猫」と表現した場合、それがキジトラなのか、茶トラなのか、サバトラなのか確かめなくてはなりません。また、「白黒の猫」と表現された猫をよく見ると、実際は白黒ではなく白にキジトラ模様だった。「黒い猫」と表現された猫は、黒味の強いサビ猫だった。「白っぽい猫」と表現された猫は、白地に小さい黒いスポットがあるトビ猫だった。こんなことは日常茶飯事です。

ボランティア同士の間でも、猫の色柄について若干違う表現をすることもあります。ボランティア経験20年以上の年配の方が「サビ」と呼んでいた猫と、私が「ムギワラ」と呼んでいた猫が、実は同じ猫だったなんてこともありました。「この色合いの猫は絶対に〇〇」、といったような正式な名称はないと思いますが、猫の色柄に関する様々な表現を知り、共通の認識をもっていると、話がスムースに進みます。

 

保護猫の里親募集から譲渡までの流れの中で、色柄について気付いたこともたくさんあります。人気のある色柄とそうでもない色柄があること。顔にユニークな柄がある猫が好きな方がいる一方で、そういう柄が好きではない方もいること。「猫が大好きなんです」と言いつつ、キジトラの保護猫をお薦めすると「キジトラは顔立ちがきついから嫌い」、黒猫をお薦めすると「黒猫は不吉だから嫌い」と言う。「アメショっぽい猫が希望」、「小さい顔の猫が希望」、「長毛が希望」、「まっすぐで長い尻尾が希望」等、外見へのこだわりが強い方もいます。猫という動物が好きなのではなく、自分が気に入った猫だけが好きということなのかもしれません。保護猫の写真や実物をご覧になり「この柄の猫がいい」と判断される里親候補者さまも多いですが、色柄というのは、そもそもその猫が持つ遺伝子が表面化したものに過ぎません。

「譲って下さるのならどの猫でも構いません。それがその子と私の縁だと思って、
大切に育てて一緒に暮らしていきます。」

以前、保護猫を見にいらした方がそうおっしゃった時、私は涙が出るほど嬉しかったのを覚えています。

 

 

今回は、猫の色柄をテーマとしていますが、色柄というのは所詮外見上の話。大切なのはその毛皮の内側にある猫の本質です。生まれ育った環境と、保護されるまでの外生活の経験から形成されてきた性格、そしてその性格や本能に基づく行動を理解して受け入れることの方が大切・・・そう思います。

猫という生き物を本当に愛する人が猫に望む唯一の条件は、「猫であること」。
あなたはどうでしょうか?

 

 

 

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「カレンダー解説ペーパー冒頭メッセージ」

 

 

キジトラは「警戒心が強く用心深い」、ほとんどメスしかいない三毛猫はメス特有の「気位は高いが気分屋」、サビは「穏やかで協調性が高い」、黒猫は「甘えん坊で頭がいい」。

色の遺伝子には性格的な要素も含まれていますから、色によって「こういう性格である」と定義づけられたりしています。しかし、それでは同じ色柄の猫は全て同じ性格ということになってしまいます。猫の性格は遺伝子が影響を与える部分と、生まれてから成長するまでの経験で形成されていくものですから、「この色の猫は必ずこういう性格になる」と一概には言えません。

他の仲間達とどうやって付き合いながら生きていくかを学ぶ機会が子猫にはあります。これを「子猫の社会化期」と言って、生後2週間を過ぎた頃から始まり、生後2ヶ月を過ぎた頃に終わります。この時期に、子猫はコミュニケーションを学び、他の仲間との絆を築き、様々なことに適応して慣れていくわけですが、この間、接している仲間が猫達に限られると、人間に対して警戒心を持つ猫になります。逆に社会化期が始まる前、あるいは社会化期の途中で人間に保護された子猫は、人に慣れるのが早く、人に対する警戒心が薄くなります。

「こんなに世話をして優しく声掛けをしているのにうちの猫は一向に心を開かないし、慣れてくれない」という声をよく聞きますが、それはその子が人間を警戒しながら、時には嫌な怖い思いをしながら生きていかなくてはならない状況にいた可能性が高いからで、仕方のないことなのです。しかし、成猫になった後でも猫は経験によって少しづつ変わっていきます。

迎えた保護猫の性格については、「この色柄だからこういう性格」だとか、保護主さん宅では「こういう性格だった」ということは参考程度にして、その子のこれまでの歴史や保護の経緯をよく知り理解した上で、いい経験だと思ってもらえるような環境を整え、その性格に寄り添う形で飼い猫と暮らしていってほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

2023年ねこ藩カレンダーが、これから1年間、
皆さまの(小さな)お役にたちますように。

 

 

 

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ねこ藩士 まさむね

ねこ藩のイメージキャラクター
ねこ藩で一番最初に保護した子猫を基にしたキャラクター。ねこ藩のグッズなどに登場しています。モデルとなったキジトラ子猫まさむねは、現在市内の理容師さんご夫婦と一緒に暮らしています。