前回のお話。
2025年8月25日のブログ
「ねこ藩城下の猫たち:(23)わざとじゃない。」
https://nekohan.jp/archives/987510030
例えば、1匹の猫を保護し、里親募集を経て、
無事譲渡まで漕ぎつけたとします。
その猫を保護したことで、
どのくらいの費用がかかってくる?
外から保護した猫には基本医療行為が必要になりますが、
ごく普通の、健康状態に特に問題が見られない猫の場合、
●駆虫薬 1000~4000円
●三種混合ワクチン×2-3回 2500~4000円
●血液ウィルス検査 3000~6000円
●不妊手術(未不妊の場合) 5000~15000円
〇血液成分検査 5000~7000円
〇その他
となりますかね。
病院によりますが、医療費は20000円~40000円程度。
ここに毎日のフード代が加わり、
時にはケージ、ベッド、ハウス等の備品購入も必要になりますから、
実質はそれ以上、になります。
ボランティアが猫を譲渡する際、里親になっていただく方に、
上記●印のついた項目にかかった医療費をご負担いただくことが一般的です。
「ボランティアはただで猫を捕まえるくせに、譲る時にお金を請求している」
なんてことを言われた、という話を何度か聞いたことがあります。
明確にしておかなくてはならないのは、
ボランティアは猫を譲渡することによって
収益をあげているわけではないということです。
お金儲けどころか、上記の●項目分しか里親さまに請求しませんから、
それ以外の費用についてはボランティア自身が身銭を切っていて、
その額は里親さまに請求する金額の何倍も・・・というのが普通。
しかし、ボランティアというのは自ら進んで行う活動であって、
ある程度、身銭を切ることは皆さん覚悟の上です。
では、ボランティアはどうして、
●項目分を里親さまに請求しているのか?
里親になって下さる方が、
もしも、ご自身でその猫を外から保護し
飼い猫として家に入れることになったら、
動物病院でどんな医療行為をお願いしたらいいのか?
の答えに該当するものが、●項目になるからです。
保護はしたものの、怪我や皮膚疾患や何らかの病気が見つかり、
そのための治療が必要になることがあります。
その治療代はもちろんボランティア自身が支払うことになりますが、
あまりに高額になってしまった場合、譲渡の際に、
里親さまの方に一部ご負担いただくことが可能かどうか
打診させていただくこともあります。
YES/NOはもちろん、里親さまのお考えによるものなので、
譲渡側としては強制できません。
「これから自分の猫となる子なので協力させていただきたい」
とおっしゃって一部ご負担下さる方は本当にありがたい。
「自分の猫になる前のことなので、それはちょっと協力いたしかねる。」
のNOだとしても、それはボランティア側が受け入れなくてはなりません。
保護した猫が短い期間で貰われていく場合は、
ボランティア側の負担もそれほど大きなものになりませんが、
そんなケースばかりではありません。
猫エイズウィルスキャリアの猫、猫白血病ウィルスキャリアの猫、
何らかの疾病を抱えている猫、人馴れしていない猫・・・等、
なかなか里親希望者が現れず、保護して数年なんていう保護猫も
世の中にはたくさんいます。
飼い猫同様の世話が必要になり、
保護猫となった年数と保護にかかる出費は比例していますから、
ボランティア側の費用負担も大きくなっていきます。
費用のことも含め、保護の全責任を負うのは、
他の誰でもない、保護した人間。
費用のことで不満に思ってもそれは仕方のないことです。
さて、本題のニャースちゃん。
ビブでも被り物でも全く気にせず着用中。
保護後、それほど費用がかからずに卒業する猫もいますが、
こういうケースも時にはあるのだという例として参考になればと思い、
これまでニャース1匹にかかった費用を記しておこうと思います。
「私はこれだけの費用をニャースに払った」という
自慢でも文句でもありません。
記録として淡々と記しますので、どうぞ淡々と(笑)お読みください。
◆エリザベスカラー 2,118円
◆トイレ関係 25,890円(*)
◆サプリ類 82,111円(*)
◇乳酸菌サプり18,956円
◇サイリウム粉末 8,045円
◇モニラックシロップ 55,110円
◆療法食 235,250円
◆Holiday(ペットホテル) 62,375円(*)
