前回のお話から半年以上が経過してしまいましたが、
その後の経緯です。
2019年夏の話になります。
前回のお話。
2019年9月15日のブログ
「こねこWAVE到来:②猫が降ってきました。」
https://nekohan.jp/archives/11502
上村さん、ユミさんが子猫を保護する一方で、
ねこ藩も、こねこの嵐に巻き込まれていました。
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5月に、先輩ボランティアのKさんと一緒に、「のぞみ一家の件」で、
隣町に住むKMさんという方のお手伝いをしました。
のぞみの最後の子猫・つばさを里親さま宅にお届けする少し前、
KMさんからこんなLINEが来ました。
「今日ペットフードを買いに店に行ったら、
子猫用フードをたくさん買っている方に出会いましたよ。
何でも庭にたくさんの子猫がいるので、
しょっちゅうフードを買わなくちゃならないんだって。
帰りに見に行ったら、本当にたくさんいました。
〇〇中のそばの〇〇さんというお店がある路地。」
しなくてはならない事は山積みで、常に手一杯ですので、
私はそのLINEにうんざりして、
「そういうことをいちいち、私に報告しなくてもいいですよ。」
と返信しておきました。
どこそこに子猫がいた、怪我をした猫がいた、
とわざわざ連絡を下さっても、
私は報告しただけです、あとはそちらで…
みたいな方が圧倒的に多いのです。
そう返信したものの、私は気になって、
ボランティアのKさんに相談しました。
Kさんは、子猫の保護や里親探しは得意ではありませんが、
助成金の枠をいくつか持っていらして、
不妊手術を中心に活動されていますし、
何よりもまず、私なんかよりもずっと前から、
飼い主のいない猫関係の活動をなさっているのです。
「ああ、あの辺りね。あの路地には知り合いもいるし、
様子がわかるかもしれないから、私、ちょっと見てきますね。」
我が家からだと距離がありますが、Kさん宅からは割と近い場所です。
Kさんからはすぐにフィードバックの連絡が来ました。
「母猫2匹が子猫を数匹づつ産んじゃったみたい。
ずっと餌だけあげて、避妊手術をしてなかったんだね。
見た感じ、子猫たちは生後2ヶ月過ぎじゃないかと思うけど、
母猫達と同じで、ダメ、全然人には近寄って来ない。
ちょっと近づこうとすると逃げ回っちゃって。」
Kさんの調査でわかったこと。
●問題のお宅には母猫2匹と子猫6匹がうろうろしていて、
住人のOさんという80代のおばさまがご飯をあげている。
●Oさんは餌をあげているが、手術をしていない。
●すぐ隣が、娘さん一家の住居。
●ボランティアのKさんの訪問に対し、Oさんは
「自分は困っていないし。そんなのこちらから頼んでいない」と拒否反応。
●自分は近所の先輩Tさんを見習ってこういうことをしているだけだから、
話ならその先輩Tさんのところに行ってくれと、逃げ腰。
まあ、何にしろ、とにかく、母猫だけは手術をする必要があります。
子猫に関しては、自分は別に困っていないとOさんだって言い張っているし、
ご飯と寝床もあるのだから、とりあえずこのまま。
時期を待って順に不妊手術をしていくということで
Kさんがまず、母猫2匹のTNRを行って下さることになりました。
数日後。
「私と一緒に来て、子猫達の様子を少し見てもらえる?
人慣れしてないけれど、まだ小さい子達だから、
可能ならば保護して里親探しでも、と一瞬考えたのね。
でも、Hさん(私)どう思う?
ねこ藩にお願いすることになっちゃうから、
私としては、Hさんの判断にお任せする。
無理して保護はしなくてもいいと思うから。」
とKさんから提案がありましたので、
(私は)初めてOさん宅を、Kさんと一緒に訪問しました。
問題の路地。手前右側がTさんの店舗。
路地の奥、左側にOさん宅。
「ああ、これは、全然慣れてない感じですね。
母猫達が人間に慣れていないから、子猫もそうなるのは仕方ないかも。
置き餌という方法でご飯をあげると、だいたいこうなっちゃいますよね。」
Oさん宅は敷地ギリギリに建物が建っていて、
庭らしきスペースはありませんが、
住居建物の、1階部分の半分をくり抜く形で駐車用スペースがあります。
自転車や備品なども置いてありますが、現在は車を所有していないので、
駐車場部分全てが空きスペースになっています。
猫達にとっては雨風を凌げて、ご飯も食べられる、
快適な生活空間になのでしょう。
その一角に扉が開いたままの2段ケージが置いてありました。
「置いとけば母猫も子猫もしょっちゅう中に入って休んだりしてるから。
ここで寝れば、あちこちに行かないだろうし。」
そう言った時のOさんの表情はとっても優しそうでした。
なるほど。
Oさんは、手術はしていませんでしたが、
ただ餌をやるのではなく、猫のために工夫をしているようです。
実際、2匹の子猫がケージをタワー代わりによじ登っていました。
私達が近づくと逃げてしまいましたが。
サビ猫と白猫がケージ内にいます。
どちらも母猫です。
サビの母猫と子猫達。
