前回のお話はこちら。
2020年3月16日のブログ。
こねこWAVE到来:⑥子猫の社会化と譲渡会
猫の里親募集では、必ず募集条件があります。
団体・個人で、その条件は若干違ってくると思いますが、
譲渡側の共通した願いは以下の点です。
〇命に責任持ち、愛情を注いで終生飼育をすること。
〇完全室内飼いを守り、脱走にはくれぐれも注意すること。
生き物を飼うのであれば、その生き物が一生を全うするまで
飼い主が命の責任を持ち、飼育することは当然のことです。
ねこ藩で保護猫の里親募集をする際には、
終生飼育、完全室内飼いの他にも、何点か募集条件をつけています。
保護猫の年齢や性格によって、募集条件が多少違ってくることもあります。
家族全員の同意があることは不可欠要素。
ご家族の中に、誰か一人でも反対する人間がいたら、
後々、ご家族間の揉め事にもなりかねませんし、
否定的な目で見られる飼い猫が気の毒です。
飼育環境としては望ましくないと思います。
飼い主さんの年齢によっては、
飼い主さんが、飼育継続が困難な状況に陥った際に、
後を引き継いで猫を飼って下さるか、世話をして下さる方、
つまり後見人のようなものですが、
そういった存在の方がバックについていることです。
今や猫の寿命は20年近くなりました。
65才の方が子猫を飼い始めれば、
飼い猫が15歳になる頃、飼い主さんは80才になります。
飼い猫がシニアになり病気になった時、
果たして飼い主さんは通院したり、
まめなケアをしてあげることが出来るのか。
また、高齢となった飼い主さん自身の健康も
考慮しなくてはなりません。
卒業していった7匹の子猫たちに、
遅れをとってしまった「まめとたい」。
理由は、2つあります。
2匹の体調の不安定。
そして、2組の里親希望者様とのお話を進める中で、
こちらが考える決定的な不安要素があったからです。
◆安定しない便◆
先に保護したターシャとミーシャは、
結膜炎がひどく、目が潰れかかっていました。
しかし、根気よく目薬を差し、
インターフェロンを接種することにより、
2週間もするとピカピカの子猫になりました。
Kさんがお世話をして下さった
もえ、あき、オラは、元気いっぱいで、
治療が必要となるような症状はなし。
IKさん宅の4匹も、元気には元気でしたが、
お腹が緩めだったのです。
それが最もひどかったのが、まめでした。
IKさんは、消化器系系のフードを試したり、
他の物をバランスよく混ぜて与えたり、
努力をして下さっていましたが、なかなか改善しませんでした。
可愛い女の子・まめ
「今日はとろろ状でした。」
「少し固まってきたように思います。」
「またジェラート状になりました。」
そんなおトイレ報告がLINEで日々届きました。
最初は知らない場所に来たストレス?
あゆとたらが卒業し、環境が変わったことが
更にまたストレスになった?
IKさん宅の飼い猫(成猫)用のフードを
盗み食いしていたのかな。
IKさんと一緒に通院もしました。
先生にも診ていただきましたが、
お腹に虫はいませんでしたし、
便が緩い以外、他の症状が全くなく、
これといった原因がわからないのです。
こんな状態で、トライアルに出せば、
ストレスでもっとひどくなるかもしれない。
「猫にもよると思うけど、やってみてもいいかも」
と、獣医さんが教えて下さった、
2つの違う種類の消化器サポート系のフードを、
黄金比でミックスして与えてみる、という方法を
IKさんは、しばらくの間、試すことにして、
まめの便問題にじっくり取り組んで下さいました。
鼻くそ女子。(;^_^A
◆家族の同意◆
7月7日、市役所主催の譲渡会後、
私が手にした、里親申込書の1枚にこう書いてありました。
「希望:あきちゃんか、オラくんか、まめちゃん」
(飼えないかもしれません)。
飼えないかもしれないの?
