前回のお話。
2020年7月23日のブログ
「依頼者が消えました。:⑤ルルの一族(中編)」

依頼者が消えました。:⑤ルルの一族(中編)

 

 

 

 

里親さん探しの後半は、
ルルちゃんの姪たち・・・けいちゃんとひめちゃん。
先に申し込みがあったのは、ひめちゃんの方でした。

 

 


白キジのけいちゃん(左)とサビのひめちゃん(右)

 

 


2匹の名前の由来。

 

 

ひめちゃんの希望者には約2週間振り回されました。
お見合いの日付がなかなか決められない、
日を決めても、来るのか来ないのかの確認連絡がない、
お見合いの当日、やって来ないし連絡もない。

他人を職業で判断するのは偏見や差別に繋がりますから、
そのように考えたくはありませんでしたが、
職業がソープ嬢ということが関係しているのか?
と疑問に思った瞬間もありました。

結局、いい加減な性格の方だったのでしょうね。
これからお付き合いしていく上で、No thanksなタイプです。
こちらから物申す前に、彼女からの連絡は途絶え、
そのまま消えていきました。

 

結論から言いますと、ひめちゃんは、
横浜市在住のMさんと婚約者のKさんの
初めての飼い猫となりました。

フレンチブルドッグの子犬、キャバリエの子犬、
テンレック(ハリネズミに似た小動物)を飼っている、
とっても動物好き、世話好きな方々です。

お見合いに来ていただいた際、
人の膝を踏み台にしてまで走り回っているひめちゃんと
充分に遊んでいただき、その上で「ぜひ!」と希望して下さいました。

数か月後、もう1匹、小さな保護猫を引き取られたそうで、
いつかは大人猫へと成長してくれるのか?と心配するほど、
落ち着きのない子猫だったひめちゃんは、
ベルちゃんという可愛い名前をつけてもらい、
今では、新入り子猫の教育係となっているそうです。

 


最初の頃だけ猫風邪でぐちゅぐちゅしていましたが、
治ると、いつでもパワー全開の子猫になりました。

 


新入り子猫とバトルするベルちゃん。

 

 

 

 

◆けいちゃん◆

 

過去にねこ藩から卒業していった保護猫の中で、
トライアルから出戻った猫は1匹もいませんでしたが、
2度トライアルに出て、2度リターンという
新記録を作ったのが、けいちゃんです。

 


可愛いドロボー顔のけいちゃん。

 

 

 

里親募集開始から1ヵ月後、千葉県内にお住まいの男性から
「先日亡くなった飼い猫に似ていて可愛い」と連絡をいただき、
70代のご両親と一緒にお見合いにいらしていただきました。

それまでのメールでのやり取りの中で、
「お見合い後、トライアルをご希望をならば、
猫は後日こちらからお届けします」
と流れを説明し、理解していただけたと思っていましたが、
お見合いにはキャリーバッグ持参で来る始末。

また、「前の猫は1日1回、外に出していたので、そのようにしたい。」と
完全室内飼いの意味をわかっていらっしゃいませんでした。

結局、母が、猫が脱走しないかと気を遣って、
常にビクビクしながら暮らすのは嫌だと言っている、
という理由で、ご辞退されました。

他の保護猫を探してみますと書いていらしたので、

「外に出すことがわかっている方に
保護猫を譲渡するボランティアさんは
恐らくいないと思います。
近所に人慣れしている野良猫がいるなら、
その猫を飼ってあげて下さい。
その猫を外に出しても怒る人はいないと思いますから。」

と返信しました。

また、「千葉県では室内飼いを推奨していることを
お伝えしておきます。」と添えました。

 

 

やれやれだよ!

 

 

 

年が明けて、けいちゃんに申し込んで下さったのは、
すぐご近所の集合住宅にお住まいのご一家、Uさんでした。

Uさんは手早く猫飼育用品を揃え、
トライアルに備えて下さいました。

懸念材料は、10年近く一人っ子として可愛がられている
先住犬、トイプーのボーちゃん。
とっても怖がりで臆病な子だということでした。

 

 


Uさん宅のケージに入ったけいちゃん。

 


物怖じせずに行動するけいちゃん。
手前が臆病なボーちゃん。

 

何とかトライアルがうまくいくよう願っていましたが、
元気いっぱいのけいちゃんを、ボーちゃんが怖がってしまい、
トイレに行けなくなってしまう等、
これまでに見られなかった行動をとるようになりました。

Uさんご一家も2週間、色々と工夫して頑張って下さいましたが、
Uさん宅はやはり、ボーちゃん1匹の方がいいと判断し、
けいちゃんを戻していただきました。

それまで平和に暮らしていた場所に、
ずけずけとした侵入者が居座って
ボーちゃんは本当に怖かったのだと思います。

人にとっても、先住犬にとっても、
またけいちゃんのこれからにとっても、
良い影響を及ぼさないケースだと思います。
仕方がないですね。

 

 

 

