前回のお話。
2025年8月25日のブログ
「ねこ藩城下の猫たち:(22)試行錯誤」
https://nekohan.jp/archives/987509999
折りを見て、ニャースを庭に戻すことも
考えた方がいいのかもしれない。
一度保護した猫を外に戻す。
ボランティア達の中では賛否分かれるところ。
それは私もよくわかっています。
でも、私は、自宅庭の地域猫に関しては、
保護側の最終的な選択として、
「室内での生活が厳しいと思われる場合、
無理して室内に留めおくことはせず、庭に戻す」
という考えを常に持っています。
人間にとっても、猫にとっても、ストレスしかないような状況だと、
「保護」から得られるものは、
虐待やロードキルの可能性がなくなるという人間側の安心感だけ。
「保護」したことによる満足感・幸福感が遠のいてしまい、
猫も、自由な生活を奪われ限られた空間に閉じ込められたという
恐怖感と嫌悪感を味わうからです。
ニャースの場合、外での生活が全く出来ないというわけではありませんが、
大きな手術もしている上、排尿口の衛生面を考慮して保護しました。
私が時々口にする、誰もHappyになれない保護。
保護された猫も、保護宅にいる飼い猫も、保護した人間も。
折をみてニャースを庭に戻す。
呪文のようにその考えはぐるぐると頭の中を渦巻いていましたが、
本当にそれでいいのか、そうするつもりがあるのかについては、
自分でも決められない、決めようとしていなかったと思います。
ある休日の夕方、掃除が終わったばかりのリビングの床と、
スツールの上と、窓のサッシに、また便と嘔吐物を見つけ、
「あっ、またやってる!もう!どうしてこういうところにばっかり!」
と、時々やってしまうように大声を出し、ニャースを睨みました。
こうなると「やばい」と思うのか、ニャースは物陰に隠れます。
この時も、マッサージチェアの陰からじっと私を見ていました。
「もう、うんざり。自分で片付けて掃除するか、もう出て行きなさい!」
と支離滅裂なことをわめいて私はリビングを出て行きました。
しばらくすると、ニャースの粗相を片付けつつ、家人がニャースに話しかけています。
ニャース、困ったやつだなあ。
でも、お前もしんどいし、辛いんだよね。
そう、ニャースはわざとやっているわけじゃない。
彼だって、普通に食べて普通に排便したいだけ。
でも、うまくいかず、いつもふんばって苦しい想いをしているんだ。
やっとのことでたまっている色々な物を体外に排出してスッキリすると、
おばさんが大声でなんか喚きだす。
新聞紙とペットシーツでの対策でしたが、
ぐしゃぐしゃにした上に、カバーをしていないところに
トイレをしてしまう。
いただき物の大きな防水シーツでソファを包み込む。
結局、ニャースを外に戻したい理由の大部分は、
いつもニャースの粗相の世話に時間がとられ、
それが延々と続く毎日から解放されたい・・・
ってことなんだ。
確かに大変ではあるけれど、
ニャースを保護した人間としての責任と覚悟が弱く、
「面倒」という意識も身勝手。
そうか、そういうことか。
お前もしんどいし、辛いんだよね?
猫についての知識があまりなく、
飼い猫のトイレの片づけもしたことがない。
7年経っても飼い猫のこまつに懐かれていない家人ですが、
その彼の言葉は私の胸にズサッ刺さりました。
同時に、冷水を浴びて目がシャキッと開いたような気持ちになりました。
仲が良いおじさん同士。
私って、ひどい人間だな。
怒ったり文句を言ったりするのではなく、
これからは、どうしたら、ニャースのこの状態が少しでも改善するか、
どのようにして、ニャースにとって毎日を生きやすい環境にするかを
考えていくべきだというのに。
ニャースを保護して世話をしている気になっていたけれど、
それは表面的なルーティンに過ぎなかったんだ。
きちんと向き合わなくてはならないことを面倒くさいと思ってしまい、
自分の日々のペースにニャースが合わせてくれることを
勝手に期待して、それが叶わないから「この子はダメだ。外に戻す。」となる。
「ここにうんこしたの?トイレにした方がいいよ?
