前回のお話はこちら。
2020年4月15日のブログ
「人は去り、猫が残る:②重田邸のいま。」
(2)外田邸のはなし。
重田のおばあさん宅から150メートル程先に小さな公園があります。
昔からこの公園には猫がたくさんいて、餌をやる人が後を絶ちませんでした。
何年か前、夜遅い時間でしたが、たまたま公園を通りかかり、
猫の姿を確認する為に、公園入口前で自転車を止めました。
すると、向かいの公共施設や隣接マンションや家の影から、
待ってましたとばかりに、猫達がぞろぞろ出てきました。
「夜間、この公園に自転車で餌をあげに來ている人がいるんだな。」
と思いました。
公園の猫たち。
この公園には、常に猫の姿が数匹ありましたが、その中で、
1匹だけとても人懐こくおとなしい大人の猫がいました。
私は半年の間、その猫を見守っていましたが、
一度出産した上に、またお腹が大きくなっているようだったので、
家族の了解をもらい、2015年春に勇気を出して保護しました。
勇気を出してと敢えて言うのは、当時の私は
猫のボランティアではなかったからです。
2015年春に公園から保護した菜花ちゃん
昨年、ボランティアのNさんが、この公園付近のことを訊ねて回り、
公園斜め向かいにある古い一軒家に住む高齢男性・外田さんが、
長年の猫達の餌やりであったことを突き止めました。
これは意外な事実でした。
そのお宅は低い塀の上や、柵の隙間に、
水入りペットボトルを積み重ねていたので、
てっきり猫が嫌いなお宅だと思っていたのです。
元は外田さんの奥さんが餌をやっていたそうですが、
数年前に奥さんがご病気で他界されてからは、
ご主人が餌やりを引き継ぎました。
奥さんもご主人も猫達の不妊手術は一切行っていませんでした。
Nさんは外田さんにアプローチし、うまく説得し、
外田さんが餌をあげている十数匹のTNRを行いました。
今後この場所が野良猫の発生源となることはなくなりました。
外田さんは寄付金を下さったそうですが、
1匹分の手術代にもならない、スズメの涙ほどの額。
どうぶつ基金の無料不妊手術チケットで、
全ての手術をカバーできたわけではありませんから、
Nさんは相当自腹を切ったと思います。
昨年末、古い住宅の屋根が崩壊してしまい、
外田さんが住み続けることが困難になりました。
外田さんは十数匹の猫達をその場に残したまま、
まもなく引っ越して行きました。
今はさら地となっている場所に、
ご近所の高齢者が餌やりに通っているそうです。
更地の奥に数匹の猫が見えます。
この場所も近い将来売地になるでしょう。
そうすれば、餌やりは続けられなくなり、
今、餌を貰っている多くの猫達が餓えて、
この場所からあちこちに散っていくことに
なるのでしょう。
ボランティアのNさんが外田邸跡に貼っていた注意書きです。
まず猫達が向かうのは、例の居酒屋ではないかと思います。
私が「野良猫製造工場④」と呼んでいた場所です。
交通用の多い道路を渡っていくわけですから、
また交通事故の犠牲になる猫が出てくるかもしれません。
3)KM邸のはなし。
私が昨年の5月に、子猫の里親探しをお手伝いしたKMさん。
彼女も庭に置き餌をして野良猫を集めてしまいました。
KMさんの庭。
敷地には猫が数匹います。
全て、ボランティアのKさんが不妊手術を済ませました。
庭で生まれた子猫はそのまま大きくなりました。
移動していなくなってしまった猫もいますが、
その中の1匹、のぞみが昨年春に3匹を産みました。
KMさん宅の近所に住むボランティアのKさんが、
KMさんの噂を聞き、KMさんに声をかけなければ、
KMさん自身で動くことはなかったでしょう。
KMさんは、ヘルパーに来ている女性に頼み、
のぞみ一家を丸ごと室内に入れました。
母猫のぞみと子猫たち(ひかり・こだま・つばさ)
子猫達はみな、理想的な里親さまに巡り合い、
早々と卒業していきましたが、
最後の子猫・つばさが卒業すると、
「のぞみもきっと慣れるから大丈夫。」
という私達の提案をスルーし、
さっさとのぞみを外にリリースしてしまいました。
そして、今。
餌をやっていた庭の猫達4-5匹をそのまま残し、
KMさんはこの地を去ろうとしています。
当時、家猫になるチャンスがあったはずなのに、
子育てという役目が済むや否や
外に出されてしまったのぞみも
当然、置き去りになります。
噂話で、KMさんの引っ越しについて耳にしましたが、
引っ越すから猫をそのままにしていく、という件については、
ボランティアのKさんにも私にも、KMさんから直接の連絡はありません。
チェーンメールとでも言うのでしょうか、
コロナウィルス対策の長々としたデマメールは
せっせとLINEで送ってよこしますが、
引っ越しの件については一切触れず・・・です。
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この2ケースに共通しているのは以下の点です。
①自分が餌を与えている猫達に不妊手術を行わなかった。
②出産により猫が増えても、不妊手術を行わなかった。
③問題が表面化した後は、作業も金銭面もボランティアに丸投げだった。
④自分が餌をあげられなくなった時どうするかを考えていなかった。
外田邸とKM邸に限ったことではなく、
自宅で野良猫達に餌やりをして、
近所から苦情が出てしまうお宅は、
ほとんどがこのパターンではないでしょうか。
野良猫に餌を与えている本人が、
その野良猫達の不妊手術を必ず行う。
そんな法律はありませんから、
飼い主のいない猫に不妊手術をしなくても、
逮捕されることはありません。
これは、社会的なマナーの問題なんです。
価値観の違いや、昔からの慣習、経済状態等、
様々な理由で不妊手術をしないのだと思いますが、
餌をあげている本人が、「このままではまずい」
という危機感を持つ、あるいは、
本人にマナー違反の認識が全くないのであれば、
その状況を傍で見て知っている人間が、
「何とかした方がいいのではないのか」と助言する。
自分達で動けない事情があるのならば、
「見なかったことにしよう」とか
「このまま黙って我慢する」とかではなく、
ちょい問題が大問題へと発展してしまう前に、
労力面・金銭面の負担が増え、対処が容易でなくなる前に、
それを発信するという形をとっていただきたいです。
ボランティアは、仕事と家庭生活の傍らで活動をしていますから、
ボランティア作業に費やせる時間が限られています。
「どこそこで餌やり問題発生中~」
なんて知らせてくれる便利なGPSなどありませんし、
毎日、足をあちこちに運び、問題がないかどうか、
パトロールしている余裕などありません。
偶然、そういった現場を見つけることもありますが、
私自身は、他人から教えられて初めて知ることの方が多いです。
飼い主のいない猫に餌やりを始める時、
必ず、考えていただきたいのは、
自分が餌やりを継続出来なくなった時、
猫達はどうするの?ということです。
3つの選択肢があります。
1:すべての猫を、責任持って自分でその場から引き上げる。
2:後を託せる人を探して、餌やりを引き継いでもらう。
3:猫をそのまま置き去りにして、自分は去る。
外田邸では既に14匹の猫が置いていかれました。
KMさん宅でも、のぞみを含む4-5匹の庭猫が
置いていかれようとしています。
外田さん、KMさんは③を選んだのではなく、
最初から①②の選択など頭になかったのだと思います。
この手の方々は、新しい場所に引っ越しても、
そこでまた必ず同じようなことをするでしょう。
私達ボランティアは猫問題解決のお手伝いは出来ても、
人間の根本部分を変えるお手伝いは出来ないのです。
残念です。
To be continued・・・