Uさん宅から戻って数時間後、
けいちゃんを希望されていたもう1組の方が、
お見合いにいらっしゃいました。

2018年に譲渡したむうむの里親、Nさんご一家です。

 


おとなしいムギワラの女の子・むうむ。

 

1週間後、けいちゃんをNさんご一家にお届けし、
祈るような気持ちで経過報告を待ちました。

 


むうむの3段ケージの隣に、けいちゃん用2段ケージ。

 


とりあえずケージに落ち着く。

 

 

相性はあまり良くないというか、
けいちゃんがむうむに威嚇しているようです。
けいちゃんはやりたい放題で、テーブルに乗ったり、
食パンの袋に穴を開けたり、物を落としてしまったり・・・。

これは猫あるあるですから、
猫の飼育に慣れた人間にとっては
全然大したことではないし、
工夫次第で解決できることですから
問題行動とまでは言えないと思うのですが、
Nさんご一家は、飼い猫経験が浅く、
知っている室内飼いの猫といえば、
静かで落ち着いているむうむだけ。

むうむのふるまいが普通の猫だと思っている方にとっては、
けいちゃんとの時間は試練の連続です。

それでも、もう少し頑張ってみますとおっしゃって下さいましたので、
トライアル期間を延長することになりました。

しかし、けいちゃんのトイレ問題まで発生。
「日常生活に支障をきたしているので、けいちゃんを返したい。」
と連絡が来ました。

飼い主さんが「日常生活に支障をきたしている」
という気持ちを持ってしまったのでは、
もう一緒に暮らしていくことは難しいだろうし、
けいちゃんに対する愛情も沸いてこないでしょう。

途中延長までした計4週間のトライアルは失敗に終わり、
けいちゃんは再び、預かりのKさん宅に戻ってきました。

 

 


里親さん宅でのけいちゃんのふるまいは、
預かりのKさんも私も予想していなかったものでした。

 

 

 

 

しばらくけいちゃんの里親募集をストップして、
まずは少しけいちゃんを落ち着かせよう思っていましたが、
Nさん宅から戻って1週間後、
今度は、猫を飼ったことのない若いご夫婦・Mさんから
けいちゃんにお問い合わせをいただきました。

お見合いにいらして下さったMさん夫妻は、
真面目そうで、きちんとした方々でした。

 

2度トライアルに出たが、失敗して戻ってきたこと、
かなりやんちゃな面があること、
これまで考えてもいなかったが、
恐らくけいちゃんは1匹飼いが向いていること等、
けいちゃんのこれまでの経緯をお話ししました。

けいちゃんを迎えたいと希望をいただきましたので、
お見合いから6日後の祝日にお届けすることになりました。

 

 

 

けいちゃんのお届けに伺った日、
私も色々と考えることがありました。

こちらから貸し出すケージを持って行きましたが、
ケージの設置場所もまだ決めていない、
その場所というかお部屋の掃除も済んでいない、
水飲みボウル、お皿、そしてけいちゃんのフードも、
まだ用意していないという状態。

 

持参した貸し出し用ケージを急いで組み立て、
けいちゃんをケージに入れた後、
「とりあえずお水を置いてあげましょうか。」と頼むと、
人間が冷たい飲み物を飲むときに使うトールグラスに
水と注いできたのには驚きました。

 

実家がペット飼育不可の住宅だった為、
子供の頃は外の猫と触れ合っていたというMさん(奥さま)。
結婚してやっとご主人の許可が下り、
待望の猫との生活を始めることになったというのに、
事前に色々調べたりしなかったのだろうか。

1ヵ月前に仕事をやめて家にずっといる生活になったので、
留守番時間なく、猫の世話をしてあげられると
語っていましたから、時間はあったはずなのですが。

 

また、家族構成はご夫婦2人、と聞いていましたが、
テーブルの上には別の人間の名前がかかれた薬袋があり、
リビングの家具も食器の多さも、どう見ても、
若い新婚夫婦だけが済む部屋には見えないのです。

医療費を事前にお伝えしておいたにもかかわらず、
用意をしていない。

 

お迎え準備が間に合わなかった理由は、
ご主人の休日の関係で、けいちゃんお届けの日と、
買い出しの日が重なってしまい、
けいちゃんの方が早く到着してしまったことだと
わかりましたが、不思議なことだらけ。

 

恐らく他のボランティアさんならば、
「あなた達、ダメです!」
と、却下されると思います。

 

全ての里親希望者さまには、
事前に質問書への回答をお願いしていますが、
「掃除は得意ですか?:苦手です。」
「性格は?:マイペースです。」
というMさんの回答が頭を過ぎりました。

 

ああ、そういうことか。

 

まずはトライアルですから、その日は、
けいちゃんをMさんご夫婦に預ることにしました。

その日の午後、Mさんご夫妻は、
こちらがおすすめしたフードを始め、
必要な猫用品を全て買い揃えて下さいました。

 

 


お届けの数時間後から、もうMさんの膝の上。

 

