2015年春。
我が家の勝手口付近に時々現れては、
強いマーキング臭を残していくようになった猫がいました。
当時、我が家の庭にはくりことこまつという
2匹の地域猫が生活していましたが、
その猫が来ると、とにかく、くりこは嫌がって
庭の反対側に逃げてしまいます。

 

 

 

後日、近所の他の場所でその猫を見つけました。
後をつけると、その猫は、床屋さんの敷地に入っていき、
庭に置かれた段ボールの中に座っていました。

 

ある時、床屋のおばさまがお店の外に出ていたので、
話しかけてみました。
マーキング臭や、他の猫との喧嘩が軽減されるのであれば、
去勢手術をしたいとおばさまがおっしゃったので、
私は捕獲器を貸し出し、病院への運搬をお手伝いしました。
(不妊手術の記録「009」を参照。)

 

 

 

 

その猫はちょろちゃんと言って、
近所にあった古い家で生まれました。
その古い家の所有者が無亡くなり、家屋も無くなり、
ちょろちゃんはおばさま宅の敷地にいるようになりました。
家の中に既に飼い猫がいたおばさまは、
ちょろちゃんを室内で飼ってあげられず、
3年程前から庭で世話をするようなりました。
その間に飼い猫は亡くなったそうです。

 

家の中にもう猫がいないのであれば、
ちょろちゃんを飼ってあげたらいいのに、
と思いましたが、
ずっと餌をやってはいるけれど、
チョロちゃんは人慣れしていないから、
家の中で飼えるような猫ではないし、
おばさまはその年の夏の終わりに、
市川を離れる予定で、猫は連れて行けないのだと言いました。

 

見た目は若々しく60代後半~70代前半かと思っていましたが、
もう80才を超えているそうです。
単身でお子様もおらず、当然、ご両親ももうご存命ではありません。
この土地で50年以上、床屋を営んでいたが、今後のことを考えて、
元気で他人に迷惑をかけないうちに全て売却し、
福井県の高齢者施設に入ることにしたのだそうです。

 

自分がいなくなった後は、
知人がちょろちゃんへの給仕を引き継いでくれることになっている、
ちょろちゃん用のフードは物置に大量にストックしてある、
ハウスも何も全てこのまま置いていくと、おっしゃいました。

「でも売却されるということは、いつかは建物も取り壊され、
土地も更地になりますよね?その時、ちょろちゃんはどうなるのですか?」

そう質問したところ、
それまで温和で優しい雰囲気だったおばさまの表情が厳しくなり、
イライラしたようなキツイ口調になりました。

「この子はこれまでも通行人たちにも餌をもらってきた猫なの。
ここにいられなくなったら、近所のどこかに行くでしょ。
どうせ、野良なんだから。」

 

 

どうせ、野良なんだから。

あの時のおばさまの言い方は今も忘れません。

 

 

 

おばさまは秋の初めに引っ越しました。

それからしばらくちょろちゃんは
おばさまの残した敷地で暮らしていましたが、
その土地は分譲地として売り出される為、
半年程後に工事が入って更地になりました。

おばさま宅の隣に、長年空き家となっている古い住宅があり、
ちょろちゃんはそちらに移動しました。
住宅の後ろにハウス代わりの発砲スチロールがありました。
おばさまから餌やりを引き継いだSさんという方が、
そこに置いたのだと思います。

 

 

2016年暮れ、ついに、その古い住宅も取り壊され、
跡地にはコインパーキングが出来ました。
ちょろちゃんの居場所はなくなってしまったのです。

 

それ以降、朝と夕方の1日2回、
コインパーキングの片隅で、
Sさんはちょろちゃんの給仕を続けていたそうです。

 


おばさま宅のあった土地には、
2件の分譲住宅が建ちました。

 


ちょろちゃんが移り住んだ隣の古家も
やがて壊され、コインパーキングに。

 

 

 

2017年暮れ、同じ町内に住むTTさんという方に頼まれ、
私はさばみ達のTNRを行いましたが、
その際、TTさんがちょろちゃんを見つけ、
もう1か所の駐車場で、餌をあげるようになりました。

Sさんという餌やりさんがいることを知ったTTさんは、
交代で餌をやりましょうと提案しましたが、

「あなたが餌をやるのなら、私はもうやらない。
もともと猫が好きなわけじゃないし、
床屋さんに頼まれたからやっていただけ。」

と、餌やりをやめてしまったそうです。

 

 

近くの春田アパートで生まれ育った三毛子
春田アパート付近の猫人口が増えた為、
だんだん居場所を東の方に移していき、
結局、ちょろちゃんと一緒に
TTさんの餌を待つようになりました。

 


春田アパートでおじさんに餌をもらっていた三毛子。

 

春田アパート隣のお宅に、ちょろちゃんが
いたこともありました。

 

ちょろちゃんと三毛子がどこで寝泊まりをしているのか、誰も知りません。
2匹はどんどん大きくなり、ぽっちゃりを超えたかなりの肥満体になりました。
Tさんの他にも、2匹にご飯をあげている方がいるということだと思います。

 

 

 


だいぶおデブさんに…。

 

 


毎日、ちょろちゃんと三毛子は一緒にご飯を待っています。

 

 

人間の都合で置き去りにされてしまいましたが、
十分という程のご飯にありつけていますから、
ちょろちゃんは、ラッキーと言えばラッキーです。

 

しかし、全ての置き去り猫がちょろちゃんと同じ
境遇ではありません。
この界隈には、他にも置き去りにされた猫、
置き去りにされかかっている猫達がいるのです。

 

 

 

To be continued・・・