前回のお話
2020年6月2日のブログ
「チャーちゃんとシロちゃん:①彼は戻っていった。」
https://nekohan.jp/archives/12214

 

 

 

 

チャーちゃんが外の世界に帰っていった後、
室内に1匹残ったきょうだいのシロちゃん。

 

 

 

KIさんの飼い猫2匹のうちの1匹・ベルちゃんが、
シロちゃんが同じ空間にいることが気にいらないようです。
飼い猫にとっても保護猫にとっても、
これはあまりいい状況ではありません。

 


KIさんの飼い猫・ベルちゃん

 

 

 

 

 


もう1匹の飼い猫・ミーシャちゃんとは大丈夫そう。

 

 

 

せっかく保護したのですから、
早く素敵な飼い主さんを見つけてあげたい。
相性の悪い猫との生活から解放してあげたい。

猫を保護して里親探しをしたことのある人でしたら、
必ずそのように願うものです。

 

 

室内飼いの猫として、シロちゃんには
何の問題もありません。
全ての基本医療行為は済んでいます。

 


人と一緒に寝ちゃう。


長い毛並みに、ぼわっとした特徴のある尻尾。
ゴージャス感溢れる女の子。

 

 

シロちゃんらしい写真を選んで、
里親募集を開始しました。

 

 

 

11月3日に参加した市民まつりで、
ねこ藩ブースにプロフィールを貼り出しました。
関心を持って見て下さる方々は数名いらっしゃいましたが、
だったら一度会ってみましょうというところまでは
いきませんでした、残念ながら。

 

 

 

もうほぼ大人の猫ですから、
里親さまはすぐに見つからないかもしれない。
でも、こんなに可愛いシロちゃんですから、
じっくりとご縁を待ちましょう・・・。
と構えるつもりでしたが、
理想的な里親さまが現れるまで、
そう時間はかかりませんでした。

 

 

「シロちゃんに会わせていただけませんか。」

 

市民まつりから10日程経った頃、
里親募集サイトを通じて、お問合せが届きました。
Tさんという若い女性からです。

 

 

 

これまでにアップした画像をご覧になって
お気づきになった方もいらっしゃるでしょう。
シロちゃん、そして外に帰っていったチャーちゃん、
2匹とも、両耳にはV字カットが入っています。

 

 

 

 

通常、不妊手術済の地域猫の耳にはV字カットが入っています。
これは、オスなら去勢手術、メスなら避妊手術が済んでいますよと、
外見を見ただけで判断することのできる大切な目印です。

 

オスの場合は右耳、メスは左耳にカットが入ります。
市町村によって逆の場合もありますし、
今では少数派かもしれませんが、
はっきりとしたV字ではなく、
水平あるいは斜めカットを入れる獣医師もいます。

 


左)オスは右耳カット(モデル・そら)
右)メスは左耳カット(モデル・百音ちゃん)

 


獣医さんによっては、V字ではなく、
こういった水平に近いカットの場合もあります。
(モデル・かよちゃん)

 

 

今後、外で猫を見かけた時、
どちらの耳にカットが入っているか、
注意して見てみて下さい。

顔や鼻先や、Paw(手足の先部分)のサイズ、
手足の長さ、お尻の部分、体長、体高等、
いくつか性別を見分ける方法はありますが、
耳カットが入っていれば、一発で区別がつくのです。

 

 

シロちゃん、チャーちゃんの両耳カット、
これはとても珍しく、私も初めて見ました。

 

 


↑ これっぽいですよね。

 

 

 

 

動物病院で不妊手術をお願いする際には、
飼い主または依頼主が、手術に関する合意書に署名します。

KIさんが署名したその合意書の中に、
「当院は両耳カットです」の文言がありました。

 

 

その箇所に気付き、「左耳だけにしてもらえますか」と
お願いすれば、獣医師はそのようにして下さるでしょう。

病院から帰ってきた猫達の両耳にカットに違和感を覚え、
KIさんは手術後にその合意書を再確認しました。
そして、「両耳カット」の部分に気付いたのです。

KIさんは、そのことをとても気にかけておられました。

「私が注意していれば…。
こんな可哀そうな耳になってしまって、
里親になって下さる方など
現れないのではないだろうか。」

 

両耳カットは、ちょっとやり過ぎでは、
という思いは私にもあります。
しかし、既に済んでしまったことです。
切った部分は再生して元通りになりません。
むしろ、それをシロちゃんの特徴と考えればいい。

 

珍しい両耳カットの入った猫。
シロちゃんの個性。

 

 

 

シロちゃんを希望して下さったTさんは、
こうおっしゃって下さいました。


両耳カット、
私はすごく可愛いと思いますよ。

 

こうして、KIさんの保護猫シロちゃんは、
KIさんの上のお嬢さんと同じ年の、
優しいTさんの飼い猫になり、
こまちちゃんという名前をつけてもらいました。

 


保護主・KIさんの膝から・・・

 


飼い主・Tさんの膝へ。
シロちゃんの一生の居場所です。

 

 

 

外で生きることにしたチャーちゃん。
家の中でTさんと暮らすシロちゃん。

道はそれぞれ違ってしまいましたが、
2匹の幸せを願うKIさんの気持ちは、
ずっとずっと変わらないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

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猫を譲渡する際、その猫の基本医療行為にかかった医療費を
里親さまから実費でいただいています。

シロちゃんに関しては、合計で23100円でしたが、
ワクチンが5種混合だったこと等を考慮し、
里親さまからは18100円をいただきました。

病院で医療費を支払ったのはKIさんですので、
KIさんにお渡ししたのですが、
KIさんは全額をねこ藩に寄付して下さいました。
里親探しのお手伝いをさせていただいただけですのに、
申し訳ない気持ちです。