◆医療費 1,023,933円
◇K病院 170,770円
◇Y病院(1) 576,674円(骨盤前尿道造瘻手術、裂傷治療、3カ月の入院)
◇Y病院(2) 97,240円(スケーリング・抜歯)
◇Y病院(3) 179,249円(摘便、諸検査、ワクチン等の一般医療行為)
合計 1,431,677円
クレジットカードでの支払い明細が残っている分と
通販記録がサイトに残っている分に関しては容易に辿れますが、
現金払いをしたものに関しては、
レシートが全て残っているというわけではありませんから、
実際のところは、これ以上の金額になります。
ニャースが汚すマットやベッド、バスケット、ハウスなどは
頻繁な洗濯ですぐにボロボロになってしまうので、
そういった備品の購入も結構あります。
療法食は2024年半ばでやめ、
それ以降のフードについては月々12000~15000円くらいだと思いますので、
2021年4月の保護から2025年8月末の間にニャースの保護にかかっている費用は、
軽く150万円を超えていることになりますね。
(*)印の項目は、今後も発生していくものなので、これで終わりというわけではありません。
便秘が酷くなれば摘便、定期的な健康診断等、年に何度かの通院も続くでしょうし、
ニャースももう10才になりますから、何らかの病気になる可能性もあり、
その度に手術だ治療だということになります。
人間と違って健康保険などありません。
もともと地域猫でしたからペット保険にも加入していません。
全額自己負担。
1匹の猫を保護して室内に入れるということは、
これだけ費用がかかってしまうケースもあるのだということを、
知っていただきたいです。
よく、「どこそこに弱った猫がいるから保護してあげてください」と
ボランティアに依頼してくる方がいます。
ボランティアに連絡をしたことで、
「私は弱った猫を見捨てておけずボランティアに連絡した。私の役目を果たした。」と、
ご自身は1匹の猫を救った気になっているかもしれませんが、
もしその猫がニャースのように手術や入院が必要な猫だったりしたら?
「私は連絡をしただけですからお金なんて出せません。」となるのが普通。
そうなれば、引き受けたボランティアが丸被りです。
逆の立場、つまり自分が猫を押し付けられる側だったらどう思われますか?
なぜ私が?自分の飼い猫でもないのに、
そんなお金出せるわけがない(出す気はない)!
となりませんか?
同じことを声を大にして叫びたい。
ボランティアもそう思っているはずです。
でも、この猫を助けるためなら・・・と、ぐっと我慢し、
覚悟して猫を引き受けるのです。
ボランティアが引き受けるのが当然、
などと決して思わないでください。
ニャースは我が家の庭で、地域猫として3年暮していた子です。
地域猫=飼い主のいない猫ということになりますので、
その猫に何かあった場合、必ずしも世話をしている人間が全ての責任を
負わなくてはならないという法律はありません。
しかし、実際のところ、世話をする人間以外は、赤の他人。
フード代にしろ、医療費にしろ、世話をする人間が負担するのが常です。
もともと、地域猫の世話というのは自分の意志で始めるものです。
困った時にだけ赤の他人に責任を負わせようとするのは、身勝手というもの。
当時も過去にも
「私の保護猫に医療費がかかりますので、ご寄付の協力をお願いします」
なんて言ったことはないし、これからもそういう気持ちはありません。
それは、自分の庭の地域猫に関しては、誰かから命令されたわけではなく、
自分の意志で世話を始めたのであって、全責任は自分と決めているから。
とは言うものの、ニャースを最初のK病院に預け、
今後かかってくる医療費を頭の中で計算した時に、
一瞬立ち止まって考えました。
地域猫に何十万などという経験をしたことがなかったからです。
「すごい金額だな。」
今後、庭にいるくらら達だって、いつニャースのような目に合うかわかりません。
同じようなことが起こったら、
その度に地域猫に何十万円という金額を支払うことになるのか・・・
と考えてしまったのです。
そうなってしまったら、もちろん、自分のお財布から支払うつもりでいますが、
他の方々はどう思うのだろうかと気になり、当時、Instagramの方で、
自分が世話をしている地域猫がこういう目に会ってしまったら、
治療に何十万という金額が必要になってしまったら、どうしますか?