それはいったいどういうことなのか。
申し込みをして下さった方に話を伺ってみました。
〇高校生のお嬢さんはアレルギー体質だが、猫を飼いたいと思っている。
先日言った猫カフェでは大丈夫だった。
〇浪人生の息子さんは、高校時代長く続いた引きこもり生活から卒業し、
今は大学入学を目指して勉強中。
やっと元気になってくれた息子が猫を飼いたいと言っているし、
生き物の世話をすることが彼の今後のやりがいに繋がると思う。
ああ、なる程。
〇主人が猫を飼うことに絶対反対。
じゃ、だめじゃん。
家族全員の同意があってこそ、
ペットを迎え入れられる環境が整うのだと私は思います。
そのように話すと、奥様はこう言いました。
「主人は動物が嫌いというわけではないんです。
娘のこと、息子のことを考慮しているんです。
既成事実をこっちから作ってしまえば、反対したりせず、
もう仕方がないな、と諦めて許してくれると思います。」
既成事実?
奥様のプランはこうでした。
ご主人の留守中に、ケージ、トイレ等の猫用品を全て家に揃え、
「まめちゃん」も移動してもらう。
帰宅したご主人がその状況を見て、
「だめだ、返しなさい。」とは言わないと思う。
奥様とお子様2名は、後日、IKさん宅にやって来ました。
もう一度、まめに会う為です。
お子様2名は、まめを可愛がり、
一生懸命おもちゃで遊ばせていました。
まめを迎えたいという強い気持ちを、
奥様とお子様たちがお持ちなのはよくわかりました。
トライアルをしてみるかどうするか。
先にケージやトイレ等、お貸しする備品を運び入れ、
ご主人が留守の間に、それを組み立てる?
そしてまめを移動する?
そのように提案すると、
「事前にケージ等を家に運び入れて隠しておいても、
もし主人に見つかったら計画がばれてしまうので、
出来れば、平日の朝、主人が出かけた後に、
全ての備品を運び入れたい。」
私も、やることはたくさんありますので、
べつの提案。
「だったら、そちらから備品を取りに来て、
部屋に運び入れておいてください。
その間、私はまめを病院に連れて行ってから、
お宅にお届けします。分担作業にしましょう。」
「車を運転出来ないので、持ってきていただけませんか?」
と返答。
「だったら、もうご主人を説得して、お休みの日にでも、
ご主人に車を出してもらって、取りに来ていただくのは?」
と提案。
「家に猫がいて初めて説得できると思うんです。
事前に説得して了承してもらうことは難しいです。」
と返答。
私は何だかじれったいものを感じ、
IKさんに相談しました。
「他人をあてにし過ぎていると思います。
本当に猫を、まめを飼いたいと思っているんでしょうか。
本当に猫を飼いたいと真剣に思っているのならば、
もっと積極的に前向きに自分達で動くべきです。
自分達の都合に合わせてHさん(私)が動いてくれて、
準備も全てHさんがしてくれると思っていますよね。
現物がないから説得できないというのは、
私、それはチガウと思います。」
だね。
IKさん宅でまめと触れ合った日の晩、
娘さんの皮膚の痒みがひどくなったということもありました。
くしゃみ・鼻水ならマスクで何とか出来ても、痒みはつらい。
「お宅はまだ猫を飼うという環境が整っていないと思います。
お嬢さまのアレルギーのこと、ご主人のこと。
そこをクリアすることが先決だと思います。」
と、丁寧に、こちらからお断りの連絡を入れました。
◆どうにもならない病気◆
もう1組は60才手前の、無職の単身女性でした。
もの静かで真面目そうな方です。
譲渡会会場でも、優しい眼差しで、
金属ケージ越しに子猫達を長い間、
眺めていらっしゃいました。
彼女の里親申込者には、
ターシャ、ミーシャ、まめ、たい、とあり、
2匹一緒ならば、どの組み合わせでも、
と追記されていました。
「後見人になってくれるような人が誰もいない。
でも、自分がこれから生きていく為には、
どうしても猫との暮らしが必要なんです。」
