前回の「東奔西走シリーズ」の話はこちら。
2019年5月 8日のブログ「東奔西走:⑭東の猫たち~地域猫たちの通院」

東奔西走:⑬東の猫たち~チャップ

 

 

 

スギ君が怯えたようにハウスの中でうずくまっていると
TOMOさんから連絡が来たのは2月7日のことでした。
普段は触らせてくれないスギ君ですが、その時は、
TOMOさんが抱きあげても無抵抗だったことが、
いかにスギ君の体調が悪かったかを物語っています。

 

TOMOさんはスギ君を病院に連れて行くつもりでいましたが、
翌日になると、触ろうとすると逃げまくるスギ君に戻り、
また徐々に食欲も元気も回復して、普段通りになった為、
スギ君を無理に病院に連れて行くのはやめました。

 

 

 

 

 

それから約2ヶ月後の3月31日の朝、
TOMOさんから届いたLINE です。

 

「最近、食欲がなく、一昨日と昨日は全く食べていません。
ずっとハウスの中でじっとしていますので、抱っこできます。
今なら、簡単に確保出来ますので病院に行った方がいいでしょうか。」

 

TOMOさんがすぐに病院に行けたら良かったのですが、
午前中は出かける用事があり、午後になれば通院出来るとのこと。
しかし、あいにく、その日は日曜日で、
車のないTOMOさんが歩いて行ける病院は全て午後休診。
TOMOさんに代わって、私がスギ君を預かり、
病院に連れて行ければよかったのですが、
私は別の猫の件で、2ヶ所を訪れる約束があり、
家を出なくてはならない時間がせまっていました。

午後も診察を行っている一番近い病院は隣の駅。
TOMOさんが、午後の診察が始まる16時に併せて、
電車でスギ君をその病院に連れて行って下さることになりました。

 

猫を飼っていないTOMOさん宅には、猫用品がありませんので、
出かける途中でTOMOさん宅にキャリーを届けました。
時間はお昼近くになっていましたが、その時、
既にスギ君の姿はハウスから消えていました。

 

午後帰宅したTOMOさんが付近を探して回りましたが、
スギ君の姿はどこにもありませんでした。

 

3月31日の朝、ハウス内にうずくまっていたスギ君。
それがTOMOさんが見たスギ君の最後の姿になりました。

 

 

 

 

TOMOさんは毎日、スギ君を探して歩きました。
急いでスギ君捜索チラシを業者印刷で仕上げ、
TOMOさん、菅野さん、私で手分けして配りました。
自治会に許可をいただき、この界隈だけでなく、
隣の△丁目の自治会掲示版にもチラシを貼りました。
情報は全く入ってきません。

 

 

 

 

 

スギ君がいなくなって1週間経った頃、
市役所清掃課に問い合わせてみました。

「4月1日、その地区で、
キジトラ猫の死体回収の記録があります。」

市民の方からの通報があり、清掃課の担当職員が
出向いて回収したそうです。

回収場所の住所を教えられ、
私は胸と咽喉が詰まりそうになりました。

○丁目○番地。
TOMOさん宅のある路地の住所でした。

 

 

TOMOさん宅のある路地の入口に広い駐車場があります。
その駐車場内で、キジトラ猫が横たわっていたそうです。
TOMOさん宅の裏からアパート1棟隔てて15メートルもありません。
そして、その駐車場は、昔から、スギ君やさばみが、
休んだり遊んだりして、日中よく過ごしていた場所でした。

清掃課職員はこう言いました。

「首輪をしていない猫は野良猫とみなして、
死体回収の際に写真撮影はしません。
ただし、首輪がなくても、飼い猫、または、
地域猫の可能性もありますので、
耳カットがあるかどうかは確認するようにしています。
そして耳カットがあれば地域猫と判断し、写真撮影をします。
4月1日に回収したキジトラ猫の写真はありませんので、
現場で職員が野良猫と判断したのだと思います。」

(思います?)

スギ君の右耳には、手術済だとわかる
きれいな耳カットが入っていました。
というこは、駐車場で回収されたキジトラ猫は
スギ君ではなかった?

 

一瞬、希望の光が差し込みましたが、
それはまたすぐに打ち消されました。
スギ君かイソダではないにしても、
不幸にもあの駐車場で亡くなってしまった、
気の毒なキジトラ猫がいたのですから。

でもちょっと待って。
この界隈の猫たちは全て不妊手術が済んでいます。

この1年ほどの間、いや、もう少し長い期間、
TOMOさん宅の路地とその付近に現れるキジトラ猫は、
耳カットのあるスギ君とイソダしかいなかった。

じゃあ、どこかからいきなりやって来た、
耳カットのないキジトラ猫が、
突然、あの駐車場で亡くなっていたというの?

 

 

清掃課の方が言っていたことをよく考えてみます。

「死体回収から時間もだいぶ経っていますし、
市内の死体回収は本当に件数が多く、
現場に出向いた担当職員の記憶も薄れています。
現時点で手元に写真がないということは
野良猫だったということだと思います。」

(思います?)