でも、たくさん出て、すっきりして良かったね。」
「頑張ったのに、うんこじゃないのが出てきちゃったんだね。
もう少ししたらきっと下に降りて出てくるよ。」
「いつもゲロゲロを片付けてるから、ここのサッシはきれいだよ、ほら。」
言葉とは不思議なもので、100%本心ではそう思っていなくても、
ポジティブな言葉でニャースに話かけているうちに、
怒り、いらつき、失望、うんざり・・・等、
ネガティブな感情は徐々に薄らいでいきました。
ニャースは室内で生きていく猫。
その考えがコンクリートでがっちりと固まりました。
保護のもうひとつの目的である、里親探し。
性格から考えて、ニャースを1匹飼いして下さるご家族か、
時々スイッチが入るニャースを適当に流しつつ、
うまくやっていけそうな器の大きな先住猫さんがいるご家族に、
何とかご縁が繋がればと思っていました。
しかし、「こんなに手間がかかる」と最初からわかっている猫を
飼い猫として受け入れて下さる方は容易には見つからないでしょう。
その上、猫エイズウィルスキャリアの猫に対する偏見が世間にはあり、
キャリアだとわかっただけで即「候補猫リスト」から除外されてしまうことが多い。
譲渡会にも3度ほど参加しましたが、手ごたえは全くありませんでした。
ニャースは注目を浴びたいのか、構ってもらいたいのか、大きな声で鳴き続けます。
それを気にして相手をして下さるのは、参加している他のボランティアさん達だけ。
保護猫を迎えようと来場した方々は、そんなにうるさい大人の猫に目もくれず、
ケージ内のニャースを横目でちらりと見るだけで通り過ぎていきます。
初めて参加したのは、
設立間もない猫うららさんの譲渡会でした。
ニャースに興味を持って下さる方がほとんどいない場所で、
狭いケージに閉じ込められたまま、3時間近くも待つことは
ニャースにとってストレスにしかならないでしょう。
先日のブログにも書きましたが、猫の3時間は私達人間の9時間に相当します。
毎週毎週、同じ猫を参加させている保護主さんもいらっしゃると思いますが、
私は同じやり方をする気にはなりません。
譲渡会は飼い主さんを見つける良い機会ですから、参加しなければ、
ご縁から遠ざかることは承知しています。
里親探しは、譲渡会参加という形ではなく、
里親募集サイトへの掲載のみにしました。
サイトを通じて、ニャースへの問い合わせは一度ありました。
白血病ウィルスキャリアであるオスの保護猫を飼っている方が、
2匹目の飼い猫としてニャースを迎えたいと言って下さいましたが、
オス×オス同士、激しい喧嘩にでもなって、
白血病ウィルスキャリアである先住猫さんが
ニャースから猫エイズウィルスをもらったら大変ですし、
それよりなにより、白血病ウィルスに感染するというリスクを
ニャースに追わせたくありませんでしたので、
丁重にお断りさせていただきました。
(でもニャースを見初めて下さったことには感謝です。)
ニャースが室内に入り2度目の夏、ダイニングのエアコンが壊れました。
我が家の1階のエアコンは、1つの室外機でダイニングとリビング、
2台のエアコンがセットになっていましたので、
取り替えるときはリビングのエアコンも一緒、ということになります。
新しく購入したのは強力パワーのエアコン。
ダイニングに取り付けましたが、リビングまで涼しい空気が十分に行きわたります。
ところが、猫達のリビング使用を交代制にすると、
ダイニングとリビングの間のガラス戸を閉めなくてはなりません。
当然エアコンの風はリビングには行かなくなり、
天井近くまである大きな掃き出し窓からガンガンの陽の光が入るリビングは、
あっという間に高温になってしまいます。
家人は、夕食後や休日にリビングでテレビを見ますが、
締め切った高温の部屋でリラックスも何もあったものじゃない。
ダイニングとリビングの間のガラス戸を閉めるわけにはいかない。
でも、この2つの部屋を仕切らなくては猫達の隔離が出来ない。
これはもうワイヤーネットで仕切るしかないでしょう。
2つの部屋は柵で仕切られていても、
ダイニングでつけたエアコンの風は
ワイヤーネットを通ってリビングに届く。
こうして、「部屋の閉め切り」がなくなりました。
