前回のお話はこちら。
2019年5月13日のブログ:「じゅんちゃん:前編~運命の岐路に立つ猫」

 

 

 

 

すぐにでもごく普通の飼い猫になれるじゅんちゃんを
外に戻さずに済む方法。
それは、じゅんちゃんの里親探しを探すことです。

病気や怪我等の健康面・衛生面を考えれば、
外に出したまま里親探しをするのはまずい。
室内に保護して、ご縁を待つことになります。

すぐに里親さんが見つかるかもしれないし、
なかなか希望者が現れずに、時間がかかるかもしれない。
それでも、いつか巡り合うご縁を待ちながら、
室内でじゅんちゃんの世話をしていかなくてはなりません。

 

自分の飼い猫として猫を飼うことと、
里親探しの為に猫を一時的に保護することは違います。
例え飼ってあげられないとしても、
本来ならば、里親さんが見つかるまでの間、
NGさんご一家が保護するのが理想的ですが、
当初リリースを考えていたNGさんご一家は
長期にわたる保護はしない、ということですので、
NGさんの役割を担う預かり手が必要になります。

 

 

 

 

さて、じゅんちゃんを引きうけて下さる方・・・。
私と菅野さんは思いついたのは「Nおじさま」でした。

Nおじさまは菅野さん宅の斜め向かいに住んでいます。
犬や猫を飼ったことがあり、動物の世話には慣れています。
ここ20年近く、一軒家でひとり暮らしのおじさま。
これまでにも、みつるちゃん、カヌレ、きびくん&ひなちゃんと、
子猫を預かって一生懸命育てて下さいました。

 

 

おじさまは、ご自分の役目が【一時の預かり】だと、
よく、わかっていらっしゃいます。
「俺はもう歳だから動物は飼えないけど、
短期間預かるのは構わないよ。」
それでも、子猫達が去って行く時は寂しそうでした。

ひなちゃんが卒業してから、既に10ヶ月。
そろそろ、次の猫をお願いしても大丈夫な頃かな。

おじさまには、また保護猫をお願いしますと伝え、
だいぶ落ち着いてきたじゅんちゃんを、
術後2週間過ごしたNGさん宅からおじさま宅に、
ケージごと移動しました。

 

 

 


「ありゃ!これはまたずいぶんと
大きい猫が来ちゃったな。」

 

それはそうですよね。
これまでおじさまには子猫しか
お願いしたことがなかったのですから。

 

「頑張って、里親さんを探しますので、
その間、おじさま、よろしくお願いします。」

そう言うと、おじさまは、
「はいはい。でも俺は飼えないからね。
決まるまではちゃんと面倒みるから。」
と念を押すようにおっしゃいました。

 

 

NGさん宅での保護生活とは違い、
おじさま宅では、どこでもフリーですので、
家具の上や、押し入れの中、テーブルの下…
じゅんちゃんは、自分がいたい場所にいます。
それでも、眠くなると、ケージの上段で昼寝をしたりして、
NGさん宅の2週間の療養で身についた習慣のようです。

 

 

 

 

「可愛い!これはすぐに貰われていくね。」

じゅんちゃんの画像を見た方々は
皆、口を揃えてそうおっしゃって下さいましたし、
NGさんも、菅野さんも、私も、そう思っていました。

ところが、里親募集をしても、問い合わせ件数ゼロのまま
時間ばかりが過ぎていきます。

 

 

 

1ヶ月を過ぎた頃、思いがけないお申し入れがありました。
1年前にねこ藩の保護猫・百音ちゃんを迎えて下さったTKさんからです。

「どうしても貰い手さんが見つからなければ、どうか私にお知らせ下さい。
じゅんちゃんがおばさん猫になっていても構いませんので。」

 

 

2017年夏、百音ちゃん一家を保護した時、
子猫達は早い時期に貰われていくだろうけれど、
母猫で成猫の百音ちゃんは、時間がかかるだろうな…
と思っていましたが、とんでもない。
保護から4週間もしないうちに、TKさんご夫妻が、
熱烈コールで百音ちゃんを迎えて下さったのです。

 

 

 

そのTKさんが、じゅんちゃんにも心を向けて下さっている。
とても力強い後ろだてを得た気分になりました。

しかし、その1ヵ月半後、TKさんから再度連絡があり、
TKさんが病気を抱えていらっしゃることがわかりました。
大変です。これはじゅんちゃんどころではありません。
まだまだお若いTKさんには、元気でいていただきたい、
病気の治療に専念してお体を大切にして下さいと、伝えました。