 

「思いますというのは推測でしょうか?
同じ外にいる猫でも、今や、野良猫と地域猫は違います。
市が地域猫活動を啓発しているんですよ?
あの地域の猫は皆手術が終わっている地域猫で、
私達が知る限り、耳カットのないキジトラ猫はいません。
地域猫たちを可愛がっている、住民の方々がいるんです。
耳カットが入っていたのかどうか、はっきりと知りたいんです。
今は、それがすごく大切なことなんです!」

私がこのように訴えた後での、職員さんの返答です。

 

「本当は耳カットなんかチェックしなかったんじゃないの?
Hさんが強く言ったから、慌てて後付けのようにして
そんな風に答えたんじゃないの? 疑わしいよね。」
とは、ねこ藩・菅野さんの意見です。

そうなのかもしれない。
駐車場のどの場所で、どんな状態で亡くなっていたのか。
現場に出向いた担当職員の記憶はもうありません。
だったら、通報者に詳しく話を聞きたい。
今の時点で唯一の目撃者なのだから。

しかし、この1ヶ月近く、清掃課の方が、
繰り返し通報者の携帯番号に
電話をかけて下さっていますが、
通報者は電話に出ないそうです。

 

死体のあった駐車場はコインパーキングではなく、
月極駐車場で、決まった人間しか利用していません。
駐車場内にある死体を見つけたのだから、
通報者は駐車場利用者ではないのか。
それならば、駐車場管理会社の許可を貰った上で、

「4月1日に猫の死体の件で、市役所に通報して下さった方、
状況を教えていただきたいので、連絡を下さい。」

と書いたチラシを貼っておく?

でも、市役所からの電話に出ようとしない通報者が、
そのチラシを見て、こちらに連絡してくる可能性はある?

 

 

 

これは、後で、TOMOさんから聞いた話です。
TOMOさん宅の前に、Oさんというご夫妻が住んでいます。
高齢のご夫妻はTOMOさん宅の地域猫たちを、
可愛がって下さっていました。
ご主人は4匹のうち、スギ君を特に可愛がり、
よくスギ君におやつをあげていたそうです。

 

 

 

スギ君に優しくして下さったそのご主人・Oさんは、
スギ君が行方不明になる3週間程前、
近所の路地で倒れて冷たくなっていたそうです。

 

可愛がってくれたおじさまの後を追ったのでしょうか?
それとも、家では飼ってあげられなかったおじさまが、
スギ君を連れて行ってしまったのでしょうか?

 

 

 

駐車場で亡くなっていたのはスギ君だったとしたら、
具合の悪い体をやっとのことで動かして、
駐車場まで来たところで、力尽来てしまったの?
それとも、実は少し休んだら元気になって、
いつものように駐車場まで遊びに来た時に、
車にぶつかってしまったの?

駐車場で亡くなっていたのがスギ君ではなかったとしたら、
あの気の毒なキジトラ猫は誰なの?
そして、スギ君はどこに行ってしまったの?
子供の頃よく隠れていた排水溝に入ってしまったの?
TOMOさん宅近くにある空き家の下の隙間から
中に潜り込んでしまったの?

先天性の病気を抱えていたの?
以前に何かにぶつかって内臓を損傷していたの?
感染症にかかりあっという間に悪化してしまったの?

 

スギ君、どうしたの!

 

今となっては、もう何もわかりません。
わかっているのは、私達は恐らく、
もうスギ君に会えないだろう、ということです。

 

 

 

きょうだいのむうむとちゃみは、
優しい方々に貰われて幸せになったのに。
きょうだいのさばみは、
TOMOさんご一家やカプ君に可愛がられて
今日も元気に過ごしているのに。
どうして、スギ君だけが・・・

 

 

ある日、姿を見せなくなる。
そうやって地域猫はいなくなる。
それが地域猫の最期だとわかっています。

わかっていても悔しい。
スギ君はまだ2才ちょっと。
もっともっと元気でいて欲しかった。

 

 

すぐに病院に行けなくても、
キャリー内に確保だけしておけば、
よかったのかもしれない。

私が用事をキャンセルして
TOMOさんの代わりにスギ君を
病院に連れて行ってあげれば
こんなことにはならなかったのかもしれない。

それよりずっと前、去勢手術をした後、
むうむやちゃみのように、
リリースしなければよかったのかもしれない。

家人の反対を押し切ってでも、
私が家にスギ君を保護していれば
よかったのかもしれない。

 

 

何を後悔しても、もう遅い。
スギ君はいなくなってしまった。

でも、一番悲しんで後悔しているのは、
ずっとお世話をして下さったTOMOさんです。

「スギ君?」というTOMOさんの呼びかけに
可愛らしい声で鳴いて返事をしていたスギ君の動画。
もう動画の中でしか動くスギ君にしか会えないんだね。

 

 

 

スギ君、生きているならば帰っておいで。
あなたが生まれてからずっと一緒にいる
きょうだいのさばみは寂しいと思うよ。
TOMOさんも、TOMOさんのご家族も、
私も、スギ君のことを知っている人みんなで
スギ君を待っているよ。

もしも、もうこの世にいないのであれば、
可愛がって下さったおじさまとの時間はそこそこにして、
早く着替えをして生まれ変わっておいで。
スギ君だとわかるように、キジトラ柄だといいな。

 

 

スギ君ごめんね。