前回のお話
2025年8月6日のブログ
「ねこ藩城下の猫たち:(18)ニャースに何があったのか。」
https://nekohan.jp/archives/17982
早朝、K病院にニャースを預けた際、
11時半に連絡をしますと若い獣医師は言っていましたが、
その時間になっても連絡はありませんでした。
普段から超がつくほど混んでいる病院ですから、
きっと時間が押してしまっているのでしょう。
とりあえず、ニャースを大きな病院に預けた。
大丈夫、きちんと診て下さるだろう。
自分に言い聞かせつつ、1階と2階を行ったり来たりして、
細々とした家事をこなしてはいましたが、
心ここにあらず、といった感じでした。
何時までかかるのだろう。
心配になってきた3時半過ぎ、K病院から連絡があり、
5時に獣医師の話を伺いに再度病院に出向きました。
早朝の若い獣医師ではなく、優しそうな女性の先生でした。
足の骨は折れていないようですが、
皮膚が広範囲にわたって開いてしまっていますので、
感染症予防の薬を打ってあります。
骨盤には骨折している箇所があります。
さらに、尿道がふさがっておしっこがたまってきていて、
陰茎の先に穴をあけなくては尿が排出できない状態です。
もう少し詳しく調べる必要がありますが、手術になります。
あと、血液ウィルス検査をさせていただきましたが、
ニャースちゃんは、猫エイズウィルスは陰性ですが、
白血病ウィルスが陽性ですね。
え?
白血病ウィルス?
今まで我が家のエリアで数十匹とオス猫をTNRしてきましたが、
猫エイズウィルスキャリアはいても、
白血病ウィルスキャリアは1匹もいなかった。
ニャースは白血病ウィルスキャリアなの?
猫エイズウィルスではなくて?
視界が徐々にぼやけていくような感覚。
足の怪我、骨盤骨折、尿道損傷、白血病ウィルスキャリア・・・・・。
ハードルがまたひとつ上がってしまった。
「飼い猫さんではないんですよね?地域猫さん?」
「そうなんです。うちの庭に住んでいる地域猫です。」
医療費について控え目に尋ねると、
先生は少し申し訳なさそうに答えました。
そうですね。これだけの怪我をしていますから、
ある程度の入院も必要ですね。
術後はICU室になりますし、白血病ウィルスキャリアということで、
隔離する必要があり、通常の部屋(ケージ)は使えませんので。
おおまかな概算になってしまいますが、
手術や投薬等と合わせて、最低限の費用が70万円くらいでしょうか。
それで終わりというわけではなく、傷のケアなどもありますから、
最終的にはもっとかかってくると思います。
ため息が出そう・・・・。
不治の病というわけではありませんが、
何もしなければ、尿が体内にたまり続け
尿毒症になり、壊死が始まり、
最終的にはそれが原因で命を落としてしまうのでしょう。
手術、丁寧なケア、投薬でニャースは元気になるのです。
もちろん、医療費は6桁になってしまいますが、
「そんなにお金がかかるのなら、諦めます。
そのままにしておいてください。私の飼い猫ではないので。」
なんてことは微塵にも思ってない。
何とか元のニャースに戻してあげたい。
ニャースの命は、私の決断にかかっているのです。
お願いします。
迷うことなく、私は答えました。
そして、更に詳しい検査や、傷の消毒等必要な処置をしてもらう為、
その晩もニャースをK病院に預けました。
帰り道も、その晩も、ずっとずっと考え続けました。
最低でも70万。
入院が長引けば、もっと医療費がかかってくるだろうし、
退院しても、検査やなんやかんやで通院はしばらく続くだろう。
私、大丈夫か?
前年に亡くなったポッちゃんのことを思い出しました。
腎不全と思われる兆候が表れていたのに、
ポッちゃんが嫌がることはしたくない、
最後まで好きなものを食べさせてあげたい、と、
見守るだけにとどめた。
本当に具合が悪くなり、死が迫っている状況になって初めて
ポッちゃんを保護し、室内に入れて看取った。
亡くなる数日前のポッちゃん。
ポッちゃんを火葬場に連れて行った時に
あれだけ大泣きをしたでしょう? なんで?
地域猫だからそこまでしなくても・・・
なんて思っていたんじゃないの?
もっと早く何とかしてあげていればよかったなんて
後になってからあんなに後悔していたじゃない。
あんなに思いはもう嫌。
ニャースを助ける!