 

 

 

 

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チャーちゃん、シロちゃんの不妊手術を行い、
両耳にカットを入れたK病院は、隣の市にあり、
犬猫の飼い主さん達からは評判の良い病院です。

私はそのK病院を利用したことがありませんので、
両耳カットを行っていることは知りませんでした。
知人のボランティアさん達数名に話を聞いてみましたが、
皆さん、両耳カットは初耳ということでした。

 

両耳をカットしてしまったら、
性別がわからなくなるじゃない。

 

 

ですよね。

 

以前、我が家によく滞在していた茶トラのチャップ。
初めて見た頃、右の耳にカットが入っていたので、
どなたかが手術をして下さったのかと思っていました。

 

ある時、チャップの右耳をすぐ間近で見てみると、
どうも不自然なV字です。
これはもしかしたら、V字カットではなく、
オス猫同士の喧嘩による裂傷ではないか?

ということは、未去勢。

 

その後、隣りの通りにお住まいのTOMOさんが
ご自宅の敷地で、カプくん(とら)、さばみと共に、
チャップ(マイケル)の世話をして下さるようになりましたので、
地域猫として、きちんと去勢を済ませなくてはなりません。

病院に連れて行くと、やはりチャップは、
未去勢であったことがわかりました。

喧嘩で出来た裂傷が、
きれいなV字に見えることもあるんですね。

 

 

誰が見ても、遠目に見ても、
はっきりと手術済みであることがわかるように、
K病院では、両耳カットを行っているのでしょう。

ただ、K病院と同じ市内の他の病院の主流は、
やはり片耳カットです。

「他の病院とは違い、当院では両耳カットですが、大丈夫ですか?」

と、猫を預かる際に、K病院側が一言、
確認して下さってもよかったですよね。

 

 

白茶のオス猫は外でよく見かけますが、
あの公園で目撃された猫がチャーちゃんだとわかったのは、
チャーちゃんであるとはっきり特定できる
この目立つ両耳カットがあったからかもしれませんが。

 

 

 

K病院の処置について、
もうひとつ、気になったことがあります。

 

野良猫を保護した時に行う基本医療行為のひとつ、ワクチン。
巷では三種混合ワクチンが圧倒的に多いと思います。
ところが、チャーちゃん、シロちゃんは、
5種混合ワクチンを接種しています。

 

私が保護猫を連れて行く病院は何か所かありますが、
どこの獣医師さんも、ワクチンをお願いすると、
「三種混合ワクチンでいいですよね。」と確認して下さいます。

 

もしかしたら、K病院では、飼い猫でも野良猫でも、
ワクチンは5種という方針なのかもしれません。

 

保護猫に5種混合ワクチンを接種する必要があるか?
と問われれば、私個人としては、「多分、NO」。
保護主としてマストなのは、3種ワクチン接種。
5種混合ワクチンを接種するかどうかは、
将来、飼い主さんが決めればいいこと、と考えています。

 

 

保護した猫にどういう基本医療行為を施すのか。
ボランティアでない一般の方々にはわからないことも多い。
それは当たり前だと思います。
猫を保護するなんて、そうそうあることではないでしょうから。

 

KIさんは、2匹の件で、市に相談をしたそうですが、
「ご自分でどうぞ」という返答だったそうです。

 

いつも思うのですが、ここに問題があるように思います。

 

自分で捕獲し、医療行為を済ませ、地域猫として世話をしたい、
という前向きで行動力のあるKIさんのような方は、
ここ数年で徐々に増えてきているように思います。

 

しかし、ボランティアではないのですから、
捕獲器が借りられるものなのかどうか、
捕獲~手術~療養等、手順はどういう風になるのか、
野良猫の不妊手術を良心的価格で
受け入れてくれる病院はどこなのか、
そういった知識がないわけです。

 

 

6年前、私も全く同じ経験をしました。
肉球家族さんが色々とEducateして下さらなかったら、
当然のように、25000円の手術費用と3日間の入院費を払い、
5種混合ワクチンをお願いしていたでしょう。

 

 

やる気のある方々に
「ご自分でどうぞ(こちらは関係ない)。」
的な対応は、だめだと思う。

 

「市の方ではお手伝いできませんが、
事情に詳しいボランティアさんがいますから、
詳しいことを伺ってみてはいかがですか?
ボランティアさんは費用は負担しませんが(ここ強調)、
捕獲器を貸し出したり、運搬を手伝って下さったり、
ボランティア価格の設定がある
病院を紹介して下さると思いますよ。」

そこまで持っていかなくては。

 

 

相談者の年齢によっては、スマホを扱えない方も多い。
ネット上で必要な情報を得ることも難しいわけです。
そんな方々に、「ご自分でどうぞ」では、
「ああ、やっぱり自分ひとりじゃ無理。」となる。

 

せっかくTNRをする気になった人の、
やる気がそがれてしまうような結果になるかもしれません。

その結果、手術が間に合わず、妊娠出産が続き、猫が増える。
で、どうしてこういう状になる前に対処しなかったのかと。

 

 

 

相談者とボランティアの結託と協働によって、
ひとつ、ひとつ、確実に問題を解決していく。

そうやって円滑に事をすすめていくためには、
受けた相談をそのままボランティアに丸投げするのではなく、
行政も加わって深く関与しつつ、
相談者とボランティアをいい形で結びつける。

行政側には、そういった役割を担っていただきたいものです。