みたいな問いかけを投稿しました。
「〇〇さん(私)、大変でしょう。少しでもお役に立てれば。」
「他人事ではありません。私だっていつか同じ経験をするかもしれない。
でも、今はまずニャースちゃんの怪我を治してあげてください。」
「ニャースちゃん、よく知っています。少しですけれど協力させてください。」
寄付金のお願いをしたわけではなかったのですが、
すぐさま、心配して下さった知人の方々から、
送金だったり、手渡しで寄付金をいただいてしまい、
心から感謝するとともに、申し訳ない気持ちになりました。
10万円という大金をすぐに送金してきてくれた、
学生時代からの友人Mちゃんからの言葉。
何かあった時の為に500円硬貨貯金を続けていて、
まとまった金額になっているの。
その「何かあった時」とは今だと思う。
ニャースのためにどうぞ使ってください。
お買い物の後のお釣りなど、こつこつと貯めていたのでしょう。
Mちゃんだって決して若くはない2匹の猫を飼っています。
シニア、ハイシニアとなり、今後、飼い猫の医療費お金がかかるかもしれないのに、
「このお金を今必要としているのはニャース」と言ってくれました。
有難くて泣きそうになりました(ほとんど泣いてた)。
Mちゃんの飼い猫、ゆずとチーズ。
皆様の温かい気持ちが詰まった寄付金。
ニャースにかかる費用は自分で何とかして、
他に医療を必要としている猫達のために
寄付金を使わせていただいた方がいいのではないだろうか。
とりあえずはねこ藩基金に積み立てさせていただき、
どう使わせていただこうか考えました。
あれから4年が経過していますが、
そのことはずっと心に引っかかったままでした。
もちろん他の猫のために使うことになっても、
皆さん、「どうぞ必要としている猫に使ってあげて。」と
言って下さるのかもしれません。
でも、当時いただいた寄付金は
皆様のニャースへの温かいお気持ちが詰まったもの。
やはり、いただいたご寄付はニャースのために使うべきではないのか?
それが、皆様からのお気持ちに応えることになるのでは?
だいぶ時間が経ってしまいましたが、決めました。
当時、いただいた寄付金は、
入院から3カ月分の医療費576,675円の一部に
充当させていただきます。
寄付という形で、長い入院生活の間ずっと、
ニャースに寄り添って下さった皆様。
本当にありがとうございました。
〇まさむねの飼い主MYさん 10000円
〇仲間のKMさん 10000円
〇福井の知人TNさん 5000円
〇まあるじゃあらさん+中山ねこ家さん 10000円
〇横浜の知人ATさん 10000円
〇武蔵野市の知人RHさん 5000円
〇スマイルのYHさん 27200円★
〇おはぎの里親MOさん 3000円
〇仲間のおでんさん 13000円
〇地元の知人MTさん 10000円
〇仲間のANさん 20000円
〇学生時代からの友人Mちゃん 100000円
合計223200円
223,200円は、11月のイベント終了後に、
ねこ藩積立金から差し引く予定です。
ニャースの件をInstagramで知り、
直接寄付金を持ってきてくださった市内のボランティア、
まあるじゃあらのIちゃん、中山ねこ家のFさん。
これがきっかけとなり、親しくさせていただくことになりました。
医療費総額:1,023,933円
ふーん、で済まされる金額であはりませんが、
これでも、当初恐れていたより(笑)低価格に抑えられています。
評判のいい病院ですが、あのままK病院で、
手術+3ヶ月入院+その後の通院ということになったら、
こんな金額では到底すまなかったでしょう。
Y病院は個々の医療項目の単価がK病院より安かったことが
その理由だと思います。
技術を必要とする手術や原価のある薬、
医療品は値引きが難しいと思いますので、
何らかの微調整をして下さったのであれば、
どこか他の項目だろうとと明細を調べましたが、
よくわかりませんでしたし、
私も「どの部分を割引して下さったんですか?」なんて質問はしませんでした。
恐らく、病院が出して下さった1-2日分のフード代、