ニャースのケージを廊下からリビングに移動させ、
リビングをニャースの部屋としました。
ニャースは頭のいい子で、私が掃除機を取り出すと、
そそくさと自らケージに入り、
掃除が終わるまでケージ内でおとなしく待っています。
この機会を利用することにしました。
掃除が終わっても、しばらくニャースにはケージ内で過ごしてもらい、
その間に、飼い猫達は久しぶりのリビングで過ごす。
時間にして3-4時間くらいです。
毎回、そうしているうちに、ニャースも慣れて、
ケージに入っている時はあきらめて昼寝をするようになりました。
自らケージに入り待機するニャース。
掃除の様子を観察しています。
開放されたリビングに入ってきてマッサージチェアに座るこまつ。
このようにして、たまには飼い猫に自由に過ごさせてあげたいということもありますが、
人間側も、ニャース噴射による汚れの片づけから一時でも解放される時間が欲しいという思いもあり、
定期的に、ニャースにはHolidayに行ってもらうことにしました。
Holiday先は、Y病院のペットホテル。
ニャースをよくご存じの先生やスタッフさんがいるところです。
金属ケージを2つ繋げた限られた空間にはなりますが、
好きなフード、いつも使っているベッドと一緒にHolidayを過ごします。
1年に2回、2~5泊のHoliday。
1週間に一度、3~4時間のケージ内滞在。
それ以外、我が家のリビングは、
常にニャースが独占する部屋となりました。
Y病院でHoliday中。
ニャースのHoliday中には、
リビングとダイニングの間の仕切のワイヤーネットを畳み、
広々とした空間にしておきます。
ニャース不在を楽しむ飼い猫たち。
こまつはタワーのてっぺん、くりこはタワー中ほどのハウスに陣取る。
ニャースはリビングだけが自分のテリトリーであることをすぐに理解しました。
テリトリーさえ確保できていれば、他の場所には興味はないらしく、
ドアを閉め忘れていても廊下に出る気全くなし。
ひとりで丸々使える、陽当たりの良い約12帖の独房です。
ワイヤーネットで仕切られた部屋での生活に慣れてきた頃、
また新しいトラブルが起こるようになりました。
ニャースの「こじ開け脱走」。
私達が考えもしなかったようなすごい力で、
ワイヤーネットのつなぎ目部分をぐいぐい押して下に隙間を作って這い出したり、
半分閉めてあるガラス戸とワイヤーネットの重なる僅か5㎝ほどのギャップに
液体のように体を押し込んでギャップの幅を広げたり。
脱出作業の最中に、人間が部屋に入ってくると、
何事もなかったように、自分のベッドに戻ったり、
タワーに登って知らん顔をするので、
「脱出=してはいけないこと」とニャース自身がわかっているようです。
なので、だいたいは、人間が留守中か就寝中の夜中に脱出作戦は実行されます。
ワイヤーネットの向こう側からこちらの様子を伺う。
脱出が成功し、ダイニング側に来たところを見つかると、
ニャースは慌ててリビングに戻っていこうとするのですが、
力で無理やりこじ開けた入ってきた隙間を、
反対側から入ってリビングに戻るのは容易ではなく、
リビングへ帰る方法がなくなったとわかると、
「やばいやばい、帰らなくちゃ!」と
リビングへの他の退路を探して、
大パニックでダイニングと廊下を走り回っていたこともありました。
つっばり棒と壁の隙間を目いっぱいつめ、
ワイヤーネットの繋ぎ目を強固にし、
両開きのガラス戸を半分だけ開けるようにして、
ニャースが体を滑り込ませられるようなギャップをなくしたことで、
大脱出はなくなりました。
リビングでの生活に満足していたはずのニャースがなぜ
ダイニング側への脱出をしたがるようになったのか。
こたえ:フード。
ニャースのいるリビングから、ワイヤーネット腰に、
ダイニングで食事をする飼い猫達の姿が丸見えになっていますが、
その飼い猫達のフードにありつくために、
何とかワイヤーネットを超えようと努力しているのです。
自分のフードに飽きてうんざりしてしまっているところに、
ワイヤーネットから漂ってくる違うフードのにおい。
当然、「こんなまずいフードじゃなくて、そっちのフードをくれ!」となる。
