(2)紅美ちゃん (旧すえまつ)

 

 

2020年4月5日の昼、肉球家族のIさんから、
紅美ちゃんが亡くなったことを知らせるメールが届きました。

 

紅美ちゃんは、我が家の飼い猫こまつが、
野良猫時代に生んだ3匹の子猫の1匹です。

 

 


茶トラの女の子

 

 

2014年6月、庭にいた野良のメス・くりこのTNRが済んだ頃に、
ムギワラのような色の薄いキジトラが現れました。
お腹が大きく横に張り出し、出産が近いことが明らかな体形で。

 

 


大きいお腹をして我が家の庭に居着いたこまつ。

 

 

 

くりこのTNRに協力して下さったIさんは、
「その新しい猫も早く何とかしなくちゃ。
今なら堕胎、間に合うと思うよ?」
と言って下さいました。

しかし、当時、猫のボランティアではなく、
未不妊の野良猫が多い地域に住む、ただの住民だった私は、
くりこのTNRと、くりこの子・ころちゃんの保護・里親探しが
終わったばかりで、気持ちに余裕がありませんでした。

 

 


母猫くりこと子猫ころちゃん。

 

 

 

隣りのお宅がご飯をあげている野良猫達のために
なぜ私が延々とお金を出して手術をしなくてはならないのか、
不公平だ!と、うんざりしていたことも事実です。

「困ったら隣りのお宅が何とかすればいいと思う。
私はもう関わるのをやめたい。キリがないし。」

 

こまつとこれから生まれて来る子猫達のことを思って、
Iさんはやるせない気持ちになったに違いありません。
しかも、隣宅がこまつに与えているのはドッグフードで、
子猫達が生まれても、それは多分変わらない。

 

 

 

それから2ヶ月後、近所のどこかで出産・子育てをしたこまつは、
3匹の子猫を連れて、我が家のある路地に戻ってきました。
当然です。堕胎手術をしなかったのですから。

 

 


こまつと3匹の茶トラ子猫たち。

 

 

 

 

 

くりこ親子の件から2ヵ月。
こんなことはこれでおしまいにして、
と家人に釘をさされていました。

でも、あの小さい子猫達はどうなるの?

 

「いい加減にしてよ、うちはボランティアじゃないんだから!
個人で出来ることに限界はあって、うちの限界はもうここまで!
なんで外にいる野良猫に、うちがそこまでしなくちゃならないの?
気にしなきゃいいだけの話じゃないの?」

 

と、冷たい家人。
動物を飼ったこともなければ、動物に興味もない人に、
私と同じ気持ち、感情を持てと言っても無理な話です。

この家の住人は私だけではありませんから、
猫を室内に入れることに猛反対な家族が、
やめろと言って怒るのだから、やめるしかないのです。

 

 

仕方がないのだと諦め、重い心でIさんに伝えました。

 「こまつが3匹の子猫を連れて戻ってきちゃった。
せめて、母猫のこまつだけは近いうちに避妊しようと思う。
子猫達は大きくなるのを待って、時期を見てTNRするつもり。」

 

ほら、見たことか!

なんてことを言う方ではありません、Iさんは。

 

「こまつのTNRはHさんがやるのね?
子猫たち、その大きさなら、里親さんはすぐ見つかると思う。
病院を紹介するから、子猫たち3匹捕まえて全てを済ませて(*)、
うちに連れてきて!」

と、Iさんからメールが来ました。

 

*全てを済ませて:駆虫、ワクチン、血液検査等、
月齢に合わせてその時点で可能な基本医療行為を全て行うこと。

 

 

Iさんは私を責めずに、子猫達を引き受けて下さったんです。

 

 

 

そうとなったら、頑張らなくてはいけません。
捕獲に向けて、少しでも慣らすため、
勝手口でこまつ一家にご飯をあげることにしました。
「室内には入れない。捕獲の為に餌をやっているだけ。」
と、明らかに気分の悪そうな家人に説明しながら。

 

 


ご飯の後は、親子そろって厚かましく、
勝手口から
キッチンに入り込み、昼寝をするようになりました。

 

 

 

3匹のうち1番大きい男の子は「しろまつ」、
大人しそうな顔をしたスレンダーな子は「ひらまつ」、
一番小さくて丸々とした、こまつに似た子は「すえまつ」。

 