入院中の爪切り、排尿口まわりのシェービング、初診料・・・
そんなところではないかと思います。
最初、Y病院を訪れた時に、医療費について院長先生に相談はしましたが、
K病院よりはずっと低価格で出来るとおっしゃって下さった時点で、
精算時に提示された金額をきちんとそのままお支いする!と決めていました。
K病院より単価が安いのであれば、それ以上の値引きを打診する理由もないからです。
Y病院だけではなく、これまでにお世話になったあちこちの病院で、
「ボランティアさんですよね?じゃ、野良猫価格の方を適用させていただきますね。」と
獣医さんがおっしゃって下さった時には、
ありがたくご厚意を甘んじて受けさせていただきましたが、
「私はボランティアなのでもっと安くしていただけないですか?」と
自分からお願いしたことは一度もありません。
獣医さんに「安くしてください」とお願いすることが躊躇われるのではなく、
私の中では、それは「してはいけないこと」なんです。
獣医さんはボランティアで動物病院を経営しているのではありません。
獣医大学で学び、知識と技術を身に着け資格を得た上で行っている
「獣医」という仕事は、ビジネスであって、獣医さんの生活の糧です。
お米屋さんに、お米をくださいとか、安くしてとは言わない。
美容師さんに、ただでカットしてとか、安くしてとは言わない。
税理士に、ただで申告書を作ってとか、安くしてとは言わない。
簡単な差しさわりのないアドバイスをいただくことはあっても、
仕事で行っていることに対して金銭的に値切るというのは、
大変失礼なことだと私は思ってしまうのです。
私は語学学校の講師をしていましたが、
知人友人から翻訳を頼まれることがよくありました。
何かをしながらでも出来るような、短い簡単な内容のものであれば、
大したことはないのですが、一度、
「これ、ちょこっと訳して」と
仕事関係の書類を渡されたことがあります。
友人でしたから、「ちょこっと」ならまあいいかと引き受けましたが、
A4で10ページくらいある専門用語満載の原文で、
これはいい加減に訳すわけにはいかないとこちらも
几帳面に調べて取り組み、数日かかって仕上げました。
そういうのは通常、翻訳サービスに頼めばいいと思うのですが、
翻訳は結構な金額がかかってしまうので、私に気軽に頼んできたのでしょう。
外国語を理解できる=翻訳ボランティアではないのです。
知的財産を当然のことのように利用された感があり、
あまりいい気持ちはしませんでしたね。
ニャースの長期入院後の精算で、
Y病院が金額的にどこかで微調整して下さったかもしれないと書きましたが、
だからと言って、「Y病院=値切ってもいい病院」とはなりません。
退院後も保護猫ニャースは頻繁に通院し、
状態の悪くなっていた口腔についても、
スケーリングと抜歯をお願いしました。
それもまた10数万とかかりましたが、
特に割引はありませんでした。
ニャース以外にも、保護した猫や、地域猫の診察で、
Y病院には頻繁にお世話になっていますが、
保護猫/野良猫価格の適用はありません。
でも、それが普通なのだと思います。
自分では出来ない診察や検査、治療、アドバイスをして下さる。
ニャースのような保護猫でも、飼い猫と同様に扱って下さっている。
それでもう十分にありがたいと思わなくてはいけません。
入院中のくりこ。
余談になりますが、昨年、飼い猫のくりこが肥満細胞腫と診断され、
膵臓摘出と転移先である顎の肉腫切除手術を受けました。
保護猫ではなく飼い猫ですから、当然のことながら正規価格。
術前検査~入院+手術~術後検査で30万円ほど(分子標的薬代金を除く)。
飼い猫にお金がかかり、保護猫にもお金がかかる。
やれやれ。
でも、まだまだ頑張って仕事をしなくては・・・
という奮起材料にはなりますよね(笑)。
ブログに書いていることはあくまでも私の考えであって、
他人を責めたり批判するものではありません。
その点、誤解なきよう、お願いします。
To be continued・・・