前回のお話はこちら。
2019年5月16日のブログ
ミーコと赤ちゃん:①見つけてしまいました。
ミーコの子育てを覗かないでおこうと決めた1週間。
その間も、私は仕事の合間に、あちこちのお手伝いで
ほぼ毎日出歩いていました。
保護猫やまとの通院とお見合いもありましたし、
保護猫キューちゃんとことりちゃんを預かって下さっている
江川さん宅にフードをお届けに松戸まで行ったり、
妊婦猫サラの件でANさん宅にも伺いました。
また、保健所を通じてSOSを発信したHGさん宅に
お話を伺ったり、捕獲器をお届けしたり。
HGさんのお宅は、ミーコ一家のいる事務所から
歩いて2分とかからない距離です。
HGさん宅への行き帰りには、必ず事務所を通りますが、
それでも私は我慢して事務所を覗きませんでした。
◆9月26日(水曜日)◆
1週間が経過しました。
どうか赤ちゃん達が元気でいますように、
と祈る気持ちで、事務所を訪れました。
いつものように脚立を塀の外側に立て掛け、
塀の内側をそうっと覗き込みました。
いました!
4匹すやすやお昼寝中です。
ミーコは、子供達をきちんとハウスの中に、
入れていたんですね。良かった。
それにしても、ミーコはしょっちゅう留守。
いったいどこに行っているのでしょうか。
それなりの体格はしていますから、
餓えていることはなさそうです。
どなたかがご飯をあげているのだとしても、
その場所が全くわかりません。
子育て中の母猫は体力を遣います。
どこかでご飯を貰っているにしても、
食べ物の量が多過ぎても、害はないでしょう。
私は、お豆腐の容器にビニール紐をくくりつけ、
容器の中にレトルトとドライをたっぷり入れました。
そして、ハウスを設置した時のように、
傘の持ち手に紐をひっかけて、ハウスの前に下ろしました。
「あら、ここにもご飯がある!」
なんて、外飯から帰ってきたミーコは、
びっくりするかな。
◆10月1日(月曜日)◆
前日は台風到来でした。
我が家の庭に置いてある猫ハウスがひとつ、
飛ばされて私道部分に転がっていました。
ミーコ一家は大丈夫だったのだろうか。
ミーコ達がいるあの場所は、
コンクリートのビルと高い塀の間にある
狭い通路で、ある程度雨風を凌げる場所ですが、
台風となると話は違ってきます。
ハウスごと風で吹き飛ばされていたらどうしよう。
ドキドキしながら事務所に急ぎました。
無事でした。
ハウスは全く動いていないどころか、
フードを入れた白い容器もそのままの場所にありました。
この通路は風も入り込んでこないということです。
通路の手前に積んである資材の山も
台風をシャットアウトするブロックになったのでしょう。
天候にも影響されない、誰にも邪魔されない、快適な隠れ家。
ミーコはなんていい場所を選んだのでしょう。
◆10月3日(水曜日)◆
そろそろ、ミーコ一家のことを真剣に考える時期です。
子猫は生後1ヵ月の離乳の頃、保護してあげなくては。
今の私の家庭環境では、母猫ミーコの保護までは出来ませんので、
子育てが終わるのを待って、ミーコをTNRすることになります。
ミーコは全く人慣れしていない警戒心の強い猫です。
捕獲器を使っての捕獲しか方法はありませんから、
ミーコに慣れてもらう必要があります。
扉が閉まらないようにした捕獲器の中に、
銀のスプーンをたっぷり入れた容器を置き、
ミーコに捕獲器の中で食べてもらう練習を始めます。
通路の資材がまだ山積になっていますので、
2階へ上がる階段の下に捕獲器を置いてみました。
数時間後にチェックに行ってみると、
中のフードはきれいになくなっていました。
9月末から、頭がおかしくなるくらいの忙しさ。
2年前に譲渡したとらちゃんが飼い主さん宅から脱走し、
関係各所への連絡、チラシ発注と、
予定外の急用が発生して、その対応に追われ、
ミーコ達の近くに住むHGさん宅で
子猫6匹を一気に捕獲して通院しました。
1日にやり取りするメール、LINEは100を遥かに越え、
睡眠時間は3時間という日々がまた始まりました。
それでも、朝起きて、よし、今日も頑張ろうと思えるのは、
ミーコがしっかり子育てをしてくれていることと、
菅野さんが保護してきた子猫達の世話をして下さっている
松戸の江川さんや、市内の上村さん、
そして、「どうするの~」と心配しながらも、
ミーコ一家チェックをしてくれている家人の協力があるからです。
惜しまずに手を貸して下さる方々がいるのですから、
私が「疲れた~もうやだ~」と自暴自棄になるわけにはいきません。
◆10月7日(日曜日)◆
事務所の2階を借りている清掃業者のKGさんが、
通路に積んである資材を片付ける日です。
KGさんは、30分もあれば片付けられると
おっしゃっていました。
KGさんの片付け作業中、
ミーコはきっとどこか離れた場所に潜んで
子育て場所には近づかないでしょう。
通路の奥のハウスにいる子猫達は、
ドタバタ作業中の母猫不在に怯えてしまうでしょう。
でも、仕方がありません。
資材をどかさない限り、子猫を保護出来ませんから。
私はミーコ一家発見以来、定期的に一家の様子を
Instagramにアップしていましたが
それをご覧になった知人のボランティアNさんから、
LINEが送られてきました。
「あの一家がいる場所はどこでしょうか。
気になっていて、何とかしたい気持ちでいっぱいです。
これから様子を見に行きたいのですが。」
ミーコ一家の詳しい場所と、
KGさんが作業をする予定であることを伝えて、
数時間後、またNさんから連絡。
「ねこ藩さんはこの一家をずっと見守って
いらっしゃるようですので、お伺いします。
