百音ちゃんのお世話をずっとしてきたTさんから相談がありました。
「勤務先の同僚SNさんが、自宅庭にやって来るメス猫の避妊手術をしたいそうなんです」

 

 

そのメス猫どらみは、昨年、SNさんの自宅近くで4匹の子猫を産みましたが、
その後、3匹を連れてどこかに移動してしまいました。
ひとり残されてずっと鳴いていたメスの子猫は
SNさんに保護され、SNさん宅の飼い猫となりました。
長らく消息のわからなかったどらみですが、今年の春、
再びSNさん宅の庭に姿を現すようになりました。

「また出産してしまっては大変。」

SNさんは医療費をご自身で負担し、どらみを手術することにしました。
しかし、どらみはSNさんの姿を見るだけでサッと逃げてしまいます。
全く人慣れしていない猫ですので、素手での捕獲は無理。
捕獲器での捕獲になります。

 

 

 

Tさん、SNさんがお住まいの地域は、
ねこ藩が「近所」と呼ぶ地域から8キロ離れた場所です。
最近、「あの人、 よその地域の手伝いばかりして、
自分の地元のことは全然。」という、
ねこ藩に対する批判をちらりと耳にしたこともあり、
百音ちゃん一家を最後に、他地域に活動範囲を広げることはやめ、
地元のTNRに専念しようと考えていたところでした。

 

百音ちゃんの件で知り合ったTさんですが、百音ちゃん一家のお見合い、お届け、
また、ねこ藩の細々とした雑用まで快く手伝って下さいます。
Tさんの同僚の方ですから、ねこ藩がお手伝いしてあげるべきかな…
そう思い直して、SNさんに捕獲器を貸し出し、手術の手配をすることにしました。

 

 

◆10月3日◆
SNさん宅に捕獲器のお届け~捕獲器・病院・費用の説明
出動時間:80分
移動距離:往復16km

 

 

捕獲器をお届した日から、SNさんは毎朝、
閉まらないように扉を固定した捕獲器を庭に出し、
その中でどらみちゃんにご飯を食べてもらう練習をしました。
雨の日以外、どらみちゃんはSNさんの庭の捕獲器の中で
ご飯を食べるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捕獲器に慣れる訓練開始から1週間後、
当初の計画通り、早朝にSNさんはどらみちゃんを捕獲しました。
Tさん運転の車に、SNさんとどらみちゃんが同乗、
我が家に立ち寄って下さいましたので、私も同乗、
朝いちで病院にどらみちゃんを預けてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴れることはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茶が多めのサビです。

 

 

 

 

 

 

夜、先生ご指定の時間にどらみちゃんを迎えに行く際は、
SNさんがご自身の車でお一人でやって来ました。
道を間違ったりして時間に遅れてはいけないと、
朝、Tさんが辿った道順を復習して覚える為に、
SNさんは、日中わざわざシミュレーション運転をしたそうです。

 

やっと母猫どらみを手術できて一安心・・・と思っていたのですが、
「この子は恐らく妊娠したことがない若い子だと思いますよ」
との先生の説明。

 

「そう言えば、昨年どらみが産んだ子の中に、こういうサビっぽい子がいた。
この子はどらみじゃなくて、どらみが産んだ子の方だったのかしら。」

 

どらみ本家はどこに? それはわかりません。
SNさんのお宅にやって来る子はこの子であって、他の猫の姿はないのです。
とりあえず、これで、SNさんがずっと不安に思っていた件は片付きました。

 

 

◆10月9日◆
出勤時間:朝夜合わせて120分

どらみ: 推定1-2歳、体重3.2kg
~避妊手術:9000円
~アドボケート:1200円
~持続性抗生剤:3250円
医療費合計:14526円
(SNさん負担:9146円 / (ねこ藩負担:5380円)

 

どらみは持続性抗生剤を打っているので、 すぐにリリースでも大丈夫と先生はおっしゃいましたが、
退院後は、SNさんは寒くないように工夫した玄関内でどらみを一晩休ませ、 翌朝にリリースしたそうです。

ねこ藩は医療費の一部を負担させていただきましたが、
SNさんが寄付金を下さったので、結果的に、相殺でゼロになりました。

 

 

 

 

 

 

手術後のどらみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回お世話になったM病院は国道沿いにあり、
市川方面から向かっていくと、信号の手前、道路の反対側にあります。
信号でUターンして、病院に向かうと一番近いので、
愚かな私は今までそれを繰り返してきました。
信号に標識はなくても、この国道自体Uターン禁止区域だそうですが、
そのことに気付いていませんでした。
どらみを迎えに行った際、SNさんも同じ方法でUターンし、
病院横駐車場に停めたのですが、
駐車作業中に、「ピッピッ」と笛を吹きながら、
自転車に乗ったおまわりさんが近づいてきました。
SNさんはキップを切られてしまいました。
私は、もう申し訳ないやら何やらで・・・。

「いいんです。それは運転者である私の責任ですから。
私はそれより、どらみの手術が終わったことでほっとしています。」
とSNさんはおっしゃって下さいました。

 

 

翌日、きれいに洗った捕獲器と折りたたみ金属ケージが速やかに戻ってきました。
ねこ藩では捕獲器、ケージ、トイレ等の貸出しを行っていますが、
備品を貸しても洗わないでそのまま返す方、
借りておきながら「取りに来い」という方、
こちらから催促しない限り、なかなか返却しない方、
いろいろな方がいらっしゃいます。
SNさんは最初から最後まで、全てにおいてご丁寧で気持ちの良い方でした。
今後もSNさんはどらみを見守っていって下さると思います。

 

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手助けを必要としている人を選り好みするべきではないとわかっていますが、
こちらもごく普通の人間です。
相談者には自分勝手な方も多く、カチンとくることもしょっちゅう。
「ここはひとつ猫の為だと思って我慢しなさいよ」と、よくまわりから言われます。
でもね、やはり、猫をはさんで人と人がいるわけで、
その方と向かいあうことになるんです。
常識があり、誠意ある丁寧な対応をして下さる方に対しては、
こちらの「やる気」も違ってきます。
そういう方のお手伝いならば喜んで引き受けたいと思います。

 

猫のボランティアには無理を言っても失礼なことをしても許されるの?
チガウでしょ。

 

The end