前回のおはなし
5月9日のブログ
東奔西走:⑤東西の猫たち~猫待ちの日々。

 

 

 

12月30日に届いたメールの内容をざっと要約するとこんな感じです。

 

「我が家に生後3ヶ月、1才未満、1才と、複数の猫を保護しています。
先日、我が家近くの駐車場に設置してあった捕獲器のネームタグを見て、
ねこ藩さんの活動を知りました。
相談に乗っていただきたい内容は2点です。
不妊手術をされている病院はどちらでしょうか。
また、ねこ藩さんのHPで里親募集の掲載をしていただけないでしょうか。」

 

我が家の近くの駐車場?

 

私が今回、捕獲器を仕掛けていた場所は、
東の春田アパート敷地と、西のジャングルハウス(以下JHと略)付近の駐車場。
ということは・・・。

 

OH MY GOD!!

なんかすごいの来た!
すぐご近所に猫を保護している方がいるとは!
謎に包まれていたJHのとっかかりになるかも!

念の為、メールの主に確認すると、やはりJH近くにお住まいとのこと。
ここから、怒涛のLINEのやり取りが始まりました。
年末から年初にかけて、いったいどのくらい
メッセージをやり取りをしたでしょうか。
現在いる猫たち、過去にいた猫たち、どういう色柄でどういう系図・・・。

 

 

サザエさんの声が頭の中に響きます。

なんということでしょう。

 

この5年の間、この地域にいた猫達を、
私とは違う角度から見守ってきた住民がいたのです。

 

年が明け、1月9日。メールの主と初めての対面です。
お宅に伺い、部屋の中を拝見するまでは、少し不安でした。
たくさんの猫を室内に保護→室内荒れ放題→人間の生活も儘ならず。
多頭飼育崩壊・・・そんなケースをたくさん耳にしてきましたが、
まさか・・・ね。

 

玄関のドアが開き、迎えて下さったのは、
ニコニコとした、とても礼儀正しい若い姉妹でした。
広いお宅ではありませんが(ごめん)、小奇麗に片付けられ、
猫のおしっこのにおいさえしません。
何よりビックリしたのは、部屋の中でくつろく猫達が、
人慣れして可愛らしい子達ばかりだったことです。
M姉妹にたっぷり愛情を注がれ、世話をしてもらい、
皆で仲よく保護猫生活を送っていることが すぐにわかりました。

 

 

 

ストーブの前で気持ちよくお昼寝中の
保護猫さん達。
猫団子にも程がある・・・。

 

 

 

 

 

長い時間ではありませんでしたが、
M姉妹からは色々な話を聞くことが出来ました。
お互い、2分の距離に住んでいながら、
これまで一度も出会うことがなかった不思議。

それよりも、M姉妹がこれまでに出会った猫達に全て名前をつけ、
それぞれの画像と記録をきちんと保存していたことに驚きました。
画像と記録により、まるで謎解きをするように、1匹づつ、
この界隈で生まれ育った多くの猫達の ルーツを知ることが出来ました。

今まで謎に包まれていたJHのカーテンがやっと開きました。
カーテンの向こう側にいたのは、
昔から野良猫に餌をやっては 近所の方々に苦情を言われていた、
JHの住人である気難しい高齢の夫婦ではなく、
小さな命を優しく見守ってきた若い仲良し姉妹だったんです。

 

 

 

2012年夏から、M姉妹はベランダにやって来る猫達に
ご飯をあげながら観察していたそうです。
ベランダで母猫が子育てをし、子が大きくなり自立していなくなる。
やがて母猫の姿も見えなくなる。
それが何度か繰り返されていたので、
M姉妹のベランダにやって来ては寛ぐ猫の数が
爆発的に増えることもなかったわけです。

ところが・・・
2017年4月、ご飯をあげていた「みぃ」が4匹の子猫を出産し、
同時に4匹の子猫を連れたべつのメス「えりこ」が現れました。
9月、その「えりこ」がまた4匹を出産。
そして、「みぃ」が2016年に産んだ「ナッツ」が3匹を出産。
12月には、メス「みぃ」が4月に産んだ子猫の1匹=「ゆず」が3匹を出産。