こちらの提示した募集条件には当てはまりませんでしたが、
私はこの女性=Rさんがとても気になりました。
譲渡会の後、お宅に伺うと、
正直に色々と話して下さいました。
〇若い頃は引きこもりで長年うつ病を患っていたこと。
〇治療の為に通っていた病院で、同じ病のご主人と知り合い、結婚されたこと。
〇お二人とも、遺伝性の精神疾患だった為、子供を持つことを諦めたこと。
〇2年前にご主人が突然死され、一人残されたここと。
〇ご主人のご両親も既に他界され、ご主人も一人っ子だった為、
ご主人側の身内がいないこと。
〇ご両親、お兄様は既になくなって、自分側の身内も誰もいないこと。
〇友人知人は、病院で知り合った患者さんがほとんだということ。
〇ご主人の死に絶望され、死にかけたこと。
〇入院して「統合失調症」と診断されたこと。
〇ご主人の残された不動産や金銭管理が難しい為、
今は指定後見人に生活費を必要な分だけ出してもらっていること。
〇働きに出ることは難しいので、今後もずっと無職であること。
〇毎日料理が出来ないので、週に数度はお弁当を配達してもらっていること。
大変な境遇にいらっしゃる方です。
特にこの数年間は辛いことばかりだったでしょう。
R子さんの件についても、IKさんと話し合いました。
自分自身の管理に不安がある飼い主さんに、
これから20年近く生きる子猫を任せられるか。
R子さんが希望する「まめ」は、お腹のケアが必要な子です。
また、R子さんに何かあった時、猫はどうなるのだろう。
それがずっと先のことだとして、私達がその時、
R子さんの力になってあげられるんだろうか。
色々と考えた末に、R子さんにはお断りをしました。
しかし、猫を飼うということが、
R子さんの生きる活力にもなるのです。
R子さんの事情を理解した上で、
保護猫を譲渡して下さるボランティアさんは、
いないだろうか。
いる。
私はこれまでの経緯を、6年前からの知り合い、
肉球家族さんに話しました。
肉球家族さんは、快諾して下さいました。
「何かあった時に、必ず私に連絡をくれて、
猫の処遇を一緒に考えて下さる方なら、私はOK。」
後日、R子さんは肉球家族さんのお宅を訪問しました。
そして、室内にたくさんいる(笑)保護猫の中から、
2匹を譲り受けることになりました。
R子さんが迎えたきょうだい。
R子さんは、インターネットをしない方なので、
こちらでケージやトイレを通販で購入し、
R子さん宅に届けてもらいました。
そして、R子さんを車に乗せて、猫用品ショッピングに出かけました。
フード、ベッド、おもちゃ、キャリー、爪とぎ・・・
商品を手に取りながら、順々に選んでいくR子さん。
一緒にケージやゲートを組み立てている時、
猫用品のショッピング中、
R子さんは、とても楽しそうでした。
その後も、
「昨日の夜は2匹で運動会していたみたい。」
「今、ようやく眠ったところです。」
と、LINEで連絡が来ました。
2匹のきょうだい猫たちを迎えたことによって、
カラフルで賑やかになった新しい生活を
R子さんが楽しんでいることが伝わってきました。
R子さんに非日常的なことも良い刺激になるかもしれない。
そう考えて、R子さんには、
市民まつりで、ペット用の座布団を販売すること、
その為の袋縫いをして下さるの手が必要なことを話しました。
「直線縫いくらいだったら、私、ミシンかけられますよ」
とR子さんは快諾して下さいました。
そして、短期間で30枚程仕上げて下さった上に、
不要になったという可愛らしいパッチワーク用の生地を
たくさん寄贈して下さいました。
市民まつり販売用のペット用座布団。
R子さんも頑張って下さいました。
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まめとたいの里親探しは、振り出しに戻りました。
仕切りなおして、幸せへと続く道を探してあげなくてはね。
To be continued ・・・・