2016年2月23日のブログ
②謎の生物と斬新なトライアル
保護主宅での1ヶ月間の「仲良くなりましょうトライアル」を経て、
12月30日にペコはNYさん宅に貰われていきましたが、
その前日の晩、クルの姿が再び室内から消えました。
江川さんは朝自宅を出て、自転車で5分の距離にある店舗に向かいました。
いつものように、2階の窓が閉まっていることを外から目視で確認。
夜帰宅した時には、その窓が少し開いていました。
窓の鍵がかかっていなかったのです。
後日、私も部屋の中から窓を拝見させていただいたのですが、
開けるには人間でもかなり力が必要な窓です。
窓の下に敷いたマットはぐちゃぐちゃになった状態で、
クルが凄い力でふんばって窓と格闘したことを示しています。
もちろん、江川さんは直ちにクルを探しまわりました。
前回の脱走と違い、建物内部ではありません。
完全に外に出てしまったのですから、時間との勝負…と思われました。
程なくして、クルはすぐ近くにいることがわかりました。
江川さん宅裏手の排水溝の中です。
江川さんはまだ小さい子猫の時代からクルを知っています。
クルにご飯を与え、一番身近で常に接していた人間が江川さんですが、
その江川さんにさえ、クルはなかなか懐きませんでした。
手からご飯を食べることもありましたが、威嚇はお約束です。
ちゅーるを差し出すと、クルは土管の中から首を突き出して食べましたが、
どうやら排水溝から出てくるつもりがないようです。
排水管の中に身を隠しているクル
江川さんは毎日フードを入れた捕獲器を排水溝の入り口に運びました。
3か月半の間に2度捕獲器をしかけ、なかなか中に入らなかったクルです。
今回もすんなりとは入ってくれないでしょう。
自宅裏手といっても、ご自身の土地ではない排水溝入口付近に、
夜中捕獲器を置きっぱなしにするのはまずいと思った江川さんは、
100均ショップで材料を購入し、ダミーの捕獲器を作りました。
ダミーの中にフードを入れ、夜中、ダミーの中でご飯を食べてもらうのです。
扉が閉まらないダミーに慣れた頃、本物の捕獲器にすり替えるのです。
捕獲器そっくりです
2016年の2月、2匹を捕獲して避妊手術をした際、
ぺコとクルは人慣れしていない状態で、
療養中ケージの中で大暴れしたので、やむなリリースしました。
リリース後も以前と変わらず、毎日、江川さんが店舗裏でご飯を食べさせました。
リリースから半年経つと、ペコは江川さんに慣れ、
綿棒で耳そうじが出来るほど江川さんに慣れました。
ペコだけ保護して、きょうだいのクルを外に置いたままには出来ない、
そう思った江川さんは、きょうだい2匹を再保護したのです。
もしかしたら、クルの方はまだその時期ではなかったのかもしれません。
保護部屋の生活はクルにとって大変なストレスだったようです。
それでも、クルにはずっと一緒に生きてきたペコがそばにいました。
どんどん人慣れしていくペコと、人慣れせず威嚇を繰り返すクル。
クルの保護猫生活は、ペコがいたから成り立っていたのかもしれません。
クルが入り込んだ排水溝を含め、その一帯には、
その地域の野良猫達のえさ場があります。
近所の出入り自由の飼い猫を含め、
5匹程猫がうろついているといいます。
ここに留まれば食べられると学べば、
クルは遠くへは行かないだろうと、 江川さんは考えました。
排水溝入口付近に置いた捕獲器、そして、ダミー捕獲器。
中のフードはきれいになくなっているけれども、
食べているのがクルなのか他の猫なのか断定できないまま、
ただ、時間だけが過ぎていきます。
子猫の頃から知っている子なのに、
同じ家で3ヶ月近く暮らした猫なのに、
捕獲できないもどかしさ。
すぐ目の前にいるのにクルの存在が遠く感じます。
1月28日 金網越しに江川さんの手からカリカリと焼きかつおを食べる
1月30日 手からチュールを食べる
2月9日 クルの声をきく。確認するとクルが排水溝に入る。
2月14日 側溝を覗くとクルと目が合う。すぐ逃げる
2月15日 病院裏でシャー言いながら、手からチュールを食べる
この日を最後にクルの姿は
江川さん宅裏の排水溝エリアから消えました。
この辺りの縄張りを守っているオスが、えさ場を見張っているようで、
クルは追い払われてどこかに移動してしまったのかもしれません。
クルを再保護し医療行為を受けさせる為に連れていった病院で、
暴れたクルを見て「この子は無理なんじゃない?」と獣医さんが言いました。
旦那さんも「店の裏にいれば、毎日ご飯をあげられるし、
クルはそれで良かったんじゃないの?」と言いました。
自分のエゴで無理に自宅に連れ帰り、
あまりに慣れてくれないので、
もう!って怒りの気持ちをクルにぶつけたりして、
クルには迷惑だったのかもしれない、と後悔しています。
でも、保護しなければ、後々必ず
「どうしてあの時ペコと一緒に保護しなかったのか」
と後悔するに決まってる。
クルが脱走した日、翌日のペコのお届けの準備や片付けで気持ちが緩み、
窓のカギをかけ忘れ、クルに脱走のチャンスを与えてしまった…
晴れて卒業していくペコにばかり気持ちが向いてしまい、
クルのことは後でゆっくり向かい合おうと後回しにしてしまった…
一番出してはいけない季節に不注意で脱走させてしまった…
必死にサッシを空けてどうしても外に出たくてたまらなかったクル。
保護部屋生活に慣れ、外が怖かったペコは、
クルのあけたサッシの隙間から外に出ようとはしませんでした。
2匹には大きな差がついてしまいました。
もしももう一度クルを保護することが出来たならば、
全て仕切り直してクルと1対1で向き合い、何とか頑張りたい。
それでもクルが嫌がるのであれば、
クルの故郷である 店の裏庭にリリースし、
また外猫として世話をしていきたいと思う。
たくさん着込んで真夜中に3時間も現場で見張りを続けた江川さん。
捕獲器は撤収し、近所にチラシも配りました。
クルの無事を願い、 自宅近くの神社、店舗近くの神社、
そして立川にある猫返し神社へとお参りに行きました。
クルが消えてから3週間経った頃、
いつもクルがいた場所に、新しい♀猫が現れました。
To be continued ……..