 

 

 

ちょうど同じ時期に、市川市役所主催の「猫の譲渡会」があり、
私とNGさんとで、じゅんちゃんを連れて参加しました。

会が始まる前に、職員の方から参加保護主達へ、
当日の流れ等についての説明がありました。
その間中、他の保護猫達は各ケージの中でしーんとしているのに、
じゅんちゃんだけは「わーん、わーん」と鳴き続けていました。
この鳴きグセは何とかならないものか・・・。

 

 

 

 

 

譲渡会では、じゅんちゃんへの申し込みはありませんでしたが、
実を言うと、そんなに残念なことではありませんでした。

譲渡会の朝、おじさま宅にじゅんちゃんを迎えに行った時に
おじさまがこう話していたからです。

 

「里親さんなんてそう簡単に見つからないよ。
うちにいて貰ったって困ることなんかひとつもないんだから、
無理に譲渡会なんて連れて行かなくてもいいんじゃないの?
俺が元気な間は、ここにずっといればいいんだから。
俺に何かあった時にはじゅんちゃんをよろしく頼むよ。」

 

前々から参加申し込みをしていたので、
じゅんちゃんを譲渡会に連れては行きましたが、
会の間中、私も菅野さんも、

「じゅんちゃんに興味を持って見て下さっている人がいたら、
その子は鳴きグセがひどくて、結構、うるさいかもしれません。
夜中は大運動会で寝られないですよ(これは嘘ではない)。」

と説明して、お申し込みを受けないようにしようと話していました。

 

 

その後。
どうしても、「他の猫ではなくじゅんちゃんを…」
と希望して下さる方が現れたら、検討する。
積極的にこちらから働き掛けたりはせず、
大々的なじゅんちゃんの里親探しを控えることにしました。

 

 

菅野さん宅には頻繁に伺いますが、
その度に、おじさま宅の垣根から中を覗き込むと、
いつも必ず、じゅんちゃんが見えます。
定位置であるイスに座り、ハトやスズメや庭を眺めているか、
丸くなって昼寝をしています。

 

たまに、おじさま宅内にお邪魔すると、
「あ、知らない人が来た、大変だ!」とばかりに、
高い場所に登るか、どこかの下に潜るかして、
じゅんちゃんは避難してしまいます。
おじさま宅で、飼い猫化したようです。

 

 

 

 

ある時、菅野さん宅の門の前で菅野さんと話していたら、
おじさまがじゅんちゃんを抱っこして外に出てきたので、
「逃げたら危ないから、戻って、戻って!」
とおじさまには家の中に戻ってもらいました。
おとなしく抱っこされていたのでいいようなものの、
これがクセになってしまったら厄介です。

 

 

季節が春に変わり、だいぶ暖かくなってきた頃、
じゅんちゃんが網戸を付き破り、庭に出てしまいました。
たまたま、おじさまの家の前にいた菅野さんが、
「こら~」と叫ぶと、じゅんちゃんは慌てて室内に戻りました。
じゅんちゃんを追いかけて出てきたおじさまは、
ぜえぜえ息が切れていたそうですし、

おじさまには長年の糖尿の持病がある上に、
最近、腰の調子もあまり良くないとのことですので、
「これは、おじさまの手にも負えなくなってきたな、
じゅんちゃんの里親探し、また本腰入れて頑張らなくては。」
と思い、仕切り直して里親募集掲載を再開しました。

 

ところが、そのことを伝えると、

「色々考えてくれたみたいだけど、気にすることはないよ。
じゅんちゃんはうちの子になっております。
こんなに長く一緒にいて、今さら何処かにやれない。
これから他人の所に行かせるなんて血が許さないよ。
考えると非常に悲しいけど、自分にも最悪の時は来ると思います。
そうしたら、その時にはどうかよろしくお願いします。」

と、おじさまからメールが来ました。

 

 

そうか。じゅんちゃんは、
ひとり暮らしのおじさまのいい相棒になのね。

 

 

まだまだ元気で長生きしていただきたいですが、
おじさまももうそろそろ80代に入ります。
おじさまがじゅんちゃんの世話が出来なくなる日も
そう遠い将来の話ではないと思います。

そうなったら、保護主のNGさんと私で
じゅんちゃんの余生について考えなくてはなりませんが、
その時が来るまでは、おじさまとじゅんちゃんの
穏やかなふたり暮らしが続いて欲しいと願っています。

 

 

The end.