前回までのお話。
2019年3月16日のブログ
「ねこ藩城下の猫たち:⑤トントン」
2018年6月。
我が家敷地で捕獲し、不妊手術後リリースした後、
この路地の定住地域猫となった、ニャース、くらら、ポッちゃん。
この3匹の猫たちに遅れること3ヵ月、
新しく定住地域猫団体に加わったトントン。
同じ場所(餌やりのおばあさん宅)から移動してきたポッちゃん、くららとは、
お互い毛づくろいをし合ったり、一緒に団子になって寝る程仲が良く、
ニャースとは、仲がいいのか悪いのか、よくわからない関係を築いていました。
庭にいる地域猫4匹は、追々、1匹づつ室内に保護して、
里親探しをするつもりでいましたが、
それは、ニャース、トントン、くらら、ポッちゃん・・・
という順番で考えていました。
くららにくっついて来る形で初めて登場してから1年半、
この路地での暮らしを満喫しているように見えたトントン。
2019年11月30日。
私が帰宅したり、玄関から外に出たりすると、
すぐ近くに寄ってくるトントンが、
ハウスにこもってじっとしていました。
うずくまっているようです。
やっとハウスから出てきたところを、
撫でようと近づくと、嫌がって逃げてしまう。
「あれ?おかしい。」
玄関の外階段に座り込んだトントンの左側を見て、驚きました。
左耳の下から顎にかけて皮膚がペロンとめくれているように見えます。
相当の出血があったのではないかと想像できる程の怪我。
怪我をしていたトントン。
去勢済みの雄猫であっても、喧嘩する猫は喧嘩をします。
男気溢れるニャースは、通りすがりの知らない雄猫はもちろん、
隣りの通りから時々やって来る、顔見知りのカプ君やチャップに対しても、
目を逸らさず、唸り声をあげ、体を低くして、とびかかる準備をします。
これまでに、お互い、怪我と言える程の怪我はしていませんでしたが、
くららやトントンとの間にも、一触即発の空気を漂わせていたことはありました。
ご飯をあげて世話をしている私には、
ヘロヘロに甘えてくるニャースですが、
他の猫に対しては手厳しいところがあります。
しかし、毎日顔を合わせている、というより、
長い間、同じ場所に一緒に住んでいる仲間同士で、
ここまでの喧嘩になるものだろうか。
ニャースの仕業ではなく、通りすがりの知らないオス猫と喧嘩?
でも、最近、未手術の知らないオス猫はほとんど路地には来ていないし・・・。
人為的なものではなさそうだし・・・。
翌朝、近くに来たトントンの傷を見てみると、
血は既に固まり、傷も治りかけているように見えました。
その日も用事がぎゅうぎゅう詰めで、病院に行く時間がとれない。
もう1日だけトントンに待ってもらい、
怪我の発見から2日後に、トントンを病院に連れて行きました。
先生には、傷口の洗浄、消毒、傷口の縫い合わせ、抗生剤注射に加え、
三種混合ワクチン接種をお願いしました。
初めは、怪我の手当てが済んだら、また庭に戻すつもりでいましたが、
どうせいつか保護するのであれば、予定していた保護の順番を変更して、
トントンを先に保護しようと、病院までの道中思いつき、
血液ウィルス検査も済ませました。
穴が2か所。やはり噛まれた跡でした。
傷はほぼ治りかけていましたが、
かさぶたが剥がれては出血・・・の繰り返しで、
酷い状態に見えてしまったようです。
ニャース程ではないですが、トントンも私には慣れている子でしたから、
室内に入れても、いい子にしていてくれるのではないかと思っていました。
実際、帰宅して三段ケージに入れると、
喉をゴロゴロさせて撫でさせてくれましたし、
私の手のひらに頭を載せて甘えてきました。
鎮静から覚め切っていない為、
うつらうつらして寝ています。
里親探しをしてあげよう。
この子は絶対に大丈夫。
私は甘かった。
トントンを保護して室内に入れた晩から、
拷問のような日々が始まりました。
確保が簡単な子ですから、
ずっとケージに閉じ込めておく必要もなく、
室内に入れてから3日後には、
ケージの扉を開けっぱなしにして、
1階のどこにでも行けるようにしておきました。
食事とトイレはケージ内で済ませる習慣がつきました。
鳴く、鳴く、大声で鳴く。
うるさい。
とにかくうるさい。
仲良しだったトントンが発するSOSを耳にした庭のポッちゃんが
玄関前に座り込み、トントンの鳴き声に応えるように鳴き出しました。
「おーい、トントン、どうしたの?大丈夫?」
「閉じ込められちゃったよ~。さびしいよ、ポッちゃん。」
とでも、会話をしているのでしょうか。
耳に響く共鳴音のような「ア行」の鳴き声。
うわああああん
うぁんうぁん
うわああああん
うぁんうぁん
で、時々、
ぐがががががあああ
(なにそれ)
里親さんが保護猫を迎えようとする時、
最も気にすることのひとつが、夜鳴きです。
トントンはその夜鳴きのような「要求鳴き」が、
夜だけではなく、1日中。
一度鳴き出すとボリューム大で15分は続きます。
1時間くらい静かになったかと思うと、また始まります。
2020年に入ってボランティア活動を休止したのは、
自分の生活を見直し、害した健康を取り戻す為でした。
いかれてしまった自律神経を元に戻す必要もあったのです。
だめだ。とても眠れない。