 

玄関前の脱走防止柵を作って取り付け、
その画像を送って下さることになっていましたが、
なかなか送られて来ませんでしたが、
材料は買ってあるとのことです。

 

トライアル中の報告も、こちらからのメッセージに対し、
かなりの時間差でやっとLINEで返信が来るという状況。

 

けいちゃんと仲良く過ごしている様子は
こちらにも伝わっていましたが、
色々と首をかしげたくなるようなことが続いた為、
正式譲渡を決める前に、Mさんと電話で話し、
疑問に思っていたことをいくつか質問し、
ひとつひとつクリアしていきました。

 

質問書には家族構成に関する質問がありますが、
Mさんは、「夫婦ふたり」と書いていました。
自分の世帯という意味だと思ったようです。

実は、病気療養中の実母の姉(伯母さん)が一時的に同居中。
Mさんのお母さまが仕事で忙しくお姉さんの世話が出来ない為、
3DKのマンションに住んでいるMさんが、
しばらく、伯母様と一緒に住むことにしたそうです。

詳しく聞いてはいませんが、もしかしたら、
もともとは伯母さん所有のマンションに、
Mさん夫婦が引っ越してきたのかもしれません。

ずっと一緒に住むわけではないから、
伯母様は家族にカウントしなくていいと思ったようです。

 

用意が間に合わなかった理由は、
お見合いからお届けまでが1週間しかなく、
平日は準備が出来なかった。
週末の休みになったら、ご主人と一緒に
買い出しに行く予定だったと説明。

 

けいちゃん用のお水を、
人間用のトールグラスに注いだことを例にあげ、
猫を飼うのが初めてなのに、どうしてもっと自分で
事前に色々と調べて勉強しておかなかったのか、
という質問に対しては、
最近、色々忙しくて、そのうちにと思っているうちに、
時間がなくなってしまったからというお返事。

 

 

言いたいこともたくさんありましたが、
譲渡側が望むのは、けいちゃんに愛情を注ぎ、
終生大切に飼って下さること、と伝えました。

 

「はい、それはもちろんです!
ご心配おかけしてしまってすみません。」

 

 

 

 

その後も、脱走防止柵の完成写真が、
いつ送られてくるのかしらとヤキモキしていたところ、

「外の音が怖いのか、玄関方面には近寄る気配もないので、
とりあえず防止柵は設置しないことにしました。」

と予想外の連絡が来ました。

 

(-_-;)

 

 

決して、悪い方達ではありません。
言葉使いも丁寧で素直、
会えば好感の持てるご夫婦なんです。

ただ、物事をあまり気にせず、
のんびり屋で、マイペース。

「Mさん、というか、若者はそんな感じなのかも。
まあ、けいちゃんを大切にしてくれているみたいだから、
お任せしましょうか。」

ということで、世の中がコロナ感染拡大により、
不安な状況になる少し前に、
けいちゃんも卒業していきました。

 

けいちゃんは相変わらず悪戯ばかりしているようですが、
そんなけいちゃんに「まきびしちゃん」と名前をつけて、
膝に乗せたり、一緒に寝たりと、
念願の猫との生活を満喫されているようです。

 

 

 

 

 

 

 

さて、去勢手術の後、
細谷さん宅のバルコニーに戻した3匹の男の子。

タイガはしばらくして、出て行ってしまったそうです。

 


タイガの顔と体がはっきりとわかる画像がないのです。

 

 

性格とテリトリー意識の強さも関係していると思いますが、
複数のオスがひとつの小さな場所を共有して暮らしていくことは
容易なことではないのかもしれません。

寝床も居場所もご飯も約束されているのに、
そこを捨てて出て行ってしまう理由はなんだろう。
他にも同様の居場所を見つけたのかもしれない。
あの地区に餌やりさんは結構いますから。

 

また、細谷さんがボランティアの三木さんに頼んで避妊手術をした、
ひめちゃんの母親、サビ子もバルコニーから姿を消しました。

その後、細谷さん宅から少し離れたコンビニの近くで
サビ子を見たという目撃情報があり、
ボランティアのKさんと、少し聞き込みをした結果、
その近くにお住まいの方が餌をあげているらしいと
わかりました。

 

大きくなりつつある猫達は、細谷さん宅のバルコニーを
窮屈に感じていたのかもしれません。

耳カットの入った地域猫となったタイガとサビ子ですから、
その地域の住民の方々にご飯をもらい、
無事で過ごしてくれているのであれば
それもありだと、思うしかないでしょう。

 

 

 

 

最初は「いったい、どうするの!?」と
絶叫して逃げ出したくなったルルちゃん一族の件。

子猫達は縁あって、5組の里親さまの飼い猫となり、
2匹は地域猫、2匹は細谷さん宅の外猫となりました。

 

 

嵐が過ぎ去った後の静寂の中に、
ひとり残されたのは、ルルちゃんでした。

 

 

 

 

To be continued・・・