「飼い猫は室内で飼いましょう」
千葉県ではそう推奨しています。

法に定められたことではないので
外で飼っているからといって、
違法行為であると、罰則を受けることもありません。
また、強制できることでもないので、
注意・警告を受けることもありません。

 

千葉県はまた、地域の野良猫対策として、
住民による「地域猫活動」を進めています。

 

「地域猫活動」の先に見える未来は、
その地域の猫の数が減少することであり、
究極の目的は、その地域の猫がいなくなることです。

 

野良猫の寿命は5-6年と言われていますが、
毎日、生きる為に必要なご飯が提供され、
怪我や、病気の症状が出ていれば、
出来る範囲でケアをしてもらえる地域猫となれば、
長い年月、外で生き続けられる可能性があります。

 

 

 

 

ここで、
猫が好きな人、猫を飼っている人、
猫のボランティア活動をしている人、
その他の動物愛護関係者を
ひとまとめのグループとして考えてみます。
「猫ヘルパー」とでも言っておきましょうか。
猫を引き受けられる可能性のある人々ということです。

野良猫にしても地域猫にしても、
外で生きている飼い主のいない猫達全頭を
「猫ヘルパー」に属する人間が手分けして、
保護して室内に入れれば、外の猫はゼロになり、
野良猫問題は一発で解決するかもしれません。
しかし、「猫ヘルパー」一人あたり、
数十匹、数百匹の室内飼育は、ほぼ不可能。
そんなことをしていたら、あちこちで
多頭飼育崩壊が起きてしまいます。

 

 

 

よく地域猫の世話をしている人に向かって、
「外で餌をやるな、餌をやるなら家に連れて帰れ。」
と怒りまくる人間がいるらしいですが、
家に連れ帰り、飼ってあげられるのなら、
最初からそうしているでしょう。
それが出来ないから、地域猫として、
外においたまま世話をしているケースも多いのです。

飼い猫にしてあげることが難しい。
室内に保護してあげることが難しい。
そういう猫たちが地域猫として、
外で生きることを余儀なくされているわけですから。

外にいる猫は誰のものでもありません。
その地域に生息する猫ですから、
その地域の住民が見守っていくのが理想ですが、
特定の「猫ヘルパー」だけが全てを背負って、
まわりの住民はそれを遠巻きに見ているの図、
がとても多いという印象を受けます。

 

 

怒る人間は、野良猫問題に一銭も投じません。
誰のものでもない野良猫の不妊手術を行い、
その後の給餌、糞尿の始末、投薬まで
地域猫管理に発生する費用は、全て、
世話をしている人間の懐から出ています。
猫のためなら!と喜んでお金を出す方もいれば、
他に協力をお願い出来ず仕方ないから…という方もいます。

 

野良猫の不妊手術に関しては、
市からの助成金を受けることができますが、
それにはまず地域猫団体の登録を済ませ、
手術しなくてはならない猫の登録も必要です。
手続きが間に合わない場合、先にTNRを済ませ、
後から市に申請しても助成金は受けられません。

 

フード、薬代に対する助成金はありませんから、
自分で稼いで、自分で買って、です。
世話をする地域猫が1、2匹ならば、
費用の捻出はさほど難しくないでしょうが、
10匹、20匹となってくると、
ひと月あたりのフードを購入額は相当なものです。
それでも、地域猫の世話をする方々は
黙々とこなしています。

 

お金が続かない、体がしんどい、もうやめたい。
そう思うこともあるでしょう。

 

それでもやめずに毎日給餌に通うのは、
自分の意志で始めたことだから。
途中でやめることは無責任だという自覚があるから。
そして、なにより、給餌を待つ猫たちがいるから。

 

 

 

地域猫は外で生きる猫ですから、
世話をする人間は、世話をするのであって、
猫たちの飼い主ではありませんが、
現実は、世話をしている人間が、
全ての責任をとって(とらされて)います。

 

地域猫の世話をしている人間は、
猫にひどい風邪の症状が出ていたり、
怪我をしていたりすれば、薬を与えます。
どうにかして確保出来るような猫であれば、
迷わず病院に連れて行くという方々もいます。

 

また、外で生きていくということは、
細菌感染による疾病、交通事故、虐待等、
毎日、毎時間、何らかの危険と隣り合わせです。

 

地域猫として世話をしている猫に
健康上の問題が見られたら、どうするのか。
何をしてあげることが正解なのか。

 

 

全ての地域猫世話人が、同じ条件のもとで、
地域猫の世話をしているわけではありません。
職の有無、動ける時間帯、家庭の事情、経済状態によって、
活動内容には多かれ少なかれ差が出てくるでしょうし、
価値観の違いもあると思います。

 

 

私は自宅の庭で4匹の地域猫の世話をしています。
フード代、ノミダ二駆虫薬、抗生剤その他の薬で、
毎月20000~25000円程度かかります。
地域猫の世話をしている他の方々と同様、
自分でお金を出して購入しています。

自分の庭で世話をしているのだから、当たり前でしょ!
と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、
私は、この4匹を飼い猫だとは思っていません。
この地域にいる飼い主のいない猫だと思っているから、
地域猫として世話をしているのですす。
居場所が定まらないまま、ふらふらしていた子達の
世話を買って出たという表現が当てはまるかもしれません。

もちろん、飼い猫に対する気持ちとは少し違いますが、
安心して健康で毎日を過ごして欲しいと思っています。
ただ、食事、排泄の処理、寝床の掃除、ブラッシング等、
出来ることは限られてしまいます。

 

例えば、ある日、世話をしている地域猫が、
病気になったり怪我をしたりして、
治療に30万円かかると病院で言われたとします。
その金額を支払い、完全回復の為の治療をお願いするか?

 

実際に、そうなってみないとわかりませんが、難しいです。
「30万円払って治してあげるのは当然。」とは言えないです。

検査、手術、治療と手を尽くして、
最高の医療行為を求めることは出来ないと思いますが、
改善が望める薬があるならば、せっせと飲ませますし、
強制給餌や補液が必要ならば、一時的にでも
自宅のケージに保護して看病するつもりです。
それはそれで、また、お金のかかることではあるのですが。
お金をかける以前に、自分が出来ることがあれば、
それをMAXでやってみると思います。

 

 

地域猫の世話をしている方々の中には、
フード代で精一杯、とても医療費までは払えない、
という方もいると思います。
それはそれで仕方のないことであり、
他人に責められるべきことではありません。

世話をする側が出来る範囲内のことを
出来る範囲内で続け、猫を見守る、看取る。

「私はこれだけのことしかしてあげられないけれど、
最後まであなたを見捨てずに見守るから。」
という気持ちだけでは、猫は救えないよと
呆れられてしまうでしょうか。

 

地域猫に対してどこまで手を尽くすべきか、
どこまでお金、時間、気持ちを注ぐべきか。

 

地域猫として守らなくてはならない条件、
不妊手術の徹底、場所の確保(許可・承認要)、
給餌、排泄処理、周辺の掃除、
そして地域住民への配慮と苦情に対する誠意ある対応。
それ以外には、統一されたルールなどないのですから、
地域猫の食事内容、健康管理等をめぐって、
文句を言い合ったり、非難したりせず、
ひとりひとりが、その時その時に出来ることを行い、
地道な活動を続けていく。

それでいいのではないかと考えます。