つまり、2017年春以降、M姉妹宅周辺で子猫が14匹生まれ、
「えりこ」が連れてきた子猫4匹を足すと、合計18匹の新たな命が
この地域に誕生してしまったことになります。
しかも、18匹のうち13匹がメスでした。
この地域の野良猫を少しでも減らそうと、4年間、
細々とTNRを続けてきた私にとっては、茫然となる事実。
魂が口から抜け出てしまうような数字でした。

 

 

猫のボランティア活動を行っている人々。
あるいは地域猫や外猫を管理している人々。
飼い主のいない猫の現況に関心がある人々。

私もそうですが、そういった人々は、
外で猫を見かけると、まず猫の耳に注目します。
耳カットが入っているかどうか。
つまり不妊手術されている猫かどうかを見るわけです。
耳カットが入っていない猫だと、お尻を確認したり、
骨格、顔の特徴などから オスかメスかを探ります。
メスの疑いがある場合、「これはやばい」と焦ります。

 

また、自宅、公共の場に限らず、 野良猫に餌を与えている人を見ると、
それが猫に不妊手術を施した上での行動なのかどうかが気になります。

「不妊手術もせずに餌だけ与える無責任な餌やり」

よく耳にする言葉ですね。
たくさんの未不妊の野良猫に餌を与えている人のことを 表現したものです。

 

しかし、私は時々考えます。
餌をあげている人が全て、共通の知識を持っているわけではないのでは?と。
不妊手術云々、耳カット云々、助成金云々、野良猫価格云々・・・。
そういった知識を持っている人間は、 果たしてこの国の人口の何%くらいなんでしょうか。
実際、この私も、2013年夏までは、そういうことに非常に疎かった。

 

野良猫には飼い主がいない。
餓えたら可哀想だからご飯くらいはあげる。
ご飯をあげたら、ご版をあげた人が自腹を切って不妊手術?
そこまでしなくてはならないの? 誰の猫でもないのに?
そう思っている餌やりさんもいるでしょう。

春田アパートのおじさまが該当すると思います。

「猫は昔からねずみを退治してくれる生き物で、 人の役にたってきたんだよ。
だから、野良猫であっても大切にしてあげないとね。」
と春田アパートのおじさまは猫に優しいのです。
一度、不妊手術の話をそれとなく、持ちだした時に、
「いやあ、私はそういうのはちょっと・・・」
とおっしゃっていましたから。

 

西南の居酒屋店主さんのように、
術後に猫がどこかに消えてしまうようなことは嫌だから、
今後不妊手術はしない、というポリシーみたいなものを
持っている方もいますし、
また、重田邸裏の確信犯・海老沢おやじのように、
子猫が見たいから避妊するな、避妊するとしても金ねーし・・・
みたいないい加減なヤツもいます。

 

「不妊手術」した方がいいとはわかっていても、
まず猫をどうやって捕まえたらいいのか
捕まえたとしてどこの病院に連れて行けばいいのか、
費用はどのくらいかかるのか等、
思案しているうちに、ずるずると数年・・・
なんてパターンも多いと思います。

 

 

また、「不妊手術をする」なんてこと、 全く思いつかない方もいるでしょう。

「不妊手術をせずに、野良猫への餌やりを続けることは良くない。」
それはマナー・モラルといった範疇では正解なのかもしれませんが、
誰のものでもない野良猫に不妊手術をしないことで、
法律上、罪に問われることはない筈です、確か。

 

餌を与えている野良猫を捕獲し易い立場にいるのは、実際に餌をやっている方ですから、
その方が不妊手術をして下されば、 野良猫の繁殖をストップ出来ます。
そして、その行動は、その地域の環境保全への貢献となります。
ただし、経済的な理由、個人の考え方等、
皆さんそれぞれですから、他人が強制できることではないんです。
もちろん、不妊手術をして下されば嬉しいですが、
絶対にやらなくてはならないことではありません。
その辺りにいつも難しさというかもどかしさを感じます。

 

 

不妊手術済のしるし=耳カットをご存じない方もまだまだ多いと思います。
実際に、耳カットを見て「大変、あの猫、耳を怪我してる」と言った方を
私は数人知っています。

 

 