 

 

 

そして、2週間後、こまつを捕獲器で捕獲、
子猫達は金属ケージとキャリーに誘い込んで捕まえました。

その夜、こまつは避妊術後の療養の為、
我が家の室内に用意したケージに入れ、
子猫達はIさん宅に届けました。

 

 


Iさん宅に到着した子猫たち。

 

 


左から、ひらまつ(みさき)、しろまつ(さんご)、すえまつ(なぎさ )

 

 

【こまつの子達に関する肉球家族さんのブログ】

母猫こまつの願い(2014年9月18日)
https://ameblo.jp/poodlepoota/entry-11926947825.html
まずは・・・珊瑚(さんご) (2014年9月20日)
https://ameblo.jp/poodlepoota/entry-11927539582.html
募集掲載いたしました(2014年9月21日)
https://ameblo.jp/poodlepoota/entry-11928014945.html
大安吉日(2014年9月22日)
https://ameblo.jp/poodlepoota/entry-11928771088.html
保護する勇気(2014年9月29日)
https://ameblo.jp/poodlepoota/entry-11931896767.html
ニア&ナナ(2014年10月7日)
https://ameblo.jp/poodlepoota/entry-11935720512.html

 

 

 

Iさんさんが言った通り、里親さんはすぐに見つかりました。
一番小さいこまつ似の「すえまつ」は、
Iさんさん宅では「なぎさ」と呼ばれていましたが、
我が家から移動して1週間もしないうちに、
Iさんさんが保護した別の子猫「健(たける)くん」と
2匹一緒に貰われていきました。

 

 

 

 

 

Iさんが譲渡した形になりますので、
私は里親さんのお名前も、里親さんがお住まいの場所も
知りませんでしたが、
すえまつが早々と幸せをつかんだことは本当に嬉しかった。

 

その2週間後には、しろまつとひらまつ(さんごとみさき)が、
きょうだい2匹一緒に都内のご一家に貰われて行き、
お届けの際には私もIさんに同行しました。

 

 

あれから、約5年半です。
紅美ちゃん=すえまつは6才を目前に生涯を終えました。

 

 

 

 

 

Iさんは、里親であるKさんからのメールの内容を知らせて下さいました。

その朝、いつも通り、ごく普通に元気に過ごしていた紅美ちゃん。
数分後、Kさんが倒れている紅美ちゃんを見つけた時には、
もう亡くなっていたそうです。

 

くりこが産んだ子で、まさむね達の母親・きじこが
亡くなった時のことを思い出しました。
隣宅で朝ご飯を食べ、この路地をうろうろした後、
バルコニーで昼寝をしたまま亡くなっていたきじこ。

こういった猫の突然死の多くは、
心疾患かフィラリアによるものが多いと聞きます。

 

 


きじこ。生後1年くらいでした。

 

 

 

何らかの病気を患い、その治療をしている猫であれば
容態が急変して亡くなる可能性が全くないとは言えませんから、
飼い主さんの頭の中には多少なりとも、そういった覚悟はあるかもしれません。

しかし、病気でもなく、何の前触れもなく、
元気な姿を見せた直後に冷たくなっていた場合、
こちらに出来ることは何もなかったとしても、後悔が残るものです。

自分が病気のサインを見逃していたのかもしれない。
普段から、神経質なほど状態をチェックしてあげていれば良かった。

 

 

紅美ちゃんの里親・Kさんからのメールの文面には、
紅美ちゃんの突然の死に混乱している様子と、
大切だった家族、紅美ちゃんへの想いが溢れていました。

 

ある朝突然に終わりを告げてしまった紅美ちゃんの猫生。
Kさんにとっては、まだまだ悲しく寂しいだけで、
紅美ちゃんとの楽しかった時間を思い出して
微笑むまでには至っていないでしょう。

 

 

 

 

 

今では我が家の大切な飼い猫となったこまつ。
そのこまつが産んだ、最初で最後の子に、たくさんの愛情を注いで下さり、
その短い一生を見守って下さったことに感謝の気持ちでいっぱいです。

 

Kさん、ありがとうございました。

 

 

 

To be continued ・・・