退院以来、ニャースが食べているフードは便秘対応のためのものです。
●Royal Canin 消化器サポート、(可溶性繊維)
●Vets One Veterinary 消火器ケア
●Hills 腸内バイオーム
などなど。
これらのフードを少しづつ混ぜながら、1日3回の食事。
それが3年も続いたところで、ニャースの我慢の限界がきたのかもしれません。
自分のフードを食べるのを拒否するようになり、
私との我慢比べになりました。
私:それ以外のものは食べさせられない、だから何としてでも食べてもらう。
ニャース:絶対に食べたくない。
私:じゃ、好きにしなさい。それしかないんだから。
ニャース:絶対に食べないから。
結局、最後に折れるのはニャースの方、
気が進まなくても、空腹に耐えられずに少しづつ口にします。
人間達は夜と休日に短時間TVを見るとき以外、
リビングには入りませんから、
ニャースはほぼ丸一日、寝たり、外を見たり、
ワイヤーネット越にこちらを眺めたりして、
リビングで一人で過ごしています。
そんな生活での楽しみは、食べること。
なのに、うんざりするようなフードしか出てこない。
繊維質ではないフードを食べて、腸内が大渋滞を起こしたら、
また摘便のための通院になりますが、病院に行くストレスと
好きなものを食べられなストレス、どちらに比重を置くか。
難しい選択でしたが、
ニャースの体のためとは言え、
嫌気がさしているフードを出し続けるという
罰ゲームみたいなことはやめました。
便秘が少しでも改善するようにと、消化器ケア系のフードに
モニラックというシロップを混ぜて与えていましたが、
例えば、消化器ケア系のフードはやめて、
健康に何の問題もない猫が食べているようなごく普通のフードに切り替え、
そこにモニラックやサイリウム(オオバコの繊維)を混ぜて食べさせてみたらどうだろう。
消化器ケア系のフード3割、乳酸菌入りのフード3割、
少し嗜好性のあるフード4割をミックスし、そこにサプリ等を混ぜてみよう。
思った通り、ニャースは食いつきました。
時々、フードの種類を微妙に変えながら、でも、
基本の消化器ケア系と乳酸菌系はそのまま、そしてサプリ。
食生活が変わってから、ニャースの脱出がピタリとなくなりました。
「脱出しないよ。見てるだけだよ」とでも言うように、
ワイヤーネット前のスツールにごろんと横になり、
ネット越しにこちらを眺めているだけです。
1ヶ月に1-2度、ニャースのいるリビングに飼い猫達を入れていますが、
やはり、ニャースとこまつは相性がとても悪く、
こまつはすぐにリビングから出たがります。
くりこは、部屋に入るとすぐにタワーの上に登り、そこで昼寝をし始めます。
最初は気になっていた様子のニャースですが、そのうち、
くりこがタワーを使っている間は、自分は別のベッドを使うようになりました。
タワーを占領するくりこ。
ニャースはタワー横のハウスに落ち着く。
いったんは改善の兆しが見えていた要求鳴きがまた始まりました。
お腹がすいた時→ご飯早くしてくれ。
トイレ外に排便し、ゲロった時→早く片付けてくれ。
ひまな時→かまってくれ。
庭の地域猫達が窓の外が通る時→俺のテリトリーを横切るな。
まあ、そのうるさいこと!
よくずっと鳴き続けていられるなと感心さえしてしまいます。
「近所迷惑になるから静かにして!」と大声で言うと、
叱られたことがわかるようで「へ~」と小声で返事をし、
とりあえずは鳴きやみますが、また少しすると再開。
疲れるまで鳴いていることもあります。
リビングから出たいのではなく、
私や家人がリビングに入ってくるのを待って鳴いています。
便秘症だし、お腹からおしっこするし、左目は失明しているし、
フードにお金はかかるし、このかまって男はとにかくうるさい。
困ることは困りますが、猫あるあるだと思えばいい。
抱き上げるとぐでっとなり、されるがまま、
ゴロゴロ音が聞こえてきます。
ふわふわの毛並みは愛らしいぬいぐるみのようです。
ニャースを室内に保護してから4年。
飼い猫2匹と保護猫ニャースの半隔離生活は
何とか軌道に乗り、大きな問題もなく継続しています。
To be continued・・・