子猫達もこうしてケージに入ります。
「ボランティアの人に手伝ってなんて頼んでない。」
「べつに困ったことなんかない。」
「私も、先輩のTさんも、昔からこういうことをやってきているから、
問題なんか何もない。」
Oさんは他人に責められているような気分になって、
最初、強がった態度をとったのではないかしら。
本当は、この状況はあまりよくない、ということを
ご自身でもわかっていらっしゃるのだと思いました。
そこに40代くらいの女性がお子さんを連れて現れました。
隣に住んでいるOさんのお嬢さんでした。
お嬢さんのお宅の敷地には、ビッチリと、
猫除けのとげとげシートが敷き詰められていました。
ご主人が「猫嫌い」だそうです。
Oさんのお嬢さんは、
「母は昔からこうですからね。」
と、おっしゃって、子猫が走り回るのを眺めていました。
「お母さん、餌だけやっていれば猫は増えて近所迷惑になるよ。
せめて手術をするか、置き餌をやめるようにしなければ。」
せめて、餌やりをしている高齢者の家族が、
このようにに助言し、手術の手伝いをしてあげる、
あるいは保健所やボランティアに手伝いの相談をすれば、
事が大きくなる前に、何とか食い止められる現場は
たくさんあると思います。
Oさん宅ではそうではなかった。
母がやっていることだから、私はべつに…。
とお嬢さんは思っていらっしゃるような印象を受けました。
「私なんかよりずっと先輩で、昔から野良猫にご飯をあげている」
とOさんが名指しした、路地の反対側の端っこにお住まいの、
もう一人の高齢者Tさん宅を訪ねてみました。
Oさんより年上で83才になるというTさんは、
まだ現役で雑貨店を営んでいらっしゃる若々しい方でした。
Oさんに比べて、おしゃべり好きな社交的なおばさま。
今回、Kさんと私がこの路地を訪れた経緯を話すと、
「ああ、そうなの? 私は昔から…。」
と、この年齢の方にありがちな、話の流れになってしまいます。
どういうことを計画しているか説明しようとしても、
必ず自分の昔話というか、自分がどれだけいいことをしたか、
という方向にすべて持っていかれてしまい、
なかなか本題に戻すことが出来ません。
肝心の話が進まなくなってしまう状態。
私は話の腰を折るように質問しました。
「じゃあ、今Tさんのお庭にご飯を食べにくる2匹は
どちらも手術済なんですね。」
「もう1匹、べつのメス猫も来てるわよ。
私がちゃんとご飯をやってるの。」
「その猫も手術済なんでしょう?」
「いや、知らないわよ。通りの向こうから来るんだもの。」
知らないわよって・・・。
結局のところ、大先輩のはずのTさんも同じじゃん!
「私は昔から何匹も手術してきたのよ。
わざわざ〇〇さん(獣医)まで運んでさ。」
と、Tさん。
自分達が招いてしまった現在の困った状況の話になると、
昔、ここいらの猫の手術をしたのは私だとか、
生まれた子猫の世話をして飼い主さんを探してやり、
飼い主さん達には本当に感謝されたとか、
今のマイナス部分を昔のプラス部分で補うことに必死な感じです。
OさんもTさんも同じ。
過去のそういった行動は、とても有難いと思います。
しかし、今の問題と相殺でチャラ、というわけにはいかない。
Tさんが餌をやっている未不妊の茶色っぽい猫は、
出自も居場所もよくわからない為、
様子を見ながら、そのうちTNRを考えます。
Oさん宅に戻ると、新たな事実。
「貰われなかった子や、新たに生まれてしまった子を
どうしようもなかったから、家の中に入れて飼っている。」
その数10匹。
OさんもTさんももうお年です。
面倒くさくなったり、判断力・行動力は衰えています。
このままでは、この地域の野良猫は減らない。
Oさんももうこれ以上、家に猫を入れるべきではない。
Oさんに何かあったら、お隣のお嬢さん一家が
猫の世話をするとはとても思えません。
こんな状況は今回で終わりにするべきだと思いました。
「野良のメス猫をきちんと避妊手術したり、
子猫を貰って下さる方を探したりして、優しいんですね。
でもだんだん追いつかなくなってきたんでしょう?
今回は私達がお手伝いしますから、今後は
OさんもTさんも、手術済の母猫2匹にのみご飯をあげて下さい。
置き餌をしない。新しい猫が来たらKさんに連絡する。
そうすれば、もう増えることもないですよ。
子猫達のことは何とか考えますから。」
そう言った時、Oさんが
「子猫を貰ってくれる人を探してくれるの?」
身を乗り出しました。
これも、Oさんがこのままではマズいと思っていた証拠。
ご自身だけではもうどうにも出来ないと思っていたのです。
「子猫は6匹ですね?」
「いや、7匹。」
ふ、増えたぞ!
「わかりました。その話、いったん持ち帰ります。」
と返答し、顔は笑っていたものの、それは仮の姿。
本当の自分は頭を抱え込んでその場にうずくまっていました。
人慣れしていない微妙な子猫だよ?
7匹だよ?
せめて3匹くらいにまとまれよ!
ボランティア活動を少し減らして、
生活を立て直すと、誰か言っていた・・・。
ああ、それは私であった。
To be continued・・・