保護して1週間もしないうちに、私も家人も寝不足になりました。
「これはひどい。ちょっと無理かもしれない。
こんなにうるさい子を貰ってくれる人なんていないよ。
ていうか、その前に、もう私達が壊れるよ。」
しかし、予想外・・・というわけでもないのです。
庭で暮らしていた時も、トントンは他の3匹に比べ、
よく寝く猫ではありました。
ごはんの時間が近くなると、庭の猫達は勝手口にやって来ます。
私がキッチンでご飯の用意をしていることを知っているからです。
他の猫達は網戸から中を覗いて待っていましたが、
トントンは、「わーん、わーん」と、
ご飯をせかすように鳴いていましたから。
もうひとつの問題。
我が家の飼い猫くりことこまつが
トントンを受け入れようとしないのです。
くりこ(左)とこまつ(右)
トントンがケージ生活をしていた数日間、
少し離れた場所から、ケージ内にいるトントンを
ガン見していたくりことこまつですが、
トントンをフリーにしたことで、
あまりよくない状況になってきました。
トントンは先住猫に対して遠慮というものがありません。
家の中のあちこちに置いてある、くりこやこまつ専用のベッドを占領し、
タワーを完全に自分だけで独占しようとします。
くりこやこまつがタワーに先に乗っていたりすると、
物凄い勢いで、タワーを登り、他の猫を追い落とします。
トントンのいぬ間にタワー頂上を占領したこまつ。
しばらくすると、タワーをとられたことに気付いたトントンが
陣地を取り返しにやって来ます。
トントンが寄って行けば、こまつは威嚇して唸り出し、
くりこは、トントンの顔面に高速猫パンチを繰り出す。
くりこの猫パンチは全く容赦のないもので、
トントンの鼻には、しょっちゅう、くりこの爪につけられた傷がありました。
くりことのかごベッドで寛ぐトントン。
しばらくすると、トントンは執拗にこまつを追い詰め、
バトルをしかけるようになりました。
こまつとくりこもバトルをしますが、そこまで激しくありません。
5年間、平和に暮らしてきたこまつは、
オス猫にとびかかって来られるのが異様に怖いらしく、
夜中に何度も「ギャー」という悲鳴に近い声をあげています。
その度に、私や家人はすっとんで行き、
トントンをこまつから遠ざけましたが、
夜中に何度もそれをやられては、たまったものではありません。
ワイヤーラックで仕切りを作り、
トントンが2階に上がってこられないように、
夜寝る前にはダイニングと階段の間の仕切りを閉じました。
仕切りは人間の腰くらいの高さしかありませんが、
トントは仕切りを超えてまで反対側に行こうとしませんので
その点はとても楽でした(最初は)。
右奥のキッチン、左手の階段に行けないように
設置したトントン侵入防止柵。
階段入口にも年の為、もうひとつ。
柵のこちら側から見た図。
しかし、所詮、洗濯バサミで止めただけの柵です。
数日すると、トントンは柵と柵の重なった部分に手を入れ頭を入れ、
柵をすり抜けて階段を上がってくるようになりました。
次に、リビングとダイニングの間に柵を置いてみました。
しかし、仕切ったとしても、鳴き声は大きく上の階に響いてくるので、
夜はトントンにリビングと廊下だけを与えることにしました。
仕切りはしたが、声は聞こえてくるので、
結局、ガラス戸を閉め切ることに・・・。
ガラス戸を閉めて、人間と飼い猫2匹は2階へ。
トントンが来ないとわかり、くりことこまつは
安心したように、私のベッドで寝ています。
階下にひとりにして可哀そうかな、とも思いましたが、
夜中こっそり様子を見にいくと、
ケージ内のベッドに戻って休んでいたり、
タワーの上や、部屋の真ん中でリラックスして寝ていたり、
出しておいたおもちゃで一人遊びをしていたりして、
トントンも一人の空間に満足しているように見えました。
ケージに入っておとなしく寝ている。
トントンがいなくなったことで、
庭にいる猫達の関係にも微妙に変化が起こりました。
ニャースがくららを攻撃するようになったのです。
くららはしょっちゅう顔にひっかき傷を負っていました。
また、なぜか、ポッちゃんが私と距離をおくようになりました。
近寄り過ぎると威嚇してきたポッちゃんですが、
最近、その威嚇がやっとなくなってきたところだったのです。
それがまた時々始まってしまい、触ろうとすると、
身を翻して逃げるようになりました。
「お前、トントンに何かしたな?」
ポッちゃんに、そう言われているような気持ちになりました。
外から成猫を保護する理由はいろいろあります。
怪我をしていたり、具合が悪そうだったり、
どう考えてもいい環境とは思えない場所にその猫がいたり・・・。
その猫がそこにいてはまずい事情があったり。
トントンの場合、最初は怪我の治療が目的でした。
傷はもう完全に治っています。
飼い猫2匹はトントンの存在に苛立ち、具合も悪くなる。
トントンは恐らくストレスから大音量の声で鳴き続ける。
人間は寝不足になり、飼い猫2匹の機嫌をとって疲れる。
外の猫達の間にはピリピリした空気が漂うようになる。
誰も幸せではない、誰にもいいことがない。
これは間違った「保護」ではないのか。
家人と話し、トントンを庭に戻すことを考え始めました。
To be continued ・・・・