必ず助ける!
ニャースは助かるのだから!
夜、年長の知人ボランティアの方に相談してみました。
都内にある某病院を紹介してあげるから行ってみて。
怖い先生だけれど、手術経験が豊富で、
飼い猫、野良猫のくくりなく診て下さる腕のいい先生だから。
難しい金額のかかる手術でも、こちらがいくらまでと言えば、
OKして下さると思う。
K病院は設備も整っていて、難しい疾病への対応も可能、
スタッフの数も多く、この辺りでは、評判のいい病院です。
普段は近くの動物病院に行くが、いざとなったらK病院へ、
という方々もたくさん知っています。
私はK病院に対する不満もなければ、過度の期待もありませんし、
ニャースが元気になってくれればそれでいいのです。
ただ、「お願いします」とは言ったものの、医療費に対する懸念は残りました。
さらに寂しい気持ちになったことがありました。
「ニャースに会っていってもいいですか?」
と訊ねると、案内されたのは上階にある病室。
入院患者(動物)用金属ケージがずらりと並び、
部屋の中央には医療道具や薬などが置かれたテーブル、
食事や薬の準備で複数のスタッフさんが忙しそうに動きながら
バタバタと患者のケアをしている部屋でした。
ニャースはそこにはいませんでした。
その部屋を通り過ぎ、廊下のような場所にあるドアの前で
「ここです」。
ドアを開けた内部は荷物置き場のような場所。
病院内の喧騒とはまるで無縁といったような静かで暗い無機質な小さな部屋。
その部屋の床に直置きされた小さなケージの中に、ニャースはいました。
診察や検査の時以外は、窓も光もない独房のようなこの場所に
ニャースはひとりぽつんと隔離されていました。
「白血病ウィルスキャリアなので」
入院している患者さんは全て飼い主さん達から預かったペット達。
野良猫などいるわけがない。
ニャースには定期的に駆虫薬を滴下していたとは言え、
外の猫にはお約束のノミダニ等の虫の心配がある。
加えて白血病ウィルスキャリア。
お預かりしている大切なペット達に感染しては大問題になります。
真っ暗な部屋に隔離されて、不安そうにこちらを見ているニャース。
仕方のないことであり、十分に理解はできます。
でも、ニャースが厄介なものとして扱われているように思え、
納得したくはありませんでした。
何が起こっているのかわからない。
ニャースは不安だったことでしょう。
知人に紹介してもらった都内の病院に問い合わせをする前に、
1軒、ダメ元でトライしてみたい病院がありました。
我が家から車で10分もかからない場所にある、
開院してからまだ4ヶ月ちょっとの新しいY病院です。
既にその病院に行ったことのあるボランティアの方から、
「設備もきちんとしていて、若い院長先生が丁寧に診察して下さる」と
話を聞いていました。
翌日の朝、Y病院に連絡し概要を伝えると、
午前中の診察が終わる12時に、
院長のS先生が話を聞いて下さることになりました。
S先生には、これまでK病院から説明を受けた内容をそのまま伝え、
ニャースは地域猫です。飼い猫ではないので、
何百万もお金をかけてあげることは出来ないですが、
何とか治してあげたいです。
夜間診療に行く必要があったので、たまたまK病院に入院しましたが、
K病院はこの辺では最も医療費の高い病院ですから、
もう少し医療費が抑えられて、設備の整った他の病院があればと、
思いました。セカンドオピニオン的な意味もあります。
私の正直な気持ちでした。
遮ることなく、真剣に話を聞いて下さっていたS先生は言いました。
わかりました。
恐らくそこまでの医療費はかからないと思いますが、
ちょっと検討させていただけますか?
待合室で待つことたったの10分。再び診察室に呼ばれました。
入院がどのくらいになるかは今の時点ではっきりとは言えませんが、
K病院から提示された金額の半分くらいで何とかなりそうです。
K病院の方から結果報告書やデータをもらってきていただけたら、
検査の重複なども避けられます。
あまりにも足が出そうだったら、
どこかで少し調整してみようと思っています。
何とありがたいことでしょう!
ひれ伏して感謝したい気持ちです。
「今日、K病院を退院してこちらに来られそうであれば、
すぐに受け入れの用意をしますよ。」
と、先生はおっしゃって下さいました。
そこからがあっという間!
びっくりするほどの急展開でした。
To be continued.