私の方で保護してもいいでしょうか?」
ああ、なるほど。
私はInstagramにミーコ一家の様子をアップしてはいましたが、
最終的にミーコ一家をどうする予定なのかについて
一言も触れていませんでした。
その為、Nさんは心配になってしまったのでしょう。
私も本当に目が回るような毎日で、
ミーコ一家を見つけて以来、
本当に関わって大丈夫なのか、
でも自分が動くしかないだろう、と
毎日毎日、自問自答していました。
そんな時、有難いことに、Nさんが、
「保護したい」と声をかけて下さったのです。
私は、子猫達を何とか保護して、
母猫のTNRを行う予定でいることを話しました。
そして、保護後、日程調整の必要はありますが、
Nさんが子猫達を預かって下さることになりました。
◆10月9日(火曜日)◆
連休中にKGさんが資材をどかして下さり、
すっきりとして、人間が通れるようになった通路。
これまで階段下に設置していた捕獲器を、
2日前から通路の入り口に移動しました。
捕獲器の位置が変わっても、ミーコは
中のフードを食べているようです。
夕方、様子を見に行ってみると、
子猫達がハウスから出てしまっていて、
ハウスから離れた地面の上で
もぞもぞと固まっていました。
辺りを見回し、ミーコの不在を確認して
子猫達を跨ぎ、初めて通路の奥まで入ってみました。
三毛の子猫が、とても可愛いシャーをしながら、
こちらを見上げています。
奥まで入ってハウスをチェック。
ハウス内の敷き物がかなり汚れて湿っていました。
感触が気持ち悪かったのかもしれません。
これではもうハウスの中にいたくないでしょう。
私は走って家に帰り、段ボールで新しいハウスを作ると、
また事務所に走って戻りました。
まだミーコは戻っていませんでした。
人間のにおいがつかないようにビニールの手袋をして、
子猫達を1匹づつ掴んで、ハウスに入れました。
フカフカのシーツの上にそっと置いて、
小さな頭をこちょこちょと撫でました。
可愛いものですが、一応、威嚇するようになっていますし、
動きも思ったより活発になってきていますから、
そろそろ実行に移さなくてはなりません。
ミーコの捕獲と子猫の保護は2日後に決めました。
◆10月10日(水曜日)◆
捕獲器を安定させる為に下に敷く段ボール、
捕獲器を覆う布、養生テープ、ペットシーツ等、
捕獲と保護に必要なものを事務所に運び、
階段の下にストックします。
子猫達は段ボールハウスの中でうとうとしながらも、
こちらを見ています。
捕獲器のフードもきれいになくなっています。
ミーコが全く捕獲器に入らないどころか、
どこかに逃げていなくなってしまったり、
子猫がちょろちょろと動き出し、裏口を通って、
交通量の多い、塀向こうの道路に出てしまったりしたら
大変なことになります。
あとひと晩。
お願いだから、このまま何事もなく、
これまで通り、普通に過ごしてくれますように。
◆10月11日(木曜日)◆
5時半に起きて事務所に向かいました。
ミーコは早朝のパトロールか何なのか不在です。
子猫達は爆睡していますので、
捕まえようと思えば簡単に確保でできますが、
が、まずここは基本通りに、母猫が先です。
捕獲器の中にフードを入れて、
ミーコが戻ってくるのを待ちます。
通路から出ると、事務所のあるブロックを歩いて1周し、
我が家方面に歩き、最初の四つ角で引き返し、
事務所に戻りました。
20分近く経過しています。
事務所の裏口からそうっと通路を覗くと、
捕獲器の中で動いているミーコが見えました。
入った!
すぐそばに子供達がいるのに!
いつも中でご飯を食べていた箱なのに。
今日は箱から出られない!
ミーコは必死です。
暴れながら悲しそうな声で鳴いています。
ごめんね、ミーコ。本当にごめんね。
用意していたビ二タイで入り口をしっかり固定し、
捕獲器を布で包んでテープで留め、
捕獲器を事務所敷地の反対側に用意しておいた
長い段ボールの中に入れました。
すぐに通路に戻り、タオルを敷いたキャリーケースの中に、l
子猫を1匹づつ入れて、包みます。
家から持ってきた、ぬるま湯入りのペットボトルも
キャリーに入っています。
子猫たちは落ち着きなくそわそわし、
ミーコの姿を求め、か細い声で鳴いています。
子猫の入ったキャリーのフタをしめて、
フリースの毛布でキャリーを包むと、
私はまだ早朝にもかからわず、
1日の終わりのようにどーっと疲れて、
地面に突っ伏したい気分になりました。
長いようで短かった。
短いようで長かった。
約4週間の事務所通いは終わります。
安堵の気持ちもありますが、
切なさで胸がいっぱいです。
子猫達はこれから貰われていき、
家の中で、幸せな飼い猫になります。
しかし、ミーコは、もう子供達の姿を見ることも、
声を聞くこともありません。
手術をして、また外の暮らしに戻る。
人を警戒しながら、隠れながら、
こそこそと動き回って生きていくのです。
最初からわかっていたことですし、
そのような終息に向けて動いてきました。
それでも、これからまた、外で、
ひとりで生きていくミーコを思うと
心は鉛のように重くなります。
私はミーコを利用したんです。
美味しいご飯を与えて釣って
快適なハウスを与えて居着かせて、
ミーコにしっかりと子育てをさせ、
最後に、ミーコから子供達を奪いました。
捕獲器の中で暴れ、「どうして?」と
驚いた目でこちらを見ていた母猫ミーコの姿。
私は、ずっとずっと、忘れないでしょう。
ミーコには伝わらないと思うけれど、
私はこれからもずっと心でミーコに謝り続けます。
To be continued ・・・