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②さよなら、バジル
③暗雲立ち込める

 

 

 

 

 

生後2ヵ月足らずで
猫エイズ陽性反応が出た、
ヒース、キトリ、クリフ。

 

 

 

 

 

子猫の血液ウィルス検査は、
母親からの移行抗体が完全に体内から消失すると言われる生後6ヶ月以降でないと、
正確な結果が出ないと言われています。

 

クリフ達はまだ1カ月半。
血液検査薬は母親からもらった抗体に反応しますから、
子猫が持って生まれたものが実はどうなのか…
というところまで見えてきません。

 

「猫エイズ」というのは人間のエイズと同じ。
簡単に言えば、様々な疾病を自力で治すことができなくなる免疫疾患です。
「猫エイズウィルスキャリア猫」というのは、
「猫エイズ」を発症する可能性のあるウィルスのキャリアである猫、です。

猫エイズを発症する時期はそれぞれ。
若いうちに発症してしまう猫もいれば、老猫になってからの発症もあります。
一方、キャリアであっても、発症せずに一生を終える猫も多い。
ストレスのないごく普通の家猫生活を送っていれば、発症のリスクがぐんと下がると聞きます。
ケンカが絶えない、不衛生な環境にいる、様々な細菌・病原菌に晒されている、
外で生きる猫エイズキャリアの猫達の多くに、猫エイズの発症が見られます。

 

 

 

Mさまご夫婦からの「辞退理由」は以下の通りです。

●この時点で猫エイズ陽性反応が出たということは、
母猫からの移行抗体に陽性反応が出ている。
●母猫がエイズである事は確定で、母子感染の可能性を考慮すると、
クリフは陽性である確率が他の保護猫よりも高い。
●借りに6ヶ月後に陰性に転じることがあっても、
それまでの間は先住猫と隔離をする必要があり現実的ではない。

 


 

 

 

クリフ

 

 

 

 

 

Mさまご夫婦にはペットショップで購入した先住猫さんがいます。
先住猫さんを大切に思えばこそ、キャリアかもしれない子を迎え入れて、
先住猫さんを感染のリスクに晒すわけにはいかない、 ということです。
それは十分すぎる程理解できますので、こちらもMさまのご辞退を承諾しました。

(1点残念な点は、有料になりますが、とお話しした上での血液検査だったのですが、
費用ご負担については何も触れず…。)

 

 

一方、若くてもしっかりとご自分の考えをお持ちの自立した女性・Aさん。
ヒースの里親さまです。
AさんからのLINEでの返答はこうでした。

 

 

母子感染している可能性があること、
感染していない場合もあること、
感染していても発症しない場合も多いこと、
発症すればとても負担になること。
いずれにせよ全て可能性です。
正確な判断は何ひとつ出来ない状況で、
私の気持ち次第ということですね。
物ごころついた頃から犬や猫に囲まれ、
亡くなることも瀕死になることも寝ずに看病したこともありました。
どんな時でもどんな子でも、
この先どうなるかわからないというのは皆同じです。
私はヒース君の譲渡をお受けします。

スマホの画面をしばし見つめながら、
胸の中に温かいものが広がっていくのを感じました。

 


 

 

 

ヒース

 

 

 

 

 

猫エイズウィルスキャリア」の子猫を飼うべきか、飼わない方がいいのか。
正解などありません。

 

私達は皆それぞれ自分の考えと意志を持っています。
生まれてから死ぬまでの一生の間、
様々な場面で様々な決断と選択をしながら 生きていきます。

先住猫を守る為にクリフを飼わないことにしたMさんご夫妻。
先のことはわからない、わからないことを危惧しないと ヒースを受け入れてくれたAさん。

どちらも正しい。この選択に正誤はつけられません。

 

里親辞退の連絡が来た折、Mさんはこのようなことを書いておられました。

 

可愛い子猫を前に、舞い上がっている人間に、
丁寧な口頭での説明は有効でないケースがある。

 

里親会で可愛い子猫と出会い、気持ちが高ぶっている時に、
猫エイズ、ウィルス検査云々、口頭で説明されても、
それどころではない・・・ という感じでしょうか。

サンドイッチマン・富澤氏曰く、「ちょっと何言ってるかわからない」。

 

これは私が感じたことなのですが、Mさんご夫妻だけでなく、
ペットショップあるいはブリーダーから血統種を迎え入れた飼い主さん、
またはご自身で野良の子猫を拾って飼っている飼い主さんの中には
猫エイズ・猫白血病等に関する知識を全くお持ちでないか、
真剣に考えたことがない、という方がいらっしゃいます。

ご自身の飼い猫がキャリアであるのかどうか、ご存じない方はいますが、
検査は何万もする高額なものではありませんので、
一度血液ウィルス検査を受けてみることをおすすめしたいです。

キャリアでないことがわかれば安心するでしょうし、
万が一、キャリアであることがわかったとしても、
発症を抑える・遅らせるにはどのようなことを心がけたらいいのか、
飼い猫への対応、ケアを見直す機会にもなると思います。