行政がもっと積極的に、もっと大々的に啓発する必要があると思いますが、
今のところ、飼い主のいない猫対策に関しては、
他の社会問題の影に見え隠れしている程度か、
常に後回しにされているような状態だと私は感じています。
そういう状況ですから、野良猫事情に詳しい人が
知らない人に伝えていく必要性は大だと思います。
上から目線ではない方法でね。

 

実際、M姉妹も、以前は耳カットのことを知らなかったそうですし、
これまで、ご飯をあげて世話をしていた猫達が、
長い間M姉妹のもとに留まることもなかったので、
「増えて困る」→「数を制限する」→「不妊手術をする」
という発想にいたらなかったのだと思います。
知らなければ当然のことです。
それを責めることは誰にも出来ません。

 

しかし、M姉妹はご自身達で気付きました。

これまでは、M姉妹の敷地に猫が増えることはありませんでしたが、
この地域全体で考えると、野良猫は常に一定数、
供給されている状態だったと思います。
昨年、M姉妹のもとで、たくさんのメスが誕生しましたから、
今後はこの地域に加速度的に野良猫が増える筈でしたが、
M姉妹は「どうにかしないと…」と危機感を持ったんです。

 

 

そんな秋のある日、突然、保健所の職員さんが訪ねて来て
「ご飯をあげるならば、きちんと不妊手術をして、トイレを設置して・・・」
と、M姉妹に説明したそうです。
近所のどなたかが、M姉妹の敷地に入っていく猫達を目撃して、
保健所に相談した(チクった)のかもしれません。

 

 

幸い、猫達はM姉妹に慣れていますので、
捕獲器などなくても、簡単に確保出来ます。
M姉妹はまず、2015年秋から世話をしているきょうだい猫、
メス「みぃ」とオス「こじゅまむ」の不妊手術を行うことにしました。
猫の不妊手術など経験もなく、ボランティアでもありませんから、
どこの病院にお願いしていいのかわかりません。
てっとり早く、歩いて連れて行ける距離にある
地元の病院に予約を入れて、手術をお願いしました。

 

術後の「みぃ」を見て、M姉妹はショックを受けました。
くさび型の耳カットではなく、耳が半分以上切られていたのです。

 

 

 

 

 

術後の「みぃ」。
なんとも可哀想なことになってしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

普通は、耳の先にちょこっと、
でもハッキリとわかるV字です。

 

 

 

 

 

 

後ろから見てもV字。

 

 

 

 

 

手術費用はメス27000円、オス15000円。
不妊手術しなくてはならない猫達はまだまだたくさんいます。
この金額と、耳カットの酷さにM姉妹は悩んでしまいました。
かと言って、他のメス猫達を外でそのままにしておけば、
やがてまた妊娠・出産を繰り返してしまう・・・。
どうしたらいいのだろう。

そこで、M姉妹は覚悟を決め勇気ある行動に出ました。

 

メス猫全員室内に集合作戦。

 

 

ブラボー!と言ったらいいのか、破天荒と言ったらいいのか(笑)。
メスだけ室内に閉じ込め、外に出さなければ
外にいるオスと交わることはありませんので、
とりあえずはセーフ。

 

ただ、この時、室内に保護しなかった猫達もいました。

WHY?

 

 

M姉妹が何匹かの猫の耳に、
新しいV字カットが入っていることに気づいたからです。

そして、12月のある晩、M姉妹は駐車場で、
「ねこ藩」と記された金属性の長い箱を見つけました。

「みぃ」のような可哀想過ぎる耳カットではなく、
もっと上手に耳カットを入れてくれる病院を、
もう少し手術料金が安い病院を教えてくれるかもしれない。
里親探しと言ったって、友人知人への声掛けにも限度がある。
ホームページで子猫の里親探しのお手伝いをして貰えるかもしれない。

こうして、経緯と今必要なことをきちんと要点にまとめたメールが
ねこ藩に届いたのでした。

 

 

さて、M姉妹との最初のミーティングは、
猫の同窓会のような楽しい時間でしたが、
今はそれよりも、やることをやってしまわなくてはなりません。

M姉妹が室内に保護した子達は14匹。
外猫としてご飯をあげている猫は5匹。

怒涛の通院、里親募集、お見合いの開始です。

 

 

To be continued ・・・